問題社員347 遅刻を注意すると逆ギレして反省せず遅刻を繰り返す。
動画解説
この記事の要点
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まず「なぜ逆ギレするのか」原因を突き止める。原因を誤ると対応も的外れになる 典型は「既得権益化」「軽く見られている」「特殊事情」の三つ |
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既得権益化には、「今までとは違う」と丁寧に説明したうえで段階的に対応する 前の上司の甘さや会社自身の方針が原因のことも。反発は強くなりやすい |
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物分かりのよいふりが「軽く見られる」原因になっていないか確認する やってほしいことは、はっきり言葉で伝える |
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遅刻を許すのは「その人にだけ優しい」のではなく、他の社員との公平性を損なう 採用競争が厳しい時代でも、ルール違反を魅力にすべきではない |
目次
1. 遅刻を注意すると逆ギレする社員という悩み
会社から給料をもらって働いているからには、労働契約・雇用契約どおり、始業時刻に出社して仕事をするのが当然です。ですから、遅刻というからには、本来の時刻に出社しなければならないのに、それに遅れて出社し仕事を開始してしまったということになりますから、当然改めなければなりません。にもかかわらず、逆ギレして遅刻を繰り返すというのは、非常にイレギュラーな問題ケースです。本記事では、遅刻を注意すると逆ギレして反省せず、遅刻を繰り返す社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. まず原因を突き止める
なぜそんなことになったのかを考えていかなければなりません。経験している限りでは、いくつか典型的な事例があります。原因が何なのかを突き止めるのが大事です。原因が分からないと適切な対応ができません。違った原因であるにもかかわらず、別の原因があった場合の対応をしてしまうと、そもそも的外れになってしまうからです。よくある原因は、大きく「既得権益化している」「軽く見られている」「長時間労働など特殊事情がある」の三つです。
3. 原因① 遅刻が既得権益化している
よくあるパターンとして、前の上司が甘くて、遅刻しても何も注意しなかった、というものがあります。そうすると、理解のあるいい上司だと評判が良かったりします。ところが、後任の上司がやってきて上司が変わったりすると、本人はびっくりするわけです。始業時刻に仕事をするのは当たり前なのに、それをしようとしない、会社にも来ていなかったりします。10分、15分遅刻してやってきても、注意しても反省していない、ということがよくあります。
他にも、既得権益化の原因として、前の上司の甘さだけでなく、社長自らが種を撒いていることもあります。「うちは成果さえ出してくれれば自由な社風だから、時間がどうこうはこだわらなくていいよ」といった方針で社長が対応し、実際にそういった発言を繰り返していることもあります。その結果、この方一人だけでなく、他の方々も割と遅刻をしてきても、あまり注意されないという状態になっている会社があります。
4. 既得権益化への対応(丁寧な説明と段階的対応)
「今までとは違う」ことを丁寧に説明する
こういった場合、しっかり始業時刻から働いてもらいたいのであれば、注意していかなければなりません。前の上司が甘やかしていて秩序が乱れているという状態ですので、秩序を回復する最初のステップとして、「前の上司はそうだったのかもしれないが、これからはそういうわけにはいかない。始業時刻までにしっかり仕事を開始してください。今後守ってもらえない場合はしっかり対応していきます」と話をして、注意指導や懲戒処分、遅刻した時間分の賃金控除(ノーワーク・ノーペイの原則)を行っていく必要があります。ここが難しくなりがちなのは、前の運用で認められていた既得権益を侵害される形になるため、反発が強くなりがちだという点です。こちらは至極まっとうなことを言っているつもりでも、反発を受けると腹が立ってしまい、いきなり強い手段を取ってしまうことがありますが、それは失敗しやすいところでもあります。まずは「今まで通りにはいかない」ことをしっかり説明することが大事になってきます。そのうえで治らなければ、注意指導や懲戒処分と、順を追ってやっていくことになります。
会社が原因で既得権益化している場合、これが社長自身の明確な方針であり、覚悟の上でハードルを下げているというなら別ですが、やり過ぎて手を焼くようであれば、やって欲しいことは素直に、はっきり言葉で伝えてください。本当は始業時刻に出てきてほしいのであれば、「時間なんか気にしなくていいよ」などと言ってはいけません。やってほしいことをはっきり伝えれば、こうした食い違いは生じにくくなり、問題も大きくなりにくくなります。もし「今まで通りでいい」というのが本当の方針であれば、それは対応の難易度が高い問題になっていることを覚悟のうえで対処していきましょう。
5. 原因② 軽く見られている
もう一つよくあるのが、軽く見られているというケースです。部下との関係を良好に保つため、物分かりのいいふりをしている方は少なくありません。下手にやるべきことをしっかり伝えると、反発を受けて人間関係が悪くなり、やりにくくなるからです。物分かりが良さそうに振る舞っていれば、相手も分かってくれて、その分応えてくれるだろう、という期待感でやっているケースが結構あります。
物分かりのよさそうな上司ほど、サボられやすい
それでもしっかりやってくれる方もいますが、だらしないタイプやずるい方だと、物分かりの良さそうな上司には、サボり始めてしまいがちです。「ちょっと言い返したり威嚇すればすぐ引いてくれるだろう」くらいの計算で、逆ギレしてみることもあります。そういったことがないか、上司として、社長として、しっかり守ってほしいこと、やってほしいことを、実際に伝えられているかをよく考えてみてください。一旦舐められてしまうと、対応の難易度が上がります。自力で秩序を回復するのが困難なこともありますので、そういった場合は弁護士にご相談ください。相手の言ってることに対応しながら上手にやっていくと、秩序を回復できることも結構あります。
6. 採用競争の厳しさとルールの関係
最近の売り手市場の状況からすると、単に社長や管理職の性格で軽く見られているというだけでなく、「採用するのにもお金がかかりますよね、このぐらいのわがままを聞いてくれないなら他に行っちゃうかも、辞められたら困るでしょう」というつもりで会社を軽く見てくるケースもありえます。実際に採用がなかなかできない中で、会社の立場が弱くなっているのは、ある意味本当に辛いところです。
ルール違反を魅力にすると、真面目な社員がばかを見る
どこまで相手に合わせるかですが、遅刻までしてもいいというところまで認めてしまうと、「この会社はルールを守らなくていいのだ」という雰囲気が蔓延します。その結果、他の真面目に働いている社員たちがばかばかしくなり、「こんな会社、ルールを守らせることもできないのか」と辞めてしまったり、「自分もサボろう」と考えてルールを守らなくなったりするケースもありえます。ですから、人材獲得競争においては、ルールは守ってもらう前提で、他の魅力(給料の高さ、スキルが身につく職場、上司の対応が公正で一貫していることなど)を提示して人を集め、保持できるようにすべきです。ルール違反をオーケーにするところをアピールポイントにすべきではありません。かえって人がいなくなってしまうことがありますので、採用が厳しい時代でも、ルールを守ることはきっちりやりつつ、他のところで獲得競争に勝てるように頑張っていきましょう。
7. 原因③ 長時間労働や生活上の事情という特殊事情
他にも特殊事情がありえます。たとえば、極端な長時間労働でクタクタになっていれば、少し遅刻したくらいで文句を言われるのはおかしいのではないか、と感じることもあるでしょう。明け方まで仕事をさせられ、家に帰ってシャワーを浴び、仮眠を取るくらいでまた出社したのに、15分遅れたことをとがめられれば、言い返したくなるのも無理はありません。まして、残業代がきちんと支給されていないような事態になれば、ますます言いたいことも出てくるでしょう。そういった長時間労働があるケースでは、会社の側で長時間労働を解消するか、事情に理解を示す対応が必要になってくると思います。
そのほか、生活上のイライラなどもありえます。会社でいくら配慮したとしても、プライベートな時間はありますし、家庭の問題や悲しい出来事があれば、イライラするのは人間としてやむを得ない面があります。そういった事情がある場合、本人が言ってきたら考慮しつつも、それはそれとしてある程度ルールは守ってもらわなければなりませんから、どこまで特別な事情を考慮するのかを、よく考えていく必要があります。
8. まとめ
- まず「なぜ逆ギレするのか」原因を突き止める。典型は既得権益化・軽視・特殊事情の三つ
- 既得権益化には「今までとは違う」と丁寧に説明したうえで段階的に対応する。反発は強くなりやすい
- 物分かりのよいふりが「軽く見られる」原因になっていないか確認する。やってほしいことははっきり伝える
- 売り手市場でも、遅刻の許容を魅力にすべきではない。他の魅力で人材を獲得・保持する
- 長時間労働や生活上の事情など、特殊事情も考慮しつつ、ルールとのバランスを考える
- 他の社員との公平性を損なわないよう、しっかり対応する必要がある
遅刻をする社員がいると、周りの方々はその方の仕事を当てにしているのに、その当てが外れます。しっかり注意もせずそのまま働けている状態が続くと、「ずるい」「この会社は公平ではない」「ルールが行き届いていない」と思われてしまい、まじめな社員が辞めてしまったり、自分もずるをしようと考えたりする職場になってしまうかもしれません。この方だけを甘く見ればよいというものではなく、他の社員たちとの公平性も考えながら、問題があればしっかり対応していく必要があります。自力での対応が難しい場合は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 前の上司が甘く、遅刻を注意されたことがなかった社員が逆ギレします。どうすればよいですか。
A. 遅刻が既得権益化しているケースです。まずは「前の上司はそうだったかもしれないが、これからはそういうわけにはいかない」と丁寧に説明し、始業時刻からしっかり働くよう求めてください。反発が強くなりがちですが、こちらの言い分がまっとうであることに変わりはありません。それでも改善しなければ、注意指導、懲戒処分、遅刻分の賃金控除と、段階を追って対応していきましょう。
Q2. やんわり注意しているつもりですが、まったく効きません。
A. 物分かりのよいふりが、かえって「軽く見られる」原因になっていることがあります。人間関係を悪くしたくないという配慮から、はっきり言葉にしないでいると、だらしないタイプの社員はサボり始めてしまいがちです。やってほしいことは、遠回しにではなく、明確な言葉で伝えることが大切です。一旦舐められてしまうと自力での立て直しが難しくなることもありますので、その場合は弁護士に相談しながら秩序の回復を図ってください。
Q3. 採用が難しい時代なので、多少の遅刻には目をつぶるべきでしょうか。
A. おすすめしません。遅刻を許容すると、「この会社はルールを守らなくてよい」という雰囲気が広がり、まじめに働いている他の社員たちの不満が募ります。その結果、優秀な社員が辞めてしまったり、他の社員までルールを守らなくなったりするおそれがあります。人材獲得競争においては、ルールを守る前提を維持しつつ、給料や成長機会、公正な職場運営など、他の魅力で人を集め、保持することを目指すべきです。
最終更新日:2026年7月19日