問題社員127 自分は平気だからセクハラではないと言って譲らない。
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本人が「平気です」と述べているという一点だけで、セクハラではないと断定することはできない 優越的関係や同調圧力の影響により、本音とは異なる発言をしている可能性を検証する必要があります。 |
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当事者間の問題ではなく、職場全体の就業環境の問題として捉えることが対応の出発点となる やり取りを見聞きしている周囲の社員が不快感を抱いているリスクも見逃せません。 |
目次
特定の女性社員に対して男性社員が繰り返し性的な発言をしているものの、当の女性本人は「私は平気です」「気にしていません」と述べている。このような状況では、「本人が否定している以上、問題はないのではないか」という判断に傾きやすくなります。
本記事では、本人が「平気です」と述べている場合のセクハラ対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。
01「本人が平気」と言えばセクハラではないのか|自由意思と優越的関係の検証
「本人が平気と言っている」という一点だけで、直ちにセクハラではないと断定することはできません。セクシュアルハラスメントは、単なる当事者間の合意の有無だけで決まる問題ではなく、職場という組織の中で性的な言動がなされること自体が就業環境に影響を与える可能性があるためです。また、本人の「平気」という発言が真に自由な意思に基づくものかどうかも慎重に検討する必要があり、人間関係や立場関係、周囲の目などが影響し、本音とは異なる発言をしている可能性も否定できません。
発言者が上司である場合はもちろん、役職が同じであっても業務経験の差や社内での影響力によって、実質的な力関係が生じていることがあります。このような優越的関係の中では、相手が本音を言えない状況が容易に生まれます。さらに、職場全体が「冗談だから問題ない」という空気になっている場合、被害を受けている側は孤立を恐れて声を上げにくくなるという同調圧力の問題もあります。「本人が否定している」という一点で判断を終えるのではなく、発言者と対象者との関係性、職場の雰囲気、過去のやり取りの経緯を総合的に検討し、できる限り落ち着いた環境で第三者を交えたヒアリングを行うことが望ましい場合もあります。
02周囲社員への影響と、就業環境が害されるという状態
セクハラの問題を「当事者間の問題」としてのみ捉えることは危険です。たとえ当該女性が「平気です」と述べていたとしても、そのやり取りを見聞きしている周囲の社員が不快に感じている可能性があります。会議中に容姿や身体的特徴に言及する発言がなされれば、他の女性社員も「自分も対象になるのではないか」と感じるかもしれません。法的にも、セクハラは必ずしも特定の個人だけが被害者であるとは限らず、職場の就業環境が害されているかどうかが重要な判断要素となります。
「就業環境が害される」とは、単に不快な発言があったというだけでは足りず、その言動によって労働者が安心して働ける環境が損なわれ、業務遂行に支障が生じる程度に至っているかどうかが問題になります。性的な冗談が頻繁に飛び交う職場では、特定の社員が発言を控えるようになったり、会議への参加をためらうようになったりする萎縮効果が生じることがあり、こうした状況があれば就業環境は実質的に害されていると評価され得ます。言動の内容、頻度、公開性、関係性、職場の反応などを踏まえ、職場全体として安心して働ける状態が維持されているかを検討する必要があります。
03セクハラかどうか以前に止めさせるべき理由と、注意指導の方法
「最終的にセクハラと法的に断定できるかどうか」とは別に、職場における性的言動は原則として止めさせるべきです。たとえ当該女性が「平気」と述べていても、その状況が今後も継続すれば、別の社員が不快感を抱く可能性がありますし、関係性が変化した場合や後日トラブルが発生した場合に「過去の言動」が一気に問題化することもあります。セクハラ該当性を厳密に争う前に、「性的言動を職場で繰り返すこと自体が不適切である」というメッセージを明確にすることが、結果としてリスクを最小化します。
性的言動を確認した場合、いきなり懲戒処分を検討するのではなく、まずは明確な注意指導を行うことが原則です。「セクハラになるぞ」と抽象的に警告するのではなく、「〇月〇日の会議で、〇〇さんの容姿について発言したことは、職場における不適切な言動である」と事実を特定して指摘し、「本人が平気と言っていても、職場における性的言動は許容しない」という会社の方針を明確に示します。「冗談のつもりだった」という弁明が出ることは少なくありませんが、意図の有無ではなく結果として職場環境に影響を与える可能性があるという観点から説明する必要があります。注意指導の際には面談記録を作成しておくことが、後に再発した場合の重要な資料になります。
04改善しない場合の懲戒処分の判断基準と、法的リスク管理
明確な注意指導を行ったにもかかわらず改善しない場合、再発が確認された段階で厳重注意書の交付を検討します。そこでは①いつ、②どのような言動があり、③過去にどのような注意を行っていたか、④それにもかかわらず再発したことを明確に記載します。内容が軽微であれば段階的対応が原則ですが、内容が悪質であったり執拗に繰り返されている場合には、より重い懲戒処分が検討対象となります。処分の重さと行為の程度との均衡、そして弁明の機会の付与が、後に紛争となった場合の重要な判断要素になります。
出勤停止や降格、懲戒解雇といった重い処分を検討する局面では、①事実関係の確定、②就業規則との整合性、③処分の相当性、④手続の適正という四点を徹底的に確認する必要があります。発言内容、日時、場所、回数、被害の申告内容を具体的に整理し、就業規則上の懲戒事由への該当性を明確にし、過去の社内事例とのバランスや行為の悪質性、再発性、反省の有無を総合的に考慮します。いきなり最も重い処分に進めば懲戒権濫用と評価される可能性があるため、「裁判になっても耐えられるか」という視点で最終判断を行うことが不可欠です。
05会社経営者としての基本スタンスと再発防止策
セクハラ問題への対応は、個別事案の処理にとどまらず、会社経営者の統治姿勢そのものが問われます。「被害者が否定しているから問題ない」という消極的姿勢ではなく、「職場環境を守るのは会社の責任である」という基本スタンスを明確にすることが重要です。性的言動を容認する空気が生まれれば、それはやがて組織文化として定着し、是正が容易ではなくなります。
①ハラスメントに対する明確な方針の表明、②相談窓口の整備、③管理職への教育、④問題発生時の迅速な初動対応を体系的に整備し、「本人が平気と言っている」というような曖昧な状態を放置しないことが、最も合理的なリスク管理です。目指すべきは「問題が起きたら対処する会社」ではなく「問題が起きにくい環境を作る会社」であり、感情ではなく方針と構造で対応することが持続的な企業統治につながります。判断に迷う場合は、会社側専門の弁護士にご相談ください。
06よくある質問(FAQ)
Q. 女性社員が「私は平気です」と言っている場合でも、会社が介入すべきですか。
はい、介入すべきです。本人の発言が周囲の目や立場を考慮した「表面上の言葉」である可能性があるほか、そのやり取りを見聞きしている周囲の社員が不快感(環境型セクハラ)を抱いているリスクがあるためです。
Q. 性的冗談を言う社員に対し、どのような注意指導が適切ですか。
「セクハラになる」と抽象的に警告するのではなく、いつ・どのような発言が不適切であったかを事実に基づき特定してください。そのうえで、当事者の納得の有無にかかわらず「職場環境を害する性的言動は会社として許容しない」という方針を明確に伝えることが重要です。
Q. 「平気だ」と言われていた言動を理由に懲戒処分を行うことは可能ですか。
可能です。ただし、いきなり重い処分を行うのではなく、まずは口頭注意や厳重注意書による改善機会の付与が必要です。処分の際は、本人の弁明を聴取したうえで、行為の悪質性や再発性、職場秩序への影響を総合的に判断し、相当性を確保しなければなりません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。ハラスメント対応・懲戒処分に関するお悩みがございましたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月9日
