問題社員340 営業担当なのに営業業務を行わない。

動画解説

この記事の要点

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まず「なぜ営業に出ないのか」を確認する。大枠を誤ると対応は失敗する

理由は、サボり・やり方への不満・能力不足・体調不良・担当変更への不満など様々

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単なるサボりなら、面談・注意指導から懲戒・解雇のルートへ

命じた営業に行かない日は、労務提供がないとして賃金を控除できる場合もある

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能力不足・体調不良は、教育や配置転換、休ませる対応を検討する

向いていない仕事の強要は、適応障害や安全配慮義務の問題にもなりうる

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元々営業でない人を営業に移した場合は、配転の濫用に注意する

必要性・動機目的・不利益の程度が問われ、紛争リスクが高い。弁護士に相談を

1. 営業に出ない営業社員という問題

営業担当者なのに事務所から出ず、指示しても営業業務を行わない。営業社員なのに営業をしないというのは、根本的にやる気がないのではないか、と思ってしまいますよね。労働契約・雇用契約の本質からしても、給料を払って働いてもらうという契約であるはずなのに、その仕事をすること自体をやってもらえないのですから、根本的な大問題だと感じられるでしょう。本記事では、営業担当なのに営業業務を行わない社員への対処法を、会社側の視点から解説します。

2. まず「なぜ営業に出ないのか」を確認する

ここで注意しなければならないのは、どうして営業社員なのに営業に出ないのか、という点です。その理由には、様々なものがあります。たとえば、単にサボっているだけ、営業のやり方が不満、能力が低くて営業に向いておらず気が乗らない、体調が悪くて外に出られない、あるいは、元々営業ではなかったのに営業に回されて、それが不満で行きたくない、といったケースです。

大枠を間違えると、細かい対応をいくら緻密にやってもうまくいかない

まずは、おそらくこうだろうという理由を社長なりに考え、なおかつ本人と面談して、「どうして営業担当なのに営業に行かないのですか」と聞き取ってみてください。本人の言い分を聞いたうえで、それでも従っていただくのが原則ではありますが、今後の対応を考えていくヒントが見つかるかもしれません。この大枠を間違えてしまうと、その後の細かい技術的な部分をいかに緻密に対応しても、うまくいきません。そもそもの方向を間違えている状態になってしまうからです。まずは、どの理由なのかをしっかり確定・検討していくことが大切です。

3. ① 単にサボっている場合

どうやら単にサボっているだけ、やりたくないから行かない、という場合は、通常の注意指導から懲戒処分、退職勧奨・解雇などのルートになります。まずは面談をして、本人の言い分もよく聞いたうえで、「あなたは営業社員なのだから、やらなければだめでしょう。どうして営業に行かないのですか」と、しっかり説得の会話をしてみてください。

放置すると舐められる。命じた営業に行かない日は賃金控除も

放っておくと、「怖くてどうせ何も言えないだろう」とこちらを舐めて、仕事をせずに給料だけもらおうとする方もいます。単にサボっているだけなら、面談から入って、しっかり仕事をさせるようにしてください。正当な業務命令に従わないのであれば、注意指導し、それでも従わない状態が続けば、懲戒処分もできますし、命じた仕事をやっていないわけですから、解雇もありえます。命令に従って営業に行かなかった日については、労務の提供がないものとして、賃金を支払わない措置を取れることもあります。ただ、この判断は微妙なこともありますので、社長ご自身で判断するのは大変でしょう。弁護士のコンサルティングを受けながら判断するくらいが、ちょうどよいと思います。

4. ② 営業のやり方が不満な場合

サボっているケースの中には、「営業のやり方が不満だ」というものもあります。「外に出て見込み客に会いに行くやり方は古い、もっと合理的なやり方をしましょう」と言ってきて、「こんなやり方は不合理だから従いません」という方です。そこから営業方法についてヒントをもらえる可能性はありますが、根本的に考えていただきたいのは、その人は、営業のやり方を考える担当なのかということです。

営業のやり方を決めるのは誰でしょうか。社長でしょうか、営業部長でしょうか、担当の役員や管理職でしょうか、それともその方でしょうか。もし、その方が営業方法を検討する担当者なのであれば、その意見は当然聞かなければなりません。ここでいう「聞く」とは、話を聞くという意味であって、従わなければならないという意味ではありません。対話をしながら、どの営業方法がよいのかを決めていくのです。しかし、その方の仕事が「営業に出ること」であって、「営業方法を考えること」ではないのであれば、それは単なる提案レベルの話であり、それ自体は仕事ではありません。仕事でもない提案が聞き入れられないからといって、やる気が出ないので営業に行きません、というのは筋が通りません。よほど変な営業のやり方で、裁判官から見ても不合理だと言えるようなものは別ですが、普通の営業であれば、「しっかり営業に行きなさい、仕事をしなさい」と言って差し支えありません。注意指導し、命令してもいつまでも従わないのであれば、懲戒処分などもできますし、解雇や、従わなかった日の賃金不払いという対応も考えられます。

5. ③ 能力不足・向いていない場合

能力不足で、怖くて営業に出られない、という方もいます。営業担当なのに営業に行くのが怖い、というのも妙な話に聞こえますが、実際にいるのです。会社(事務所)には出てくるけれども、営業には行かない、という困ったパターンです。

まず教育。それでも向いていなければ、配置転換か退職の方向へ

そもそも営業に就けたこと自体が間違いだった、というケースもありますが、「元々営業職として採用したのだから、営業が苦手とは言っていられない」という場合には、まずは教育をします。やり方を教え、場合によっては同行して本人のやり方をフィードバックしたり、先輩がやって見せて教え込んだりしていくのが最初でしょう。ただ、それでも向いていない方は一定数いますので、別の仕事に就いていただいたほうがよいケースもたくさんあります。社内に別の仕事があればそれをやってもらえばよいのですが、難しいケースもあります。その場合は、辞めていただく方向で話を進めるのが現実的です。

これは、会社のためというだけではありません。本人にとっても、本当に向いていないのに営業を強要されると、適応障害を起こしたり、「パワハラだ」という騒ぎになったりしかねません。向いていなくて本人が辛くてしょうがない仕事を無理にやらせるのは、酷なことです。会社には、社員が安全・健康に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務。労働契約法5条)もあります。体を壊すのではないかと懸念されるほど向いていない方であれば、別の仕事に就いてもらうか、辞めていただく方向に持っていくことが、本人のためでもあるのです。

6. ④ 体調不良の場合

体調不良にも、様々な原因があります。営業が向いていなくて気分が沈み、調子が悪い(適応障害を起こしている)場合もあれば、それとは関係なく、家庭の事情でストレスがかかって落ち込んでいる場合、病気の疑いを指摘された場合、実際に体の調子が悪くて動けない場合などもあります。まずは、それが一時的なものなのかどうかをよく考えて対処しましょう。担当の仕事ができないわけですから、欠勤扱いにして「来ないでください」とするか、治るのを待つか、というのが基本的な対応になります。

事務所勤務との「行き来」がある場合は、配慮が必要なことも

営業の仕事ばかりをやっている方であれば、営業ができないなら休みなさい、でよいでしょう。ただ、会社によっては、営業担当でも調子が悪いときは事務所で一定の仕事をし、状況が変わったら営業に戻る、ということを実態として行っている場合があります。外に出る営業と事務所での仕事とを、営業担当とはいえ行き来している実態があり、本人も一時期は事務所での仕事ばかりをしていた期間がある、というような場合には、事務所の仕事に就けずに給料を払わない、ということができず、給料を払い続けなければならないこともあります。本人が事務所での仕事を望んでいるような場合には、「事務所の仕事に配置する現実的可能性がある」という言い方を弁護士はよくしますが、そうした場合には、一時的に事務所での仕事をさせるなどの配慮が必要になることもあります。

7. ⑤ 担当業務の変更に不満な場合(配転の濫用に注意)

最後に、担当業務の変更に不満なケースです。これは、元々営業をやっていなかった方を、後から営業担当に変えたような場合です。営業をやりたい方からすれば信じられないかもしれませんが、事務仕事をやりたい人の中には、営業をやりたくないという方がたくさんいます。人には向き不向きがありますから、事務担当をずっとやってきた方に「営業をやりなさい」と言うと、大抵は嫌だと思いますし、嫌がらせだと感じたり、「自分を辞めさせるために営業に配置したのではないか」と受け止めたりする方も少なくありません。よくあるご相談のパターンです。

紛争リスクが高い。配転命令が濫用にならないかが問われる

この場合は、紛争のリスクがかなり高いと考えてください。「辞めればよいではないか」で済む話ではありません。「そもそも営業に異動させたこと自体がおかしいのだから、営業の仕事をやっていなくても給料を払え」「営業をやらないからといって解雇はできない」といった主張がなされ、労働審判、団体交渉、労働裁判などの法的紛争になることも多いパターンです。そこでは、そもそも営業に移す権限が会社にあったのか、その配転命令が濫用にならないかが問われます。濫用かどうかの判断基準としては、①その配転に業務上の必要性があったか、②不当な動機・目的(辞めさせる目的や嫌がらせ目的など)がなかったか、③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものではないか、といった点が検討されます。

正社員で、配置転換の権限が広く認められるような会社であれば、どの仕事に就けるかは基本的に会社の裁量だと言える面もあります。しかし、営業などずっとやってこなかった方を営業に就けると、不利益の程度が大きすぎると言われるかもしれません。とくに、職種を限定する合意があると評価される場合には、本人の同意なく職種を変更できないと判断されることもあります。せめて給料の額が従来とまったく変わらず保証されているのであればよいのですが、給料が下がるようなものだと、特に注意が必要です。「歩合でしっかり稼げば、むしろ給料は上がる」と考える社長もいるかもしれませんが、営業に向いていない方が本当に稼げるでしょうか。実際にやらせて稼げるのならリスクは下がりますが、案の定、歩合で稼げるパフォーマンスを上げられない状態になると、よほどフォローしない限り本人は辛く、不当な動機・目的があるとか、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益だとして、濫用だと言われることもあります。法的・契約論的な解釈が必要になりますので、こうしたケースでは、弁護士のコンサルティングを受けながら、その都度対応していくべきです。

8. まとめ

  1. まず「なぜ営業に出ないのか」を確認する。大枠を誤ると、細かい対応をいくら緻密にやっても失敗する
  2. 単なるサボりなら、面談・注意指導から懲戒・解雇へ。命じた営業に行かない日は賃金控除も検討できる
  3. やり方への不満は、その人が営業方法を決める担当かを見極める。担当でなければ、単なる提案に過ぎない
  4. 能力不足・体調不良は、教育・配置転換・休ませる対応を検討する。強要は適応障害や安全配慮義務の問題に
  5. 元々営業でない人を営業に移した場合は、配転の濫用に注意する。必要性・動機目的・不利益の程度が問われる

単にサボっているだけであれば分かりやすいのですが、営業社員が営業に出ない理由は様々です。まず大前提として、一体どういう理由で営業に出ないのかを確認する必要があります。ここで大きな枠を間違えると、その後の対応がうまくいきません。単にサボっているのか、担当業務の変更に不満なのか、能力不足で気が乗らないのか、体調不良で動けないのか。ここをしっかり確認できれば、あとは通常のルートに載せて対応していけば大丈夫です。視野を広く持たないと難しい問題ですが、どの類型かが分かってしまえば、意外と通常の対応で対処できます。営業社員への対応や配置転換にお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 営業に行けと命じても従いません。賃金を払わなくてよいですか。

A. 正当な業務命令に従わず、命じた営業に行かなかった日については、労務の提供がないものとして、賃金を支払わない措置を取れることがあります。また、注意指導しても従わない状態が続けば、懲戒処分や、命じた仕事をしていないことを理由とする解雇も検討対象になります。ただし、賃金不払いや処分の可否は、業務命令の正当性や事案の内容によって判断が微妙になることがありますので、社長ご自身だけで進めず、弁護士のコンサルティングを受けながら対応することをおすすめします。

Q2. 「営業のやり方が古い、従えない」と言われます。どう対応すべきですか。

A. まず、その方が営業方法を決める担当者なのかを見極めてください。営業方法を検討する立場であれば意見を聞き、対話しながらやり方を決めていくべきです。しかし、その方の仕事が「営業に出ること」であって「営業方法を考えること」ではないのなら、それは単なる提案に過ぎず、提案が容れられないからといって営業に行かないのは筋が通りません。よほど不合理な営業手法でない限り、通常の営業であれば、しっかり営業に行くよう命じて差し支えありません。

Q3. 事務職だった社員を営業に異動させたら、営業に行きません。解雇できますか。

A. このケースは紛争リスクが高く、慎重な検討が必要です。「そもそも営業に異動させたこと自体がおかしい」として、配転命令の有効性が争われることが多いためです。配転命令が濫用にあたらないかは、業務上の必要性、不当な動機・目的の有無、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものでないか、といった点で判断されます。職種を限定する合意があると評価される場合には、本人の同意なく職種を変更できないこともあります。給料が下がる場合はとくに注意が必要ですので、弁護士に相談しながら、その都度対応してください。

最終更新日:2026年7月18日


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