問題社員352 機嫌が悪いと周りの社員に当たり散らす。
動画解説
この記事の要点
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まず「逃げない」という決意が何より大事 放置すれば周りの社員が辛い思いをし、退職や採用難にもつながる |
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「当たり散らすのはやめて」では伝わらない。具体的な事実で指摘する 多くは悪気なく行っている。いつ・どこで・誰に・何をやったのかを示す |
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厳重注意書・懲戒処分も、具体的な事実を根拠として明記する 面談は、メールより情報が伝わりやすく効果的 |
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人事評価・賞与は、ありのままの事実に基づいて行う 甘い評価を続けると、後の処分の説得力を失う。評価する管理職も守る |
目次
1. 機嫌が悪いと当たり散らす社員という問題
出社してくると機嫌が悪いというだけで周りに当たり散らす。注意しても言うことを聞かない、逆に言い返されることもある。中には話をずらすような言い方で反論してくる方もいます。本記事では、機嫌が悪いと周りの社員に当たり散らす社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. まず「逃げない」という決意
こういった方の相手をするうえで、まずスタートラインとして大事なのは、逃げないということです。何を言われようが、どんなことになろうが、しっかり対応するのだという決意が何より大事になってきます。
放置すれば、周りの社員が最も辛い思いをする
当たり散らされる相手は辛いものです。出社すると機嫌が悪いというだけで当たり散らされれば、会社に出るのが本当に億劫になり、「もうこんな会社辞めてやろうか」という気分にもなります。求人も難しくなり、口コミで「ブラックな会社だ」という噂が広まるかもしれません。せっかく手間暇かけて採用した方が、この社員のせいで辞めてしまうことも普通に起こります。周りの社員たちを守るためにも、人手不足に対応するためにも、しっかり対応しなければなりません。それは、会社の業績向上やよい会社にするという目的を達成するためにも、絶対に必要なことです。
3. 具体的な言動を確認する
実際に対応するとなった場合、まず最初に、具体的な言動を検討する必要があります。「周りに当たり散らす」というだけでなく、何月何日の何時ごろ、誰に対してどのように何をやったのか、をしっかり確認していく作業が必要です。
多くは悪気なく当たり散らしている
「周りに当たり散らすのはやめなさい」「機嫌で気分で行動しないでね」というだけでは、何のことを言っているのか分かりにくいことが多いのです。事実を指摘できないと、何を言われているのか分かりにくくなるのが主な理由です。本人もこれは当たり散らしている言動だと認識してやっている、というものばかりではありません。普通に行動していたら、そういった言葉や態度になってしまっている、ということが多いのです。ある意味、悪気なく当たり散らしているわけです。後からしっかり指摘されれば「確かに問題だった」と思ってもらえることもありますが、その行動の最中は、機嫌の悪い気分のまま何かを発言したり行動したりしただけ、というケースが多いのです。ですから、抽象的な注意だけでは、本人からすれば「そんなつもりはない、理由があってやったことだ」と受け止められ、話が全然進まないこともあります。
もし、やんわりと注意し、本人に気づいてほしいという手法で対応してもうまくいかない場合には、ずばり事実を突きつける必要が出てきます。何月何日の何時ごろ、誰に対して、どのように、何をやったのかを、しっかり指摘できるようにしてください。手間かもしれませんが、よく観察し、周りの人からも事情を聞いて、みんなで協力して対応していくことが必要になります。
4. 面談で、事実をもとに話す
対応の方法としては、面談がよいと思います。同じ事業所で働いているのであれば、実際に会議室で面談するのが効果的です。面談で話しているほうが情報は伝わりやすく、メールなどでは話が脇道にそれたり、はぐらかす気がなくても自然と話がそれて噛み合わなかったりすることが多いためです。Zoomやチームズといったオンラインを使う方法も考えられ、オンラインの使用に抵抗がない方であれば、実際に会って話すのと遜色ない効果を上げられることも多いです。ただ、オンラインに慣れていない、実際に会って話す経験は積んできたがオンラインでは調子が出ない、という社長もいます。そうした場合は、実際に会って話すほうが結果としてうまくいくことが多いといえます。
注意指導する場合、具体的にいつ・どこで・この方がどのように何をやったのかが問題なのかをしっかり指摘して話すようにしてください。「周りの人たちが困っている」「機嫌が悪いのを周りに当たり散らすのはよくない」という程度で済ませてしまうと、「別に当たり散らしていません」と受け答えされてしまうことがよくあります。「それはどういうことですか」と聞かれたときにこちらが説明できないと、根拠もなく言いがかりをつけているように見えてしまいます。こういった方は気が強い方も多いですから、社長が根拠もなく「直せ」「当たり散らすな」と言ってくるほうがおかしい、と思われる可能性が非常に高いのです。教育効果がないだけでなく、逆に反撃を受けてこちらが撤退することになりかねません。そうなると、ますます問題はエスカレートし、社長の指導もますます軽んじられていく可能性が高くなります。
5. 厳重注意・懲戒処分も事実を根拠に
改善を求めるにあたっては、本人の言い分もしっかり聞きます。「そんな事実はなかった」「確かにそう言ったが、こういった事情があったので仕方なかった」といった反論があると思いますので、それも聞いたうえで、本当にそうなのかを判断し、注意していくとよいでしょう。できれば、具体的にどう対応すればよかったのか、どんな言い方をすればよかったのかまで話していただけると、より効果的です。
厳重注意書・懲戒処分は、具体的な言動を理由として記載する
このように注意し、具体的な事実を指摘しているにもかかわらず改善しない場合には、厳重注意しなければなりません。厳重注意書を渡すことも多く、さらに懲戒処分をすることもあります。その場合も、ポイントはいつ・どこで・この方がどのように何をやったのかという具体的な言動を理由として、厳重注意あるいは懲戒処分をするようにしてください。「機嫌が悪いと周りの社員に当たり散らすので厳重注意します」だけでは、何を根拠にそう言っているのかがはっきりせず、教育効果が低いだけでなく、根拠の薄弱な厳重注意だと見られてしまうこともあります。具体的な事実を書き込むつもりで対応していれば、事実の収集や記録も自然にできるようになっていくはずです。懲戒処分については、さらに強く言えることで、具体的にいつ・どこで・どのように・何をやったから懲戒処分なのだと、しっかり説明できるようにしておく必要があります。
6. 人事評価・賞与はありのままに
もう一点付け加えるとすれば、人事評価や賞与も、しっかり実態を踏まえたものにすることが大事です。悪い評価をありのままに伝えると、機嫌が悪くなって文句を言われることが多く、賞与の額が下がったりすればなおさら抗議を受けます。その結果、こういった方の上司になった方は、いい加減な人事評価をしがちです。ありのままに評価して抗議を受ければ自分が嫌な思いをしますし、パワハラだと騒がれれば大変ですから、しっかり評価しない傾向になりがちです。社長ご自身が評価する場合も、面倒だからと逃げてしまうことがあります。
甘い評価を続けると、後の処分の説得力を失う
しかし、それをやってしまうと、後から懲戒処分や厳重注意をする段になって話しても説得力がなくなります。「ずっと普通の評価をつけてきましたよね、注意も一度も受けたことがないのに、なぜ今更そんなことを言ってくるのですか。自分を辞めさせるための下準備、アリバイ作りのために言っているだけでしょう」と、不当な扱いだという話になりやすいのです。ですから、人事評価や賞与を決める際には、その時点でのありのままの評価に基づいて行ってください。面談などでも、嘘をつかず、問題から逃げずに、なぜこの評価になるのかを事実を踏まえて話してください。客観的な根拠となる事実さえあれば、本人が納得しなかったとしても、大きな問題にはなりません。むしろ改めるべきは相手のほうです。逆に、事実の説明ができないと、社長が好き嫌いで低い評価をした、気分で物事を決める社長だ、と言われてしまいます。事実を踏まえて話す必要があるという認識を、まず持つことがとても大事です。
7. 評価する管理職も守る
これを社長ご自身でやって大変だと感じたなら、他の管理職に評価や賞与額の決定を任せた場合、その管理職はもっと大変だ、ということが分かるはずです。ありのままにしっかり問題を問題として、事実を確定して評価してくれる管理職がいたら、その方は大事にしてあげてください。ただでさえ負担の重い仕事をしているのに、頑張っても社長が分かってくれなければ、「まともな評価をしても報われないなら、適当に普通くらいにつけておこう」ということになりかねません。
「ちゃんと見ている」というメッセージを伝える
大変なストレスがかかる仕事でも、逃げずにしっかりやってくれる管理職には、「ちゃんと見ていますよ、分かっていますよ」というメッセージを伝えてあげることが、とても大事です。さらに処遇で報いることができれば、なおよいでしょう。本人が大変そうにしていたら、サポートしてあげることも大切です。本当に手ごわい相手の場合、社内のサポートだけでは限界があることもありますので、弁護士に相談しながらオンラインで対応し、「こう話しかけたらこう言い返された、次はどう言えばよいか」という戦略を一緒に考えていくと、大体はうまくいくことが多いといえます。
8. まとめ
- まず「逃げない」という決意が何より大事。放置は周りの社員の離職や採用難につながる
- 「当たり散らすのはやめて」では伝わらない。いつ・どこで・誰に・何をしたかを具体的に指摘する
- 面談で、事実をもとに話す。メールより情報が伝わりやすい
- 厳重注意書・懲戒処分も、具体的な事実を根拠として明記する
- 人事評価・賞与はありのままに行う。甘い評価を続けると、後の処分の説得力を失う
- ありのままに評価してくれる管理職を、大事にし、支える
機嫌が悪いと周りに当たり散らす社員への対応は、注意する側・評価する側が嫌な思いをすることが多い、骨の折れる案件です。しかし、逃げてはいけません。放置すれば、周りで働く社員たちが最も辛い思いをします。退職者や体調を崩す社員が出てくるかもしれません。社員たちを守り、よい会社にするためには、こうした言動を放置してはいけないのです。事実に基づいて丁寧に、そして粘り強く対応していきましょう。こうしたケースにお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 何度注意しても「そんなつもりはない」と開き直られます。
A. 「当たり散らすのはやめてください」といった抽象的な注意では、本人に伝わらないことが多いです。多くの場合、本人は悪気なく行動しているためです。何月何日の何時ごろ、誰に対して、どのように、何をやったのかという具体的な事実を指摘してください。事実を示せないと、根拠のない言いがかりだと受け止められ、逆に反撃を受けて指導が軽んじられてしまうことがあります。
厳重注意書や懲戒処分を出すときの注意点はありますか。
A. いつ・どこで・この方がどのように何をやったのかという具体的な言動を、理由として明記することが重要です。「機嫌が悪いと当たり散らすので厳重注意します」だけでは根拠が薄弱に見え、教育効果も低くなります。具体的な事実を書き込むつもりで対応していれば、日頃から事実の収集や記録も自然にできるようになります。
抗議を受けたくないので、人事評価は甘めにつけています。問題ありますか。
A. 大きな問題があります。甘い評価を続けていると、後から厳重注意や懲戒処分をする段になって、「ずっと普通の評価だったのに、なぜ今更そんなことを言うのか」と説得力を失い、不当な扱いだと主張されやすくなります。人事評価や賞与は、その時点でのありのままの事実に基づいて行ってください。客観的な根拠さえあれば、本人が納得しなくても大きな問題にはなりません。あわせて、正直に評価してくれる管理職を評価し、支えることも大切です。
最終更新日:2026年7月19日