問題社員357 育休取得中に遠方へ引っ越し原職復帰できない。

動画解説

この記事の要点

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「義務かどうか」だけで終わらせず、人材活用の観点から検討する

原職復帰が原則というルールは正しくても、それだけで話を終えるのはもったいない

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引っ越し先近くの拠点に、本当に活躍の場がないか調査する

会社の経営にプラスになる要素があるかを確認する

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面談ではまず「原職復帰ならOK」と伝え、本人の意向を確認する

後から「もっと配慮すべきだった」と言われるリスクを避けるための手順

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調査を尽くし、提案を尽くしてもだめなら、辞められてもやむを得ない

ベストを尽くしたなら、あとは縁がなかったと諦めるしかない

1. 育休中の引っ越しで原職復帰できないという相談

育児休業取得中に、職場から遠く離れた場所に引っ越した社員がいる。引っ越し先近くでの復職ができないなら辞めると言われたが、どう対応すればよいか。自社のルールでは原職復帰が原則であり、引っ越し先近くで働いてもらうニーズはない。こうしたご相談をいただくことがあります。本記事では、育休取得中に遠方へ引っ越し原職復帰できない社員への対処法を、会社側の視点から解説します。

2. 「義務かどうか」だけで終わらせない

この相談への回答としてまず考えなければならないのは、義務かどうかだけで考えてはいけないということです。義務かどうかはもちろん考えます。しかし、単に「だめです」と言ってしまえば本人が退職してしまうわけですから、人材活用の観点から考えると、義務かどうかだけで簡単に終わらせてよいものではありません。

原則は原職復帰。しかしそれだけで済ませるのはもったいない

育児休業を取得している方に、原則として原職復帰してくださいと伝えること自体は、理屈として何の問題もありません。勝手に引っ越したのだから自分の都合で動いただけだ、という気持ちもよく分かります。しかし、この方は元の職場に戻る気はどうもなさそうで、引っ越し先の近くで働かせてもらえないなら辞めます、とまで言っています。今は人手不足の会社も多く、人材の有効活用をよくよく考えなければならない時代です。「会社のルールだから特別扱いはできない」という理由だけで、しっかり検討もせずに「だめだ」で終わらせてしまうと、人材活用がうまくいかなくなる面があります。最終的に検討した結果、だめですと伝えるのは構いませんが、まずは具体的に検討してから答えを出すべきです。「あなただけ特別扱いはできない」という理由だけで断るのはよくありません。

3. 「ニーズがない」を、まず調べてみる

この質問で気になったのは「ニーズがない」という部分です。これがメインの問題だと思います。会社は、給料を払って人を雇い、活躍していただき、会社も発展させていくことを念頭に経営しているはずです。もし、この方の引っ越し先近くで活躍してくれる場所が見つかり、なおかつ会社の業績にもプラスになるようであれば、それはやってよいはずです。他方、まったく仕事がない、無理に配置してもうまくいかない、というのであれば、雇用維持のためだけに無理に配置してくださいというのも違います。

近くの拠点にヒアリングして、本当に需要がないか確かめる

具体的な手順として、まず調査です。「おそらく需要はないだろう」と思っているケースであっても、その近くの支店や営業所などから具体的にヒアリングを行い、本人の適性やこれまで会社でやってきたことと照らし合わせて、需要がないかどうかを確かめてみてください。実際に調べた結果、やはり需要がなかった、で終わることもあるでしょう。もう少し離れた場所についても、ある程度調べてみてもよいかもしれません。それで、本人に任せられる仕事、あるいは「ぜひ来てもらいたい」という話があるかどうかまで考えてみてください。あれば、その仕事はいかがですか、と提案してよいのです。

4. 面談での話し方(原職復帰OKを前提として伝える)

調査を行い、提案できる内容にある程度当たりをつけたら、面談で本人と話します。育休取得中に引っ越しているため、担当部署の方がその場所まで行くのが大変であれば、オンラインで構いません。オンラインが苦手な社長であれば、実際に現地に赴く、あるいは来てもらう形も検討してもよいでしょう。

「原職復帰ならOK」を、まず前提として確認する

面談での話し方ですが、本人の要望も踏まえてどのような検討をしたのかを話します。まず大前提として、原職復帰であればOKだという話を前提としてお話しします。相手はそれでは嫌だと考えているはずですが、一応それを確かめるのです。後になってから「引っ越し先の近くで働きたいとは言ったが、原職復帰でよかったのに」と言われてしまうと困ります。育児休業を取った方の原職復帰を渋ったのだ、といったリスクにもつながりかねません。ですから、原職復帰ならあくまでOKなのだということを前提として確認したうえで、原職復帰したくないという意思を改めて確認し、意思に変わりがないのかを確かめます。そのうえで、住んでいる場所の近くで提案できるものを、労働条件が変わってでも提案してみるのがよいでしょう。

5. 代替案を提案する

原職復帰はOKだとしっかり伝え、本人はしたくないのだということを確認したうえでの話ですから、後から「言われていない」と言われないよう気をつけましょう。このうえで、本人の住んでいる場所の近くで、会社が提案可能な職務や労働条件を提案していくのがよいと思います。

6. 提案できるものがない場合の伝え方

色々検討したが、通勤可能と思われる範囲にふさわしい仕事がなかった、ということも当然ありえます。その場合も、「ありません」と言うだけでなく、どんな調査をしたのかをある程度伝えましょう。そうすることで説得力が出てきます。どの範囲で調査をしたのかを伝えたうえで、「提案できるのはこれとこれくらいですが、いかがですか」と話し、それでも不満であれば、元いた職場での原職復帰を、会社としては提案いたします、と伝えればよいのです。ここまでやれば、基本的にやるべきことはほとんどやったことになると思います。

7. それでも合意できない場合

間違いが起きにくくするため、また本人の納得感を得られるようにするために、こちらから提案したものの中に納得してもらえるものがなかった場合は、「あなたはどこでどんな仕事をやるのがふさわしいと考えていますか」と逆に聞いてみるのもよいと思います。こちらが一生懸命考えてベストを尽くしても、本人が考えているものとは違う、ということもありえます。それでも納得を得られない場合は、本人が「この場所でこういった仕事だったらやりたいと思っているが、空きはありませんか」と提案してもらう、というのも一つの方法です。具体的な提案をいただいた場合は、応じられるのか、応じられないのか、応じられるとしても条件はどうか、を具体的に検討して回答するとよいでしょう。

ベストを尽くしても振られたら、諦めるしかない

ここまでやれば、会社としてやるべきことをやったことになるはずです。そのうえで、ご本人が「辞めます」と言ってしまったら、しかたありません。縁がなかったと思って諦めてください。採用の場面でも、採用しますと言っても振られてしまうこと、よその会社に就職してしまうことがあります。それと同じです。会社としてベストを尽くしたのに振られてしまったら、これも諦めるしかありません。

8. まとめ

  1. 「義務かどうか」だけで終わらせず、人材活用の観点から検討する
  2. 近くの拠点にヒアリングして、本当に活躍の場がないか調査する。会社の経営にプラスになる要素を確認する
  3. 面談ではまず「原職復帰ならOK」と伝え、本人の意向を確認する。後からの反論リスクを避けるための手順
  4. 調査結果に基づき、労働条件が変わってでも代替案を提案する
  5. 提案できるものがなければ、調査内容を示したうえで原職復帰を提案する
  6. それでも合意できなければ、本人に希望を聞き、ベストを尽くしたら、あとは諦める

育休取得中の引っ越しで原職復帰できないという相談は、「義務かどうか」という発想だけで終わらせず、人材をどう有効活用していくかという前向きな視点で考えることが大切です。近隣拠点の調査、本人の意向確認、代替案の提案という手順をしっかり踏めば、会社としてやるべきことは尽くしたといえます。それでも本人が退職を選ぶのであれば、それはやむを得ないことです。人材活用や育児休業対応にお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 原職復帰が原則というルールがあるので、それを理由に断ってよいですか。

A. 最終的には断って構いませんが、いきなりルールを理由に断るのはおすすめしません。まず義務かどうかだけで考えるのではなく、人材活用の観点から、引っ越し先近くの拠点に本当に活躍の場がないかを調査してください。会社の経営にプラスになる配置が見つかるなら検討する価値がありますし、調査の結果、提案できるものがなくても、その調査内容を伝えることで、断る際の説得力が増します。

面談で気をつけるべきことはありますか。

A. まず「原職復帰であればOKだ」ということを前提として伝え、本人の意向を確認してください。後になって「原職復帰でよかったのに」と言われたり、育児休業を取得したことへの不利益な取扱いだと主張されたりするリスクを避けるためです。そのうえで、原職復帰を希望しないという意思を確認し、住んでいる場所の近くで提案できる職務や労働条件を、労働条件が変わってでも検討して提案するとよいでしょう。

調査しても提案できる仕事が見つかりませんでした。それでも辞めてしまいます。

A. 本人にどこでどんな仕事がふさわしいと考えているか逆に聞き、具体的な提案があれば検討して回答するなど、できる限りのやり取りを尽くしてください。それでも合意に至らず、本人が退職を選んだ場合は、やむを得ません。会社としてベストを尽くした結果であれば、縁がなかったと考えるしかありません。採用の場面で内定を辞退されるのと同じように受け止めてください。

最終更新日:2026年7月19日


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