問題社員130 部下の業務内容を理解しておらず、成果につながらない指導や指示を繰り返す。

動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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部下の成果が上がらない場合、部下個人の努力不足だけでなく、業務内容を十分に理解しないまま配置された管理職のマネジメントの問題である可能性がある

実績を理由に畑違いの部署へ配置するケースでは、専門性のミスマッチが重大なリスクになります。

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教育で改善が見込めない場合には、配置転換や退職勧奨も含めた現実的な対応が求められる

精神論に偏った指導はパワハラに発展するリスクがあるため、注意深い観察が必要です。

 部下の業務内容を十分に理解せず、的外れな指示や評価を繰り返す管理職がいる場合、「本人の努力不足」や「管理能力の欠如」に目を向けがちです。しかし、問題の本質は個人の資質だけにあるとは限りません。

 本記事では、部下の業務を理解できない管理職への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。

01問題の本質は「適性を無視した配置」にある|管理職の役割の誤解

 実務上よく見られるのは、営業部門で高い成果を上げていた社員を、専門性の高い技術部門の管理職に抜擢するなど、実績を理由に畑違いの部署へ配置するケースです。過去の成功体験があるため期待値は高まりますが、業務内容の理解が不十分なままでは適切な指示や評価ができず、部下の成果が上がらないと「努力が足りない」と責任を転嫁しがちになります。「なぜその配置を行ったのか」「その人は本当にその部署のマネジメントに適していたのか」を冷静に振り返り、「実績があるから大丈夫」という発想ではなく、「そのポジションに必要な能力は何か」という観点から人事を設計する姿勢が求められます。

 管理職は、必ずしも自らがプレイヤーとして優秀であることだけが求められる立場ではありません。本来の役割は、部下の業務内容を把握し、適切な目標を設定し、成果につながる環境を整えることにあります。プレイヤーとしての成功体験が強い管理職ほど「自分のやり方」を基準に部下を評価しがちで、業務の内容が変わっているにもかかわらず過去の成功パターンを押し付けることで現場との乖離が生じます。管理職の役割は指示を出すことではなく成果が出る仕組みを作ることであり、「何を期待しているのか」を明確に伝える責任が会社経営者にはあります。

02部下の不振は管理職の責任という原則と、畑違い配置が招く組織リスク

 部下の成果が上がらない場合、原則として管理職のマネジメント責任の問題でもあるという視点が重要です。管理職の役割は部下の能力を見極め、適切な業務配分を行い、必要な指導や支援を通じて成果を引き出すことにあります。業務内容を十分に理解していない管理職は具体的な改善指導ができず、抽象的な精神論に終始しがちであり、その結果、部下は何をどう改善すべきか分からず状況が固定化します。管理職とは成果を「自分で出す人」ではなく「部下に出させる人」であり、部下のパフォーマンスが一様に低下しているのであれば、個人の問題というよりマネジメントの問題である可能性が高いといえます。

 畑違いの部署への配置は、組織全体に負の影響を及ぼします。部下は適切な指導を受けられず成果が上がらない状況が続くことで士気が低下し、離職や不満の原因となります。管理職自身も成果が出ないことにフラストレーションを感じ、プレッシャーを部下に押し付けるリスクもあります。配置の決定時に「その人の適性や専門性が部署の要求と合致しているか」を慎重に見極め、単に過去の実績や人手不足だけで配置を決めることのないよう、短期的な便宜よりも長期的な組織の健全性を優先した判断が求められます。

03教育で解決できるケースと、パワハラ化する場合の注意

 業務理解が不足している場合、研修やOJTを通じて必要な知識やスキルを補完し、管理職としての能力を向上させることが可能です。部署特有の業務フローや成果指標の理解、部下への指示の出し方、評価方法の教育を行うことで、管理職自身が業務を理解し部下を適切に導くことができれば、問題は改善されます。もっとも、専門知識や経験が全く異なる部署に無理に配置されている場合、学習だけでは追いつかず成果が出るまでに時間がかかりすぎることがあり、本人の意欲やコミュニケーション能力が低い場合も教育の効果は限定的です。教育による改善が見込めるか、短期的・中長期的に見て合理的かを見極め、効果が期待できない場合は配置転換や役割の再設計を視野に入れることが現実的です。

 部下の成果が上がらない状況で管理職が精神論や威圧的な指示に頼ると、パワハラに発展するリスクがあります。長時間にわたる執拗な叱責、人格を否定するような発言、必要以上の圧力をかける行為は部下に心理的負担を与えるため、法的な問題に発展する可能性があります。懲戒判断を行う際には事実関係を正確に把握することが重要であり、部下の評価や指摘内容を記録し、必要であれば本人からの弁明機会を設けることで判断の客観性を確保します。単に部下の不振を叱責するだけでなく、管理職自身が適切なマネジメントを行っているかを確認し、必要に応じて指導・懲戒を行うことが会社経営者に求められます。

04配置転換の可否と、配置先がない場合の現実的対応

 配置転換を検討する際には、単に「やらせてみる」という感覚では不十分であり、現状のまま配置を続けることで組織にどの程度のリスクや損失が生じるのか、候補となる他の配置先で業務が適切に回せるか、転換に伴う教育や引継ぎのコストを整理する必要があります。配置転換は個人の不適性を理由に行うのではなく、組織全体の生産性向上とリスク管理の一環として位置付け、転換後に期待される成果や役割を事前に明確に示すことで、不適応や再度のパフォーマンス低下のリスクを軽減できます。

 適性や能力に見合った部署が社内に存在しない場合、単に「今の部署で我慢してやれ」と指示するだけでは、部下も管理職も疲弊し組織全体の生産性低下を招きます。現職のまま教育やサポートを強化して業務を遂行させる選択肢もありますが、極端に適性が不足している場合には成果が期待できず、長期的には会社に損失をもたらす可能性があります。別の選択肢として退職勧奨や合意退職も検討対象になりますが、無理に押し付ける形ではなく、十分な説明と選択の余地を与えることが重要です。法的リスク、組織全体の健全性、本人のキャリアの三つの視点から現実的対応策を判断してください。

05会社経営者が持つべき最終的視点「適材適所」

 適性や能力に合わない管理職をそのまま配置し続けることは、本人だけでなく、部下や周囲の社員にも大きな負担を強います。部下は指示が曖昧で成果が評価されない状況に直面してモチベーションが低下し、管理職自身も業務を理解できないまま責任を負わされることでストレスが蓄積します。上司や経営層がサポートに時間を割かなければならず、組織全体の効率も低下するため、影響を受けるすべての関係者を俯瞰的に捉え、適性なき配置を放置することのリスクを評価する必要があります。

 各社員の適性・能力を正確に把握し、現状の配置がその能力を最大限に活かせているか、組織全体の成果に貢献しているかを検証したうえで、不適切であれば教育・指導、配置転換、退職勧奨など合理的で公正な手段を講じてください。配置判断は個別判断にとどまらず、組織文化や長期的な経営戦略と連動させることが求められます。管理職や部下の不適性は個人の問題ではなく会社全体のマネジメント課題であり、法令遵守、組織効率、社員の適性を総合的に考慮しながら、適材適所の原則に基づいた戦略的判断を行うことが不可欠です。判断に迷う場合は、会社側専門の弁護士にご相談ください。

06よくある質問(FAQ)

Q. 実績のある社員を畑違いの部署の管理職に抜擢したのですが、問題はありますか。

過去の実績だけで配置を決めると、専門性のミスマッチにより適切な指導ができず、部下の成果が上がらないリスクがあります。配置の適性を慎重に見極めることが重要です。

Q. 部下の成果が上がらない場合、まず何を確認すべきですか。

部下個人の能力だけでなく、管理職が業務内容を理解し適切な指導を行っているかを確認する必要があります。部下の不振は管理職のマネジメント責任の問題でもあります。

Q. 教育で改善しない管理職には、どう対応すべきですか。

専門知識の理解に時間がかかりすぎる場合や意欲が低い場合、教育の効果は限定的です。配置転換や役割の再設計を現実的な選択肢として検討してください。それでも配置先がない場合は、退職勧奨も選択肢の一つです。

経営上のポイント 部下の成果が上がらない場合、部下個人の努力不足だけでなく、業務内容を十分に理解しないまま配置された管理職のマネジメントの問題である可能性があります。まずは教育での改善を試み、精神論に偏った指導によるパワハラリスクにも注意してください。教育で改善が見込めない場合には、配置転換や退職勧奨も含めた現実的な対応をご検討ください。具体的な事情に応じて、実務で活用いただける方針をご案内します。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の配置・マネジメントに関するお悩みがございましたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月9日


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