問題社員328 周りの社員に給料の額を聞く。

動画解説

この記事の要点

同僚から苦情が上がったら、放置せず面談する

繰り返し給料の話をされると、嫌な職場だと感じる人が出る。まずはぼやっとした事実から注意し、とぼけたら協力を得て特定する

注意指導の根拠は、就業時間中か時間外かで変わる

時間中なら職務専念義務違反・業務妨害。時間外・私的な場は、より慎重な配慮が必要だが職場秩序の観点で言える

処分できるのは、内心ではなく具体的な行動だけ

何を考えていようが自由。対応の対象は、周りへの働きかけという具体的な言動になる

能力の高低は、担当業務で結果を出せるかで決まる

「能力が高いなら、担当業務との関係で具体的にどんな事実があるか説明を」と問うと、ほとんど説明できない

1. 周りに給料の額を聞く社員という問題

仕事ができるわけではないのに、なぜかできると思い込んでいる方は、意外といらっしゃいます。思い込むだけなら害は少ないのですが、それが現実の行動に出てくると問題が生じます。その不満の一つの現れとして、「能力が高いなら、給料をもっともらってもいいはずだ」と考え、周りの社員に給料が安いと愚痴を言ったり、周りの給料の額を聞いたりすることを繰り返すことがあります。本記事では、こうした社員の対処法を解説します。

上司との面談で、ある程度交渉するくらいであれば害は大きくありません。本当に困るのは、周りの同僚に言うことです。しかも一度ではなく、断るごとに「給料が安い」と繰り返す。最初は付き合ってくれても、周りはだんだんうんざりします。「あなたはいくらもらっているのか」と聞かれるのも嫌なものです。繰り返されると、嫌な職場だ、雰囲気が悪いと感じる人が出てきかねません。同僚から「こう言われたのですが、なんとかなりませんか」と相談を受けたら、放置しておくわけにはいきません。

2. 苦情が上がったら、面談する

同僚などから苦情が上がってきたら、会議室などでしっかり面談しましょう。

「給料が安いという話を周りにしたり、周りに給料の額を聞いたりしたことで、苦情が上がってきているので、控えられないか」という話を、まずしてみます。最初はぼやっとした事実をもとに注意するくらいからスタートしてもよいでしょう。それで改まればよし。改まらず、「そんなことは言っていません、いつ誰に言ったのですか」ととぼけてきた場合は、言われた方の協力を得た上で(基本的には同意を得た上で)、何時ごろ、どこで、誰々さんに、こう言いましたよね、と伝えていきます。その上で、繰り返しであったなら、周りが嫌がっているのでやめてください、としっかり伝えます。最初のぼんやりした面談で大抵の方は治りますが、問題の大きな方は治らないこともあります。その場合は、不快な思いをした方々の協力を得て、いつ・どこで・誰に・どのように何を言ったのかを、しっかり伝えて注意指導します。

3. どこまで注意・処分できるか

これは雑談のようにも見えるので、ハラスメントと言えるほどでない限り、重い処分は難しいと感じる方も多いでしょう。現実に、いきなり処分は難しいところです。では、何を根拠に厳重注意や懲戒処分の話ができるのか。具体的な事情を踏まえて考える必要があります。

就業時間中か、時間外かで根拠が変わる

仕事の時間中(休憩時間でもないのに)に、「給料が安い」「いくらもらっているのか」を繰り返し言っているなら、仕事以外のことを話題にしている=仕事をサボっていることになりますので、「しっかり仕事をしなさい」と言えます。また、同僚の仕事の邪魔にもなりますので、「周りの同僚の仕事を邪魔しないでください」という注意指導もできます。
一方、就業時間外や休憩時間中の雑談として、給料の話をしてくる場合は、仕事をサボったとは言いにくくなります。それでも、「周りに嫌な思いをさせた」ことは言えますので、とくに職場内の話であれば、職場の秩序を維持する観点から、職場でそんな話をしないでください、という注意指導はある程度できます。職場の外や、仕事終わりのプライベートの場、私的なLINEなどであれば、職場内・就業時間内と比べてより慎重な配慮が必要になりますが、同様のものはやめなさいと言えると思います。本人が「名前を出してよい」と言うほどひどい案件であれば、しっかり注意指導してかまいません。処分は、それでも治らなければ進めますが、さじ加減が難しいところですので、弁護士に相談しながら進めてください。

4. 根本にある「思い込み」への対応

もっと根本的な解決を期待される社長もいるでしょう。給料が安いという不満は、仕事ができるという思い込みから来ているのだから、できるわけではないと自覚してもらえれば、こうした行動もなくなるのではないか、というわけです。

前提:処分できるのは、内心ではなく行動

前提として、人が何を考えていようが自由です。労働契約は、給料を払って仕事をしてもらう契約ですから、職場できっちり仕事をし、周りの秩序を乱さない限り、頭の中でとんでもない考えを持っていても処分はできません。ですから、今回の問題への対応も、あくまで周りの同僚への働きかけという、具体的な行動に対する対応ということになります。ただ、対話の中で「自分は本当は能力が高いのに給料が安い」と話すのが好きな方も多く、社長が話を聞こうと言えば、喜んで乗ってくるかもしれません。そこで、どんな話をすればよいかを次に解説します。

5. 能力の高低は、担当業務で決まる

能力が高いか、仕事ができるかは、締結している労働契約の内容との兼ね合いで決まります。一番分かりやすいのは、担当業務がしっかりできているかどうかです。担当している職務・業務と全然違うものを「自分はスーパーマンのようにできる」と言っても、関係ありません。「ポテンシャルが高い、本当はこんな仕事もできる」と言っても、今やっている自社の仕事が全然できなければ、能力が高いとは言いません。

逆に言えば、今やっている担当職務・業務をしっかりできているのであれば、他の何かができなくても、能力が高いと評価してかまいません。あくまでも、今担当している職務・業務との関係で、結果を出せる能力があるかという観点から判断します。確かめ方としては、「能力が高いと言うなら、あなたのやっている職務・業務との関係で、具体的にどんな事実があるから能力が高いのか、何が証拠になるのか、事実を説明してください。どんな仕事ができているのですか」と聞くわけです。そうすると、なかなかできるものではありません。懲戒処分を事実に基づいて行うのが意外と大変なのと同じように、自分の能力が高いと事実で説明できる人は、ほとんどいません。逆に、それができるくらいなら、少なくとも状況を言語化して説明する能力は高いといえますので、その適性のある仕事に配置するなど、有効活用を考えてもよいでしょう。

6. 説明できない場合、記録に残させる

自分で説明しようとしてもできなかった場合、「今は準備していなかったから説明できないが、本当はいろいろある」と言い出すかもしれません。そうしたら、「では、何がどうできたから能力が高いと言えるのか、後日聞くので、メモを取るなどして、しっかり記録に残しておいてください」と言ってみます。記録を残してもらって、確かにすごいことをやったというのであれば社長も納得でしょうし、案外、本当に仕事ができない方の場合、ろくな事実を記録として残せません。そうすると、「自分は出来がいいと思っていたが、実はこの仕事には向いていないかも」と、気づくことが多いのです。

能力の高い・低いは、仕事で結果を出す能力の高低で決まり、しかも労働契約で予定されている水準との関係で判断されます。要求水準が高ければ普通にやっても足りないと言われ、低ければ普通で十分ということもあります。共通して言えるのは、仕事で結果を出すための能力を考えるのが大事だということです。こうした確認をして具体的に説明してもらうと、少なくとも「この社長は自分を能力が高いとは評価していないのだな」とは気づきます。その上で、能力が低いのに給料が安いと言い回る人は、あまりいません。やる気が起きなくなる方も多く、中にはいますが、面談や厳重注意でしっかり対応すれば、やがて落ち着くか、辞めていく方が多いものです。理想は心を入れ替えて、自分のできることにベストを尽くしてもらうことですが、客観的に仕事で結果を出す能力が低いのであれば、この仕事に向いていないのかもしれません。他の職務であればいいパフォーマンスを上げるかもしれませんので、社内でそうした仕事がないか確かめてもよいですし、それが難しければ、他社での活躍を願う、ということもケースバイケースであり得ます。

7. まとめ

  1. 同僚から苦情が上がったら、放置せず面談する。ぼやっとした事実から注意し、とぼけたら協力を得て特定する
  2. 注意指導の根拠は、就業時間中か時間外かで変わる。時間中は職務専念義務違反・業務妨害、時間外は職場秩序の観点
  3. 職場外・私的な場は、より慎重な配慮が必要だが、同様のものはやめさせられる。さじ加減は弁護士に相談
  4. 処分できるのは内心ではなく、周りへの働きかけという具体的な行動だけ
  5. 能力の高低は、担当業務で結果を出せるかで決まる。事実での説明を求めると、ほとんど説明できない
  6. 説明できなければ記録に残させる。向いていないと気づくことが多く、他の職務での活躍も検討する

ぴったりこれに合う方はそれほど多くないかもしれませんが、似たような事例は意外とあるものです。具体的な行動に対しては事実に基づいて注意指導し、根本にある思い込みに対しては、能力とは担当業務で結果を出せるかだ、という基準で対話していく。この二本立てで対応するのが基本です。周りに給料の額を聞く社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 給料の話は雑談のようにも見えます。注意や処分をしてよいのですか。

A. いきなり重い処分は難しいものの、注意指導は十分に可能です。就業時間中に繰り返し給料の話をしているのであれば、仕事以外のことを話題にして仕事をサボっており、同僚の仕事の邪魔にもなっているとして、注意できます。就業時間外や休憩中でも、職場内で周りに嫌な思いをさせているのであれば、職場秩序を維持する観点から注意できます。まずは面談で控えるよう伝え、繰り返す場合は、被害を受けた同僚の協力を得て、事実を特定した上で指導します。どこまでの処分が相当かは、弁護士に相談しながら判断してください。

Q2. 勤務時間外や私的なLINEで給料の話をしている場合も、やめさせられますか。

A. 勤務時間内・職場内のケースと比べて、より慎重な配慮が必要になります。私生活の領域に対しては、会社の関与に一定の限界があるためです。もっとも、それが職場の人間関係や秩序に悪影響を及ぼしており、相手が不快に感じてやめてほしいと望んでいるのであれば、同様の行為はやめるよう求めることは可能です。とくに、被害を受けた同僚が名前を出してよいと言うほど繰り返し行われている場合は、しっかり注意指導してかまいません。線引きが微妙ですので、個別の事情を踏まえて弁護士に相談するのが安全です。

Q3. 「自分は能力が高いのに給料が安い」と言い続けます。どう話せばよいですか。

A. 能力の高低は、担当している職務・業務との関係で、結果を出せるかどうかで決まる、という基準を示してください。その上で、「能力が高いと言うなら、担当業務との関係で、具体的にどんな事実があるのか説明してください」と求めます。多くの場合、具体的な事実では説明できません。すぐに説明できないと言うなら、後日聞くので記録に残しておくよう伝えます。本当に結果を出せていない方は、ろくな事実を残せず、自分は向いていないかもしれないと気づくことが多いものです。内心そのものは処分できませんので、対応の対象は、あくまで周りへの働きかけという具体的な行動になります。

最終更新日:2026年7月18日


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