問題社員263 労働審判申立書が届いた場合
動画解説
この記事の要点
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申立書が届いたらすぐに動く——第1回期日まで約1ヶ月、答弁書提出期限まで実質2〜3週間しかない 通常の裁判と違い、労働審判は時間が極めて限られている。のんびりしていると答弁書を十分に準備できないまま第1回期日を迎えてしまう |
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労働審判は第1回期日でほぼ勝負が決まる——通常の裁判とは全く異なる。答弁書の内容が最終結果を左右する 裁判は1年以上かけて主張を戦わせるが、労働審判は第1回期日までに提出した申立書と答弁書を事前に読んで、当日の審問でほぼ結論を出す |
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調停が不成立→労働審判→異議申立→自動的に裁判移行という「逃げ道のなさ」——準備不足のまま進むと裁判で戦わざるを得なくなる 通常の調停なら断れば終わりだが、労働審判は不成立でも審判が出て、それに異議を出すと自動的に通常の裁判に移行する |
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申立書が届いたらすぐに弁護士に相談する——時間がないからこそ、早急に専門家のサポートを得ることが最善策 事実関係の整理から答弁書の作成まで、弁護士と協力して短期間で準備することが、最善の結果を得るための唯一の方法 |
目次
1. 労働審判とは何か 通常の裁判との違いを理解する
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
ある日突然、裁判所から書類が届き、「労働審判申立書」と書いてある——こうした事態に直面した経営者の方のために、まず「労働審判」とはどういう手続きなのかをご説明します。
労働審判は、21世紀に入ってから整備された比較的新しい制度で、労働関係に関する個別の紛争を迅速に解決することを目的としています。通常の民事裁判と異なり、専門的な知識を持つ労働審判委員会(裁判官1名+労働審判員2名)が関与します。
通常の裁判と労働審判の主な違い
| 項目 | 通常の裁判 | 労働審判 |
|---|---|---|
| 期間 | 1年以上かかることが多い | 100日以内でほぼ結論が出る |
| 勝負のポイント | 複数回の期日で主張を積み上げる | 第1回期日でほぼ勝負が決まる |
| 話がまとまらない場合 | 判決が出る | 労働審判が出る→異議→自動的に裁判へ移行 |
| 答弁書提出期限 | 比較的余裕がある | 第1回期日の1週間〜10日前まで |
2. 申立書が届いたらすぐ動く 時間のなさを直視する
労働審判の申立書が届いたら、まず認識していただきたいのは「時間が極めて限られている」という事実です。
申立書到着から第1回期日までのタイムライン
| 申立書到着 | Day 0:すぐに弁護士に相談を開始する |
| 答弁書提出期限 | 第1回期日の1週間〜10日前まで(到着後約3週間) |
| 第1回期日 | 申立書到着から約1ヶ月後——ここでほぼ勝負が決まる |
申立書が届いてからのんびりしていると、あっという間に「答弁書提出まであと2週間、1週間しかない」という状態になります。弁護士を探しながら、事実関係を整理しながら、答弁書を作成しながら……と同時並行で動かなければならず、準備が不十分になるリスクが高くなります。
もし事前に弁護士と顧問契約を結んでいれば、すぐに弁護士に相談して対応に入れます。顧問弁護士がいない場合は、申立書を受け取った直後から弁護士探しを始めてください。
3. 第1回期日でほぼ勝負が決まる 答弁書が最重要
通常の裁判では、複数回の期日を経て、時間をかけて主張・立証を積み上げていきます。第1回の期日で全てが決まるわけではありません。
しかし労働審判では全く違います。労働審判委員会は、第1回期日の前に申立書と答弁書を読み込んでおり、当日の審問でほぼ結論を出します。ルール上は第2回・第3回期日まで行うことができますが、実務上は第1回期日でほぼ方向性が決まることが多いです。
答弁書をしっかり準備し、第1回期日で会社の主張を十分に伝えることができれば、その後の調停交渉でも有利な立場に立てます。逆に準備不足のまま第1回期日を迎えると、会社に不利な方向で調停が進んでしまい、納得のいかない条件で解決せざるを得なくなります。
答弁書の内容がこの手続き全体の方向性を決めると言っても過言ではありません。答弁書には、相手方(申立人)の主張に対する反論を具体的事実に基づいて記載する必要があります。事実関係の整理・証拠の準備・法的な主張の組み立て——これを短期間でやり切るために、弁護士のサポートが不可欠です。
4. 労働審判の「逃げ道のなさ」 調停不成立→審判→異議で自動的に裁判へ
労働審判の手続きは、通常の調停と異なり、逃げ道がほとんどないという特徴があります。
通常の調停(民事調停)であれば、話し合いがまとまらなければそれで終わり。その後裁判を起こすかどうかは相手方が判断することです。しかし労働審判は違います。
労働審判の手続きフロー
- 申立書・答弁書の提出 → 第1回期日
- 調停(話し合い)を試みる
- 調停成立 → 解決
- 調停不成立 → 労働審判(裁判所が一定の判断を下す)
- 双方が異議を申し立てない → 労働審判の内容で確定
- どちらかが異議申立 → 自動的に通常の裁判(民事訴訟)に移行
つまり、調停がまとまらなければ審判が出て、それに納得できなければ異議を申し立てることになりますが、異議を申し立てた瞬間に通常の民事裁判が自動的に始まります。
準備不足のまま第1回期日を迎えて、会社に不利な労働審判が出てしまった——「この内容は納得できないので異議を申し立てよう」と思っても、異議を申し立てた瞬間に、1年以上かかる通常の裁判が始まります。これが労働審判の「逃げ道のなさ」です。
だからこそ、第1回期日までに十分な準備をして、調停の中で会社に有利な解決を得ることが最善策なのです。「後でじっくり反論すればいい」という姿勢では、気づいた時には後戻りできない状況になっています。
5. 答弁書をしっかり準備することが最善の結果につながる理由
答弁書で会社の主張を十分に整理して提出することには、第1回期日当日の対応もスムーズになるというメリットがあります。
答弁書にメインの内容を網羅して書いておければ、当日は「答弁書に書いた内容を補足説明する」というイメージで臨めます。答弁書に書いていない補足的な内容を口頭で追加するという対応ができます。
答弁書準備のポイント
- 申立書の主張に対する反論を具体的事実に基づいて記載する
- 会社側の主張の根拠となる証拠(書面・メール・記録等)を整理して添付する
- 事実関係について会社の認識を明確に示す
- 法的な主張(なぜ申立人の請求が認められないのか)を弁護士と整理する
- 相手方の主張を認める部分と認めない部分を明確に区別する
逆に準備不足の状態では、当日に事実関係が整理されていないため、話しにくく、説得力に欠ける対応になってしまいます。第1回期日でほぼ勝負が決まる以上、この準備の差が最終結果に直結します。
6. 申立書が届いたら、すぐに弁護士に相談する
ここまでご説明してきた内容を踏まえると、答えは一つです。労働審判の申立書が届いたら、すぐに弁護士に相談してください。
普段から弁護士と顧問契約を結んでいる場合は、すぐに顧問弁護士に連絡してください。顧問弁護士がいない場合は、申立書を受け取ったその日から弁護士探しを始めてください。
弁護士に相談する際に準備するもの
- 労働審判の申立書(届いた書類一式)
- 当該社員との雇用契約書・労働条件通知書
- 申立人(元社員等)との間でやり取りしたメール・書面
- 注意指導書・懲戒処分通知書等(ある場合)
- 就業規則・賃金規程等
- 給与明細・タイムカード等(残業代請求が含まれる場合)
弁護士がいない状態でいきなり第1回期日を迎えることだけは避けてください。それは最悪の結果につながるリスクがあります。たとえ短期間であっても、弁護士と協力して事実関係を整理し、答弁書を作成した上で第1回期日に臨むことが、最善の結果を得るための唯一の方法です。
7. まとめ
- 申立書が届いたらすぐ動く——第1回期日まで約1ヶ月、答弁書提出まで実質2〜3週間しかない
- 第1回期日でほぼ勝負が決まる——通常の裁判とは全く異なる。答弁書の内容が最終結果を左右する
- 調停不成立→審判→異議申立→自動的に裁判移行——逃げ道がないからこそ、第1回期日の準備が最重要
- 答弁書を具体的事実・証拠に基づいてしっかり準備する——第1回期日当日の対応もスムーズになる
- 申立書が届いたらすぐに弁護士に相談する——顧問弁護士がいない場合はその日から探し始める
労働審判の申立書が届いた経営者の皆様は、すぐに弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 労働審判の申立書が届きましたが、何を請求されているのか分かりません。まず何をすればよいですか。
A. 申立書を弁護士に持参して相談することが最優先です。申立書には申立人の請求内容(解雇無効・残業代・退職金など)が記載されているはずです。弁護士が内容を確認した上で、対応方針を検討します。時間が限られていますので、申立書を受け取った日または翌日には弁護士に連絡してください。
Q2. 労働審判に弁護士なしで対応することはできますか。
A. 法律上は本人対応(弁護士なし)でも可能ですが、非常に危険です。第1回期日でほぼ勝負が決まる労働審判において、法律・判例の知識がない状態で対応することは、会社に著しく不利な結果を招くリスクがあります。費用が心配な場合でも、法律相談だけでも弁護士に相談して方針を確認することをお勧めします。
Q3. 労働審判の調停で会社が多く払わなければならないケースはどんな場合ですか。
A. 解雇の有効性が問題になるケースで解雇無効と判断されれば、解雇日以降の給与の支払い義務(バックペイ)が生じます。残業代請求が認められれば、未払い残業代の支払いが必要になります。具体的にどの程度の支払いが必要になるかは、個別の事実関係・証拠によって大きく異なりますので、弁護士に相談してください。
Q4. 労働審判の申立書が届く前に、予防的にできることはありますか。
A. 普段から弁護士と顧問契約を結んで、問題社員への対応をこまめに相談しながら進めることが最善の予防策です。注意指導・懲戒処分を適切に積み重ね、証拠を残しておくことで、万が一労働審判が申し立てられても、しっかりした反論ができる状態を整えることができます。
最終更新日:2026年4月30日