問題社員355 考えの違いを激しい言葉・態度で責める。
動画解説
この記事の要点
|
✓
|
逃げないこと。そして対応する管理職を、社長がしっかり見て報いる 放置すれば、周りの社員が離職や体調不良に追い込まれかねない |
|
✓
|
対応が苦手な管理職に無理をさせず、向いている人でチームを組む 誰もいなければ社長自身が中心となる |
|
✓
|
メールで逃げず、面談で事実に基づいて話す 「激しい言葉・態度」という評価だけでなく、具体的な発言・行動を示す |
|
✓
|
「効果的な注意指導」を優先すれば、結果的にパワハラ認定を避けやすい 「問題にならないか」を先に考えすぎると、注意指導の効果が下がる |
目次
1. 考えの違いを激しく責める社員という問題
上司や同僚の考えや仕事の仕方が自分と異なると、激しい言葉や態度で相手を責める社員がいる。意見が違うと強い言葉を使う方の対応は、本当に大変です。いくら対応しても、なかなか考えを改めてくれませんし、対応する側も嫌な思いをします。本記事では、考えの違いを激しい言葉・態度で責める社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. 逃げないこと、対応した管理職を見てあげること
嫌な思いをしてでも対応したことが、いい結果につながればよいのですが、社長がそれを見ていて認めてくれればまだしも、「それは管理職なのだから対応するのが当然で、厄介な部下に対応したからといって別に待遇がよくなるわけでもない」という態度を取っていると、管理職も馬鹿らしくなり、めんどうな相手はやり過ごすようになってしまいます。ですから、社長としては、そういった管理職をしっかり見てあげて、努力に報いてあげなければなりません。
難しい相手なら、社長ご自身が中心となる
こういった厄介な相手に対応する場合、まず大事なのは「逃げない」ことです。注意指導の負担が重いものですから、ついつい先送りにしがちです。「誰もしっかり対応してくれない」という相談も多いのですが、本当に難しい相手の場合は、社長ご自身が中心となって対応していくべきケースがあります。規模の大きな会社であれば人事や部長といった管理職が対応することになりますが、直属の上司がしっかり対応してくれない状況が続いているなら、人任せにせず、自分が中心となって対応していくことを考える必要があります。
3. なぜ放置してはいけないのか
こういった厄介な方には、しっかり対応しなければなりません。気性の激しい、考えが違うというだけで激しい言葉や態度で相手を責めるような方が同じ職場にいたら、と考えてみてください。「こんな職場に出勤したくない」と思う方が出てきても不思議ではありませんし、あまり丈夫でない方だとメンタルをやられて体を壊してしまうかもしれません。これは、社員たちを守るためにもしっかり対応しなければならない問題です。
声の大きさで間違った仕事のやり方が通ってしまう危険
もし、この方が自分は正しいと思い込んでいるだけで、実は間違っていたらどうなるでしょうか。声が大きく、誰かが「ちょっと違うのでは」と言っても全部認めず、強い言葉で言い返してくると、みんなが諦めてその間違ったやり方で仕事をしてしまうことになりかねません。これは社長の望んでいる結果ではないはずです。人手不足の時代で「辞められたら困る」という事情があるかもしれませんが、周りへの負担があまりにも大きくなっている方が、まともに仕事をやっているとは言えません。仕事とは、担当業務をやるだけでなく、職場の秩序を大きく乱さず、正当な理由なく周りに過重な負担をかけないという義務も、労働契約上負っているのです。
4. チームで対応する(向き不向きを見極める)
具体的な対応として、まずお伝えしたいのは、チームで対応しましょうということです。特定の個人に対応を任せると、その人自身が参ってしまいます。社長はある程度強い方が多いですが、雇われの管理職の中には、プレイヤーとして仕事をするのは上手でも、こういった厄介な、気性の激しい相手に対応するのが得意ではない方もいます。その方に「あなたは上司なのだから頑張りなさい」と任せてしまうと、逆にメンタルをやられて長期間休職ということにもなりかねません。
向いている人を探し、チームを組む。誰もいなければ社長が中心に
人には向き不向きがあります。いくら頑張っても向いていないタイプの仕事はうまくいきません。せっかく他で活躍できる素質を持っている管理職が、こういった対応で潰れてしまってはもったいないことです。まず社内で、こういった方への対応に強い人をよく探してみてください。そういった方々とグループを作って対応していく。誰もいなければ、最後は社長がやるしかありません。特にそれほど規模の大きくない会社であれば、他の管理職に向いている方がいればその方が中心に対応し、いなければ社長自身が中心となってチームを作って対応していくことになります。本当に誰も向いている人がいない場合は、弁護士にご相談ください。どのように話せばよいか、相手の言葉をどう受け止めればよいか、言葉の使い方まで含めてアドバイスしながら対応できます。理想は会社のメンバーだけで対応できることですが、社長中心にうまく対応しきって、激しい言葉や態度を取らなくなったという形で決着できれば理想的です。
5. 面談で、事実に基づいて話す
具体的な対応の仕方ですが、やはり面談です。怖いからといってメールで済ませるのはだめです。逃げているのが見え見えです。相談を受けたとき「なぜメールなのですか」と聞くと、「証拠にも残るし」とおっしゃる方もいますが、よく聞き取ってみると、結局は本人と直接話すのが嫌なのだ、ということが伝わってくるケースが多いのです。いくら注意しても治らない、改善しないままの注意指導を続けるのは辛いですし、本人も激しい言葉や態度で対応してくるため、こちらもストレスになります。そのため、面談をしなくなり、メールで軽く済ませたり、完全に放置してしまったりすることが多くなりがちです。
「逃げていない」ことを見せる。人を説得する最も効果の高い方法
しっかり相手に向き合って会社の秩序を回復させ、周りで困っている社員たちを守るには、やはり面談でしっかり話すのが説得力があります。人を説得するとき、最も効果が高いのは実際に会って話すことです。オンライン(Zoom・Teamsなど)に向いていて熟練している方であれば、それでも十分できることがあります。メールだけで説得するのは大変で、まともに読んでもらえないことすらあります。こちらの指示に従ってほしい場合は、面談で「逃げていないぞ」というところをしっかり見せることが、とても大事です。
話をする際は、「一体何のことを言っているのですか」と言われても何も答えられなくならないよう、何月何日の何時ごろ、誰々さんに対してどのように何を言ったりやったりしたのか、その時の声の調子はこうだった、誰々さんは穏やかにこう言っただけなのにあなたはこう言い返した、それは必要のないことだった、という具合に、具体的な事実を踏まえて話すようにしてください。「あなたはいつも考えが違うと激しい言葉や態度で相手を責めていますよね、それを直してください」だけでは、何のことか分からず通じないことも多いのです。
6. 「言い方」だけでなく「内容」も事実ベースで検証する
なぜ通じないかというと、いろいろなパターンがあります。本人にはそもそも激しい言葉・態度を使っている自覚がない場合もあります。普通に生きて普通に話しているだけなのに、周りを辛い思いにさせるような言い方になってしまう方が、結構いるのです。事実をベースに話さないと、まったく通用しないことがあります。もう一つは、確かに強く言ったかもしれないが、それには正当な理由があるという場合です。「何度言っても治らないから」というのも、それ自体すごい態度ですが、そういうケースもあります。
まず第一段階として、内容の正否にかかわらず激しく責めてはいけないと伝える
まず前提として、自分の言っていることが正しいかどうかにかかわらず、激しい言葉・態度で相手を責めてはいけません。「激しい」という抽象的な言葉だけで終わらせず、「あなたはこういうことを言いましたよね」という事実からスタートし、その評価として「激しい言葉・態度」だという流れにしてください。評価を全面に出してはいけないのです。事実をベースに話し、それに対する評価を伝える、というイメージで考えるとよいと思います。この際、こちらとしても、どんなことがあったのかを事実としてしっかり認識しておく必要があります。ストレスの強い出来事は自分を精神的に守るために見なくなったり、忘れようとしたりすることがありますが、いつのどんな事実が問題だと言っているのか説明できるよう、努力してしっかり準備しておく必要があります。
もう一点、この方の言っていることが、そもそも正しいとは限らないという点も見逃せません。本人の単なる思い込みの可能性もあります。正しいことであっても激しい言い方・態度で相手を攻め立ててはだめだ、というのは当然ですが、そもそも正しくない可能性も実はたくさんあります。正しくないやり方が声の大きさだけで通ってしまえば、仕事はどんどんおかしくなっていきます。ですから、正しいかどうかということも、しっかり事実をベースに議論していくことが、仕事を効果的に進めるうえで必要です。上司であれば、「あなたのやり方がいいと思うなら、どうしてなのか説明してもらえますか」と言ってもよいのです。社長であればなおさらです。本当にその方の言っていることが正しいのかも、しっかりチェックしていく必要があります。
7. パワハラを恐れる前に「効果的な指導」を考える
ここまであるべき方向性をお伝えしましたが、本当に手ごわい相手も多く、勢いで言い負かされてしまうケースも多く見てきました。こちらが日本語の使い方を間違えると、揚げ足を取られるような形で、逆に「パワハラだ」と攻め立てられ、非常に気の毒な状況になることもあります。会社でチームを作って対応しても手に負えない相手の場合は、弁護士と相談しながら対応してください。
「問題ないか」より先に「効果的か」を考える
「パワハラにならないためにはどうすればよいか」と聞く社長は多いのですが、考えてみてください。問題がなければそれでよい、注意指導の効果が低くてもよい、というわけではありません。まずしっかり効果的な注意指導をやること、そのうえで、客観的にパワハラだと言われかねないやり方は避ける、という順番のはずです。弁護士にアドバイスを求めたり本を読んだりすると、つい「効果的に注意する」という視点が忘れ去られ、「問題ないですか」という質問ばかりが増えてしまうことがよくあります。しかし、問題があるかどうかは脇役であり、主役は、この方に対して効果的な注意指導ができているかどうかです。この発想を根本から間違えないようにしてください。効果的な注意指導をしっかり行い、そのやり方が問題のないものになるようにする。この順番が逆になるとうまくいきません。
効果的な注意指導ほど、パワハラと認定されにくい
そもそも、パワハラかどうかを判断するにあたって、効果的な注意指導であればあるほど、誰もが認める、まともなやり方だと見えるようになりますので、パワハラだと認定されにくくなります。裁判所や厚生労働省など外から見ても、「それはパワハラではありませんよね」と見えるものになりやすいのです。パワハラだと認定されるものの多くは、教育効果のないひどい言動が伴っているものです。教育効果の高い注意指導をしっかり行えば、パワハラだと認定されるリスクは相当下がります。まずそこを考えて対応していきましょう。やり方がよく分からない場合は、弁護士と頻繁にオンライン打ち合わせを入れ、言葉の選び方も含めて指導を受けながら、その都度対応していくのがよいと思います。長時間まとめて相談するより、15分から30分の打ち合わせをしょっちゅう繰り返すほうが効果的です。
8. まとめ
- 逃げないこと。そして対応する管理職を、社長がしっかり見て報いる
- 放置すれば、周りの社員が離職や体調不良に追い込まれかねない
- 対応が苦手な管理職に無理をさせず、向いている人でチームを組む。誰もいなければ社長自身が中心に
- メールで逃げず、面談で事実に基づいて話す。「激しい」という評価だけでなく、具体的な事実を示す
- 言い方だけでなく、内容が本当に正しいのかも事実ベースで検証する
- 「問題にならないか」より先に「効果的な指導か」を考える。効果的な指導ほどパワハラ認定されにくい
考えの違いを激しい言葉や態度で責める社員への対応で、まず大事なのは、とにかく逃げないことです。「注意指導が大変だから」「気を悪くして辞められたら困るから」と言っていられる場合ではありません。周りで働く方々が本当に辛い思いをし、その方々が辞めてしまうこともあります。会社を守るためにも、そこで働く方々を守るためにも、社長はしっかりこういった方に対応していかなければなりません。チームでの対応、面談での事実に基づく指摘、そして効果的な注意指導を追求する姿勢が、結果としてパワハラのリスクも下げてくれます。こうしたケースにお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. この方への対応を管理職に任せていますが、なかなか改善しません。
A. 人には向き不向きがあり、優秀な管理職でも、こういった気性の激しい相手への対応が苦手な方は少なくありません。無理に任せ続けると、その管理職自身が疲弊してしまいます。まず社内でこの手の対応に強い人を探し、チームを組んで対応することをおすすめします。誰もいない場合は、社長自身が中心となって対応する必要があります。あわせて、対応してくれる管理職の努力を社長がしっかり見て、報いてあげることも大切です。
直接話すのが怖いので、メールで注意したいのですが。
A. あまりおすすめしません。メールだけでは説得力が弱く、まともに読んでもらえないこともあります。相手に「逃げていない」ということを示すためにも、面談で直接話すことが効果的です。その際は、「激しい言葉・態度」といった評価だけでなく、何月何日の何時ごろ、誰にどのように何を言ったりやったりしたのか、という具体的な事実をベースに話すことが重要です。
注意するとパワハラだと言われそうで怖いです。
A. 「パワハラにならないか」を先に考えすぎると、かえって注意指導の効果が下がってしまいます。まず「効果的な注意指導ができているか」を優先して考えてください。教育効果の高い、まともなやり方の注意指導であればあるほど、外から見てもパワハラとは評価されにくくなります。パワハラと認定される多くのケースは、教育効果のない、ひどい言動を伴うものです。やり方に迷う場合は、弁護士と頻繁に短時間の打ち合わせを重ねながら対応することをおすすめします。
最終更新日:2026年7月19日