問題社員171 在宅勤務だと成果をあげられない。

動画解説

 

1. 在宅勤務で成果が上がらない社員の問題とは

 在宅勤務を導入する企業が増える中で、会社経営者からよく相談されるのが「実在宅勤務にすると成果が上がらない社員がいる」という問題です。出社しているときには問題が見えなかった社員でも、在宅勤務になると仕事の進み方が遅くなったり、成果物の質が下がったりするケースがあります。

 在宅勤務は柔軟な働き方として多くのメリットがありますが、すべての社員にとって同じように効果的とは限りません。自己管理が苦手な社員や、指示がないと仕事を進められない社員の場合、在宅勤務では業務の進行が停滞してしまうことがあります。

 また、在宅勤務では勤務状況が見えにくくなるため、実際にどれだけ仕事をしているのか把握しづらいという問題もあります。その結果、会社としては成果が出ていないにもかかわらず、適切な対応ができないまま時間が過ぎてしまうこともあります。

 会社経営者としては、単に「在宅勤務だから仕方ない」と考えるのではなく、成果が上がらない原因を整理し、必要な対応を取ることが重要になります。

2. 在宅勤務では「見えない働き方」が問題になりやすい

 在宅勤務の大きな特徴は、働き方が見えにくくなることです。出社している場合には、社員がどのように仕事をしているのか、周囲の社員や管理職が自然に把握することができます。しかし在宅勤務では、仕事の様子が直接見えないため、業務の進み具合を把握しづらくなります。

 その結果、実際には仕事が進んでいないにもかかわらず、会社側が問題に気付くまで時間がかかることがあります。特に、成果が数値化しにくい業務では、この問題が顕著になります。

 また、社員の側も在宅勤務になることで、仕事と私生活の区別が曖昧になる場合があります。自宅という環境では集中力を保つことが難しいこともあり、勤務時間中であっても仕事に十分な時間を使えていないケースも見られます。

 こうした状況が続くと、結果として成果が上がらない状態が固定化してしまいます。

3. 成果が上がらない原因は社員だけとは限らない

 在宅勤務の問題を考える際に、会社経営者として特に重要なのは、その業務がそもそも成果を測定できる性質のものなのかという点です。

 在宅勤務では、社員がオフィスにいないため、どのように仕事をしているのかを直接見ることができません。出社していれば、結果がまだ出ていなくても「今この作業をしている」「こういう検討を進めている」といった仕事の過程を把握することができます。しかし在宅勤務では、その過程が見えにくくなります。

 そのため、仕事の成果や成果物が明確である業務ほど、在宅勤務と相性がよい傾向があります。例えば、文書作成、資料作成、データ分析、プログラム開発などのように、成果物がはっきりしている業務は、在宅勤務でも比較的管理しやすいといえるでしょう。

 他方で、成果の評価が難しい業務もあります。たとえば、社内調整や企画検討、情報収集など、仕事の途中段階が重要になる業務では、結果だけでは評価しづらいことがあります。このような業務を在宅勤務で行わせると、会社側としても「本当に仕事をしているのか分かりにくい」という状況になりがちです。

 このような状態になると、会社経営者や管理側としては、どうしても「サボっているのではないか」という疑いを持ってしまうことがあります。しかし、その原因は社員個人の問題ではなく、業務の性質と在宅勤務の相性の問題である可能性も十分にあります

 したがって、在宅勤務で成果が上がらないと感じた場合には、個々の社員の問題として判断する前に、その業務自体が在宅勤務に適しているのかどうかを冷静に見直す必要があります。

 この視点を持たずに在宅勤務を導入すると、「在宅勤務なのに生産性が上がらない」という問題が起きやすくなります。そこで次に重要になるのが、どのような仕事が在宅勤務に向いているのかという点です。次の項目では、この点についてもう少し具体的に見ていきます。

4. まず仕事の内容と進め方を明確にする

 在宅勤務で成果が上がらない問題を考える際には、どのような仕事が在宅勤務に向いているのかを整理することが重要です。すべての業務が在宅勤務に適しているわけではなく、仕事の性質によって向き・不向きがはっきり分かれることがあります。

 在宅勤務に比較的向いている仕事は、成果物が明確で、結果によって評価できる業務です。例えば、文書作成や資料作成、データ処理、プログラム作成などのように、仕事の成果が形として残る業務は、会社としても成果を確認しやすいため、在宅勤務でも大きな問題になりにくい傾向があります。

 一方で、在宅勤務と相性があまりよくない業務もあります。たとえば、社内の調整業務や、状況を見ながら柔軟に対応する必要がある仕事などは、成果を単純な結果だけで評価することが難しい場合があります。また、職場でのコミュニケーションや状況把握が重要になる業務では、対面でのやり取りが多い方が円滑に進むことも少なくありません。

 出社していれば、結果がまだ出ていなくても「現在どのような仕事を進めているのか」「どこまで作業が進んでいるのか」といった過程を把握することができます。しかし在宅勤務では、そうした過程が見えにくくなるため、結果だけで評価できない仕事は管理が難しくなりやすいという特徴があります。

 その結果、会社としては「仕事をしているのかどうか分からない」という状況になり、不要な疑念や不信感が生まれることもあります。このような状況を防ぐためにも、会社経営者としては、業務の性質を踏まえて在宅勤務の適用範囲を考えることが重要です。

 そしてもう一つ考えておくべきなのが、在宅勤務をどのような目的で導入しているのかという点です。生産性向上のための制度なのか、それとも福利厚生としての側面が強いのかによって、制度の位置付けは大きく変わります。次の項目では、この在宅勤務の位置付けについて解説します。

5. 在宅勤務では成果基準を明確にすることが重要

 在宅勤務を導入している企業は多くありますが、会社経営者として一度整理しておきたいのは、在宅勤務をどのような位置付けの制度として運用しているのかという点です。

 在宅勤務は、生産性向上を目的とした制度として導入されることもあれば、通勤負担の軽減や働きやすさの向上といった福利厚生的な制度として導入されることもあります。このどちらを主な目的とするのかによって、制度の評価の仕方は大きく変わってきます。

 例えば、成果物が明確ではない業務を在宅勤務で行わせている場合、どうしても成果の確認が難しくなることがあります。このような業務を在宅勤務にしている場合、それは厳密には生産性向上の施策というより、働きやすさを重視した福利厚生的な制度として運用されている側面が強いといえるかもしれません。

 もちろん、それ自体が必ずしも問題というわけではありません。会社経営者として、「福利厚生として在宅勤務を認める」という経営判断を行うことも十分あり得ます。社員の満足度向上や採用競争力の強化といった観点から、一定のメリットがある場合もあるからです。

 しかし、在宅勤務を導入した目的が生産性向上であるにもかかわらず、実際には成果が確認できない業務を在宅勤務で行わせている場合には、制度の設計そのものを見直す必要が出てくる可能性があります。

 そのため、在宅勤務で成果が上がらないという問題が起きた場合には、個々の社員の働き方だけを見るのではなく、制度の目的と実際の運用が一致しているかという点を改めて確認することが重要です。

 また、在宅勤務の適性は、業務だけでなく社員のタイプによっても大きく左右されることがあります。次の項目では、在宅勤務に向いている社員の特徴について考えていきます。

6. 在宅勤務でも管理は必要である

 在宅勤務の成果を考える際には、業務内容だけでなく、どのような社員が在宅勤務に向いているのかという視点も重要です。実務の現場を見ていると、在宅勤務でも問題なく成果を上げている社員には、ある程度共通した特徴が見られることがあります。

 特に在宅勤務と相性が良いのは、すでに業務を一人で完結できる能力を持っている社員です。つまり、細かい指示や頻繁な指導がなくても、自分で仕事を進めることができ、必要な成果を責任を持って出すことができる社員です。このような社員は、オフィスにいなくても仕事の進め方が大きく変わることはなく、在宅勤務でも安定して成果を上げる傾向があります。

 実際、在宅勤務がうまく機能している企業では、こうした社員が中心となって業務を進めていることが少なくありません。オンラインでの打ち合わせや成果物の共有だけでも業務が十分に回るため、場所に大きく左右されずに仕事ができるのです。

 これに対して、まだ仕事を覚えている途中の社員や、日常的に指導やサポートが必要な社員の場合は、在宅勤務で同じように成果を出すことが難しくなることがあります。なぜなら、在宅勤務では上司や先輩が業務の進め方を細かく確認することが難しくなるためです。

 会社経営者としては、「在宅勤務という制度」を一律に考えるのではなく、どの社員がその制度に適しているのかという点も含めて検討する必要があります。社員の経験や能力によって、適切な働き方は変わってくるからです。

 特に注意すべきなのが、これから育成していかなければならない社員に対する在宅勤務の扱いです。次の項目では、育成が必要な社員と在宅勤務の関係について解説します。

7. 成果が上がらない社員には面談で改善を求める

 在宅勤務の制度を考える際、会社経営者として特に注意すべきなのが、育成が必要な社員との相性です。結論から言えば、これから仕事を覚えていかなければならない社員にとって、在宅勤務は必ずしも適した働き方とはいえません。

 人を育てるためには、まず相手の仕事の進め方や理解度をよく観察することが必要になります。どこまで理解できているのか、どの部分でつまずいているのかを把握したうえで、適切な助言や指導を行うことで、徐々に能力を高めていくことができます。

 しかし在宅勤務では、社員が目の前にいないため、日常の仕事の様子を細かく把握することが難しくなります。オンライン会議や成果物の確認によって一定の指導は可能ですが、同じ職場にいる場合と比べると、どうしても情報量が少なくなり、指導の難易度が上がるのが実情です。

 オフィスで働いていれば、日常の会話やちょっとした相談を通じて、仕事の進め方を自然に学ぶ機会が生まれます。また、上司や先輩も業務の状況を把握しやすく、適切なタイミングで助言を行うことができます。こうした環境は、特に経験の浅い社員にとって大きな意味を持ちます。

 一方、在宅勤務ではそのような機会が減るため、社員の成長が遅れる可能性もあります。会社として十分な育成ができていないにもかかわらず、成果だけを求める状況になってしまうと、社員との間で認識のズレが生まれることもあります。

 そのため、会社経営者としては、在宅勤務の制度を運用する際に、誰を対象にするのかという点も慎重に検討する必要があります。特に若手社員や新入社員など、これから育成していく段階にある社員については、在宅勤務の扱いを慎重に考えることが重要です。

 次の項目では、この点をもう少し具体的に掘り下げ、若手社員の育成と在宅勤務のリスクについて解説します。

8. 改善が見られない場合の指導と評価の考え方

 若手社員や新しく採用した社員については、会社経営者として特に注意しておきたい問題があります。それは、在宅勤務が育成の機会を減らしてしまう可能性があるという点です。

 新卒社員や経験の浅い社員は、まだ業務の進め方を十分に理解しているとは限りません。仕事のやり方、判断の基準、優先順位の付け方など、多くのことを実務の中で学んでいく必要があります。本来であれば、上司や先輩が近くで仕事の様子を見ながら、適切なタイミングで助言を行い、少しずつ能力を伸ばしていくことが望ましいでしょう。

 しかし在宅勤務の場合、そのような日常的な指導や観察が難しくなることがあります。オンライン会議や成果物の確認を通じて指導することは可能ですが、社員の細かな理解度や仕事の進め方を把握するのは容易ではありません。結果として、社員の課題に気づくのが遅れ、育成のタイミングを逃してしまうこともあります。

 さらに問題になるのは、社員の側から「十分に育成してもらえていない」と感じられてしまう可能性です。特に若手社員の場合、「まだ経験が浅いのだから、会社がしっかり育てるべきではないか」と考えることも珍しくありません。会社側が育成の体制を整えていないまま成果だけを求めてしまうと、社員との間で認識のずれが生じ、労務トラブルにつながることもあり得ます。

 もちろん、在宅勤務でも教育を行うこと自体は不可能ではありません。オンラインミーティングを活用した指導や、成果物に対するフィードバックなど、工夫次第で育成を進めることはできます。ただし、出社している場合と比べると育成の難易度が高くなることは否定できません。

 そのため、会社経営者としては、若手社員の育成段階においては、在宅勤務を前提とするのではなく、必要に応じて出社してもらい、直接指導できる環境を整えることも重要な選択肢になります。

 在宅勤務の制度を適切に運用するためには、業務内容や社員の経験だけでなく、働く環境そのものが整っているかという点も確認する必要があります。

9. 在宅勤務を続けるか見直すかの判断

 在宅勤務で成果が上がらない場合、社員の能力や業務内容だけでなく、在宅勤務の環境が十分に整っているかという点も確認する必要があります。制度だけを導入しても、業務を円滑に進めるための環境が整っていなければ、出社して働く場合よりも不利な状況になってしまうことがあります。

 在宅勤務では、社内で当然のように利用できていた設備や情報に簡単にアクセスできない場合があります。例えば、必要な資料が紙で管理されている場合、在宅勤務では確認が難しくなります。また、社内のデータや情報共有の仕組みが整備されていないと、業務の進行が滞ることもあります。このような状態では、社員が努力しても成果が上がりにくくなってしまいます。

 そのため、会社経営者としては、在宅勤務の制度を運用する際に、業務を行うための環境が十分に整備されているかを確認することが重要です。例えば、オンライン会議が円滑に行える環境、社内データに安全にアクセスできる仕組み、必要な資料のデジタル化などは、在宅勤務を円滑に進めるための基本的な要素といえるでしょう。

 こうした環境が整っていれば、仕事の内容によっては、出社して働く場合と大きく変わらない形で業務を進めることが可能になります。逆に言えば、環境が整っていない状態で在宅勤務を導入すると、社員の努力とは関係なく、生産性が下がってしまう可能性があります。

 在宅勤務で成果が上がらないと感じた場合には、社員個人の問題として考える前に、制度、業務内容、社員の適性、そして環境整備という複数の要素を総合的に見直すことが重要です。

10. 在宅勤務の問題を放置しないことが会社経営者の責任

 ここまで見てきたように、在宅勤務で成果が上がらないという問題が生じた場合、単純に「社員がサボっているのではないか」と考えるだけでは十分とはいえません。会社経営者としては、在宅勤務という制度そのものを俯瞰して見直す視点が重要になります。

 在宅勤務で成果が確認しづらい場合、まず考えるべきなのは、その業務が成果によって評価できる性質のものなのかという点です。成果物が明確な業務であれば在宅勤務でも管理しやすい一方で、成果が数値や成果物として表れにくい業務の場合、在宅勤務では管理が難しくなることがあります。このような場合には、業務の進め方や評価方法そのものを見直す必要があるかもしれません。

 また、社員の経験や能力によっても在宅勤務の適性は大きく変わります。すでに業務を自律的に進めることができる社員であれば在宅勤務でも成果を出しやすいですが、これから育成していく段階の社員の場合は、オフィスでの指導やコミュニケーションが重要になることも多くあります。会社経営者としては、すべての社員に同じ働き方を適用するのではなく、業務内容や育成段階に応じて柔軟に制度を運用することが求められます。

 さらに注意すべきなのは、同じような問題が複数の社員に起きている場合です。もし一人の社員だけであれば個別の事情である可能性もありますが、複数の社員に共通して成果が上がっていない状況が見られるのであれば、会社の制度設計や業務の進め方そのものに問題が潜んでいる可能性もあります。このような場合には、会社全体の働き方や仕組みを見直すことが必要になるでしょう。

 在宅勤務は、働き方の柔軟性を高める一方で、制度設計を誤ると生産性や育成に影響を与える可能性もあります。会社経営者としては、制度の目的や業務内容、社員の状況を総合的に踏まえながら、自社にとって最適な在宅勤務の形を検討していくことが重要です。

 在宅勤務の運用や社員の成果評価、育成体制などについて判断に迷う場合には、労務管理や制度設計の観点から専門的な検討が必要になることもあります。当事務所では、会社経営者の立場に立ち、在宅勤務制度の設計や問題社員への対応などについて実務的なアドバイスを行っています。制度の見直しや労務リスクへの対応についてお悩みの際には、弁護士への相談も一つの選択肢として検討してみてください。

弁護士 藤田 進太郎
監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

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最終更新日 2026/03/11


よくある質問(FAQ)

Q1. 在宅勤務で成果が上がらない社員に対し、出社を命じることは可能ですか?

A1. 原則として可能です。在宅勤務は会社が認めた場合に成立する働き方であり、業務上の必要性(指導・教育が必要、成果不十分など)がある場合には、出社を命じることができます。ただし、雇用契約で勤務場所が自宅に限定されている場合は慎重な検討が必要です。

Q2. 成果が上がらないことを理由に給与を減額できますか?

A2. 直ちに減額することは法的に困難です。まずは評価制度に基づき、具体的な成果不足を人事評価に反映させ、賞与や昇給で差をつける形が一般的です。大幅な減額を伴う場合は、十分な指導・面談の記録と、就業規則上の根拠が必要になります。

Q3. 在宅勤務中のサボりが疑われる場合、PCのログを確認してもよいですか?

A3. 業務管理の範囲内であればログの確認は可能です。ただし、プライバシーへの配慮も必要なため、あらかじめ就業規則やテレワーク規定において「業務管理のためにPCログを取得・確認する場合がある」旨を明示しておくことが実務上望ましい対応です。


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