問題社員275 管理能力がない管理職の降格

動画解説

この記事の要点

降格には「懲戒処分としての降格」と「人事異動としての降格」の2種類がある——まず分けて考えることが必要

不祥事・問題行動を起こした場合は懲戒処分としての降格。管理職の仕事は苦手だが懲戒事由はない場合は人事異動としての降格として整理する

管理職から外す(人事異動)自体は大体できる——その地位限定採用でなければ、人事権の行使として実行できることが多い

必要性があり、嫌がらせ目的でもなく、通常受忍すべき範囲の不利益であれば、管理職から外す人事は有効と認められやすい

給与を下げる場合は就業規則上の根拠が必要——「地位が下がったから当然下がる」では通じない

役職手当(管理職手当)がなくなる場合は比較的問題が少ない。投球・職務等級に連動した賃金制度を設ける場合は就業規則に明確に規定する必要がある

シンプルな対策は「役職手当」の設計——管理職には役職手当を支給し、管理職から外れたらなくなるという制度が分かりやすく紛争になりにくい

複雑な等級制度を設けるより、役職手当のオンオフで給与変動を設計することが中小企業には実務的に有効

1. 管理能力がない管理職への降格——いつ検討すべきか

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

管理職に就けた方が管理能力を発揮できない場合、どうすればよいのでしょうか。プレイヤーとしてはそれなりの実績があったのに、管理職にした途端うまくいかないというケースは少なくありません。管理することと実務をこなすことは、全く異なる能力が求められるからです。

もちろん、管理職から外すことは本人にとっても残念なことではあります。しかしプレイヤーとして戻った方が生き生きと働けるケースも多くあります。必要であれば降格をしっかり検討し、適切に対応していきましょう。

2. 降格の2種類を整理する——懲戒処分と人事異動

降格を検討する前に、まず「どの種類の降格か」を整理することが重要です。

降格の2種類

種類 該当するケース
懲戒処分としての降格 不祥事・ハラスメント・重大な問題行動を起こした場合。制裁として管理職から外す
人事異動としての降格 懲戒事由はないが管理職の仕事が苦手・能力が不足している場合。人事権の行使として管理職から外す

本日主に取り上げるのは「人事異動としての降格」です。平社員から昇格して管理職になったが管理の仕事がうまくできない、という場合に管理職から外すというものです。

3. 管理職から外す(人事異動)は大体できる

「管理職から外す」という人事移動自体は、多くの場合において人事権の行使として有効に実行できます。

例外:管理職限定採用の場合

「部長として採用する」という管理職の地位限定での採用の場合は、その地位から外すことは解雇・退職勧奨の話になります。以下の説明は、一般社員から昇格して管理職になった場合の話です。

管理職を外す人事の有効性を検討する際の主なポイントは、以下の3つです。

  • 必要性がある——管理職として機能していないという客観的な理由がある
  • 不当な動機・目的がない——嫌がらせや退職強要が目的ではない
  • 通常受忍すべき範囲の不利益——著しく大きな不利益を一方的に負わせるものでない

この3点を満たす人事異動としての降格は、大体において有効と認められます。問題になりやすいのは、職位の変更に伴って給与をどのように変動させるかという部分です。

4. 給与を下げる場合は就業規則の根拠が必要

管理職から外すこと(職位の変更)自体は認められやすい一方で、それに伴って給与を下げる場合は就業規則上の根拠が必要です。

「地位が下がったから当然給与も下がる」という論理は通用しません。給与を下げるためには、どの地位だといくら(あるいはどの等級だとどの賃金か)という規定が就業規則・賃金規程に明確に定められている必要があります。この根拠がない場合、降格はできても給与は変わらないということになります。

比較的問題が少ないのは、役職手当(管理職手当)がなくなるというケースです。「部長には役職手当として○万円を支給する」という規定があれば、部長から外れた時点でその手当がなくなることは合理的として認められやすいです。

5. シンプルな設計——役職手当を活用する

複雑な職務等級制度を設けることが難しい中小企業では、役職手当のオンオフで給与変動を設計する方法が実務的に有効です。

役職手当を活用したシンプルな設計

  • 部長・課長・係長など役職に就いた者には「管理職手当(役職手当)○万円」を支給すると就業規則・賃金規程に明記する
  • 役職から外れた(または外れることになった)場合はその手当がなくなると明記する
  • この設計であれば「なぜ給与が変わるのか」が明確で、紛争になりにくい

これにより、「管理職に就けたら手当が加わり、外れたら手当がなくなる」というシンプルで分かりやすい制度になります。複雑な等級制度を整備する余裕がない場合に特にお勧めします。なお、就業規則の整備については弁護士に相談することをお勧めします。

6. まとめ

  1. 降格には「懲戒処分」と「人事異動」の2種類がある——管理能力不足には人事異動としての降格が該当する
  2. 管理職から外す人事異動自体は大体できる——必要性があり不当な目的がなければ有効と認められやすい
  3. 給与を下げる場合は就業規則の根拠が必要——「地位が下がったから当然」では通じない
  4. 役職手当を活用したシンプルな設計が有効——管理職には手当を支給し、外れたらなくなるという制度

管理職の降格でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 管理職に降格を伝えたところ「不当だ」と言われました。どう対応すればよいですか。

A. まず降格の理由を具体的事実に基づいて丁寧に説明することが重要です。「なぜ管理職として機能していないと判断したのか」を具体的な出来事や実績に基づいて説明してください。就業規則に降格の根拠(人事権の行使)と給与変動の規定がある場合は、それを示すことで正当性を説明できます。具体的な対応については弁護士に相談してください。

Q2. 管理職から外した後、プレイヤーとして好業績を上げた場合、また管理職に戻す必要がありますか。

A. 法的に再昇格を義務付けるものはありません。ただし、実際にプレイヤーとしての業績が高い場合、改めて管理職として起用することを検討することも一つの選択肢です。管理職に向く人・向かない人がいることを踏まえ、適材適所の配置を考えることが重要です。

最終更新日:2026年4月30日


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