問題社員262 業務指示に従わない。
動画解説
この記事の要点
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まず「その指示は本当に仕事の指示か」を確認する——仕事と関係のない指示に強く従わせようとするとハラスメントになりやすい 雇用契約で予定された仕事の指示であれば、従わないことは契約の核心部分を履行しないことに等しい。しかし仕事と関係のない指示を強制しようとするのは別の問題 |
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「具体的に何をしてほしいか」を伝えることが最重要——「もっと気を使え」「ちゃんとやれ」では伝わらない 「何時までにこれをこうやってください。最優先でお願いします」という具体的な指示でなければ、従っているのか従っていないのかすら判断できない |
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「育成のための指示の仕方」と「指示に従わなくて困っている」は全く別の話——混同しないことが重要 あえて抽象的に指示して自分で考えさせる育成方法は、指示に従わなくて困っているケースには全く当てはまらない |
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一度だけでなく繰り返し具体的に指示・指導し、それでも従わない場合は注意指導・懲戒処分へ 一度伝えただけでは証拠として不十分なことが多い。繰り返し具体的に伝えた上で従わない場合に、注意指導・懲戒処分の段階へ進む |
目次
1. まず確認すること 「その指示は本当に仕事の指示か」
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
業務指示に従わない社員の相談を受けた際、私が最初に確認するのが「その指示の内容が本当に仕事の指示かどうか」という点です。
社員との雇用契約は、給料を払って働いてもらう契約です。つまり、その契約で予定されている仕事を、合理的な理由もなくやらないということは、契約の核心部分を履行しないということになります。仕事の指示に従わないのであれば、それは雇用契約上の義務を果たしていないことになりますから、強めに指示をしても問題ありません。
一方で、仕事とは関係のないことの指示には注意が必要です。たとえば、会社の規模が小さいと社長のプライベートと会社の仕事が混在しがちで、社長が家で使うものを買いに行かせるような指示が出ることがあります。しかし、そのような指示は雇用契約上の権限がありませんので、強制しようとすると問題になります。
チェックポイント:その指示は仕事上必要なものか
- 雇用契約・就業規則上、その指示に従う義務があるか
- 業務遂行上必要なものとして合理的に説明できるか
- 業務とは関係のない個人的な便宜のための指示になっていないか
この前提がずれると、その後のどんな対応を考えても意味がなくなりますので、まずここをしっかり確認してください。
2. 仕事と関係のない指示への対応 ハラスメントリスクに注意
「新入社員なんだから先輩にこれぐらい気を使うのは当然だろう」という感覚で、業務とは直接関係のないことを強制しようとすることがあります。しかし、今の時代こういった対応は失敗することが多く、ハラスメントになりやすいです。
業務遂行上必要なことであれば、よほどやりすぎでなければハラスメントになりにくいのが原則です。しかし、業務と関係のないことを強制しようとしたり、強い言葉で言ったりすると、すぐにハラスメントと評価されやすくなります。
また、SNSで拡散されて会社の評判が落ちると、人材採用が難しくなってますます人手不足になるというリスクもあります。仕事をやる上で必要なものかどうかを常に意識した上で、指示・命令を行うようにしてください。
3. 仕事の指示に従わない場合の対応 「具体的に何をしてほしいか」を伝える
仕事の指示に従わない社員がいる場合、考えなければならない最重要のポイントは「具体的に何をやってもらいたいかを伝えているか」ということです。
「もっと気を使え」「ちゃんとやれ」「しっかり仕事してくれ」——これらは何を言っているのか分かりません。指示に従っているかどうかの判断もできません。
❌ 伝わらない指示・指導
- 「もっと気を使いなさい」
- 「ちゃんと仕事してください」
- 「周りのことを考えて行動してください」
✓ 具体的な指示・指導
- 「○日の○時までに△△の資料を作成して私に提出してください」
- 「この業務を最優先でやってください。他の業務は後回しにして構いません」
- 「業務が完了したらメールで私に報告してください。報告の内容はこのような形式でお願いします」
具体的に伝えなければ、そもそも指示に従っているかどうか分からないまま話が進んでしまいます。問題のある社員に「いや違うって反論してくる」場合でも、具体的な指示をしていれば「この指示に従ったかどうか」が明確になります。遠回しに話して言わないでいると、「この社長は怖くて言えないんだろう」という風に受け取る問題社員もいます。
4. 「育成のための指示」と「指示に従わなくて困っている」の違い
「いちいちそこまで細かく指示を出さなければいけないのか。自分の頭で考えてほしい。細かく指示すると成長しないでしょ」とおっしゃる経営者の方がいらっしゃいます。
確かに、能力のある社員を育成する際に、あえてある程度抽象的な指示をして、自分で考えて動くことを促すという方法は有効なことがあります。しかしそれは「悩んでいない」状態の話です。その社員の成長をどうお手伝いするか、という前向きな取り組みです。
2つのケースを混同しないこと
| 育成のための指示方法 | 成長してほしい社員に対して、あえて考える余白を与える。悩んでいない。工夫して育てようとしている |
| 指示に従わなくて困っている | 指示してもやってくれない。悩んでいる。具体的に伝えなければ「指示に従っていない」という評価すらできない |
「指示に従わなくて困っている」という状態で、「育成のためにあえて抽象的な指示をしている」という発想を持ち込むと、対応が全く的外れになります。困っているなら具体的に伝えることが先決です。
5. 具体的な指示を繰り返しても従わない場合 注意指導・懲戒処分へ
具体的な指示を行い、それでも従わない場合は、注意指導・懲戒処分という段階に進みます。
ただし、一度だけ言っただけでは証拠・記録として不十分なことが多いです。具体的な指示を繰り返し行い、その都度「従ったかどうか」を確認して記録を残していくことが重要です。
業務指示に従わない場合の対応順序
- 具体的な業務指示を行う(口頭・メール等で記録可能な形で)
- 指示に従ったかどうかを確認する
- 従わない場合は具体的事実を示して口頭で注意指導する
- 繰り返し従わない場合は書面による厳重注意
- それでも改善しない場合は懲戒処分(けん責・減給等)
- 懲戒処分を繰り返しても改善しない場合は退職勧奨・解雇の検討(弁護士に相談)
「指示に従っていないこと」を注意指導や懲戒処分の根拠とするためには、「具体的にどのような指示をしたのに、どのような形で従わなかったか」という事実が明確でなければなりません。抽象的な「言うことを聞かない」という記録では、懲戒処分の根拠として弱くなります。
指示の内容・日時・相手の反応を記録として残しておくことが、後の対応をスムーズにします。
6. まとめ
- まず「その指示は本当に仕事の指示か」を確認する——仕事と関係のない指示への強制はハラスメントになりやすい
- 具体的に何をしてほしいかを伝える——「何時までにこれをこのようにやってください」という形で具体的に指示する
- 「育成のための指示方法」と「指示に従わなくて困っている」を混同しない——困っているなら具体的に伝えることが先決
- 繰り返し具体的に指示・記録を残す——一度だけでは証拠として不十分。指示と相手の反応を記録する
- それでも従わない場合は注意指導→懲戒処分へ——弁護士に相談しながら適切な手続きを踏む
業務指示に従わない社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「仕事はやるが自分の思うやり方でやる」という社員にはどう対応すればよいですか。
A. 「自分のやり方で仕事をすること」自体が問題なのか、「会社の指定した方法・手順に従わないこと」が問題なのかを整理してください。会社の業務手順や方針に従うことを具体的に指示した上で、それに従わない場合は「具体的に指示した業務手順に従わなかった」という事実として注意指導の対象になります。
Q2. 業務指示を口頭で伝えましたが記録がありません。問題になりますか。
A. 口頭での指示だけでは「言った・言わない」のトラブルになりやすく、証拠として弱くなります。今後は、業務指示をメールや書面でも行い、「〇月〇日に口頭でこのような指示を行った」という記録をメモや上司への報告書として残す習慣をつけてください。指示の記録と相手の反応の記録の両方を残すことで、後の対応がスムーズになります。
Q3. 正当な理由のある業務指示への拒否は懲戒処分の対象になりますか。
A. 雇用契約上の義務の範囲内にある合理的な業務指示に従わない場合は、就業規則上の懲戒事由に該当する可能性があります。ただし懲戒処分を行うためには、①具体的な指示をしたこと、②正当な理由なく従わなかったこと、③注意指導を行ったが改善しなかったこと、を証明できる必要があります。懲戒処分の前には弁護士に相談することをお勧めします。
最終更新日:2026年4月30日