問題社員349 建設的でない発言を繰り返す。
動画解説
この記事の要点
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まず「発言が担当業務なのか」を確認する。ここで対応が大きく分かれる 業務としての意見なら、通常の能力不足対応と同じ発想でよい |
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業務外の発言なら、まず仕事時間中は業務に専念させる 要望は書面やメールで、労働時間外に聞く形に切り分ける |
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発言の中身次第で、対応すべき立場が変わる 単なる愚痴か、会社の制度・やり方に関わる大きな話かで、必要な視座が異なる |
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同じ要求には同じ回答でよい。ただし本当に同じかは確認する 無視するより、コピペで淡々と回答するほうが無難 |
目次
1. 建設的でない発言を繰り返す社員という悩み
文句ばかり言って、では職場をどうすればよくなるのかという具体案は持っていない。そういった非生産的な、建設的でない発言をする方が、皆さんの会社にもいらっしゃるかもしれません。こうした発言をきっかけに職場改善につなげられることもありますが、相手が嫌な思いをすることも多く、うまくプラスに持っていけるケースは比較的少なく、難易度がとても高いといえます。単に不満を言っているだけのことも多く、その結果、周りの社員や担当の人事がひどく疲弊してしまい、「どうにかなりませんか」というご相談をいただくことが本当に多くあります。本記事では、建設的でない発言を繰り返し、職場を疲弊させる社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. まず「担当業務との関係」を確認する
最初に確認すべきは、この建設的でない発言と、その方の担当業務との関係です。少し理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、仕事としてそういった意見を述べているのか、仕事とは関係なく単なる要望を述べているのか、クレームをつけているだけなのかは、労働契約・雇用契約の本質から考えて、とても重要です。
3. 意見を述べるのが業務である場合
通常の能力不足対応と同じ発想でよい
もし、本人の意見を述べることが担当業務なのであれば、建設的でない意見しか言えないのは、単に能力が足りない、その仕事の適性がないというだけの話です。あるいは何らかの理由で能力を発揮できていないのかもしれませんが、少なくとも仕事としていい結果を出しているとは言えません。ですから、通常の能力不足の社員への対応方法と同じように対応すればよいでしょう。仕事として意見を述べてもらっているわけですから、役に立たないと判断すれば「それはもういいからやめなさい」と言って構いません。本当に本人に適性がないと思うのであれば、配置転換をして向いている仕事、活躍できる場を与えることを考えます。自社にそういったポジションがなければ、他社での活躍を考えていただくこともあるでしょう。
4. 業務ではない場合(まず仕事に専念させる)
ただ、こちらのケースは比較的分かりやすく、難しいのはこちらではありません。ご相談いただくときの多くは、担当業務として意見を述べているわけではないのに、勝手に色々言ってくる、しかも言っている中身に生産性がなく、単に周りが嫌な思いをしたり振り回されたりするだけ、というケースです。「なぜ会社のためにも働く人の幸せにもならないことに対応しなければならないのでしょうか」というご相談が多いのです。
仕事時間中は業務に専念させる
意見を述べるのが仕事の中身ではないのであれば、まず仕事時間中は仕事に専念させましょう。労働契約・雇用契約においては、担当している仕事に仕事時間中は専念する義務があります。ですから、目の前の仕事をやらずに、クレームのようなことを仕事時間中に話すのは、社長や上司が認めたなら別ですが、そうでなければ、そうした仕事と関係のない話をさせる義務は会社にはありませんし、やらせるべきでもありません。もちろん、今やっている仕事が危険なことをやらせている、違法なことをやらせているといった特別な事情があれば別です。そうでなく、問題のない仕事をやらせているときに、それとは関係のないクレームを色々言ってきた場合には、「仕事時間中はそれに時間を使うことはできないので、仕事に専念してください」と指導すべきです。
5. 要望の聞き方(労働時間外への切り分け)
では、本人のクレームや要望をどのように聞くべきかというと、仕事とは関係のないところで、書面を出してもらう、メールを書いてもらうなどして、まず概要を聞くのがよいと思います。
労働時間ではないことを、あらかじめ明確にしておく
これは仕事ではなく、労働時間ではありません。メールを書いている時間について、「これをやれと言われたのでやった、労働時間だ、残業代を払え」と言われることもありますので、あらかじめ「これは仕事ではないからね」としっかり伝えたうえで、「要望があれば聞くので、こういったものを出してね」とお願いするとよいでしょう。あわせて、出てきたものを踏まえて面談を行ってもよいと思います。今やらせている仕事と本当に関係がないという前提であれば、面談で事情を聞く場合も、労働時間として扱う必要はないと考えられます。始業時刻まではしっかり仕事をしていただき、それとは別の時間で本人の要望などを聞いていく、という運用になります。もっとも、今やっている仕事と本当に関連がある場合には、労働時間だと認められる事例が出てくることもあるかもしれません。どこまで業務との関わり合いがあるといえるかは、雇用契約・労働契約の内容や、立場・担当業務によって違ってきますので、微妙なところは個別判断になります。
6. 内容の重大性に応じたエスカレーション
そういった話を聞いていく中で、その発言の内容をしっかり個別に検討していく必要があります。会社が非常にまともに行動・対応しているのに、どうにもならないことを言っているだけなのか、それとも会社の制度ややり方に問題があるから、そういったことを発言しているのか。これによって、問題の性質が大きく違ってきます。
大きな話は、直属の上司や同僚レベルでは対処が難しい
妥当性を判断するには、会社経営全体のあり方などを俯瞰的に見なければ判断できないケースもあります。単なる愚痴で聞くまでもないこともあれば、ケースによっては大きな話につながることもあります。そこまで大きな話になった場合、直属の上司レベル、あるいは同僚レベルでは対処困難で、少なくとも人事担当者や役員クラスの方が対応しなければならないかもしれませんし、社長が対応しなければならないケースもあります。どこまで広がりを持つ意見・クレーム・要求なのかを、確かめる必要があります。
「そこまでやらなければいけないものなのか」「そんな判断をしろと言われても困る」という方も多いと思います。もっともな話です。そういったものについては、差し当たり弁護士に相談してください。オンラインで構いませんので、客観的な状況をできるだけ事実で伝えていただき(何月何日の何時ごろ、誰からこんな要望が来たなど、書面やメールがあれば見せていただく形で)、どれくらいのレベルの誰が対応しなければならない案件なのかをアドバイスできます。そうすれば、まず大枠が決まり、誰が担当すべきレベル感なのかが分かります。そのうえで、社内でコミュニケーションを取りながら、会社全体として対応していくのがよいと思います。難易度が高いので、弁護士に相談していただくのが最も無難です。
7. 同じ要求を繰り返された場合
こうしたご相談でよくあるのが、同じ要求を繰り返しているケースへの対応です。しっかり調べて回答したはずなのに、また同じことを言ってくる。これもまた対応しなければならないのか、というご相談です。
同じ要求には、同じ回答でよい
同じ要求だったとしても、いきなり無視するのはあまりおすすめしません。「前と同じ要求なので回答しません」というのも一つの手法ではありますが、同じ質問が来たら同じ回答を、特に話を変えなくてもしっかり返してあげたほうがよいのではないでしょうか。文書やメールもコピー&ペーストでできますから、それほど負担にはならないはずです。
もっとも、本当に同じ要求と言えるのかは、しっかり確認する必要があります。似ているようで、実は違うものかもしれません。よく読み、違いを確認せずに同じ回答をしてしまうと、まともに対応していないように見えてしまいます。また、当初の要求があったときと比べて、状況が変化していることもあります。事情が変化しているのであれば、前と同じ環境ではありませんから、同じ回答ではまずいかもしれません。状況の変化についても、あわせて確認していきましょう。こうした個別の事情の判断が面倒に感じられるときこそ、弁護士の出番です。状況を伝えていただければ、オンラインで30分もかからずに相談を終えられることが多いので、ぜひご利用ください。
8. まとめ
- まず「発言が担当業務なのか」を確認する。業務としての意見なら、通常の能力不足対応と同じ発想でよい
- 業務外の発言なら、仕事時間中は業務に専念させる。専念する義務は労働契約の本質である
- 要望は、書面・メールで受け付け、面談も含めて労働時間外に切り分けて聞く
- 発言の中身次第で、対応すべき立場が変わる。単なる愚痴か、会社の制度に関わる大きな話かを見極める
- 判断に迷う場合は弁護士に相談し、誰が対応すべきレベルかの大枠を決める
- 同じ要求には同じ回答でよい。ただし本当に同じか、状況が変わっていないかは確認する
社員の意見を聞く、風通しのよい会社にしたいと考える経営者は多いものです。しかし、それを無条件に自由に任せていると、それほど重要でないものに振り回されたり、逆に本当に重要な問題が見過ごされたり、対処に困る立場の人の案件として潰されてしまったりすることがあります。だからこそ、これは難しく、大事な問題です。会社全体のあり方や経営の仕方を俯瞰的に見て、少なくとも最初の振り分けについては、基本方針を誤らないようにする必要があります。大枠を間違えると、その後いくら努力しても報われないことが多くなります。まずは大枠だけでも間違えないようにし、重要な案件や判断の難しい案件については、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。建設的でない発言を繰り返す社員への対応にお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 仕事時間中に業務と関係のないクレームを話し続ける社員には、どう対応すればよいですか。
A. まず、その発言が担当業務なのかどうかを確認してください。担当業務でないなら、労働契約上、仕事時間中は担当業務に専念する義務がありますので、「仕事に専念してください」と指導して差し支えありません。要望や意見があるなら、書面やメールで出してもらい、労働時間外の時間で聞く、という形に切り分けるとよいでしょう。あらかじめ「これは仕事ではない」と明確に伝えておくことで、後から労働時間だと主張されるリスクも下げられます。
意見を述べるのが担当業務の社員から、建設的でない意見しか出てきません。
A. この場合は、通常の能力不足の社員への対応と同じ発想でよいと考えられます。仕事として意見を求めているのに役に立たない意見しか出ないのであれば、それは能力不足や適性の問題です。本人に適性がないと判断できるのであれば、配置転換で向いている仕事を探すことを検討し、自社に適したポジションがなければ、他社での活躍を考えていただくことも選択肢になります。
同じ要求を何度も繰り返してきます。もう対応しなくてよいですか。
A. 完全に無視するより、同じ要求には同じ回答を返すほうが無難です。文書はコピー&ペーストで対応できますので、大きな負担にはなりません。ただし、本当に同じ要求と言えるか、当初の状況から変化がないかは、しっかり確認する必要があります。似ているようで内容が異なる場合や、事情が変化している場合は、同じ回答ではまずいことがあります。判断に迷う場合は、弁護士に相談すると短時間で整理できます。
最終更新日:2026年7月19日