問題社員228 個人的な事情で勤怠が不安定

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この記事の要点

最初にすべきことは「原因の調査」——面談で事情を聞き、必要に応じて資料の提出を求める

勤怠不安定の原因が分からないと適切な対応が決められない。まず面談で丁寧に事情を聴取し、申請書や診断書など必要な書類を確認する

法律上の義務(産前産後休業・育児介護休業・時短勤務・残業免除等)は中小企業でも必ず守る——法律を守れないビジネスモデルは成り立たない

「うちは小さい会社だから」は通用しない。ただし義務だと思い込んでいるだけで実は任意の制度という場合もあるので弁護士に確認する

法律上の義務でない部分は「どんな会社を作りたいか」という経営者の理念・会社の体力・人手不足の状況を踏まえて経営者が自分で判断する

義務でない部分は誰かに言われた通りに動くのではなく、経営者が責任をもって判断する。人任せにしない

制度化の前にまず個別対応から始める——個別に試してうまくいけば制度化を検討する

いきなり制度化すると撤回が難しくなる。まず個別対応で検証し、会社の体力・社員の反応を確認してから制度化の可否を判断する

1. まず原因を調査する——面談で事情を聴取し必要書類を確認する

プライベートな事情で勤怠が不安定な社員への対応で最初にすべきことは「原因の調査」です。なぜ勤怠が不安定なのかが分からなければ、適切な対応策を決めることができません。

具体的には、会議室などにきちんと呼んで面談を行い、どういった事情があるのかを丁寧に聴取します。事情を聴取した上で、必要に応じて資料(診断書・申請書など)の提出を求めます。

▶ 考えられる主な勤怠不安定の原因

・病気・体調不良
・出産・産前産後の体調問題
・育児(送り迎え・子どもの急病など)
・介護(親族の介護が必要な状況)
・その他プライベートな事情

特別な配慮を希望する社員からは、申請書や必要書類の提出を求めることは問題ありません。休業・休暇制度を利用する際には、どういった事情での休みなのかを書面で明確にしておくことが重要です。

2. 法律上の義務は中小企業でも必ず守る——産前産後・育介休業・時短・残業免除

原因が分かったら、次に「法律上の義務にあたるかどうか」を確認します。法律上の義務にあたる制度は、中小企業であっても必ず守らなければなりません。

▶ 法律上の義務として必ず守るべき主な制度

・産前産後休業(産後8週間は就業禁止)
・育児休業・介護休業
・育児のための時短勤務(3歳未満の子を養育する社員)
・育児のための残業免除(3歳未満の子を養育する社員)
・看護休暇・介護休暇

「うちの会社は小さいから」「人手不足だから対応できない」という理由は通用しません。法律を守ることができないビジネスモデルは、法律を守った上で展開できるよう見直す必要があります。

3. 「義務の誤解」にも注意——義務でないのに義務だと思い込むリスク

逆のパターンも存在します。パンフレットや情報収集の中で「これは義務だ」と思い込んで対応してしまったが、実は法律上の義務ではなかった——というケースです。

会社の体力を超えた制度を義務だと思い込んで導入してしまうと、会社経営に大きな負担をかけてしまいます。「この制度は法律上の義務なのか、それとも任意なのか」の区別は、私のような弁護士に確認しながら判断することをお勧めします。

4. 法律上の義務でない部分は経営者が自分で判断する

法律上の義務を守った上で、「義務ではない部分をどこまでやるか」は経営者自身が責任を持って判断することが重要です。

この判断には次のような要素を考慮します。

どんな会社を作りたいか・社員とどう関わっていきたいか

経営者の理念・価値観が反映されるべき部分。「働きやすい会社にしたい」「社員の生活を支えたい」という思いが強ければ、義務以上の対応を選ぶこともある。

会社の体力(財務・人員の余裕)

体力を超えた義務以上の対応は会社を危うくする。現実的な会社の体力を踏まえた判断が必要。

人手不足の状況

休みが多いからといって安易にやめさせると人手不足がさらに悪化することも。勤怠不安定な社員を活用する柔軟な働き方も選択肢になりえる。

大事なのは「自分が決める」という意識です。コンサルタントや部下が提案してきたものにただ判を押すのではなく、経営者として責任を持って自分で判断してください。義務でない部分は誰かに押しつけられるものではなく、経営者の理念と会社の現実を踏まえた経営判断です。

5. 制度化の前にまず個別対応から始める——「自分が決める」意識の重要性

「義務ではないがやってあげたい」という思いがあっても、いきなり制度化するのはリスクがあります。一度制度化すると撤回が難しくなり、想定以上に活用されて会社の負担が増大することもあります。

まずは個別対応から始めることをお勧めします。今ある制度の中で工夫しながら個別に対応し、「この対応は会社の負担として許容できる」「社員にも好評だ」という手応えを得てから、制度化を検討してください。

▶ 個別対応から制度化への流れ

① まず個別に対応(長めの休み・時短勤務など個別で対応)
② 実際にやってみて会社と社員の両方にとっての影響を確認する
③ うまくいきそうであれば制度化を検討する
④ 制度化する前に弁護士に内容を確認してもらう

6. まとめ

① まず面談で原因を調査し、必要書類を確認する

勤怠不安定の原因が分からなければ適切な対応が決められない。面談・書類確認でまず状況を把握する。

② 法律上の義務は中小企業でも必ず守る——弁護士に義務か任意かを確認する

産前産後・育介休業・時短・残業免除などは規模に関係なく守る。義務だと思い込んでいるだけの制度がないかも確認する。

③ 義務でない部分は「自分が決める」——個別対応から始めて、うまくいけば制度化を検討

経営者の理念・会社の体力・人手不足の状況を踏まえて自分で判断する。人任せにしない。いきなり制度化せず、まず個別対応で検証する。

よくある質問(FAQ)

Q 育児を理由に遅刻・早退が多い社員がいます。解雇できますか?
A

法律上の義務(育児のための時短勤務・残業免除など)に該当する場合、その制度の利用を理由とした解雇・不利益扱いは禁止されています。ただし義務の範囲を超えた欠勤・遅刻については、別途対応が可能な場合もあります。まず弁護士に「この状況が法律上の義務の範囲か」を確認してから対応方針を決めてください。

Q プライベートな事情での欠勤に対して給与控除はできますか?
A

ノーワーク・ノーペイの原則として、働いていない時間分の給与を控除することは基本的に可能です。ただし有給休暇の取得・法律上の義務にある有給の休暇制度(産前産後休業中の賃金など)については別途確認が必要です。就業規則・雇用契約の内容を踏まえて、弁護士に個別の状況を相談してください。

個人的な事情で勤怠が不安定な社員への対応でお困りの方はご相談ください

法律上の義務の確認・個別対応の進め方・制度設計まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/16