問題社員201 極端に能力が不足している社員の配置転換

動画解説

この記事の要点

「能力が高い・低い」という絶対的な評価は大雑把すぎる。人には向き不向きがあり、今の仕事が合わないだけで別の仕事では活躍できる場合がある

ある仕事で20点でも、別の仕事なら80点が出る人がいる。「この人は能力が低い」という判断はその人全体の評価ではなく、その仕事との相性の問題

自社に適した仕事があるなら、配置転換を試みることで問題が解決することがある

タレントマネジメント・適材適所の発想で、本人の適性に合った仕事に配置できれば会社にとっても本人にとっても良い結果につながる

合わない仕事を無理に作り出す配置転換は、本人のためにも会社のためにもならない

雇用の維持のためだけに意味のない仕事を作ることは、本人の才能発揮を阻害し、会社の発展も妨げる。適性があると推測できる仕事に限り意味がある

自社に向いた仕事がないなら、退職を勧め他社で活躍してもらうことが本人のためになる

向いていない仕事で「飼い殺し」状態が続くことは本人を不幸にする。才能を発揮できる場所を探してもらうことが経営者の責任でもある

1. 「能力が低い」は絶対的な評価ではない——向き不向きの問題

極端に能力が低いと思われる社員への対応を考える際、まず前提として理解してほしいことがあります。それは、「能力が高い・低い」という絶対的な評価は大雑把すぎるという点です。

人には向き不向きがあります。ある仕事では全く能力を発揮できなくても、別の仕事では生き生きと活躍できる——これは珍しいことではありません。学校のテストで数学が得意でも国語が苦手な人がいるように、仕事でも同じことが言えます。

▶ 「能力の高低」は仕事との相性で決まる

ある仕事での評価スコアが20点でも、別の仕事なら80点が出る人がいます。「この人は能力が低い」という判断は、あくまで「今やらせているこの仕事との相性が悪い」という意味に過ぎないことが多いのです。その人の全体的なスコアを決めているわけではありません。

向いていない仕事を続けることは本人にとってもストレスです。「早く時間が過ぎないか」と時計を見ながら働き、ひどい場合は体調を崩してしまいます。一方、向いている仕事では時間を忘れて集中できます。この違いは非常に大きいものです。

2. 配置転換で問題が解決する可能性——適材適所の発想

能力不足の社員への対応として、やめてもらう以外に配置転換(担当業務を変えること)という選択肢があります。今の仕事では全く能力が発揮できていない人が、別の仕事に配置したとたんに普通に活躍する——こうしたケースは実際に存在します。

タレントマネジメントや適材適所という言葉が示す通り、個人の適性に合った仕事に配置することは、経営の重要なテーマです。

▶ 適性のある仕事を探るヒント

・過去の経験・職歴で何がうまくいったか
・適性テストなどを参考にする
・本人が「得意」「楽しい」と感じている作業はどこか
・今の仕事のどの部分が苦手で、どの部分は比較的できているか

もちろん、本人の適性が何なのかを正確に把握するのは容易ではありません。ただ、「もしかしたら別の仕事なら活躍できるかもしれない」という発想を持つことが、まず重要です。配置転換を試してみる価値がある場合は、積極的に検討してください。

3. 「仕事を作り出す」配置転換はすべきではない

ここで一つ重要な注意点があります。それは、「雇用を維持するためだけに、合わない仕事を無理に作り出すことはすべきではない」ということです。

「配置転換しなきゃいけないが、他にやらせる仕事がない。でも仕事を作ってでもいさせるべきか?」という相談を受けることがあります。しかし藤田弁護士の考え方は明確です。

⚠ 雇用維持のための「仕事作り」が招く問題

本人の才能・適性に関係なく、ただ雇用を維持するためだけに意味のない仕事を作り出すことは、本人の才能発揮を阻害します。また会社の事業としても意味のないことに人件費を使うことになり、他の社員への不公平感にもつながります。何より、本人が「自分がここにいる意味は何か」と感じる状況を作ることになります。

例外として許容できるのは、本人の適性があると推測できる仕事を作る場合、あるいは暫定的な措置としての場合に限ります。目的が「この人の才能を活かすため」でなく「とりあえず雇い続けるため」である場合は、むしろ本人と会社の両方にとって不幸な状況を長引かせることになります。

4. 自社に向いた仕事がないなら、他社での活躍を支援する

配置転換を試みたが自社に適した仕事がない、あるいは会社規模が小さく他の業務を用意できないという場合は、やめていただいて他社で活躍してもらうことが、本人にとっても最善の選択です。

「飼い殺し」状態——向いていない仕事を続けさせられ、周囲からもお荷物扱いされ、体調まで崩してしまう状態——は本人を不幸にします。急にやめさせることは確かに乱暴ですが、長期的な視点では本人の才能を発揮できる場所に移っていただくことが、誠実な対応です。

▶ 退職を勧める場合の考え方

・向いていない仕事を続けさせることは本人の健康・キャリアを傷つける可能性がある
・別の会社・別の仕事で才能を発揮できる可能性がある
・急な解雇ではなく、退職勧奨(話し合いによる合意退職)で進める
・退職後の就職活動を配慮した条件設定(会社都合退職など)も検討する

「やめさせるなんて悪いことだ」という固定観念を持つ必要はありません。本人が才能を発揮して生き生きと働ける場所を見つけることの方が、向いていない仕事に縛り付けておくことよりずっと誠実な対応です。

5. まとめ

極端に能力が不足している社員の配置転換について、判断のポイントを整理します。

① 「能力が低い」は仕事との相性の問題と捉える

絶対的な能力の低さではなく、今の仕事との相性が悪いと考えてください。別の仕事なら活躍できる可能性があります。まずその視点を持つことが第一歩です。

② 自社に適した仕事があれば配置転換を試みる

本人の適性に合った仕事が自社にあるなら、積極的に試してください。思いがけず問題が解決することがあります。ただし雇用維持のためだけに意味のない仕事を作ることは避けてください。

③ 自社に向いた仕事がないなら退職勧奨を検討する

他社で才能を発揮してもらうことが本人のためになります。急ではなく話し合いによる合意退職を目指し、退職条件も丁寧に交渉してください。弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q 就業規則に配置転換の権限を定めていますが、必ず配置転換を試みなければなりませんか?
A

解雇を検討する場合は、配置転換を試みることが「解雇回避努力」として重要な意味を持ちます。配置転換を全く試みずに解雇した場合、解雇無効と判断されるリスクが高まります。ただし現実的に可能な範囲での努力で足り、無理に仕事を作り出す必要はありません。どの範囲まで試みるべきかは個別事情によりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

Q 配置転換を試みましたが、新しい業務でも全くダメでした。次のステップは?
A

配置転換を試みても改善が見られない事実は、退職勧奨・解雇の際の重要な根拠になります。「教育指導と配置転換を試みたが、どの業務においても能力が著しく不足していた」という事実の積み上げが対応の基盤となります。退職勧奨を優先的に進め、難しい場合は弁護士に相談してください。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/14