問題社員220 勤務態度が悪い社員への懲戒処分

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この記事の要点

「懲戒処分をすると雰囲気が悪くなる」は誤解——懲戒処分が必要なほどの社員はすでに職場の雰囲気を悪くしている

懲戒処分が職場の雰囲気を悪くするのではなく、懲戒処分をしないことで周りの社員が守られないことが雰囲気を悪化させている

「勤務態度が悪い」は評価であり事実ではない。懲戒処分は「何月何日・どこで・誰が・何をしたか」という事実に対して行う

5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を使って具体的な事実を確定することが懲戒処分の核心

処分の重さは「職場の秩序の厳格さ」「これまでの経緯」「行為の重大さ」等を考慮して決める。マニュアル的判断は禁物

ルールに厳格な職場は重い処分がしやすく、結果重視の自由な職場では同じ行為でも重い処分はしにくい

「なぜ(動機)」の確定は難しいので無理に追わない。「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」で十分に事実認定できる

動機は内心の問題であり確定が難しい。確定できた場合は入れればよいが、なくても事実認定は成立する

1. 「懲戒処分すると雰囲気が悪くなる」という誤解を解く

勤務態度が悪い社員への懲戒処分を躊躇する経営者の多くが「懲戒処分をすると職場の雰囲気が悪くなる」と言います。しかしこれは誤解です。

懲戒処分が必要なほど問題行動がある社員は、すでに職場の雰囲気を悪化させています。懲戒処分をしないから雰囲気が悪くなるのではなく、その社員が問題行動を続けることで雰囲気が悪くなっているのです。

むしろ適切な懲戒処分を行うことで、周りの社員に「会社はちゃんと対応してくれた」という安心感が生まれ、職場の雰囲気が改善することがあります。

⚠ 懲戒処分をスキップしていきなり退職勧奨・解雇をしても失敗する

懲戒処分の実績がないまま突然解雇や退職勧奨をしようとしても、余程ひどい行為でない限り解雇は無効になりやすく、退職勧奨も断られます。その上断られた問題社員はますます態度を悪化させます。懲戒処分を積み重ねることが解雇・退職勧奨の法的根拠になります。

2. 「勤務態度が悪い」は評価——事実に対して懲戒処分をする

懲戒処分で最も重要なのは「事実に対して処分をする」ことです。

「勤務態度が悪い」「協調性がない」——これらは「評価」であり「事実」ではありません。懲戒処分の根拠にするためには、その評価を導く具体的な事実が必要です。

▶ 事実と評価の違い(例)

❌ 評価(NGな表現) 「勤務態度が悪い」「協調性がない」「いつも問題ばかり起こしている」
✓ 事実(正しい表現) 「〇月〇日の午前10時頃、第1会議室において、〇〇部長に対し大声で〇〇〇〇と怒鳴りつけた」

評価的な言葉だけを繰り返しても「嫌いだから言っているだけだろう」と受け取られ、本人も何が問題なのか分からないまま何も改善されません。具体的な事実を突きつけることで、初めて本人への説明が可能になり、懲戒処分の根拠も明確になります。

3. 5W1H——動機(なぜ)は確定できなくても処分できる

懲戒処分の事実確定に「5W1H」を使うことがよく言われますが、実務上注意すべき点があります。それは「なぜ(動機)」の確定は難しいので、無理に追わないでもよいという点です。

動機は本人の内心の問題であり、本人が正直に認めるか、状況証拠から推認するかしかありません。いずれも確定が困難なことが多いです。

▶ 事実認定で必ず確定すべき要素

✓ いつ(When):何月何日・何時頃
✓ どこで(Where):場所
✓ 誰が(Who):本人が
✓ 何を(What):誰に対して・何を言ったか・やったか
✓ どのように(How):具体的なセリフ・行動の態様
△ なぜ(Why):確定できれば入れる。できなくても他の5つで事実認定は成立する

4. 処分の重さの決め方——職場の秩序の厳格さが重要な判断要素

事実が確定した後は、どの程度の重さの懲戒処分にするかを判断します。この際「行為の重大さ」だけでなく、「職場の秩序の厳格さ」も重要な判断要素です。

▶ 職場の秩序と処分の重さの関係

ルールに厳格な職場(服装・時間・行動規範が厳しく定められている)
→ 守るべき秩序が明確なため、同じ行為でも重い懲戒処分がしやすい

結果重視の自由な職場(服装・出退勤自由、成果さえ出せばよい)
→ 秩序が緩いため、多少の問題行動に対して重い処分はしにくい

その他の判断要素として、これまでの注意指導・懲戒処分の経緯、行為の重大さ・悪質性、繰り返しかどうかなどを総合的に考慮します。さじ加減の判断が難しい場合は弁護士に相談してください。

5. 参考:国家公務員指針による暴行・暴言の処分水準

参考として、国家公務員の懲戒処分指針による水準をご紹介します。ただしこれはあくまで参考であり、民間企業にそのまま適用されるものではありません。

▶ 国家公務員の懲戒処分指針(参考)

暴行 戒告〜停職が原則。上場が悪い場合・繰り返しの場合はより重く、上場が軽い場合はより軽い処分になる
暴言 減給〜停職が原則。上場に応じて重くなる・軽くなる

民間企業では職場の秩序の厳格さや個別の事情によって判断が大きく変わります。「上司への暴行があれば停職」というような一律の当てはめではなく、複数の事情を考慮した上で個別に判断することが重要です。

6. まとめ

① 懲戒処分は周りの社員を守るために行う

「雰囲気が悪くなる」は誤解です。問題社員への適切な懲戒処分は、他の真面目な社員への安心感につながります。

② 評価ではなく事実に対して懲戒処分をする

「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」という事実を確定し、懲戒処分通知書に具体的に記載してください。

③ 処分の重さは複数の事情を考慮して個別に決める

行為の重大さ・職場の秩序の厳格さ・これまでの経緯・繰り返しかどうか等を総合して判断します。マニュアル的な当てはめは禁物。弁護士に相談しながら進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q 勤務態度が悪い社員に懲戒処分をしたら「パワハラだ」と言われました。どうすればいいですか?
A

「具体的な事実に基づいた懲戒処分」がパワハラと認定されることは基本的にありません。むしろ評価的な言葉(「態度が悪い」「仕事ができない」)を一方的に繰り返すことがパワハラになりやすいです。懲戒処分通知書に具体的な事実をしっかり記載し、弁解の機会も与えた上で行った懲戒処分であれば、パワハラ主張への反論は可能です。弁護士に相談してください。

Q 問題行動の証拠がありません。証拠がないと懲戒処分はできませんか?
A

証拠の前に「具体的な事実が何かを確定すること」が先決です。「いつ・どこで・誰が・何を・どのようにしたか」が説明できない状態では証拠を集めても使いこなせません。まず事実を確定してから、それを立証する証拠を集める順序が正しいです。弁護士に相談して、現在持っている情報から何が言えるかを整理することをお勧めします。

勤務態度が悪い社員の懲戒処分でお困りの方はご相談ください

事実の確定・処分の重さの判断・懲戒処分通知書の作成まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/15