問題社員218 私生活で飲酒運転や痴漢、暴行などの刑事事件を起こした社員を懲戒処分する際の注意点
動画解説
目次
1. プライベートでの刑事事件——懲戒処分はできるのか
社員がプライベートな時間に飲酒運転・痴漢・暴行などの刑事事件を起こした場合、会社として懲戒処分はできるのでしょうか。
結論から言えば、懲戒処分はできる場合があります。ただし勤務時間中の不祥事と比べて、判断は「抑制的・限定的」になります。
プライベートな時間は本来自由であり、会社の指揮命令下にはありません。しかし、雇用している社員が起こした刑事事件によって会社の名誉・信用が毀損されることがあります。そのため、プライベートの時間であっても、会社の名誉・信用を守るために懲戒処分が認められる場合があるのです。
▶ 勤務時間中 vs プライベートでの不祥事の違い
【勤務時間中】会社の指揮命令下にある時間帯の行為なので、会社への影響が直接的。重い懲戒処分を行いやすい。
【プライベートの時間】本来自由な時間帯の行為なので、会社への影響が直接的でない場合も多い。懲戒処分は「抑制的に」判断する必要があり、同じ行為でも勤務時間中より軽い処分になることが多い。
2. 懲戒処分の重さを決める要素——職種・地位・前歴
プライベートでの刑事事件への懲戒処分の重さを決める際には、最高裁判例(昭和49年・日本鋼管事件)が示す「当該行為の性質・態様、会社の事業の種類・規模、会社の社会的地位・経営方針、従業員の地位・職種・前歴の事情」などを考慮します。これらの事情を踏まえた具体的なイメージをご紹介します。
▶ 重い懲戒処分が認められやすいケース
職種・業種との関連性が高い場合
運送会社のドライバーが飲酒運転をした→業務内容と刑事事件の性質が直結しており、会社の信用への影響が大きい
鉄道会社・交通機関の社員が痴漢をした→痴漢防止を担う立場であるにもかかわらず行為をしており、重い処分が認められやすい
地位・立場が上の場合
部長・課長などの管理職が起こした不祥事→会社の経営に近い立場であり、一般社員が同じことをした場合より重い処分が認められやすい
繰り返し・前歴がある場合
過去に同様の懲戒処分を受けているのに再度同じ行為をした→反省・更生の可能性が低いと判断され、重い処分が認められやすい
⚠ 軽めの処分にとどめるべきケース
パートアルバイトや勤続年数の短い一般社員が起こした、会社の業種・職種と関係性の薄い刑事事件については、管理職の場合と比べて軽めの処分にとどめるのが相当なケースが多いです。
3. 前提として確認すべきこと——就業規則と懲戒事由の確認
プライベートでの刑事事件に対して懲戒処分を行う前提として、通常の懲戒処分と同様に就業規則に懲戒の種類と懲戒事由が定められ周知されていることが必要です。
特に注意すべき点があります。それは、就業規則の懲戒事由の規定が「勤務時間中の行為を前提とした定め」になっていないかを確認することです。もし「業務に関連して」「職務上」などの限定がある場合、プライベートの刑事事件には適用できません。
▶ 就業規則確認のチェックポイント
・懲戒の種類(戒告・減給・出勤停止・降格・懲戒解雇等)が定められているか
・懲戒事由が定められているか
・就業規則が社員から見ようと思えば見られる状態(周知)になっているか
・適用しようとする懲戒事由が「私生活上の行為」にも該当する内容か(勤務時間中限定になっていないか)
懲戒事由が私生活上の行為をカバーしているかどうかは、文言の解釈が必要な場合があります。適用可能かどうかを弁護士に確認してから懲戒処分を行うことをお勧めします。
4. 何もしないことのリスク——職場の秩序と他の社員への影響
「プライベートのことだから会社として何もしない」という対応は、一見寛大に見えますが、実は他の社員への不公平であり職場秩序を乱す結果になる場合があります。
社内でその情報が広まったり、ニュースで報道されたりした場合、「会社は何もしなかった」という事実は他の社員に強い不満と不安を与えます。真面目に働いている社員が「あの人はああいうことをしても何も処分されない会社なのか」と感じるのは当然のことです。
▶ 対応の選択肢
・重大な事案(職種・地位との関連性が高い・繰り返し等)→ 懲戒処分を行う
・比較的軽微な事案 → 厳重注意や訓告など軽い対応をとる
・いずれの場合も「何もしない」は避ける(会社として何らかの対応をとることを他の社員に示す)
「問題を起こした方に対して厳しくすることが社員に優しい会社だ」という発想は誤りです。不祥事を起こした人を守ることが、その他の真面目に働く社員全員を不安にさせることがあります。公正な懲戒処分を行うことが、健全な職場環境を維持するための経営者の責任です。
5. まとめ
① プライベートの刑事事件でも懲戒処分は可能——ただし抑制的に
勤務時間中と同等の処分ではなく、様々な事情(職種・業種との関連性・地位・初犯か等)を考慮して判断します。
② 就業規則の懲戒事由が私生活上の行為をカバーしているか確認する
勤務時間中の行為を前提とした定めでは適用できません。弁護士に確認してから懲戒処分を実施してください。
③ 何もしないことは職場秩序を乱す——事案に応じた対応をとる
重大な事案は懲戒処分、軽微な事案も少なくとも厳重注意などの対応をとることが、他の社員の安心感につながります。
よくある質問(FAQ)
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/15
