作業指示に従わない派遣社員の対処法

 

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作業指示に従わない派遣社員の対処法。
指示の改善から派遣会社との協議まで
会社側専門の弁護士が解説します。

 派遣社員が作業指示に従わず、自分勝手なやり方で作業をするため困っているというご相談が増えています。派遣社員には派遣先の指揮命令に従って就労すべき義務がありますので、これは大問題です。しかし、対処にあたっては派遣社員特有の問題もあります。本ページでは、指示内容の伝え方の改善から、確認作業の繰り返し、派遣会社との協議、そして交代・契約終了に至るまで、段階を踏んだ対処法を会社側専門の弁護士が解説します。

VIDEO

弁護士藤田進太郎による解説動画

 

 本ページの内容は、当事務所代表弁護士藤田進太郎による解説動画「作業指示に従わない派遣社員の対処法」を素材として文章化したものです。より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴いただくこともできます。

本ページの要点

 作業指示に従わない派遣社員への対処は、次の順序で進めます。第一に、指示内容がそもそも伝わっているかを確認します。第二に、具体的な作業指示を出し直し、質問にもしっかり答えます。第三に、指示通りにできているかの確認作業を毎日繰り返します。この三段階で改善するケースがそれなりに多く存在します。それでも改善しない場合は、派遣会社(派遣元)に事情を説明し、教育指導・交代・契約終了を含めた対応を協議します。派遣先が直接懲戒処分を行うことはできません。

CHAPTER 01

まず確認すべきこと:指示が伝わっているか

 

よくある相談内容

 「派遣社員が当社の社員の作業指示に従わず、自分勝手なやり方で作業をするため困っています」。これは派遣社員を活用している会社経営者から非常によく寄せられる相談です。確かに、派遣社員の方が指示通りのやり方で仕事してくれなければ本当に困りますよね。

 派遣社員の立場と言っても、派遣先の指揮命令に従って就労すべき義務があります。これは大問題です。なので対処はしなければいけません。しかし、派遣社員特有の問題もありますので、直接雇用の社員とまったく同じように対処しようとすると、法律上の問題が生じる場面があります。そこをしっかり理解した上で対処していく必要があります。

「従わない」のではなく「理解できていない」可能性を疑う

 派遣社員が作業指示に従わないという状況に直面したとき、最初に考えるべきことがあります。もしかしたら、作業指示に従わないと言っているけれども、この指示の内容がそもそも理解できていないのかもしれない、ということです。この可能性を最初に確認することが、適切な対処の出発点となります。

 指示に従う意欲がないわけではなく、言われた通りにやろうと思ってもできないというケースが、ものすごく多いのが実情です。もちろん、指示に従う意欲が全くない方、言うことを聞かないのがデフォルトになっている方もいなくはありませんが、多くのケースでは悪気なく普通にしているつもりでいながら、理解できないためにうまくいかないのが現実です。

 もし理解ができていないのであれば、しっかり理解できるようにするためにどんな工夫をすればいいのかを検討しなければなりません。この検討を省略して、いきなり「けしからん」と怒ったり、派遣会社に苦情を入れたりすることは、順序として適切ではありません。まず指示の仕方そのものを見直すところから始めることが、結果として最も効率的な対処法となります。

労働者派遣契約の範囲内の業務が前提

 なお、ここでの議論はすべて、指示の内容が労働者派遣契約で定められた範囲の業務であることが前提です。労働者派遣契約で定められた業務以外の契約外の仕事をやりなさいという指示はもちろんできません。指示通りの仕事してくれないという話は、契約内の業務に関して具体的にしっかり作業指示を出して、それに従わないという場面の話です。この前提は必ず確認しておいてください。

CHAPTER 02

具体的な作業指示を出す

 

何をどうすればいいのか、しっかり説明する

 指示の仕方を改善するにあたって、まず代表的なものとして挙げられるのが、具体的な作業指示をするということです。具体的に何をどうすればいいのか、しっかり指示を出して、質問があれば質問にもしっかり答えてください。これが基本中の基本となります。

 抽象度が高い指示の仕方をすると、指示内容が伝わりにくくなります。「自分の頭で考えなさい」などというのはもってのほかです。こういった方に関しては、できるだけ具体的に何をどうすればいいのかをしっかり説明していただくことが、まず大事になってきます。

通じるまで具体性のレベルを上げていく

 普通の社員であればそこまで言わなくても通じることが多いのですが、通じない方に対しては、通じるまで具体性のレベルを上げていく必要があります。「この作業をこの手順で行ってください」「完了したらここに報告してください」「分からないことがあれば質問してください」というように、何をどのように行い、完了後にどうすればよいのかまで含めて具体的に伝えることが大切です。

 「ちゃんとやってください」という抽象的な指示ではなく、作業の各ステップを丁寧に説明し、どのタイミングで確認を取ればよいかを伝えておく。これだけで、指示の伝わり方が大きく変わります。手間に感じるかもしれませんが、後でトラブルになってから費やす時間と労力のコストはずっと大きくなります。最初から丁寧に伝えておく方が結果として効率的です。

抽象的な指示と具体的な指示の違い

避けるべき抽象的な指示 望ましい具体的な指示
「ちゃんとやってください」 「A→B→Cの手順で作業し、完了後にここに報告してください」
「自分で考えてやってください」 「迷ったら必ず確認してから進めてください。判断に困ることがあればすぐ質問してください」
「臨機応変に対応してください」 「このケースはこう、あのケースはこうと、パターン別に具体的な手順を書面で示す」
CHAPTER 03

確認作業を繰り返す

 

一旦きりにしない:毎日の確認が大事

 具体的な指示を出すことと並んで大事なのが、一旦きりにしないということです。本当に指示通りに仕事できているのかどうか、しっかり確認作業をしてください。毎日毎日、しっかり指示通りの仕事ができているのかの確認作業をしましょう。

 「言われた通りに仕事してくれない」という相談者の中には、言うだけ言って、本当に仕事できているかどうかをしっかり確認していないケースも結構あります。指示を出したら出しっぱなしではなく、実際に指示通りの作業ができているかどうかを確かめる作業を繰り返すことが必要です。言うだけ言って確認しないというのは、指示が伝わったかどうか確かめないまま放置することと同じです。

できていなければ「どこをどう直せばいいか」を伝える

 確認した結果、指示通りにできていなければ、どこをどう変えていけばいいのかをしっかり説明していきましょう。しっかり具体的な指示を出して、確認作業もやって、できていなければどこをどう直せばいいのかを伝える。この流れを繰り返していけば、改善するケースもそれなりに多く存在します。まずちょっと手間かもしれませんが、そこから始めていきましょう。

改善すれば、それに越したことはない

 指示の具体化と確認作業の繰り返しによって改善するのであれば、それに越したことはありません。派遣会社への相談や交代要請といった次のステップに進む必要もなく、そのまま業務を続けてもらうことができます。1回できなかったぐらいであれば、そこまで大きな手段を講じる必要はないと思います。

 しかし残念ながら、具体的な指示を出し確認作業を繰り返しても、それでもうまくいかないことがあります。いつまで経っても作業指示通りに仕事できない方というのは、世の中には存在するわけです。そういった場合は、別の手段も検討しなければいけません。

ここまでの3ステップ整理

STEP 1:指示の内容がそもそも伝わっているかを確認する

STEP 2:具体的な作業指示を出し、質問にも答えて、指示の具体性を上げていく

STEP 3:毎日確認作業を繰り返し、できていなければどこをどう直すかを伝える

→ これで改善しない場合は、派遣会社との協議(STEP 4)に進む

CHAPTER 04

派遣会社との協議:次の手段

 

派遣会社とよく話し合う

 具体的な作業指示を粘り強く行い、確認作業を繰り返してもどうにも改善しない場合、次の手段として考えるべきなのは派遣会社との協議です。派遣会社とよく話をしましょう。

 どんな努力をしてきたのに本人が指示通りの業務ができなかったのかという経緯をしっかり説明しましょう。1回できなかったぐらいであれば「そこまでやる必要はないかな」と思うかもしれませんが、いつまで経っても改善しないというのであれば、その状況を説明して派遣会社に対応を求めていく必要があります。

多くのケースでは能力不足で悪気なくできない

 具体的な作業指示を粘り強く行っても改善しない場合、大抵のケースでは能力不足で悪気なくできないということが非常に多いです。もちろん、指示に従う意欲が全くない、わざと指示に従わない、言うことを聞かないのがデフォルトになっているという方もいなくはありません。しかし多くのケースでは、悪気なく普通にしているつもりでいながら、理解できず言われた通りにやろうと思ってもできないということが本当に多いのです。

 このような場合は、作業指示の努力を派遣先がするだけでは解決しません。派遣会社に状況を説明した上で、対応を一緒に考えていく必要があります。

派遣会社は実務にも法律にも詳しい

 派遣社員に関する実務について、派遣会社の方が詳しいことが多いです。何しろ派遣会社なわけですから、実務に詳しいのはもちろんのこと、派遣法関係の様々な規制についても詳しいはずです。ですので派遣社員に関する問題は、派遣会社に相談しながら対応するのが、法律違反だなんて言われずに済むという安心感もあります。派遣法の規制は複雑で、派遣先として何ができて何ができないかは、派遣会社とよく確認しながら進めることが大切です。

派遣会社による教育指導・交代・契約終了の流れ

 派遣会社によく事情を話して対応を協議していくなかで、その程度がひどければ、派遣会社の方で教育指導・注意指導などをしてくれると思います。程度があまりにもひどければ、「この派遣社員を交代しましょう」という話になるかもしれません。この仕事を言われた通りにやれる人がほとんどなのに、どうもこの方は無理なようだということであれば、ちゃんと労働者派遣契約で予定された業務ができるような人をしっかり派遣してほしいということになります。

人手不足で代替人員が確保できない場合

 場合によっては、人手不足で派遣会社も人を十分に確保できず、いい人をしっかり派遣できない、契約を履行することができないということになる可能性もあります。そのような場合は、残念ながら「労働者派遣契約をこれで終わりにしてください」という話になるかもしれません。ないものはしょうがないですから、できないことをなんとかしろと言っても解決するわけではありません。その場合はやむを得ないと考えて、別な手段を検討していきましょう。

CHAPTER 05

派遣先が直接懲戒処分をしてはいけない

 

ルールを守る意識が弱い場合も同様

 能力不足で悪気なくできないというパターンのほかに、ルールを守ることができない、言われた通りになんてやらなくていいんだ、職場のルールを守らなければいけないんですよという意識が弱い方でいつまで経っても指示通りの仕事をやらないというケースもあります。そのような場合は、懲戒処分もしたくなりますよね。厳重注意して懲戒処分をする。直接雇用の労働者だったらやりますよね。

 しかし、派遣社員についてはご注意ください。

雇用しているのは派遣先ではなく派遣元

 直接雇用しているのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)です。したがって、懲戒処分などを行うのは派遣元・派遣会社が行います。派遣先で直接懲戒処分を行うのではなく、派遣元である派遣会社に事情をお話しして、派遣会社の方で懲戒処分をやるのかどうかをご検討いただくという流れになります。

 派遣先としては、事情を説明することの他には、しっかり仕事ができる、契約をちゃんと履行できる人を派遣してよというところまでしか言えないのが法的な整理です。自分で直接懲戒処分などをしないようにご注意ください。

まとめ:派遣会社と相談しながら段階的に対応する

 作業指示に従わない派遣社員への対処法を改めてまとめると、まず指示の内容が伝わっているかを確認し、具体的な作業指示と確認作業を毎日繰り返すことが第一段階です。指示の仕方を改善し、確認作業を続けていくことで改善するケースはそれなりに多く存在します。

 それでも改善しない場合は、派遣会社に経緯を丁寧に説明して教育指導・交代の協議に進みます。懲戒処分などの雇用上の措置は派遣会社が行うものであり、派遣先が直接行うことはできません。派遣会社と相談しながら対応を決めていくことが、法律違反のリスクを避けながら問題を解決する上で最も大切です。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、派遣社員トラブル、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。派遣社員トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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FAQ

よくあるご質問

 

Q. 派遣社員が自分勝手なやり方で作業をします。まず何をすべきですか。

 まず確認すべきは、指示の内容が正確に伝わっているかどうかです。もしかしたら指示の内容を理解できていないだけかもしれません。具体的に何をどうすればよいかをしっかり説明し、質問があれば質問にも答えた上で、指示通りにできているかを毎日確認する作業を繰り返してください。この段階で改善するケースがそれなりに多く存在します。

Q. 具体的に指示しても従わない場合、どうすればよいですか。

 具体的な作業指示を粘り強く行い、確認とフィードバックを繰り返しても改善しない場合は、派遣会社(派遣元)への相談・協議に進みます。どのような努力をしてきたか、本人がどのように指示通りの業務ができなかったかを派遣会社にしっかり説明してください。程度がひどければ、派遣会社の方で教育指導・注意指導を行ってくれますし、あまりにもはなはだしければ交代の検討に入ります。

Q. 派遣社員を直接懲戒処分にすることはできますか。

 できません。直接雇用しているのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)ですので、懲戒処分などの雇用上の措置は派遣会社が行います。派遣先としては、派遣会社に事情を説明し、派遣会社の方で懲戒処分を行うかどうかを検討してもらう、という手順をとることになります。自分で直接懲戒処分をしないようにご注意ください。

Q. 指示に従わない原因は、能力不足とわざとの場合で対応は変わりますか。

 変わります。ただし、多くのケースでは悪気なく、普通にしているつもりでいながら理解できずにできないという能力不足が原因です。わざと指示に従わない方も存在しますが、いずれの場合も、まず具体的な作業指示と確認作業を繰り返す段階を経てから次の手段に進むという順序は同じです。その上で改善しない場合は、派遣会社に事情を説明して対応を協議します。

Q. 契約に含まれていない業務を指示して従わなかった場合は問題ですか。

 その場合は、従わなかった派遣社員に問題があるのではなく、契約外の業務を指示した派遣先の側に問題があります。派遣先が指揮命令できるのは、労働者派遣契約で定められた範囲の業務に限られます。契約外の仕事をやりなさいという指示はもちろんできませんので、まず指示内容が契約範囲に含まれているかを確認してください。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。派遣社員トラブルは状況が変わりやすいため、Zoom等で短時間の打ち合わせを繰り返し入れながら進めていく方法が実務上効果的です。

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