問題社員229 休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる

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この記事の要点

最低条件は主治医の「復職可」診断書——これがなければ原則復職不可、休職期間満了退職

主治医の「復職可」の記載がない場合は復職させる必要はなく、休職期間が満了すれば退職扱いになる

「復職可」診断書があっても直ちに復職させない——産業医面談・試し出社・始業時刻への出勤確認などでチェックしてから判断する

就労制限(短時間・残業禁止・出張禁止等)の内容が相当な範囲なら復職を検討。過大な就労制限がある場合は復職不可と判断できることも

産業医と主治医の意見が食い違う場合は確認作業を継続する——どちらか一方を機械的に優先しない

主治医面談の申し入れ・試し出社・始業時刻への出勤確認などで総合的に判断する。本人が主治医面談を拒否した場合はそれ自体も考慮事情になる

確認作業に時間が足りない場合は休職期間の延長も検討する——安全配慮義務の観点からも慎重に判断する

ギリギリで復職を求めてきた場合に焦って復職させると、体調悪化・安全配慮義務違反のリスクがある。期間延長を視野に入れた上で判断する

1. 最低条件——主治医の「復職可」診断書がなければ原則復職不可

休職期間満了ギリギリになって復職を求めてくる社員への対応で、最初に確認すべきことは「主治医の『復職可』と記載された診断書があるかどうか」です。

これが最低条件です。主治医の「復職可」の記載がない場合は、原則として復職を認める必要はありません。復職を認めないまま休職期間が満了すれば、就業規則の規定に従って自動退職または解雇扱いとなります。

⚠ 例外的な事情がある場合は弁護士に相談を

診断書なしでの自動退職扱いが不適切となる特別な事情(会社側の対応に問題があったケースなど)が存在することもあります。判断が難しい場合は弁護士に相談してから進めてください。

2. 「復職可」診断書があっても直ちに復職させない——就労制限の内容を確認する

主治医の診断書に「復職可」と記載されていても、直ちに復職させるべきではありません。診断書には就労制限(制約条件)が付いていることがあります。

▶ 就労制限の例と判断の目安

相当な範囲の就労制限(復職を検討する方向)
・3ヶ月程度の時短勤務
・2時間程度の短縮勤務
・しばらくの残業禁止

過大な就労制限(復職不可と判断できる可能性がある)
・1年以上の短時間勤務
・永続的な残業・出張の禁止
・労働契約で予定されている業務が一切できない

就労制限の内容が「労働契約で予定されている労務提供ができない」と評価できるほど過大な場合は、復職を認めないことができます。どこまでが「相当な範囲」かは個別の状況・業務内容によって異なりますので、弁護士に相談しながら判断してください。

また診断書に就労制限が明記されていなくても、本当に復職できる状態かを会社として確認することは重要です。焦って復職させてしまうと、体調がさらに悪化して安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。

3. 産業医面談を行い、産業医の意見を聞く

産業医がいる会社では、産業医面談を行い産業医の意見を確認することが重要なステップです。

特に職場環境をよく把握しており、メンタルヘルスの問題にも詳しい産業医の意見は非常に参考になります。産業医が「復職可」と判断すれば、復職させる方向で検討できます。

▶ 産業医面談で確認すべき主なポイント

・本当に労務提供できる体調まで回復しているか
・職場に戻って体調が悪化するリスクはないか
・復職にあたって必要な配慮・制限はあるか
・主治医の診断書の内容に対する産業医の見解

4. 産業医と主治医の意見が食い違う場合——確認作業を継続する

主治医の診断書は「復職可」なのに産業医が「復職不可」と判断した場合、または逆のケースなど、両者の意見が食い違うことがあります。この場合、どちらか一方を機械的に優先するのは危険です。

確認作業を継続することが基本的な対応です。具体的には以下の手法を組み合わせて判断します。

主治医面談の申し入れ

本人の同意を得た上で、主治医と直接面談して詳しい状況を確認する。本人が同意しない場合はそれ自体も判断の考慮事情になる。

試し出社(リハビリ出勤)

復職前に試験的に出社してもらい、実際の体調・業務遂行能力を確認する。

始業時刻への出勤確認

メンタル疾患では朝の体調が特に重要。所定の始業時刻に出勤できるかどうかを確認することが有効なチェックポイントになる。

5. 時間が足りない場合は休職期間の延長を検討する

休職期間満了ギリギリで復職を求めてきた場合、上記の確認作業を行う時間が足りないことがあります。そういった場合は休職期間の延長を検討してください。

焦って復職させてしまうと体調が再び悪化するリスクがあり、安全配慮義務違反の問題が生じることもあります。十分な確認ができないまま復職させることよりも、休職期間を延長してしっかり確認作業を行うことの方が、会社にとっても本人にとってもリスクが低い場合があります。

最終的な判断は法的な観点(契約論・安全配慮義務)と医学的な観点(産業医・主治医の意見)を組み合わせて行います。弁護士・産業医・主治医と連携しながら判断してください。

6. まとめ

① 主治医の「復職可」診断書が最低条件——なければ原則復職不可・満了退職

診断書がない段階での復職要求は認める必要はなし。例外的な事情がある場合は弁護士に相談。

② 「復職可」診断書があっても直ちに復職させない——就労制限の内容・産業医意見を確認する

就労制限が相当な範囲なら復職を検討、過大なら復職不可の判断も可能。産業医面談・試し出社・始業時刻への出勤確認を行う。

③ 確認時間が足りない場合は休職期間の延長を検討——弁護士・産業医と連携して判断

焦って復職させると安全配慮義務違反のリスクが生じる。時間的に余裕がなければ期間延長を視野に入れる。

よくある質問(FAQ)

Q
主治医の診断書には「復職可」と書いてありますが、本当に働けるか疑問です。復職させなければなりませんか?
A

主治医の診断書だけで直ちに復職させる義務はありません。産業医面談・試し出社・始業時刻への出勤確認などの確認作業を経た上で判断することが適切です。産業医が「復職不可」と判断した場合や、就労制限が過大で実質的に労務提供ができないと評価できる場合は復職を認めないことも可能です。弁護士に個別の状況を相談してください。

Q
休職期間満了ギリギリで復職を求めてきましたが、確認する時間がありません。どうすればよいですか?
A

確認作業に時間が足りない場合は休職期間の延長を検討してください。焦って復職させると体調が悪化し安全配慮義務違反になるリスクがあります。休職期間の延長の可否・延長期間の決め方については就業規則の規定と個別の事情を踏まえて弁護士に相談してください。

休職期間満了ギリギリの復職対応でお困りの方はご相談ください

就労制限の判断・産業医との連携・休職期間延長の可否まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/16