問題社員264 中途採用した管理職が仕事できない

動画解説

この記事の要点

管理職採用の失敗は個人採用の失敗より影響が格段に大きい——部門・事業所全体が機能不全に陥り、高い給与コストも重なる

アルバイト1人のダメージと、部門を丸ごと任せた管理職が機能しないダメージは全く次元が違う。月給40万〜100万円の人材が機能しない状況の深刻さを認識する

機能しない最大の原因は「能力不足」——やる気がないのではなく、やろうとしてもできない状態であることが多い

職務経歴書に実績があっても、業務内容・企業規模・リソース環境が異なれば同じ能力を発揮できない。特に大企業から中小企業への転職で起きやすい

「あれが足りない、ここが足りない」と問題点を指摘するだけで自分では動かない人物像に注意する

不備を指摘して改善のために行動してくれる管理職は優秀。指摘だけで行動しない場合、「整っていない環境が悪い」という認識で動かないことが多い

基本の対処線を守ることが大失敗を防ぐ——具体的な事実確認・注意指導・懲戒処分の積み上げを経てから退職勧奨・解雇へ

個別の事情は弁護士に相談しながら進めることが前提。基本を飛ばして動くと後始末的な弁護士依頼になりやすい

1. 管理職採用の失敗が会社に与える影響の深刻さ

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

特定の部門や事業所を任せるために管理職を中途採用したものの、任せた業務が全然うまくいかない——こうした相談を多く受けます。

管理職採用の失敗がなぜ深刻なのか、まずその影響の大きさを認識してください。

採用失敗のダメージ比較

採用の種別 失敗した場合のダメージ
アルバイト・パート その人の担当業務が滞る程度
一般社員(若手中途等) 個別業務がうまくいかない程度
部門管理職・事業所責任者 部門・事業所全体が機能不全に陥る。高い給与(月40〜100万円超)を払い続けながら利益が出ない

部門全体・事業所全体が機能しなくなるというのは、会社にとって非常に深刻な事態です。さらに管理職採用は給与水準が高いため、月給40万円、場合によっては80〜100万円といった給与を払いながら部門が回らない状況が続くのは、経営上も大きな打撃になります。

2. 機能しない最大の原因は「能力不足」

中途採用した管理職が機能しない最大の原因は何でしょうか。答えは能力不足です。「やる気がない」という問題ではなく、やろうとしてもできないというケースがほとんどです。

「職務経歴書を見ると実績も豊富で、こんな有名な会社でこんな責任ある地位にいた人なのに、なぜ能力不足?」と感じるかもしれません。しかし実際にはそういうケースが多いのです。なぜでしょうか。

能力不足の主な類型

  • 当該職務・業務内容についての能力不足(似たような仕事に見えても実は異なる)
  • 組織マネジメント・チームビルディングの能力不足
  • 中小企業特有の環境での問題解決能力の不足
  • リソースが限られた環境での自力で動く力の不足

職務経歴書は本人の言い分であり、前職でどこまで本当に貢献していたのか、実際に検証することは難しいです。また、同じ業種でも仕事の中身が大きく違うことがあります。

3. 大企業出身者が中小企業で機能しない典型パターン

中途採用管理職が機能しない典型例として、大企業出身者が中小企業に転職するケースがあります。これは非常に多い事例です。

中小企業の経営者からすれば「あんな有名な会社で責任ある地位にいた人なら、うちに来てもしっかり仕事してくれるはずだ。むしろ過分な人材かもしれない」と思って採用するわけです。ところが現実には、大企業でやっていた仕事と中小企業でやらなければならない仕事が全然違うことが多いのです。

大企業と中小企業の環境の違い

大企業 中小企業
システム・インフラが整備済み 整っていない。整備することが期待される
顧客が向こうから来る側面あり こちらから動かなければならない
各機能に専門スタッフが揃っている 一人が複数の役割をこなす必要あり

中小企業の経営者が求めているのは、「不備のある環境を自分で改善し、良い会社・強い会社にしていってくれる人」です。ところが問題になる人の多くは「ここが足りない、あれが足りない、こんな体制では力が発揮できない」と文句を言い続け、自分では改善のための行動を起こしません。

その管理職の立場からすれば「環境が整っていないから力が発揮できない。こんな会社に来てしまったことで損をした」という認識でいることすらあります。このような認識の食い違いが解消されないまま、状況が悪化していきます。

4. 「問題点の指摘だけで行動しない」という落とし穴

採用した管理職が優秀かどうかを判断する際の重要なポイントがあります。「問題点を指摘して、改善のために自分で行動するかどうか」です。

現状の不備を発見して指摘し、その改善のために自力で(あるいは誰かの助けを借りながら)行動してくれる管理職は優秀です。そのような方であれば経営者も文句はないでしょう。

問題のある管理職の典型的なパターン:「どこがダメ、あれが足りない、これがアウト」と問題点を指摘することには熱心だが、自分ではその改善のための行動を一切起こさない。結果として仕事が全く前に進まない。

こうなってしまうと、文句ばかり言って何もしない人材に対して高い給与を払い続けることになります。このような状況に気づいたら、早急に対処を検討する必要があります。

5. 基本的な対処の流れ——事実確認から退職勧奨・解雇まで

では実際にどのように対処すればよいのでしょうか。個別の事情によって具体的な対応は変わりますが、大失敗しないための基本線を押さえておくことが重要です。基本を飛ばして動くと、後から弁護士に後始末的な依頼をする羽目になりがちです。

基本的な対処の流れ

  1. 具体的事実の確認:何が・どのようにうまくいっていないのか、具体的に整理する
  2. 期待した業務内容との照合:雇用契約・求人票で期待していた能力水準を確認する
  3. 注意指導の実施:具体的事実を示して「何を・どのように改善してほしいか」を伝える
  4. 試用期間の活用:試用期間中であれば本採用拒否の要件が緩やか。試用期間内の判断が重要
  5. 懲戒処分(該当する場合):注意指導に従わない、虚偽の職歴等がある場合
  6. 退職勧奨・解雇:積み上げを経た上で検討。必ず弁護士に相談してから

特に試用期間中であれば、本採用拒否(雇用関係の終了)が認められやすい状況です。試用期間満了までに「この人に部門を任せ続けることができるかどうか」の判断を下すことが、後のトラブルを最小化します。

また、管理職という立場上、「期待した業務・能力水準を果たしていない」という事実を具体的に記録しておくことが、後の退職勧奨・解雇の根拠として機能します。どの段階においても弁護士と相談しながら進めることをお勧めします。

6. まとめ

  1. 管理職採用の失敗は影響が大きい——部門・事業所全体の機能不全と高い給与コストの二重の打撃
  2. 機能しない最大の原因は能力不足——大企業出身者が中小企業で機能しない典型パターンがある
  3. 「問題点の指摘だけで行動しない」管理職は機能しない——改善のために自分で動けるかどうかが判断基準
  4. 試用期間中の判断が最重要——試用期間内であれば本採用拒否の要件が緩やか
  5. 基本の対処線を守る——事実確認・注意指導・懲戒処分の積み上げを経てから退職勧奨・解雇へ。必ず弁護士と相談

中途採用した管理職への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中途採用した管理職が試用期間中に機能しないことが分かりました。試用期間中に雇用を終了できますか。

A. 試用期間中の本採用拒否は、本採用後の解雇より要件が緩やかとされています。ただし採用後14日を超えた場合は解雇予告が必要です。また、本採用拒否にも客観的な理由が必要ですので、「どのような能力・業務を期待していたのに、何がどのように達成できていないか」を具体的に整理した上で弁護士に相談してください。

Q2. 「職務経歴書に書いてあったことが実際とは違った」という場合、それを理由に解雇できますか。

A. 職務経歴書の内容が著しく虚偽であった場合(例:経歴詐称)、懲戒解雇の根拠になる可能性があります。ただし「誇張」の程度によって評価が異なり、また採用後に長期間経過してから問題にしても主張が弱くなります。実際に職務経歴書の虚偽が問題になっている場合は、早期に弁護士に相談してください。

Q3. 高い給与で採用した管理職の賃金を下げることはできますか。

A. 労働条件の不利益変更の問題になるため、本人の同意なしに給与を下げることは原則として困難です。人事評価制度に基づく給与連動(就業規則で定めてある場合)や降格に伴う賃金改定など、一定の要件のもとで可能な場合もあります。個別の事情を弁護士に相談した上で対応を検討してください。

最終更新日:2026年4月30日


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