問題社員334 社員の両親からクレームがあった場合の対処法
動画解説
この記事の要点
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まともな内容なら、まず話は聞く。ただし本人のプライバシーには配慮する 両親は労働契約の当事者ではない。本人の同意なく処遇や健康の情報を家族に伝えるのは慎重に |
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何より大切なのは情報共有。機械的に上げるルールを作る 「大事なものだけ上げろ」では迷って伝わらない。両親からのクレームは、その日のうちに担当者へ |
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誰が対応するかは、内容・権限に加え「クレームの仕方」で決める 激しい言葉を浴びせられても耐えられる、対応の得意な人を窓口に。担当者を守ることも大切 |
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言いなりも門前払いも避け、取り入れるべき部分は組織改善に活かす 感情が入りやすい問題だからこそ、弁護士に相談し、受け答えのレベルまで冷静に判断する |
目次
1. 社員の両親からのクレームという場面
社員ご本人から不平・不満が寄せられることは、比較的分かりやすい話です。よく話を聞いて、しっかり対応していけばよいからです。他方で、ご両親からクレームが寄せられることもあります。とくに社員の方がまだ若い場合、ご両親も心配ですから、本人から悩みを聞かされれば、「この会社は本当に大丈夫なのか」と思い、会社にいろいろと話を持ってくる、場合によってはクレームをつける、ということがあります。本記事では、社員の両親からクレームがあった場合の対処法を、会社側の視点から解説します。
2. 基本路線(まともな内容なら、まず話は聞く)
クレームと言ってもさまざまですが、まともな内容を穏やかに話してくるのであれば、聞かない理由はありません。困っているのは従業員ご本人かもしれませんが、ご両親が自分の子どもを心配して「こういう点はどうなのか」と話してきたのであれば、信頼関係を築くためにも、話を聞いてしっかり対応していく努力をするのが基本路線です。もちろん、内容がおかしければお断りすることもありますが、話を聞くこと自体は、基本的にはできるはずです。
本人のプライバシーへの配慮を忘れない
ここで注意したいのが、労働契約の当事者は、あくまで会社と社員ご本人であるという点です。ご両親は契約の当事者ではありません。ですから、話を聞くこと自体はよいとしても、本人の同意なく、賃金・評価・処遇や健康状態といった情報をご両親に伝えることには、慎重であるべきです。よかれと思って家族に本人の事情を話したことが、かえって本人との信頼関係を損なったり、個人情報の取扱いの面で問題になったりすることもあります。何を、どこまで、誰に伝えてよいのかは、本人の意向も踏まえて判断する必要があります。
3. 何より大切なのは「情報共有」
この対応で何より大切なのは、これができなければ始まらない、と私が考えているのが、情報の共有です。小さな会社であれば、社長に情報を上げてもらわなければ困ります。ある程度の規模で、こうしたクレームに対応する部長や課長、担当の管理職が決まっているのであれば、その方に、「ご両親からこういうクレームがありました」と、早く知らせてほしいのです。
「大事なものだけ上げろ」では、かえって伝わらない
ちょっとしたことは現場で対応してほしい、と思うかもしれません。しかし、どこまで自分たちで対応し、どこから上司に情報を上げればよいのか、現場は迷うものです。「大事なものだけ上げろ」といった大まかな指示だと、上司に相談しにくい、情報を伝えにくい、という事態が生じかねません。仕組みが上手にできている会社ならよいのですが、そうでない限りは、ご両親から何らかのクレームがあった場合は、担当の管理職、場合によっては人事や社長本人に、その日のうちに伝える、という機械的なルールにしておくとよいでしょう。
4. 情報を上げること=社長が出ること、ではない
情報を伝えるということは、社長が出ていかなければならない、ということとイコールではありません。情報は上げるけれども、事案の程度に応じて、誰が担当するのかを、権限のある方が決めればよいのです。「これはあなたで十分だろうから、やってね」と管理職などに指示を出すこともできますし、社長がそうした指示を出すこともできます。
ですから、誰がどのように対応していくのかを決める権限のある方に情報を上げることは、その日のうちにやっていただき、そのうえで、実際に誰が担当するのかを、本人の権限や対応能力なども絡めて、権限のある方が決めていただければよいと思います。小規模な事業であれば社長が、そうでなければ人事や部長などが判断していくことになるでしょう。担当が決まって対応を始めた後で、これは難しいと感じた場合には、担当する窓口を変える、他の方に相談する、あるいは弁護士に「どう答えるべきか」を相談する、といった形で進めていきます。
5. 誰が対応するか(内容・権限と「クレームの仕方」)
誰が対応するかを決める際の考慮ポイントは、大きく二つあります。
① 内容を分かっているか、答える権限があるか
寄せられているクレームの内容を分かっている方か、それなりに答える権限がある方か、を考えます。権限がなく内容も分からない方では、その場で答えられません。あえて即答させないために、判断できない方に対応させるという戦略もありえますが、できることなら、知識や権限のある方が対応したほうが、問題は早く解決します。権限のある方が直接対応して困るのは、忙しくて時間がもったいない、という点くらいですが、めったにない大事な話であれば、出ていってよいのです。安請け合いさえしなければよいのであって、できるものはできる、できないものはできない、判断がつかないものは「少し考えてから答えます、お待ちください」と言えばよいだけです。
② クレームの「仕方」(言動・態度)に応じて人を選ぶ
内容以上に見落とせないのが、クレームの仕方、言動の態度です。冷静に穏やかに礼儀正しく話す場合と、横暴と言ってよいほど激しい言葉を使ったり、録音をちらつかせて威圧してきたりする場合とでは、まったく違います。後者のような相手には、知識や権限とは別に、ハードなコミュニケーションを取れる、クレーム対応の得意な、向いている方を当てる必要があります。誰もいなければ、社長が出ていかなければならないかもしれません。こうした配慮を欠くと、問題が解決しないだけでなく、何より担当した社員が参ってしまいます。激しく言われれば怖いものです。会社には、従業員が安全・健康に働けるよう配慮する義務がありますので、担当者を守るという視点も忘れないでください。あまりに言葉がひどければ、話を聞くのを打ち切るという判断もありえます。
6. 弁護士の活用と、担当者を守るという視点
本当にひどければ、弁護士を窓口にすることもあります。もっとも、まだ雇用している最中の労働者に関するいざこざは、理想としては会社のメンバー、少なくとも社長までの誰かで解決したいものです。とはいえ、間違ったことを言ったりやったりするとまずいので、正しい答えを知りたい、というのも当然です。こうした受け答えには、通常のビジネスとは少し違ったスキルが求められます。
言葉のやり取りのレベルまで、事前にアドバイスをもらう
こうした場面で活用しやすいのが、弁護士とのオンライン打ち合わせです。どんなことを言われているのかをお聞きしたうえで、どう対応すればよいのかをアドバイスできます。誰が答えるのか、何と答えるのか、というところまで含めて、弁護士のコンサルティングを受けて対応すれば、裁判になった場合を見据えた対応ができるだけでなく、実際の受け答えも適切になり、感情的になりがちな問題に対して、冷静な言葉を返すことができます。「言葉をうっかり間違えたらまずい」と思うようなケースでは、弁護士に相談しながら対応していきましょう。
7. クレームを組織改善のチャンスに変える
実は、ひどい言い方をされて「こちらこそ被害者だ」と思いたくなるようなケースであっても、言っていることの一部を上手に取り入れると、会社の組織がよくなることがあります。クレームを言う側だけがおかしいのではなく、何かしら原因があることも少なくないからです。指摘された点を直し、それが相手に伝われば、「本当に問題があったところを改善できた」ということになり、クレームをつけた側も納得しやすくなります。
弱点を無料で教えてもらったようなもの
改善すれば、会社の弱点が減ります。放っておけば、その弱点が原因で労使紛争になっていたかもしれません。問題社員のような方であれば、むしろそこに付け込んで会社からお金を取ろうとすることすらあります。それをクレームとして指摘してもらえたおかげで、本来ならコンサルタントを雇い、多額の費用をかけて解決すべき問題を、無料で教えてもらえたようなものだ、とも言えるのです。上手に取り入れれば、求人がやりやすくなったり、みんなが働きやすくなったりすることもあります。まさに「災い転じて福となす」で、上手に対応すれば、かえって会社は強くなります。
やってはいけないのは、両極端です。中身をよく考えずに言いなりになって終わるのも、「そんなクレームは一切受け付けない」と門前払いにするのも、たいていよくありません。取り入れるべき部分はどこか、お断りすべき部分はどこかを、理性的・論理的に判断して、何をどう対応していくのかを選択していく必要があります。
この判断が難しいのは、単に頭がよいかどうかの問題ではないからです。自社の社員やそのご両親との関係となると、どうしても感情が入ってしまいます。日本の会社では、社員を家族のように、仲間のように思う社長が今も多くいらっしゃいます。これは一見よいことのようでいて、身内との諍いほど泥沼化するものもありません。完全に他人で、ただのビジネス、契約関係だと割り切れる相手のほうが、かえって冷静に対応できることもあるのです。感情的なクレームに、こちらも感情的になって門前払いにしてしまったり、逆に関わりすぎて担当者が参ってしまったり、ということを防ぐためにも、外部の人間である弁護士に相談しながら対応するのが有効です。何も問題が起きていないのに社内を改善しようとすると現場の反発を受けがちですが、クレームをきっかけに改善する流れは自然で納得感が得られやすく、普段は手をつけにくい社内の弱点に切り込む絶好のチャンスにもなります。
8. まとめ
- まともな内容なら、まず話は聞く。ただし本人のプライバシーには配慮する(両親は契約の当事者ではない)
- 何より大切なのは情報共有。両親からのクレームは、その日のうちに担当者へ上げるルールを作る
- 情報を上げること=社長が出ること、ではない。権限のある方が、誰に担当させるかを決める
- 誰が対応するかは、内容・権限に加え、クレームの「仕方」で決める。担当者を守ることも大切
- 言いなりも門前払いも避け、取り入れるべき部分は組織改善に活かす
- 感情が入りやすい問題だからこそ、弁護士に相談し、受け答えのレベルまで冷静に判断する
物事には、負担となる部分と、プラスの面の両方があります。それを冷静に判断するためには、組織の外部の人間によるコンサルティング・アドバイスを受けながら対応するのがポイントです。クレームがあった場合はしっかり情報を共有し、内容や言い方に応じて誰が担当すればよいのかを考え、弁護士に受け答えを相談しながら対応していく。対応する社員を守りながら、対応すべきものは対応し、組織の弱みの改善にも使っていく。そうすれば、社長の望むよい会社に近づいていくはずです。社員の両親からのクレーム対応にお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 社員の両親からのクレームに、会社は応じる義務があるのですか。
A. 労働契約の当事者は会社と社員ご本人であり、ご両親は当事者ではありませんので、法的に必ず応じなければならないわけではありません。もっとも、まともな内容を穏やかに話してくるのであれば、信頼関係を築くためにも、話を聞いて対応する努力をするのが基本です。ただし、本人の同意なく、賃金・評価・処遇や健康状態といった情報をご両親に伝えることには慎重であるべきです。何をどこまで伝えてよいかは、本人のプライバシーにも配慮しながら判断してください。
Q2. 両親からのクレームは、現場で処理させてよいですか。
A. まず、その日のうちに、対応を決める権限のある方へ情報を上げることをおすすめします。「大事なものだけ上げろ」という大まかな指示だと、現場が迷って情報が伝わらなくなりがちだからです。情報を上げることと、社長が対応することはイコールではありません。権限のある方が、事案の程度に応じて、内容を分かっていて答える権限があり、かつクレームの仕方に耐えられる適切な担当者を選べばよいのです。激しい言葉を浴びせられる相手であれば、対応の得意な人を窓口にし、担当者が参らないよう配慮してください。
Q3. 理不尽なクレームには、門前払いで対応してよいですか。
A. 中身を考えずに言いなりになるのも、完全に門前払いにするのも、たいていよくありません。取り入れるべき部分はどこか、お断りすべき部分はどこかを、理性的・論理的に判断して選択することが大切です。ひどい言い方をされていても、指摘の一部を組織改善に活かせば、会社の弱点が減り、労使紛争の芽を摘めることもあります。自社の社員やその家族との関係は感情が入りやすいため、外部の弁護士に相談し、誰が何と答えるかというレベルまでアドバイスを受けながら、冷静に対応することをおすすめします。
最終更新日:2026年7月18日