問題社員165 なぜ問題社員に対処しなければならないのか。
目次
動画解説
1. 問題社員・モンスター社員とは何か
企業経営の現場では、問題社員やモンスター社員と呼ばれる存在に悩む会社経営者は少なくありません。これらの言葉は法律用語ではありませんが、実務上は一定の意味を持って使われています。
一般的に問題社員とは、職場の秩序や業務運営に支障を生じさせる言動を繰り返す社員を指します。例えば次のような行動が典型です
- 上司や同僚への攻撃的な言動
- 業務命令に従わない
- 職場の雰囲気を悪化させる言動
- 責任転嫁や過度な自己主張
そして、これらの問題行動がさらにエスカレートし、会社に対して過度な要求を繰り返したり、注意をするとすぐに「ハラスメントだ」「訴える」などと主張する社員は、実務上モンスター社員と呼ばれることがあります。
もっとも重要なのは、最初からモンスター社員になるケースは多くないという点です。多くの場合、最初は小さな問題行動から始まり、それを会社が十分に対応しないまま放置した結果、徐々にエスカレートしていきます。
つまり、問題社員・モンスター社員の問題は、単なる個人の性格の問題ではなく、会社の対応の遅れによって深刻化するケースが非常に多いのです。
実際、私が弁護士として会社経営者から相談を受ける場面でも、「もっと早く対応していればここまで深刻化しなかった」というケースは珍しくありません。問題社員への対応は、会社経営のリスク管理の一つとして捉える必要があります。
そして、問題社員への対応を考える際に重要なのは、その社員本人だけを見るのではなく、職場全体への影響を考えることです。問題社員の存在は、周囲で働く社員のモチベーションや職場環境に大きな影響を与えるからです。
では、なぜ多くの会社経営者は、問題社員への対応をためらってしまうのでしょうか。次の項目では、その理由について整理していきます。
2. なぜ会社経営者は問題社員への対応をためらってしまうのか
問題社員やモンスター社員の存在に気づいていても、すぐに対応できない会社経営者は少なくありません。実際、弁護士として相談を受ける場面でも、「もっと早く対応すればよかった」とおっしゃる会社経営者は非常に多いのが実情です。
では、なぜこのような状況が起きてしまうのでしょうか。多くの場合、その背景には「社員を大切にしたい」という会社経営者の思いがあります。
会社経営者としては、働いてくれている社員をできるだけ尊重したい、強く注意することで社員が嫌な思いをするのではないか、過度に指導するとハラスメントと言われるのではないか、といった不安を抱くことがあります。その結果、問題行動が見られても「もう少し様子を見よう」「そのうち改善するかもしれない」と考え、対応を先送りにしてしまうのです。
しかし、このような心理は決して珍しいものではありません。むしろ、社員を大切にしようと考える会社経営者ほど、このような迷いを持ちやすい傾向があります。
問題は、その迷いによって問題社員への対応が遅れてしまうことです。問題行動は多くの場合、時間が経つにつれて徐々にエスカレートしていきます。最初は小さなトラブルだったものが、やがて職場全体に悪影響を及ぼす深刻な問題へと発展してしまうことも珍しくありません。
そして、状況がかなり悪化してから初めて弁護士に相談されるケースも多く見られます。その頃には、職場の人間関係がすでに崩れていたり、周囲の社員が退職を検討していたりするなど、会社として大きな損失が発生していることもあります。
このような事態を防ぐためには、まず会社経営者自身が問題社員への対応をためらってしまう心理の構造を理解することが重要です。そのうえで、適切なタイミングで対応する意識を持つことが、企業経営において非常に重要になります。
では、問題社員を放置してしまった場合、実際にどのような経営リスクが生じるのでしょうか。次の項目では、その具体的なリスクについて解説します。
3. 問題社員を放置すると起きる深刻な経営リスク
問題社員やモンスター社員への対応を先送りにしてしまうと、会社経営にとって無視できないリスクが生じます。最も大きな問題は、職場環境の悪化です。
問題社員の言動は、周囲で働く社員に大きなストレスを与えます。毎日同じ職場で、攻撃的な態度や協調性のない行動を目にしながら働くことになれば、精神的な負担が大きくなるのは当然です。会社経営者からすると一人の社員の問題に見えるかもしれませんが、実際には職場全体に影響が広がっていく問題なのです。
その結果として起きやすいのが、優秀な社員の離職です。問題社員がいる職場では、「この会社にいても安心して働けない」「職場の雰囲気が悪い」と感じる社員が増えてしまいます。真面目に働いている社員ほど職場環境に敏感であるため、結果として会社にとって重要な人材が退職してしまうケースも少なくありません。
また、問題社員の存在は社員のモチベーションにも大きな影響を与えます。問題行動を起こしている社員が放置されている状況を見ると、「真面目に働いても意味がないのではないか」と感じる社員が出てきます。このような状況が続くと、職場全体のパフォーマンスが低下し、結果として会社の業績にも悪影響が及ぶ可能性があります。
さらに深刻なケースでは、問題社員の言動によって精神的な負担が蓄積し、体調を崩してしまう社員が出ることもあります。職場の人間関係が原因でメンタル不調に陥るケースは実務上決して珍しいものではありません。
このように、問題社員やモンスター社員の問題は、単なる人間関係のトラブルではなく、会社経営そのものに影響する重大な問題です。
そして重要なのは、これらの被害を受けるのは会社だけではないという点です。実際には、もっと直接的な被害を受ける存在がいます。次の項目では、その点について整理していきます。
4. モンスター社員によって最も被害を受けるのは誰か
問題社員やモンスター社員の問題を考えるとき、会社経営者は「会社にとっての損害」に目が向きがちです。もちろん、業績への影響や人材流出は経営上の重大な問題です。しかし実際には、もっと直接的な被害を受けている存在があります。
それは、その問題社員の近くで働いている社員たちです。
例えば、毎日のように攻撃的な言動をする社員が職場にいたとします。普通に業務上の会話をしただけで強い口調で言い返されたり、協力を求めても非協力的な態度を取られたりする状況が続けば、周囲の社員は大きな精神的ストレスを抱えることになります。会社経営者よりも、日々同じ職場で働く社員の方が、その影響を強く受けるのは当然です。
このような状況が続くと、職場の雰囲気は確実に悪化します。本来であれば協力しながら進めるべき業務も円滑に進まなくなり、社員同士のコミュニケーションもぎくしゃくしていきます。その結果、「こんな職場では働き続けられない」と感じてしまう社員が出てきても不思議ではありません。
実際の相談事例でも、問題社員の存在によって職場の人間関係が悪化し、「この人を何とかしてくれないのであれば退職します」と周囲の社員から会社経営者に訴えが出るケースは少なくありません。場合によっては、精神的な負担が大きくなり、体調を崩してしまう社員が出ることもあります。
ここで会社経営者が理解しておくべき重要なポイントがあります。それは、問題社員への対応をためらうことが、結果として他の社員を守らないことにつながる可能性があるという点です。
会社経営者には、会社で働く社員が安心して働ける環境を整える責任があります。問題社員への対応は、その社員一人の問題ではなく、職場全体を守るための重要な経営判断なのです。
5. 「社員を大切にする」という考え方の落とし穴
多くの会社経営者は、「社員を大切にしたい」という強い思いを持っています。これは会社経営において非常に重要な姿勢です。しかし、その考え方を誤って解釈してしまうと、問題社員やモンスター社員への対応をためらう原因になってしまうことがあります。
例えば、問題行動を起こしている社員に対して強く注意すると、「社員を大切にしていないのではないか」と感じてしまう会社経営者もいます。また、厳しく指導することで社員との関係が悪化するのではないかと心配することもあるでしょう。
しかし、ここで一度冷静に考えていただきたいことがあります。それは、社員とはその問題社員だけではないということです。会社には、毎日真面目に働き、職場のために努力している社員が数多くいます。
もし問題社員の言動によって職場の雰囲気が悪化し、周囲の社員が強いストレスを感じながら働いているとしたらどうでしょうか。その状況を放置することは、果たして「社員を大切にしている」と言えるのでしょうか。むしろ、問題行動を放置することで、真面目に働いている社員の方が不利益を受けてしまう可能性があります。
会社経営者が本当に社員を大切にするということは、職場で働く社員全体を守ることを意味します。つまり、問題社員一人の感情だけを考えるのではなく、職場全体の環境を守る視点が必要になります。
そのため、問題行動が見られる場合には、適切な注意や指導を行うことがむしろ重要になります。問題が小さい段階でしっかり対応することができれば、行動が改善される可能性もありますし、職場環境の悪化を防ぐことにもつながります。
6. 問題社員はなぜエスカレートしていくのか
問題社員やモンスター社員の多くは、最初から大きな問題を起こしているわけではありません。実務上よく見られるのは、最初は小さな問題行動だったものが、会社の対応が不十分なまま時間が経つことで徐々にエスカレートしていくケースです。
例えば、最初は少し態度が悪い、上司の指示に対して反発的な言動がある、といった程度の問題から始まることがあります。この段階で適切な指導や注意が行われれば、本人が自分の行動を見直し、改善につながる可能性も十分にあります。
しかし、問題があるにもかかわらず会社が十分に対応しないまま時間が過ぎると、本人は「この程度の行動は許される」と認識してしまうことがあります。その結果、言動は徐々に強くなり、職場内でのトラブルが増えていくことになります。
さらに状況が進むと、会社や上司からの指導に対して強く反発するようになったり、自分の立場を過度に主張したりするようになります。この段階になると、職場内の人間関係は大きく悪化し、問題の解決が難しくなることも少なくありません。
会社経営者が理解しておくべき重要なポイントは、問題が大きくなってから対応するほど解決が難しくなるという点です。問題が深刻化すると、職場の人間関係がすでに悪化している場合も多く、対応にはより多くの時間と労力が必要になります。
逆に言えば、問題が小さい段階で適切な対応を行うことができれば、状況の悪化を防ぐことができる可能性は高くなります。問題社員対応においては、早い段階での対応が非常に重要なのです。
7. 会社経営者が取るべき初期対応の基本
問題社員やモンスター社員の問題に対処するうえで最も重要なのは、問題が小さい段階で適切な対応を行うことです。多くのケースでは、初期対応が遅れたことによって問題が大きくなり、職場全体に深刻な影響が広がっています。
まず会社経営者が行うべきことは、事実関係を正確に把握することです。職場でトラブルが起きているという報告を受けた場合、「本人にも事情があるのだろう」と安易に判断してしまうのではなく、具体的にどのようなやり取りがあったのかを確認する必要があります。誰がどのような場面で困っているのかを把握することで、問題の本質が見えてきます。
そのうえで、問題行動が確認できる場合には、会社としての考えを明確に伝えることが重要です。問題があるにもかかわらず曖昧な対応を続けてしまうと、本人は「会社はこの行動を問題視していない」と受け取ってしまう可能性があります。その結果、行動が改善されるどころか、さらにエスカレートしてしまうこともあります。
また、問題社員への対応は感情的に行うべきものではありません。会社としてのルールや業務上の必要性に基づき、冷静かつ客観的に対応することが重要です。問題となっている行動が何であり、それがなぜ職場にとって問題なのかを整理したうえで、適切な指導を行う必要があります。
会社経営者の中には、社員との関係を悪化させることを恐れて注意を控えてしまう方もいます。しかし、問題を放置した結果、職場環境が悪化してしまえば、より多くの社員に負担をかけることになります。初期段階での適切な対応は、結果として職場全体を守ることにつながる重要な行動なのです。
8. モンスター社員問題を放置した場合の法的リスク
問題社員やモンスター社員への対応を先送りにした場合、職場環境の悪化だけでなく、会社としての法的リスクが生じる可能性があります。会社経営者は、この点を十分に理解しておく必要があります。
会社には、社員が安全かつ安心して働ける職場環境を整える義務があります。これは一般に安全配慮義務と呼ばれるものであり、職場で働く社員の心身の安全に配慮することが会社に求められています。
もし問題社員の言動によって、周囲の社員が強い精神的ストレスを受けているにもかかわらず、会社が適切な対応を取らずに放置していた場合、この安全配慮義務を十分に果たしていないと評価される可能性があります。特に、問題社員の言動によって職場環境が著しく悪化している状況を会社が認識していたにもかかわらず、対応を取らなかった場合には注意が必要です。
実際の相談事例でも、問題社員の言動によって職場の人間関係が深刻に悪化し、精神的な不調を訴える社員が出てしまうケースがあります。このような場合、会社の対応状況によっては、会社側の責任が問われる可能性も否定できません。
また、問題社員が職場内でトラブルを繰り返しているにもかかわらず、会社が何も対応していない状況が続けば、社員から会社に対する信頼も失われていきます。その結果、優秀な社員の退職につながったり、職場全体の士気が低下したりするなど、経営にとって大きな損失が生じることもあります。
このように、問題社員やモンスター社員の問題は、単なる人間関係の問題ではなく、会社の法的責任にも関わる重要な経営課題です。会社経営者としては、問題を放置するのではなく、適切なタイミングで対応を行うことが必要になります。
9. 問題社員対応は会社経営者の重要な責任
問題社員やモンスター社員への対応は、単なる労務管理の問題ではありません。これは会社経営者として果たすべき重要な責任の一つです。
会社は多くの社員が協力して成り立つ組織です。そのため、一部の社員の問題行動が放置されると、職場全体の秩序や信頼関係が崩れてしまう可能性があります。会社経営者には、職場で働くすべての社員が安心して働ける環境を整える責任があります。
もし問題社員の言動によって職場環境が悪化しているにもかかわらず、会社が対応を取らないままであれば、周囲の社員は「会社は自分たちを守ってくれない」と感じてしまいます。その結果、職場への信頼が失われ、社員のモチベーション低下や離職につながる可能性もあります。
一方で、会社経営者が問題に正面から向き合い、適切に対応する姿勢を示すことができれば、社員は安心して働くことができるようになります。職場のルールが守られる環境が整えば、社員同士の信頼関係も強まり、結果として組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
つまり、問題社員への対応は、特定の社員を排除するためのものではありません。会社全体の健全な職場環境を守るための経営判断なのです。
会社経営者がこの視点を持つことで、問題社員への対応に対する心理的な迷いは小さくなります。むしろ、問題に適切に向き合うことこそが、社員を大切にする会社経営につながると言えるでしょう。
10. 問題社員・モンスター社員対応で弁護士に相談すべきタイミング
問題社員やモンスター社員への対応は、会社経営者が主体的に進めるべきものです。しかし、対応の方法を誤ると、会社側が不利な状況に立たされてしまう可能性もあるため、慎重に進める必要があります。
例えば、問題行動に対して感情的に対応してしまったり、十分な事実確認をしないまま強い措置を取ってしまった場合、後になって社員とのトラブルがさらに大きくなることもあります。場合によっては、「不当な扱いを受けた」などと主張され、紛議に発展する可能性も否定できません。
また、モンスター社員と呼ばれるようなケースでは、会社からの注意や指導に対して強く反発することも少なくありません。このような場合、会社としてどのような手順で対応を進めていくべきかを慎重に検討する必要があります。
そのため、問題社員の言動が職場に大きな影響を与えている場合や、対応方法に迷いがある場合には、早い段階で弁護士に相談することが重要です。適切な手順を踏みながら対応を進めることで、不要なトラブルを避けることができ、会社としてのリスクを抑えることにもつながります。
問題社員対応は、多くの会社経営者にとって悩ましい問題ですが、決して放置してよい問題ではありません。職場で働く社員が安心して力を発揮できる環境を守ることは、会社経営において非常に重要な要素です。
もし、問題社員やモンスター社員への対応についてお悩みの会社経営者の方は、状況が深刻化する前に、問題社員対応に詳しい弁護士へ相談することを検討してみてください。適切な対応方針を整理することで、職場環境を守り、企業として健全な経営を続けていくことにつながります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
最終更新日 2026/03/24

