問題社員276 事業場閉鎖・支店閉鎖に抗議する社員への対処法
動画解説
この記事の要点
|
✓
|
説明会を開いて「閉鎖の必要性」と「社員の今後の処遇」の両方をしっかり説明する——納得感を得ることがその後の対応をスムーズにする 配布資料(A4最低1枚)と口頭説明の組み合わせが基本。資料には閉鎖の理由と今後の選択肢(他拠点勤務または退職条件)を明記する |
|
✓
|
社長自身が逃げずに説明することが最重要——弁護士に全部任せると「物のように扱われた」と感じさせて納得感が得られない 弁護士はサポート役(資料作成・当日同席)。社長が目を見てしっかり説明することで、たとえ閉鎖という結果でも「しょうがないか」と感じてもらいやすくなる |
|
✓
|
質疑応答から逃げない——失礼な質問にも冷静に答え続けることが立派な経営者の姿を示す 嫌な質問・失礼な質問にも怒らず、ごまかさず、冷静に向き合う姿を見せることが最終的な納得につながる。逃げると不満が残る |
目次
1. 事業場・支店閉鎖の必要性と社員への対処の基本
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
会社を経営していると、特定の事業場や支店を閉鎖しなければならない場面があります。利益が出ない、近い将来も見込めないという状況では、閉鎖という判断が避けられないことがあります。
その際、そこで働いている社員にとっては大きな変化です。他の拠点への異動を希望しない場合もあれば、閉鎖そのものに抗議してくる場合もあります。そうした状況にどう対処するか、基本的な考え方をお話しします。
2. 説明会の開き方——配布資料と口頭説明を組み合わせる
事業場・支店を閉鎖する場合、まず行うべきことは説明会を開いて社員に丁寧に説明することです。
説明会は大きな会場でなくて構いません。その事業場・支店の社員が全員入れる社内の部屋でも十分です。重要なのは、配布資料(最低A4一枚)と口頭での説明を組み合わせることです。
配布資料と口頭説明それぞれの役割
| 配布資料 | 要点を整理して伝える。後から確認できる。口頭だけでは伝わりにくい複雑な内容を補足する |
| 口頭説明 | 社長が相手を見て誠意を持って伝える。納得感を生む。資料だけでは伝わらない「本気度」が伝わる |
3. 配布資料に書くべき2つのこと——閉鎖の理由と今後の処遇
配布資料には必ず次の2点を記載してください。
資料に書くべき2つのこと
| ① 閉鎖の必要性 | なぜその事業場・支店を閉鎖しなければならないのか。開示できる範囲でできるだけ具体的に。社員が納得できる説明であることが重要 |
| ② 今後の処遇 | 他の事業場・支店での勤務を希望する場合の条件。他拠点への勤務を希望しない場合の退職条件(退職日・退職金・その他)。いつまでその事業場・支店で勤務できるか |
閉鎖の必要性をしっかり説明することで、社員の納得感が生まれます。これがその後の対応(他拠点勤務・退職手続き)をスムーズにする最大の要因です。
4. 社長自身が説明することの重要性——弁護士に全部任せてはいけない
「説明会の準備も当日の説明も全部弁護士に任せてしまった方が安全ではないか」と思う経営者の方もいます。確かに弁護士が代わりに説明すれば法的なミスは減るかもしれません。しかし、社長が逃げてしまうことで失うものが大きいのです。
もし自分が働いている事業場が閉鎖されるなら、社長か支店長に直接話してほしいと思うはずです。「よく分からない弁護士が出てきて理屈を言うだけ」では、内容は理解できても心情的に納得できない社員が出てきます。「自分たちのことを物のように扱われた」と感じることすらあります。
弁護士の役割はあくまでもサポートです。資料の作成・当日の同席・突発的な事態への対応を担いますが、説明の主役は社長(または支店長)です。嫌な情報を伝えることは辛いことですが、それを逃げずに行うことが経営者の責任です。逃げずに誠意を持って向き合う社長の姿が、最終的な納得感につながります。
5. 質疑応答から逃げない——失礼な質問にも冷静に向き合う
説明が終わったら、必ず質疑応答の時間を設けてください。社員から様々な質問・意見・不満が出てくることがあります。中には失礼な質問や侮辱的な言葉が含まれることもあるかもしれません。
そこで逃げないことが重要です。怒らず、ごまかさず、冷静に落ち着いて向き合ってください。感情的にならず、失礼な質問にも誠実に答える姿を見せることで、「この社長はしっかりしている」という印象を与えることができます。どんな結果になったとしても「しょうがないか」と感じてもらいやすくなります。
6. 説明後の処遇——他拠点勤務と退職条件の提示
閉鎖の説明が終わったら、個別の話し合いに移っていきます。大きく分けて、他の拠点での勤務を選ぶか、退職を選ぶかの2つの選択肢を提示することが一般的です。
選択肢の提示と個別対応のポイント
- 他の事業場・支店での勤務を希望する場合——転勤の条件(勤務場所・仕事内容・待遇)を具体的に提示する
- 他拠点勤務を希望しない場合——退職の条件(退職日・退職金・在籍期間中の扱い等)を提示する
- 個別の事情(介護・育児等)がある場合は、一定の配慮が必要なことがある
- 退職の話がまとまったら必ず退職届または退職合意書を取得する
個別の交渉や合意書の作成については、弁護士と一緒に進めることをお勧めします。
7. まとめ
- 説明会を開く——配布資料(A4最低1枚)と口頭説明を組み合わせる
- 資料には「閉鎖の必要性」と「今後の処遇」の両方を明記する——納得感がその後の対応をスムーズにする
- 社長自身が説明する——弁護士に全部任せてしまうと心情的な納得が得られにくい
- 質疑応答から逃げない——失礼な質問にも冷静に向き合う姿が立派な経営者を示す
- 個別の処遇(他拠点勤務・退職条件)を丁寧に話し合う——退職合意書・退職届を必ず取得する
事業場・支店閉鎖に関する対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 他拠点への転勤を拒否した社員を解雇することはできますか。
A. 就業規則に転勤規定があり、転勤命令に業務上の必要性がある場合は、転勤を拒否した社員を解雇できる可能性があります。ただし、転勤拒否に生活上のやむを得ない理由(介護・育児等)がある場合は配慮が必要です。また、事業場閉鎖に伴う転勤の場合は整理解雇の要件(4要件)との関係でも検討が必要です。具体的な状況については弁護士に相談してください。
Q2. 事業場閉鎖に際して、退職に応じた社員への特別退職金は必要ですか。
A. 法的義務として特別退職金を上乗せする必要があるわけではありません。ただし、通常の退職金のみでは合意が得にくい場合や、転勤を希望しない社員に円満に退職してもらうためのインセンティブとして、上乗せ金を提示することは実務的に有効な場合があります。金額・条件については個別の状況を弁護士と相談して検討してください。
最終更新日:2026年4月30日