問題社員173 上司や同僚の考えや仕事の仕方が自分と異なると激しい言葉・態度で相手を責める。

動画解説

 

1. 上司や同僚の考えを激しく否定する社員の問題とは

 会社を経営していると、上司や同僚と意見や仕事の進め方が異なると、激しい言葉や態度で相手を責める社員に悩まされることがあります。本人としては「自分の考えが正しい」という思いから強い言い方になっている場合もありますが、職場に与える影響は決して小さくありません。

 仕事をしていれば、考え方や進め方が異なる場面は必ずあります。むしろ、さまざまな意見が出ること自体は決して悪いことではなく、議論を通じてより良い方法を見つけることにつながることもあります。しかし問題となるのは、意見の違いを理由に相手を攻撃するような言葉や態度を取ることです。

 例えば、大きな声で相手を責め立てたり、威圧的な言葉で相手を追い込んだりするような行為が続くと、周囲の社員は安心して発言することができなくなります。結果として、職場の雰囲気は悪化し、建設的な議論ができない環境になってしまいます。

 さらに問題なのは、こうした社員が強い口調で主張することで、本来は適切ではない意見や方法が職場で通ってしまう可能性があることです。声の大きさや威圧的な態度によって議論が支配されるようになると、組織として正しい判断ができなくなるおそれもあります。

 会社経営者としては、「意見が違うこと」そのものではなく、意見の違いを理由に職場の秩序を乱す言動をしていることが問題であるという点を正しく理解する必要があります。

 次の項目では、このような社員が職場にいる場合、組織全体にどのような悪影響が生じるのかについて詳しく解説します。

2. 強い言葉や態度で相手を責める行為が職場に与える影響

 意見の違いを理由に激しい言葉や態度で相手を責める社員がいる場合、その影響は当事者同士の問題にとどまりません。むしろ、職場全体の雰囲気や働きやすさに大きな悪影響を与える可能性があります。

 まず大きな問題となるのは、周囲の社員が強いストレスを感じるようになることです。職場で日常的に怒鳴り声や威圧的な言葉が飛び交うような状況になれば、多くの社員は安心して働くことができなくなります。場合によっては、「この職場には出勤したくない」と感じる社員が出てきても不思議ではありません。

 特に精神的な負担に弱い社員の場合、こうした状況が続くことでメンタル不調に陥ったり、体調を崩してしまう可能性もあります。さらに状況が悪化すれば、退職を考える社員が出てくることもあります。会社経営者としては、一人の問題社員を放置した結果として、複数の社員を失うという事態も起こり得ることを理解しておく必要があります。

 また、強い言葉で相手を押さえ込むような社員がいると、職場では次第に**「反論しない方が安全だ」という空気**が生まれます。本来であれば意見を出し合って検討すべき場面でも、誰も意見を言わなくなってしまうのです。その結果、誤った判断や非効率な仕事の進め方が修正されないまま続くこともあります。

 さらに、声の大きさや威圧的な態度によって議論が支配されるようになると、組織として正しい意思決定ができなくなるリスクも生じます。本来は改善すべき問題があっても、誰も指摘できなくなるからです。

 このように、強い言葉や態度で相手を責める社員の存在は、職場環境、社員の健康、組織の意思決定といった複数の面に悪影響を及ぼします。次の項目では、会社経営者が陥りがちな**「仕事ができる社員だから仕方ない」という考え方の危険性**について解説します。

3. 会社経営者がまず確認すべき事実関係

 強い言葉で相手を責める社員について、会社経営者の中には「仕事ができる社員だから多少は仕方ない」と考えてしまう方もいます。確かに、業務能力が高く、専門的な仕事を任せている社員である場合には、会社としても扱いに悩むことがあるでしょう。

 特に人手不足の状況では、「この社員が辞めてしまったら業務が回らなくなる」「今は強く言えない」という判断をしてしまうこともあります。しかし、このような考え方には大きなリスクがあります。

 まず、強い言葉や威圧的な態度を放置してしまうと、職場の人間関係が徐々に悪化していきます。その結果、周囲の社員が強いストレスを感じ、退職を検討するようになる可能性があります。会社として一人の社員を守ろうとした結果、複数の社員を失ってしまうという事態も起こり得ます。

 さらに問題なのは、強い言葉で周囲を押さえ込む社員がいると、誤った判断や非効率な仕事の進め方が修正されにくくなることです。周囲の社員が反論できなくなるため、結果として組織としての判断力が低下してしまいます。

 また、そもそも「業務ができる」ということは、単に与えられた仕事をこなすだけではありません。会社で働く以上、職場の秩序を乱さず、周囲の社員と協力して業務を進めることも重要な職務の一部です。周囲に強いストレスを与えるような言動が続いているのであれば、それは「仕事ができている」とは言えない可能性もあります。

 会社経営者としては、個人の業務能力だけを見るのではなく、職場全体への影響という観点から判断することが重要になります。

 次の項目では、このような問題社員への対応を先送りしてしまうことの危険性について解説します。

4. 本当に業務上の意見の対立なのかを見極める

 意見が違うと激しい言葉で相手を責める社員への対応は、精神的な負担が大きいため、つい後回しにしてしまいがちです。特に管理職から「対応しても改善しない」「関わると自分も嫌な思いをする」といった声が出てくることも少なくありません。しかし、問題を先送りすることは状況をさらに悪化させる可能性があります

 強い言葉や威圧的な態度を取る社員は、周囲が何も言わない状態が続くと、「この程度の言動は許されている」と認識してしまうことがあります。その結果、言動が次第にエスカレートし、職場の雰囲気はさらに悪化していく可能性があります。

 また、会社が何も対応しない状況を見ている周囲の社員は、会社が職場環境を守ろうとしていないと感じてしまうことがあります。そうした不信感が広がると、職場全体のモチベーションや組織への信頼が低下するおそれもあります。

 さらに、管理職が問題社員への対応を避けるようになると、「厄介な相手には関わらない方がよい」という空気が職場に広がります。その結果、本来必要な指導や注意が行われなくなり、組織としての規律が弱まってしまう可能性もあります。

 会社経営者としては、問題社員への対応が大変であることを理解しつつも、問題を放置することのリスクの方がはるかに大きいという点を認識する必要があります。

 次の項目では、こうした状況の中で、会社経営者自身が関与して対応すべきケースについて解説します。

5. 職場で許されない言動を明確にする必要性

 問題社員への対応は、通常であれば直属の上司や管理職が行うことになります。しかし実務では、管理職だけでは対応が難しいケースも少なくありません。そのような場合には、会社経営者が主体的に関与することを検討する必要があります。

 特に、問題社員が強い言葉や態度で周囲を威圧するタイプである場合、管理職の側が精神的に疲弊してしまうことがあります。何度注意しても改善が見られず、逆に激しい言葉で言い返されるような状況が続けば、管理職が対応を避けるようになってしまうこともあります。

 また、会社経営者から「管理職なのだから対応するのは当然だ」とだけ言われ、対応の努力が評価されない状況が続くと、管理職のモチベーションも低下してしまいます。その結果、問題社員への対応そのものが職場の中で放置されてしまうこともあります。

 このような状況が続いている場合には、会社経営者として「管理職に任せているから大丈夫」と考えるのではなく、実際にどのような対応が行われているのかを確認することが重要です。もし対応が十分に行われていないのであれば、会社経営者自身が関与して状況を改善していく必要があります。

 特に中小企業では、最終的に会社の問題を引き受けるのは会社経営者です。難しい問題を人任せにするのではなく、必要に応じて会社経営者自身が中心となって対応する姿勢が求められる場面もあります。

 次の項目では、こうした問題社員への対応を行う際に重要となる、チームで対応するという考え方について解説します。

6. 面談による注意指導の進め方

 意見が違うと激しい言葉で相手を責める社員への対応は、特定の一人に任せてしまうと大きな負担になることがあります。そのため、実務ではできる限り複数の関係者でチームを作り対応することが重要になります。

 強い言葉や威圧的な態度を取る社員は、対応する側にも強いストレスを与えます。直属の上司が一人で対応を続けていると、精神的な負担が蓄積し、場合によってはその上司自身が疲弊してしまうこともあります。実際には、問題社員ではなく対応している管理職の方が体調を崩してしまうケースも見られます。

 また、こうした社員は議論の際に勢いで相手を押し切ろうとすることがあります。対応する側が一人だけだと、その場の雰囲気や言葉の勢いに押されてしまい、十分な対応ができなくなることもあります。その点、複数人で対応していれば、状況を冷静に確認しながら対応することが可能になります。

 さらに、複数の関係者で対応することによって、事実関係を客観的に把握しやすくなるという利点もあります。問題となっている言動について複数の視点から確認できるため、注意指導の内容も具体的で説得力のあるものになります。

 会社経営者としては、問題社員への対応を特定の管理職に押し付けるのではなく、組織として対応する体制を整えることが重要です。社内にこうした対応に比較的強い社員がいるのであれば、その社員を含めたチームを作り対応することも有効な方法です。

 もし社内に適任者がいない場合には、会社経営者自身が中心となって対応体制を整える必要が出てくることもあります。

 次の項目では、実際に注意指導を行う際に重要となる、メールではなく面談で対応するべき理由について解説します。

7. 改善が見られない場合の厳重注意と懲戒対応

 意見の違いを理由に激しい言葉で相手を責める社員に対して注意指導を行う場合、メールだけで済ませてしまう対応は適切とは言えません。実務では「記録が残るから」という理由でメールによる注意を選ぶケースもありますが、問題社員への対応としては効果が低いことが多いのが実情です。

 確かに、メールは証拠として残るという点では一定の意味があります。しかし、強い言葉や威圧的な態度を取る社員に対しては、直接向き合って話すこと自体が重要な意味を持つことがあります。メールでの注意だけでは、会社が本気で問題視しているという姿勢が十分に伝わらないこともあります。

 また、メールの場合、相手が内容を十分に読まない可能性もあります。読んだとしても、文章の一部だけを取り上げて反論してくるなど、議論が本質からずれてしまうこともあります。結果として、注意指導の効果がほとんど得られないまま終わってしまうケースも少なくありません。

 一方、面談であれば、相手の反応を見ながら説明することができます。相手がどのように受け止めているのかを確認しながら話を進めることができるため、説得力のある指導を行いやすくなります。人を説得する場面では、対面でのコミュニケーションが最も効果的であることが多いのです。

 もちろん、状況によってはオンライン面談を利用することも可能ですが、いずれにしても重要なのは、会社として問題行為について正面から向き合って話す姿勢を示すことです。

 次の項目では、面談で注意指導を行う際に特に重要となる、「事実」をベースに話すというポイントについて解説します。

8. 管理職の対応だけに任せない会社経営者の役割

 問題社員に対して注意指導を行う際には、抽象的な評価ではなく、具体的な事実をベースに話すことが重要です。これができていないと、注意指導が相手に伝わらず、議論がかみ合わなくなることが多くなります。

 例えば、「あなたはいつも強い言葉で相手を責めている」「言い方がきついので直してください」といった抽象的な指摘だけでは、相手は「何のことを言っているのか分からない」と反論してくる可能性があります。実際、本人は自分の言い方が激しいとは認識していないケースも少なくありません。

 そのため、注意指導では、具体的な出来事を示しながら話すことが必要になります。例えば、「〇月〇日の会議で、〇〇さんに対してこのような言い方をしましたよね」「そのとき声を荒げていましたよね」といった形で、いつ、どこで、誰に対して、どのような言動があったのかを具体的に示すことが重要です。

 このように事実を示したうえで、「その言い方は職場の秩序を乱す言動であり、会社として認めることはできない」という評価を伝えることで、注意指導の内容が明確になります。最初から評価だけを伝えてしまうと、相手は防御的になり、話し合いが進まなくなることがあります。

 また、事実をベースに話すことは、会社側にとっても重要な意味があります。問題となる言動を正確に把握しておかなければ、適切な指導を行うことができないからです。対応が遅れたり曖昧になったりすると、後から説明ができなくなることもあります。

 そのため、会社経営者としては、問題となる言動についてできる限り具体的に把握し、事実関係を整理したうえで注意指導を行う体制を整えておくことが重要になります。

 次の項目では、会社経営者が気にすることの多いテーマである、注意指導とパワハラの関係について解説します。

9. 問題行動を放置することで生じるリスク

 問題社員への注意指導を行う際、多くの会社経営者が気にするのが**「パワーハラスメントにならないか」**という点です。確かに、不適切な指導は労務トラブルの原因になる可能性があります。しかし、この点については考え方を誤ってしまう会社経営者も少なくありません。

 実務では、「問題にならない言い方かどうか」ばかりを気にしてしまい、結果として十分な注意指導ができなくなってしまうケースがあります。問題社員に対して必要な指導を避けてしまえば、職場の秩序は回復せず、状況は改善しません。

 本来の考え方として重要なのは、まず効果的な注意指導を行うことです。つまり、問題となっている言動を具体的に示し、なぜそれが問題なのかを説明し、どのように改善すべきかを伝えるという指導です。そのうえで、指導の方法が客観的に見て過度なものにならないよう注意するという順序になります。

 実際には、効果的で合理的な注意指導であればあるほど、客観的に見てパワハラと評価される可能性は低くなる傾向があります。逆に、感情的に叱責したり人格を否定したりするような指導は、教育的な効果も低く、パワハラと評価されるリスクも高くなります。

 そのため会社経営者としては、「問題にならない言い方かどうか」だけを気にするのではなく、教育的な効果がある注意指導になっているかどうかという視点で対応を考えることが重要です。

 もっとも、相手が非常に強硬な態度を取る場合や、議論の中で揚げ足を取ってくるようなケースでは、対応が難しくなることもあります。次の項目では、会社だけでの対応が難しい場合に取るべき選択肢について解説します。

10. 問題社員対応で会社経営者が意識すべきポイント

 意見が違うと激しい言葉や態度で相手を責める社員の対応は、会社だけで対応できることが理想です。しかし実際には、会社内だけでは対応が難しいケースもあります。特に、議論の中で言葉尻をとらえて反論してきたり、指導に対して「パワハラだ」と強く主張したりする社員の場合、対応する側が大きな負担を感じることがあります。

 このような社員は、議論の勢いで相手を押し切ろうとすることもあり、対応する管理職が精神的に疲弊してしまうケースもあります。言葉の使い方を少し誤っただけで揚げ足を取られるような状況では、会社側も慎重な対応が必要になります。

 そのため、対応が難しいと感じた場合には、早い段階で専門家の助言を受けながら対応することも重要な選択肢になります。特に、どのような言い方で注意指導を行うべきか、どのような事実を整理しておくべきかといった点については、専門的な視点から整理しておくことで対応が進めやすくなることがあります。

 また、問題社員への対応は一度の面談で終わるものではなく、複数回の指導を重ねながら改善を促していくことが多いものです。そのため、状況に応じて対応方針を確認しながら進めていくことも有効です。

 会社経営者としては、職場の秩序を守り、周囲で働く社員を守る責任があります。意見の違いを理由に激しい言葉で相手を責める行為を放置してしまえば、職場環境の悪化や社員の離職といった問題につながる可能性もあります。

 当事務所では、会社経営者からの相談を受け、問題社員への注意指導の進め方や面談の方法、対応方針の整理などについて実務的なアドバイスを行っています。職場での問題社員対応に悩まれている会社経営者の方は、弁護士への相談も検討してみてください。

弁護士 藤田 進太郎
監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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最終更新日 2026/03/11


よくある質問(FAQ)

Q1. 本人が「会社を良くするために正論を言っている」と主張する場合、指導は難しいでしょうか?

A1. いいえ、指導は可能です。意見の内容に合理性があることと、それを伝える態度は別問題です。職場秩序を乱す激しい言葉や威圧的な態度は、業務上の正当な範囲を超えた「不適切な言動」として指導の対象となります。

Q2. 周囲が萎縮してしまい、具体的な証言が得られない場合はどうすればよいですか?

A2. まずは会議録やメール、チャットの履歴など、客観的な記録を確認してください。また、匿名性を確保したアンケート調査の実施や、個別のヒアリングを丁寧に行うことで、事実関係を積み上げることが重要です。

Q3. 激しい態度を理由に、即座に出勤停止などの懲戒処分を下せますか?

A3. まずは口頭での注意、次に書面での警告といった段階的な指導が必要です。いきなり重い処分を下すと「処分の相当性」を欠くと判断されるリスクがあるため、改善の機会を与えたという事実を記録に残しながら対応を進めてください。


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