問題社員303 無断ではないが欠勤を繰り返す。

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この記事の要点

欠勤は自由ではない。事前に連絡していたとしても、労働者として果たすべき義務を果たしていない状態であることに変わりはない

連絡さえすれば休む権利があるというものではない。ただし、年次有給休暇の行使は欠勤ではないため、まず切り分けが必要になる

原因によって対応が異なる。体調不良なのか、怠業なのかを確認することが出発点になる

程度がひどい場合や理由が疑わしい場合には、出勤した日に会議室で面談を行い、診断書の提出を求めることも考えられる

体調不良であればしっかり休ませる。これは会社の安全配慮義務の履行でもある。その上で、社内ルールに則って休職の手続を進める

休職命令が就業規則どおりに運用できていないケースは多い。とりわけ、休職期間を診断書の記載に合わせてしまう誤りに注意

本人への対応と並行して、適正配置と周囲のフォロー体制を検討する

周囲が頑張って乗り切ったことをもって「この人数で回る」と思い込むと、しっかり働いてくれている社員が辞めてしまう

1. 欠勤は自由ではない

欠勤を繰り返す社員がいると、会社としては困ることが多いものです。その社員の仕事を当てにできませんし、休んだ分は他の社員が穴埋めしなければなりません。そこで本記事では、無断ではないが欠勤を繰り返す社員への対処法について解説します。

まず確認したいのは、欠勤は自由ではないということです。

労働契約においては、賃金を支払って働いてもらうというのが基本的な債権債務関係です。したがって、欠勤とは、本来労働者として果たすべき義務を果たしていないという状態にほかなりません。事前に会社へ連絡していたとしても、無断ではなかったとしても、義務を果たしていないということに変わりはなく、その程度次第では問題となり得ます。

事前に断っていれば、連絡さえしていれば休む権利がある、というものではありません。まずは、この点を理解していただく必要があります。

2. 前提の切り分け:年次有給休暇の行使は欠勤ではない

もっとも、対応を検討する前に、必ず切り分けておかなければならない点があります。年次有給休暇を取得しての休みは、欠勤ではないということです。

権利の行使を欠勤として扱ってはならない

年次有給休暇は、労働者に認められた権利であり(労働基準法39条)、原則として労働者が請求する時季に与えなければなりません。事業の正常な運営を妨げる場合には時季変更権を行使できることがありますが、単に人手が足りない、忙しいという理由だけでは認められにくいのが実情です。
年次有給休暇を取得した日は、労働義務そのものが免除されますので、そもそも欠勤ではありません。したがって、その取得を理由に注意指導や懲戒処分を行うことはできませんし、権利の行使を理由とする不利益な取扱いは禁止されています(同法附則136条参照)。休みが多いという悩みの中に、年次有給休暇の行使が含まれていないか、まずご確認ください。
本記事で扱うのは、年次有給休暇によらない休み、すなわち労働義務があるにもかかわらず就労していない場合の話です。

3. 原因の確認が対応の出発点

欠勤を繰り返す社員が出てきた場合の基本的な対応は、原因を確認した上での対応ということになります。原因によって、取るべき対応が異なるからです。

原因によって対応は大きく分かれる

体調不良による欠勤 しっかり休ませること自体が大切であり、会社の義務でもある。その上で、社内ルールに則って休職等の手続を進める
怠業による欠勤 明確な職場秩序違反であり、契約違反である。放置せず、しっかり注意指導を行い、場合によっては懲戒処分も検討する

4. 原因を確認する方法:面談と診断書

原因については、聞いて正直に答えてもらえるのであれば、その情報をもとに判断すればよいのですが、本当の理由を述べているかどうか分からないケースもあります。

そこで、欠勤の程度があまりにもひどい場合や、本人の言う理由が疑わしいと感じられる場合には、出勤してきた日などに会議室へ呼び、面談を行うことをお勧めします。軽く立ち話をした程度であれば、適当な理由を述べることも容易でしょう。しかし、会議室でしっかり面談を行っている場面で嘘をつくというのは、よほどのことです。

体調不良だと述べているものの、出勤してきた際には元気に働いているというケースもあります。そのような場合には、診断書の提出を求めることなども考えられます。就業規則に提出を求める根拠があるかを確認しておくと、より円滑に進められます。

5. 体調不良が原因の場合:しっかり休ませ、ルールに則って対応する

調べた結果、体調不良が原因であることが分かったのであれば、社内ルールに則って対応していきましょう。休職制度があるのであれば、一定期間の欠勤が続いた場合には休職とする、という運用になります。

休ませることは、会社の義務でもある

会社は労働契約上、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう、必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。体調が悪い社員を働かせ、体調を悪化させることのないよう配慮する義務が、雇い主にはあるのです。ですから、義務としても、しっかり休ませなければなりません。
また、「一定期間の欠勤が続いた場合には休職を命じることができる」というルールになっているのであれば、ある意味で、一定期間は体調不良で欠勤しても在籍できるということが、制度上予定されているとも言えます。休ませることは、会社の安全配慮義務を履行することにもなります。

6. 休職命令は、就業規則どおりに運用する

その上で、休職命令を出す場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。ご相談を受けているケースを見ると、就業規則どおりに休職命令を出せていない、ルールどおりに運用できていない書面を本人に交付してしまっている、というケースが相当数見受けられるからです。

よく見られる誤り:休職期間を診断書に合わせてしまう

休職命令がしっかり出されていないこともあれば、休職期間として診断書に記載された期間をそのまま書いてしまい、「その期間が満了すると退職になります」と記載されているケースもあります。就業規則上はもっと長い休職期間が定められているはずなのに、なぜ診断書の記載に合わせているのか、という事案です。
休職期間は就業規則の定めによって決まるものであり、診断書に記載された療養期間の見込みとは別のものです。この点を取り違えると、休職期間満了による退職や解雇の効力が争われた際、会社側が著しく不利な立場に置かれることになります。休職の期間、開始日、満了時の取扱いを、就業規則の条文に照らして正確に記載する必要があります。

休職の運用は、後から取り返しがつきにくい領域です。休職命令書の作成や交付の手順について、不安がある場合は弁護士に相談されることをお勧めします。

7. 怠業が原因の場合:注意指導から懲戒処分へ

他方、単に怠けて休んでいるという場合は、明確な職場秩序違反であり、契約違反です。しっかり注意指導をしていきましょう。そのまま放置してはいけません。

怒鳴る必要はない。会議室で淡々と話す

問題があると考えられる場合は、しっかり会議室に呼んで話をしてください。軽く注意した程度では改まらない社員もいます。もっとも、怒鳴る必要などまったくありません。会議室で5分、10分、穏やかな表情で、穏やかな言葉で淡々と話すだけでも、ずいぶん違います。
事情を聞き、体調不良でないのであれば就労しなければならないという話をする。本人に言い分があるのであれば事情を聞き、それが正当なものかどうかを検討して、会社としての判断を下す。この流れで進めていくとよいでしょう。

会社として容認できるものではない場合には、懲戒処分を行っていくことになります。懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様、回数、会社への影響等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。

実務を見ておりますと、中小企業では、しっかり懲戒処分ができるかどうか自信が持てないために、懲戒処分が相当な事案であっても処分できていないことがあります。他方で、思い切って懲戒処分を行ったものの、懲戒処分通知書に記載された内容が、後に見られればかえって会社の立場を悪くしかねないというものであることもあります。懲戒処分通知書は、トラブルの多い書面です。自己流で進めるよりも、弁護士に相談されることをお勧めします。

8. 適正配置とフォロー体制の検討

本人への対応のほかに、ぜひ検討していただきたいのが適正配置の問題です。

その社員が欠勤を繰り返すことは、すでに分かっているわけです。少なくとも過去はずっと繰り返してきたのですから、休まれると困るような仕事をさせてはいけません。時々休んでも支障の少ない業務を割り当てるなどの工夫が必要になります。代わりがいるような業務、属人的な要素が強くない業務、その社員がいなければ困るということのない業務を割り当てることが、とても大切です。

そして、もう一つ。その社員が時々休むことを繰り返してきたということは、これまで他の社員がフォローしてきたということです。どのような体制でフォローするのかも検討してください。

「この人数で回る」という思い込みが、良い社員を失わせる

一時的なものであれば、周囲に頑張ってもらうという対応でもよいかもしれません。しかし、それが継続すると、周囲の社員の負担があまりにも重くなり、嫌になってしまうことがあります。負担が重すぎると、周囲の良い社員が辞めてしまうということが現実に起こります。
周囲の社員が頑張ったからこそ乗り越えられた局面があったとして、「人がいなくても回るではないか」と思い込み、重い負担を良い社員たちに課し続けてしまうと、本当に辞められてしまい、深刻な事態を招きます。よくある話です。

必要な人員を揃え、周囲の社員の負担があまり重くならないようにする。せめて一時的なもので終わるように配置を考える。人員を揃えることが難しければ、それほど人がいなくても回るよう、仕組みを整えて負担を軽くしていく。ぜひ、この点をよく考えてみてください。

9. まとめ

  1. 欠勤は自由ではない。無断でなくとも、本来やるべきことをやっていないことに変わりはない
  2. 年次有給休暇の行使は欠勤ではない。まず、この切り分けを行う
  3. 原因を突き止め、それに応じた対応をする。大きくは体調不良と怠業に分かれる
  4. 体調不良であればしっかり休ませる。これは会社の安全配慮義務の履行でもある
  5. 休職命令は就業規則どおりに運用する。休職期間を診断書の記載に合わせる誤りに注意
  6. 怠業であれば、会議室で穏やかに、しかし明確に注意指導する。必要に応じて懲戒処分を検討する
  7. 適正配置とフォロー体制を検討する。周囲の負担を放置すれば、しっかり働く社員が辞めてしまう

社員たちを守るのは、会社経営者の仕事です。欠勤を繰り返す社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 欠勤した日の賃金は、支払わなければなりませんか。

A. 賃金は労務の提供に対する対価ですので、労務の提供がなかった日については、原則として賃金の支払義務は生じません。いわゆるノーワーク・ノーペイの原則です。ただし、就業規則や労働契約に別段の定めがある場合はそれに従います。また、会社側の責めに帰すべき事由によって就労できなかった場合には、賃金請求権や休業手当の問題が生じます(労働基準法26条、民法536条2項)。制裁として賃金を減額する場合は、減給の制裁として労働基準法91条の上限規制がかかりますので、単なる不就労控除との区別に注意が必要です。

Q2. 欠勤のたびに診断書の提出を求めることはできますか。

A. 就業規則に根拠規定があり、業務上の必要性が認められる範囲であれば、提出を求めることができます。もっとも、健康情報は機微な個人情報ですので、取得の目的を明示し、必要な範囲にとどめ、取扱いを担当者に限定するなど、適切に管理する必要があります。また、一日の欠勤のたびに費用のかかる診断書を求めるといった運用は、必要性を欠くと評価されるおそれがあります。欠勤が継続している場合や、理由に疑義がある場合など、必要性が説明できる場面に絞って求めるのが穏当です。

Q3. 欠勤を繰り返す社員を解雇することはできますか。

A. 原因によって判断は大きく異なります。怠業による欠勤であれば、注意指導や懲戒処分を重ね、改善の機会を与えてもなお改善しないという経過を記録に残した上で、解雇を検討することになります。他方、私傷病による欠勤の場合、就業規則に休職制度があるにもかかわらず、休職を経ずに解雇すると、無効と判断されるリスクが高くなります。まず休職制度を適用し、休職期間満了時の就労可能性を判断するのが原則です。いずれの場合も、解雇が有効となるためには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。必ず事前に弁護士に相談してください。

最終更新日:2026年7月17日


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