問題社員242 体調が悪く仕事がまともにできないのに出社する
動画解説
この記事の要点
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この問題は会社・本人・周囲の社員すべてにとってマイナス——早期対応が最も重要 仕事ができないのに出社して給与を払い続ける状態は、戦力にならず人件費だけが発生し、周りの社員の士気も低下させ、本人の体調悪化リスクも高める。長引くほど解決が難しくなる |
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「働けない」かどうかを事実で確認する——まず仕事を指示して結果を記録し、主治医・産業医の意見も収集する 「働けない」とは労働契約で予定されている程度の労務提供ができないということ。指示を出していない状態で判断するのではなく、実際に仕事を指示した結果を記録し、主治医照会・産業医面談と併せて判断する |
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「働けない」と確認できたら出社拒絶・欠勤扱いという踏み込んだ対応に切り替える——勧めるだけでは不十分 「休むように勧めているのに来てしまう」状態は、口頭での促しだけでは解決しない。労務の受領を明確に拒絶し、自宅療養を求めるという対応が必要な場面がある |
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出社拒絶が「会社都合」にならないためには、労務提供不能の根拠となる事実・記録を先に積み上げておく 単に追い返すだけでは「会社都合で休ませた」と主張され、賃金請求の根拠となりうる。「契約で予定された労務提供ができないから受領を拒絶した」と言える事実関係を整えておくことが欠勤扱い(ノーワーク・ノーペイ)の前提となる |
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長期化するほど本人の反発が強くなる——問題に気づいた早い段階で、医師・弁護士と連携して対応を始める 何年も「出社だけして仕事をしない」状態を認めてきた会社ほど、本人にとって「既得権益」を奪われる感覚が強くなり、裁判リスクも高まる。気づいた段階から医師・弁護士とチームで動くことが解決を容易にする |
目次
1. この問題が会社・本人・周囲に与えるダメージ
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
本日は、体調が悪く仕事がまともにできないのに出社する社員への対処法について解説します。このような社員が存在する場合、早期に適切な対応を取らないと、会社・本人・周囲の社員すべてにとって深刻な悪影響が生じます。
▶ 「仕事ができないのに出社するだけ」の状態が続くことによるダメージ
① 会社の経済的損失——戦力として計算できないのに人件費だけが発生し続ける
② 周りの社員への悪影響——仕事をしていないのに給与を受け取っている状況が他の社員の士気を著しく低下させる
③ 本人の体調悪化リスク——体調が悪いのに出社させ続けることは、安全配慮義務の観点からも会社の責任が問われうる
特に周りへの影響は深刻です。自分たちが一生懸命働いているのに、仕事もしない人が高い給料をもらっているという状況を知れば、モチベーションが大きく低下します。
また、本人のためにもなりません。体調が悪いにもかかわらず出社し続けることで病状が悪化した場合、適切に休養させなかった会社の責任が問われます。
2. まず確認すべきこと——本当に「働けない」のか
対処を始める前に、この社員が本当に「働けない」状態なのかを確認する必要があります。
机に座っているだけで何も仕事をしていない——しかし、会社から特に仕事を指示されていなかっただけで、「指示があれば仕事できた」と言われてしまう可能性があります。出社を認めている以上、何もしていない原因が会社側の指示不足にあるという解釈が生まれかねません。
「働けない」とは、労働契約で予定されている程度の労務提供ができないということです。仕事の内容を踏まえた上で、その方の体調でそれができるかどうかを判断します。
この判断には医学的な見解も必要です。以下の方法で確認を進めてください。
(1) 実際に仕事を指示して結果を記録する
まず、抽象的に「働けるか」を議論する前に、実際に仕事を指示して、できたかどうかを確認・記録することが重要です。「これをやってみてほしい」と具体的に指示を出し、その結果どの程度対応できたのか、あるいはできなかったのかを、日付・業務内容とセットで記録に残してください。
こうした記録がないまま「働けていない」と主張しても、「そもそも仕事を与えていなかったではないか」と反論される余地が残ります。事実の積み上げは、仕事の指示を出すところから始まります。
(2) 主治医への問い合わせ
「このような仕事内容ですが、働けますか」と、具体的な業務内容を示した上で主治医に照会します。本人の同意を得て直接意見を聞きに行くことも考えられます。
主治医は本人の話をベースに判断することが多く、実際の業務内容を正確に把握していないことが通常です。業務内容の実態を文書で示した上で意見を求めることが、精度の高い判断につながります。
(3) 産業医面談を活用する
産業医がいる会社では、「この仕事をこの方にさせて体調への悪影響はないか」という視点で産業医の意見を求めてください。産業医は職場環境や業務内容を前提にした判断ができるため、主治医の意見と組み合わせることで判断の精度が高まります。
主治医や本人がこうした確認を拒絶した場合、その事実自体が後の判断において考慮される事情になります。「健康情報の取扱いに関する指針」の観点からも、本人の協力を求めるプロセスを丁寧に踏むことが重要です。
3. 「働けない」と確認できた場合——出社拒絶・欠勤扱いの決断
確認の結果、労働契約で予定されている程度の労務提供ができないと判断された場合、会社として踏み込んだ対応が必要になります。それは、出社の拒絶——すなわち、職場への入室を認めず、欠勤扱い(ノーワーク・ノーペイ)に切り替えるという決断です。
「休むように勧めているのに来てしまう」という状況は、勧めているだけでは不十分です。本人の意思に正面から向き合い、以下のように明確に伝え、入室を断る必要があります。
「今の体調では、契約で予定している仕事ができません。出社を認めることができないため、自宅で療養してください。本日以降、体調が回復して労務提供が可能となるまでの間は欠勤扱いとなり、その期間の賃金はお支払いできません」
相手の意向と真正面からぶつかる場面ですから、非常に気まずいことは事実です。特に、長期間この状態を認め続けてきた場合は、本人にとって「既得権益」を奪われる感覚になりますから、反発も強くなります。しかし、ここで踏み込まないと状況は改善しません。
書面での通知が原則
口頭で伝えるだけでなく、受領拒絶の意思表示は書面で行うことを原則としてください。通知書には、①これまでの経過(業務指示と結果、医師の意見など)、②労働契約で予定された労務提供ができていないという判断、③出社を認めない理由、④今後の欠勤扱い・賃金不支給の扱い、⑤体調回復時の取り扱い、を記載します。
この通知書のドラフトについては、一度弁護士に相談してから発することを強くお勧めします。
4. 出社拒絶が「会社都合」にならないために——事実と記録の積み上げ
出社拒絶・欠勤扱いを行ううえで最も注意しなければならないのは、「会社都合で休ませた」と主張されるリスクです。
出社拒絶が「会社都合で休ませた」とならないためには、「契約で予定された労務提供ができないから労務の受領を拒絶した」と言えることが必要です。だからこそ、事前に働けないことの確認・記録が不可欠なのです。
「会社都合」と判断されてしまうと、民法536条2項により、出社を拒絶した期間についても賃金請求が認められる可能性があります。ノーワーク・ノーペイの前提は、「労働者側の事情で労務提供ができていない」ということです。この前提が崩れると、欠勤扱いそのものが維持できなくなります。
記録として残しておくべき事項
後々の紛争に備えて、以下の事項は必ず書面・記録として保存してください。
- 実際に指示した業務の内容・日付・結果(どこまでできたか・できなかったか)
- 体調についての本人からの申告内容(日付とともに)
- 主治医への照会結果および産業医面談の記録
- 本人に主治医照会・産業医面談を求めた事実と、本人の対応
- 出社拒絶の通知書(控え)および本人への交付・受領の記録
- その後の欠勤状況および体調回復に関する本人とのやり取り
こうした資料が整っていれば、後に本人側から「会社が一方的に追い返した」と主張されても、労務提供不能の事実を客観的に示すことができます。
5. できるだけ早く着手することが重要
この問題において最も大切なことの一つが、早期対応です。
長期間、仕事ができないのに出社するだけで給与を払い続けてきた場合、本人側の反発はそれだけ強くなり、説得も難しくなります。場合によっては裁判に発展するリスクも高まります。「何年もこの状態を会社が認めてきたのだから、契約上予定された労務提供の水準はその程度でよかったはずだ」という主張を許す土壌を作ってしまうからです。
問題に気づいた段階でできるだけ早く、医師・弁護士と連携しながら対応を始めることをお勧めします。弁護士への相談は、やめさせるためではなく、「どのような事実を積み上げ、どのようなタイミングでどのような書面を発するか」という手順を一緒に設計してもらうために行うものです。チームで早い段階から動くことが、最終的な解決を容易にします。
6. まとめ
体調が悪く仕事がまともにできないのに出社する社員への対応のポイントは、次の5点に整理されます。
- この問題は会社・本人・周囲の社員すべてにとってマイナスであり、早期対応が最も重要である
- 「働けない」かどうかを確認するには、まず仕事を指示して結果を記録し、主治医・産業医の意見も収集する
- 「働けない」と確認できたら、出社拒絶・欠勤扱いという踏み込んだ対応が必要になる
- 出社拒絶が「会社都合」にならないためには、「契約で予定された労務提供ができない」という根拠となる事実・記録を先に積み上げておく
- 長期化するほど本人の反発が強くなる。問題に気づいた早い段階で、医師・弁護士と連携して対応を始める
「勧めてもやめない」という状況は、口頭での働きかけだけでは解決しません。事実の把握・医師との連携・書面による受領拒絶の通知という一連の手順を、丁寧に踏んでください。判断に迷う場面では、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 本人が「働ける」「出社する権利がある」と主張する場合、それでも入室を断っていいのですか。
A. 労働契約で予定された労務提供ができていないことを示す事実(指示した業務ができなかった記録、主治医・産業医の意見など)が整っていれば、労務の受領を拒絶することは可能です。ただし、感情的な対立の中で口頭でやり取りを重ねると「会社都合で追い返された」と主張される余地が残ります。書面で理由と今後の取り扱いを通知する形を取ってください。
Q2. 主治医への照会も産業医面談も本人が拒否する場合、どうすればよいですか。
A. 本人が健康状態の確認に必要な協力を拒絶していること自体が、労務提供可能かどうかを会社として判断する際の重要な考慮事情になります。会社としては、協力を書面で求めた記録、本人の対応、その間に指示した業務の結果などを積み上げた上で、判断することになります。この段階では弁護士と継続的に相談しながら進めてください。
Q3. 欠勤扱い(ノーワーク・ノーペイ)はいつまで続けられますか。
A. 就業規則に私傷病休職制度がある場合は、欠勤が所定の日数に達した時点で休職命令を出し、休職期間に移行するのが通常の運用です。休職制度がない会社でも、一定期間を超えて労務提供不能の状態が続けば、普通解雇事由に該当し得ます。ただし、どの段階で休職命令・解雇に踏み切るかは、就業規則の定め・従業員の経歴・他の社員との公平性を踏まえた個別判断が必要です。
Q4. 本人が「会社に来ている以上、賃金を払うのが当然だ」と主張してきます。
A. 賃金は「出社している時間」ではなく「労働契約で予定された労務提供」に対して支払われるものです。出社していても契約で予定された労務提供がない状態であれば、ノーワーク・ノーペイの原則から賃金請求権は発生しません。ただし、これを主張する前提として、指示した業務とその結果・医師の意見などの記録が整っていることが必要です。記録がないまま「働いていない」と主張すると、紛争で不利になります。
Q5. 長年この状態を認めてきた場合、今から対応を始めても遅いでしょうか。
A. 長期化しているほど本人の反発は強く、裁判リスクも高くなりますが、「今から始める意味がない」ということはありません。むしろ放置を続ければ、会社への損害も本人の体調悪化リスクも拡大するだけです。今日の時点から業務指示と結果の記録を丁寧に取り始め、医師・弁護士と連携して進める手順を設計することが、解決への第一歩になります。弁護士と相談しながら、どの段階で受領拒絶・欠勤扱いに踏み込むかを設計してください。
Q6. この対応がパワハラや不当な追い出し行為と言われないか心配です。
A. パワハラかどうかは「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」で判断されます。安全配慮義務と契約上の労務受領義務という正当な理由に基づいて、丁寧な事実確認と書面通知を踏まえて行う対応は、業務上必要かつ相当な範囲内の措置です。感情的な言動や人格否定を伴わず、「労務提供が契約水準に達していないこと」と「今後の取り扱い」を事実として伝えることを徹底してください。
最終更新日:2026年4月17日
