問題社員266 協調性がない問題社員の対処法
動画解説
この記事の要点
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「協調性がない」は評価的言葉であり、評価する前に具体的事実を確定することが先決——事実なき評価で処分すると失敗の典型例になる 「みんなが協調性がないと言っている」だけでは不十分。5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)に基づいて具体的事実を特定することが出発点 |
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注意指導の目的は「問題行動を改めさせること」であり、証拠作りが目的になってはいけない——目的を間違えると注意指導の効果がなくなる 証拠作りが透けて見えると、労働審判・訴訟でも「注意指導として評価できない」と判断されやすい。本気で行動改善を求める姿勢が大切 |
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注意指導は口頭を基本として書面をセットで——口頭なしに書面だけで注意指導すると効果が下がりパワハラと言われやすくなる 口頭でのコミュニケーションが基本。書面(注意書・厳重注意書)は口頭指導とセットで交付することで、本人への改善促進と証拠確保を同時に実現できる |
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人事評価は実態に合わせた正確なものにする——従来の高い評価を突然大幅に下げることは後のトラブルを招きやすい 協調性に欠ける言動を放置しながら高い評価を与え続けていた会社には落ち度がある。評価の信頼性を保つためにも実態を反映した評価を継続することが重要 |
目次
1. 「協調性がない」は評価——まず具体的事実を確定する
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
「協調性がない」という言葉は、評価的要素が強い日本語です。協調性がないという評価を行う前提として、協調性がないことを基礎づける具体的事実の有無・内容を確定する必要があります。
「上司も同僚も部下もみんなが協調性がないと言っている」「証言してくれると言っている」という状況でも、そこから直接「協調性がない」と評価して懲戒処分や解雇をしてしまったケースは、事実に基づいた評価を行っていない失敗事例の典型です。
周りの社員の言うことを鵜呑みにして裏付けを取らずに「協調性がない」と決めつけて処分を決めてはいけません。客観的証拠と照らし合わせ、本人の言い分を聴取するなどして事実をよく確認してから、事実に基づいた評価を行ってください。
2. 事実確定の方法——5W1Hで記録する
協調性に欠ける言動があった場合、5W1Hを踏まえた形で具体的事実を確定し、記録することが必要です。
記録すべき事実の要素(5W1H)
| いつ | 何月何日の何時頃 |
| どこで | どの場所・状況で |
| 誰が・誰に | 当該社員が誰に対して |
| 何を | どのような言動・行為を |
| どのように | どのような態様で行ったか(言葉のやりとり等) |
| なぜ | 本人から事情を聴取してその理由・言い分を記録する |
事実を記録した上で、本人の言い分も聴取してください。本人の言い分を聞くことで「こういう事情があってそうした」という点が明らかになる場合もありますし、後の労働審判等において「本人の言い分を聞かずに一方的に判断した」という批判を防ぐことにもなります。
また、協調性に欠ける言動が甚だしい場合は、事情聴取の結果を書面にまとめ、本人に内容を確認させて署名押印させることも検討してください。
3. 注意指導の目的は「行動改善」であって証拠作りではない
協調性がない社員への注意指導を行う際、その目的を明確にしておくことが重要です。
注意指導の目的は、業務に支障をきたすような協調性に欠ける言動を改めさせることです。証拠の確保は二次的なものであり、証拠作りを主な目的にしてはいけません。
証拠作りをしているだけということが透けて見えれば、労働審判や訴訟においても、懲戒処分や解雇の前提として行うべき注意指導として評価してもらえない可能性が高くなります。形だけいくら注意指導しても、問題社員の協調性に欠ける言動を改善させることは難しいでしょう。
「この人には改善を諦めて証拠作りに集中しよう」という発想に転換してしまうと、かえって解雇・退職勧奨という目的の達成を困難にします。本気で行動改善を求め続けることが、結果として「改善か自主退職かのどちらか」につながります。
4. 注意指導の具体的な進め方——口頭を基本に書面をセットで
協調性がない問題社員への注意指導は、口頭での指導を基本とし、書面をセットで行うことが原則です。
注意指導の内容は、「何をどのように改めればいいのか」を具体的に伝えることが必要です。「もっと協調性を持って仕事してください」「どうすればいいか自分の頭で考えてください」などの抽象的な指示では、本人には何をすればいいのかが分からず、指導に従ったかどうかの判断もできません。
具体的な注意指導の例(上司の指示を拒否する社員の場合)
「上司から仕事の指示を受けたら、指示された仕事をするよう努めなければなりません。指示された仕事ができない事情があるのであれば、どうしてできないのかをよく説明し、理解してもらえるよう努力してください。直ちに対応できない場合であっても、いつまでには対応できるのであれば、それを伝えた上で指示された仕事ができるよう努力してください。」
なお、口頭なしに電子メールだけで注意指導することは避けてください。口頭でのコミュニケーションと比べてメールは誤解が生じやすく、注意指導の効果が下がります。また、パワハラだと反発を受けて問題がこじれることもあります。電話やテレビ電話(Zoom等)でも構いませんので、必ず口頭でのやり取りを行ってください。
5. 書面(注意書・厳重注意書)の作成と交付のポイント
口頭での注意指導を繰り返しても改善しない場合は、注意書・厳重注意書などの書面を交付して注意指導します。書面には以下の点を盛り込んでください。
注意書・厳重注意書の記載ポイント
- 協調性に欠ける言動の具体的内容(5W1H形式で)——評価的表現だけでなく事実を記載する
- 具体的にどうすればよかったのか(あるべき行動)
- 今後同様の言動を繰り返した場合の対応(懲戒処分等の可能性)
- 就業規則の関係条文(該当する場合)
書面を交付した際は、交付した事実(日時・場所・誰が誰に交付したか・その際の言葉のやりとり)を記録して上司や顧問弁護士にメールで報告しておけば十分です。書留郵便での送付等は、虚言癖のある社員など特に必要性が高い場合に検討します。
なお、「受け取っていない」と言われることよりも「内容が事実と異なる」と主張されることの方が実務上ははるかに多いです。書面の写しとPDF・交付時の状況記録を保存しておくことが重要です。
6. 人事評価への反映と過去の評価との整合性
協調性に欠ける言動が多い問題社員への対応として、人事評価も実態に合わせた正確なものにすることが求められます。
実態よりも高い評価を与え続けていた会社は、後になって評価を大幅に下げようとした際に「なぜ突然下げるのか」という問題が生じます。評価の信頼性が低下し、トラブルが拡大しやすくなります。
従来は実態より高い評価がなされ、給与額・賞与額も他の社員とあまり変わらなかった社員の協調性に欠ける言動に我慢の限界が来て、勤務評価を大幅に下げたような場合には、どうして今になってそのような評価になるのかを説明できるようにしておく必要があります。
従来から放置していた協調性に欠ける言動を、今後は許さないと明確に伝えた上で、具体的な指導を行い、その結果として評価を改めていくという形で進めることをお勧めします。
7. まとめ
- 「協調性がない」は評価——先に具体的事実を確定する。5W1Hで具体的な言動・事情を記録してから評価する
- 注意指導の目的は「行動改善」——証拠作りが主目的になると効果がなくなり、裁判でも評価されない
- 口頭を基本に書面をセットで行う——電子メールだけの注意指導は避ける。テレビ電話等でも構わず口頭でのやりとりを行う
- 書面には具体的事実と「どうすればよかったか」を記載する——評価的表現だけでは証拠価値が低い
- 人事評価は実態に合わせる——従来の高い評価を突然大幅に下げることは整合性の問題を生む
協調性がない問題社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 協調性がないことを理由に懲戒処分することはできますか。
A. 可能な場合はありますが、まず協調性がないことを基礎づける具体的事実を確定し、その程度が就業規則上の懲戒事由に該当するかどうかを確認する必要があります。また、注意指導を繰り返しても改善しなかったことの記録も必要です。懲戒処分の前に必ず弁護士に相談してください。
Q2. 電子メールで注意指導するのはダメですか。
A. 電子メールだけの注意指導は避けてください。口頭でのコミュニケーションと比べてメールは誤解が生じやすく、注意指導の効果が上がらない傾向があります。また「パワハラだ」と反発を受けやすくなります。必ず口頭(対面・電話・Zoom等)での指導とセットで行い、電子メールはあくまで記録・確認の補助として活用してください。
最終更新日:2026年4月30日