問題社員174 自分の仕事の仕方にこだわり指示に従わない。
目次
動画解説
1. 自分の仕事の仕方にこだわり指示に従わない社員の問題とは
2. 仕事の仕方を決める権限は会社経営者にある
自分の仕事のやり方にこだわり、会社の指示に従わない社員の問題を考える際には、まず仕事のやり方を決める権限が誰にあるのかを理解しておく必要があります。
日常の業務では、社員や管理職がある程度の裁量を持って仕事を進めていることが一般的です。例えば、担当している業務の細かな進め方について、現場の社員や管理職が判断している場面は少なくありません。そのため、実務の感覚としては「それぞれが自分のやり方で仕事をしている」と感じることもあるでしょう。
しかし、この裁量は社員や管理職が自由に持っているものではありません。会社経営者が一定の範囲で裁量を与えているからこそ、仕事のやり方を決めることができているという関係にあります。つまり、最終的に仕事の進め方を決める権限は会社経営者にあり、その権限の一部を管理職や社員に委ねているにすぎません。
そのため、会社として特定の仕事の進め方を指示した場合には、社員はその指示に従う必要があります。仮に社員が自分なりのやり方を持っていたとしても、会社が別の方法を指示したのであれば、会社の指示に従って業務を行うことが原則です。
また、管理職が部下に対して仕事のやり方を指示する場合も、その権限は会社経営者から与えられているものです。したがって、管理職の指示に従うことも、会社の指示に従うことと同じ意味を持ちます。
会社経営者としては、こうした権限関係を正しく理解し、必要な場面では会社としての方針を明確に示すことが重要になります。
3. 上司の業務指示に従う義務がある理由
会社の指示に従わず、自分の仕事のやり方を優先する社員の行動は、単なる職場の人間関係の問題ではありません。場合によっては、労働契約上の義務を果たしていない行為と評価される可能性があります。
社員は会社と雇用契約(労働契約)を結び、その契約に基づいて働いています。労働契約の基本的な内容は、会社が指示する業務を行い、その対価として給与を受け取るという関係です。そのため、社員には会社の業務指示に従って働く義務があります。
もちろん、どのような指示であっても無条件に従わなければならないわけではありません。例えば、明らかに不合理な指示や違法な指示など、合理性を欠く業務命令については問題となることがあります。しかし、通常の業務の範囲で合理性がある指示であれば、社員はそれに従って業務を行う必要があります。
したがって、上司から「このやり方で仕事を進めてください」と具体的な指示が出ているにもかかわらず、それを無視して自分のやり方で業務を続ける場合には、会社の業務命令に従っていない状態と評価される可能性があります。
このような行動が繰り返されると、単なる業務上のトラブルではなく、会社の指示に従わない社員として、指導や懲戒の対象となる可能性も出てきます。
会社経営者としては、社員が指示に従わない場合に、その行動が単なる意見の違いなのか、それとも会社の業務命令に従わない問題行動なのかを見極めることが重要になります。
次の項目では、実際に指示に従わない社員がいる場合に、最初に行うべき対応としての面談の重要性について解説します。
4. 指示に従わない社員が生まれる背景
自分の仕事のやり方にこだわり、会社の指示に従わない社員がいる場合、最初に行うべき対応は面談による話し合いです。いきなり厳しい処分や書面での注意から始めるのではなく、まずは直接話をして状況を確認することが重要になります。
実務では、社員本人に「指示に従っていない」という自覚がないケースも少なくありません。例えば、上司からの指示を「強い命令ではなく、提案やアドバイスだと思っていた」という認識で仕事をしている場合もあります。このような場合には、会社としての指示であることが十分に伝わっていない可能性があります。
そのため、まずは面談の場で、会社としてその仕事のやり方を本気で求めていることをはっきり伝えることが重要です。対面で話すことで、会社が問題を重く見ていることが伝わりやすくなり、社員にとっても状況の重大さを理解するきっかけになります。
また、面談は単に会社の考えを伝える場ではなく、社員本人の考えを確認する機会でもあります。なぜ指示された方法ではなく、自分のやり方で仕事をしているのか、その理由を聞くことで、問題の背景が見えてくることもあります。
会社経営者としては、最初から対立的な姿勢で対応するのではなく、事実関係と認識の違いを整理するための面談を行うことが重要になります。
次の項目では、面談の際に意識しておきたいポイントとして、社員の言い分をどのように聞くべきかについて解説します。
5. まずは面談で本人の認識を確認する
指示に従わない社員との面談では、会社の考えを伝えるだけでなく、社員本人の言い分を聞くことも重要です。一方的に注意するだけでは、社員が納得せず、問題が長引く可能性があるためです。
実務では、社員が自分のやり方にこだわる背景に、一定の理由があることもあります。例えば、「現場ではその方法の方が効率的だと思った」「従来からそのやり方で問題なく業務が回っていた」といった事情を挙げることがあります。このような説明を聞くことで、現場の実情や業務上の課題が見えてくる場合もあります。
そのため、面談ではまず社員の話を十分に聞き、どのような考えでその行動を取っているのかを確認することが重要になります。会社側が状況を理解しようとしている姿勢を示すことで、社員の側も話しやすくなることがあります。
もっとも、社員の言い分を聞いた結果として、会社の指示している仕事のやり方の方が合理的であると判断することもあります。その場合には、会社としての判断を明確に示し、会社の指示した方法で業務を行う必要があることをはっきり伝えなければなりません。
会社経営者は会社全体の状況を見ながら判断する立場にあります。現場の事情を聞くことは重要ですが、最終的には会社全体の利益や業務運営を考えた判断を行う必要があります。
次の項目では、社員が指示を軽く受け止めている場合などに重要となる、業務命令として仕事のやり方を明確に指示する方法について解説します。
6. 会社としての業務方針を明確に伝える
面談で話し合いを行っても社員が会社の指示を軽く受け止めている場合には、業務命令として明確に指示することが必要になります。単なるアドバイスや提案ではなく、会社としての正式な指示であることをはっきり伝えることが重要です。
実務では、社員が上司の指示を「提案」や「意見」と受け取ってしまい、自分の判断で別のやり方を続けてしまうことがあります。そのような場合には、「これは会社の業務命令である」という点を明確にし、会社の指示した方法で業務を行う必要があることを伝える必要があります。
特に、会社の指示を軽視する傾向がある社員に対しては、曖昧な表現ではなく、はっきりとした言い方で伝えることが重要です。会社としてどのような仕事の進め方を求めているのかを明確にし、その方法で業務を行うよう指示します。
もっとも、仕事の進め方を指示する際には、抽象的な言い方だけでは不十分なことがあります。例えば、「そのやり方はやめてください」と伝えるだけでは、社員がどのように業務を進めればよいのか分からない場合もあります。そのため、どのような方法で仕事を行うべきなのかを具体的に示すことが重要になります。
会社経営者としては、現場の状況や業務の内容を確認しながら、必要に応じて管理職の意見も聞き、会社として採用する仕事の進め方を判断することが求められます。そのうえで、会社の方針として明確に指示を出すことが重要になります。
次の項目では、業務命令を出す際に検討されることの多い、書面やメールによる業務指示の出し方と注意点について解説します。
7. 業務命令として具体的な指示を出す方法
社員が会社の指示を軽視している可能性がある場合には、書面やメールで業務指示を出す方法を検討することもあります。口頭での指示だけではなく、文章として残しておくことで、会社としてどのような指示を出しているのかを明確にすることができるためです。
例えば、業務指示書や業務命令書のような形で文書を交付したり、メールで具体的な業務の進め方を伝えたりする方法があります。文章として残しておくことで、社員が後から「そのような指示は聞いていない」と主張することを防ぐ効果も期待できます。
もっとも、書面やメールで指示を出す場合には注意すべき点があります。それは、指示の内容をできるだけ具体的に記載することです。抽象的な表現だけでは、社員が自分に都合の良い解釈をしてしまう可能性があります。
特に、自分の仕事のやり方に強いこだわりを持つ社員の場合、曖昧な指示では自分の従来の方法を続けながら「会社の指示にも従っているつもりだった」と説明することもあります。そのため、どのような方法で業務を行うべきなのか、具体的な業務内容や手順を示すことが重要になります。
また、会社経営者が業務の細かな内容まで把握していない場合には、現場の管理職などから事情を聞きながら指示内容を整理することも必要になります。実際の業務内容を理解したうえで指示を出さなければ、具体的な業務指示を作ることが難しいためです。
次の項目では、それでもなお指示に従わない場合に検討することになる、厳重注意や懲戒処分の考え方について解説します。
8. 書面による指示・注意の重要性
面談や業務指示を行ってもなお社員が自分の仕事のやり方を続け、会社の指示に従わない場合には、厳重注意や懲戒処分を検討する段階に入る可能性があります。
特に問題となるのは、会社が面談などで明確に指導を行ったにもかかわらず、その後も同じ行動を繰り返すケースです。このような場合、単なる勘違いやうっかりではなく、会社の指示を理解したうえで従っていない可能性が高くなります。
会社として具体的な指導を行い、仕事の進め方について説明しているにもかかわらず、社員が自分のやり方を続けるのであれば、会社の業務命令に従っていない状態と評価されることがあります。その結果、厳重注意などの措置を取ることが検討されることになります。
厳重注意を行う場合には、単に「会社の指示に従ってください」と伝えるだけではなく、どのような行為が問題であったのかを具体的に示すことが重要です。例えば、いつ、どの業務で、どのような指示が出されていたのか、その指示に対してどのような行動が取られたのかを整理して伝える必要があります。
そのうえで、今後は会社の指示に従って業務を行うよう求める内容の厳重注意書を交付するなど、正式な対応を取ることもあります。こうした対応を行うことで、社員に対して問題の重大性を明確に示すことができます。
多くの場合、この段階まで対応すると社員が会社の方針に合わせてくるか、あるいは自ら退職を選択することもあります。しかし、まれにそれでも改善しないケースもあります。そのような場合には、懲戒処分などのさらに踏み込んだ対応を検討することになります。
次の項目では、問題社員対応で会社が陥りがちな失敗として、「言っても直らないから」と対応をやめてしまうことの危険性について解説します。
9. 改善が見られない場合の厳重注意と懲戒対応
自分の仕事のやり方にこだわり、会社の指示に従わない社員に対して、何度注意しても改善が見られない場合、「言っても直らないから」と対応をやめてしまうケースがあります。しかし、このような対応は会社にとって大きなリスクになります。
実務では、最初のうちは何度か注意していたものの、改善が見られないために次第に指導をやめてしまうというケースが少なくありません。対応する管理職や会社経営者にとっても、同じことを何度も伝えるのは大きな負担になるためです。
しかし、途中で注意や指導をやめてしまうと、社員が会社に黙認されたと誤解する可能性があります。最初は注意されていたにもかかわらず、途中から何も言われなくなると、「このやり方でも問題ないのではないか」と考えてしまうことがあるためです。
また、問題行動を長期間放置した結果、後になってから厳しい対応を取ろうとすると、社員から「それほど問題ならなぜ早く言わなかったのか」と反発されることもあります。このような状況になると、会社側の対応が後出しの指摘のように見えてしまう可能性があります。
会社経営者としては、社員の行動が会社の方針に反していると判断するのであれば、改善を求める指導を継続することが重要になります。たとえすぐに改善しなくても、会社として許容していないことを明確に示し続ける必要があります。
このような積み重ねがあることで、後に厳重注意や懲戒処分、さらには退職勧奨などを検討する場面でも、会社の対応の正当性が説明しやすくなります。
次の項目では最後に、会社経営者がこの問題に対応する際に意識しておくべき重要なポイントについてまとめます。
10. 問題社員対応で会社経営者が意識すべきポイント
自分の仕事のやり方にこだわり、会社の指示に従わない社員への対応では、会社経営者として放置しない姿勢を明確にすることが何より重要です。会社の方針に反する行動を見過ごしてしまうと、職場全体の秩序に影響を及ぼす可能性があります。
特に注意すべきなのは、「本当は問題だと思っているのに、トラブルになるのを避けて何も言わない」という対応です。会社経営者が問題だと考えているのであれば、その時点で社員に対して明確に伝える必要があります。問題行動を見過ごしてしまうと、社員にとっては黙認されたと受け取られてしまうことがあります。
また、問題社員への対応では、会社として一貫した姿勢を示すことも重要です。最初は注意していたのに途中から何も言わなくなってしまうと、会社の方針が曖昧になり、職場のルールそのものが軽視される可能性があります。会社経営者としては、許容できない行動については繰り返し改善を求める姿勢を示すことが必要になります。
もっとも、この問題の前提として重要なのは、会社として採用している仕事のやり方が合理的であることです。会社の業務の進め方が非効率であったり、現場の実情と大きく乖離していたりする場合には、社員が納得できない状況が生まれることもあります。会社経営者としては、業務の進め方そのものについても定期的に見直し、社員が理解しやすく合理的な業務体制を整えることが重要になります。
そのうえで、会社の方針に反する行動があった場合には、面談による指導、業務命令、書面による注意、厳重注意や懲戒処分といった対応を段階的に検討していくことになります。
問題社員への対応は判断が難しい場面も多く、対応を誤ると労務トラブルに発展する可能性もあります。当事務所では、会社経営者の立場から、問題社員への指導方法や業務命令の出し方、懲戒処分の進め方などについて実務的なアドバイスを行っています。対応に悩まれる場合には、弁護士への相談も検討してみてください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/03/11
よくある質問(FAQ)
Q1. 「自分のやり方のほうが効率が良い」と主張する社員に対しても、指示に従わせることは可能ですか?
A1. はい、可能です。仕事の進め方を決定する権限(業務指揮権)は会社にあります。たとえ個人の主観で効率が良いと判断しても、組織全体の統制やリスク管理の観点から会社が指定した手順がある場合、社員はそれに従う義務があります。
Q2. 指示に従わないことを理由に、いきなり懲戒解雇することはできますか?
A2. 一般的には極めて困難です。まずは口頭注意、書面による警告、軽い懲戒処分(譴責等)といった段階を踏む必要があります。改善の機会を十分に与えたにもかかわらず、頑なに拒絶し続け、業務に重大な支障が出ている場合に初めて検討の遡上に載ります。
Q3. 業務命令を出す際、パワハラと言われないために注意すべき点はありますか?
A3. 「業務上の必要性」に基づいた客観的な指示であることを意識してください。人格を否定するような言動を避け、なぜその手順が必要なのか(安全性、品質維持、チーム連携など)という理由とともに、具体的かつ淡々と指示を出すことがリスク回避に繋がります。

