問題社員167 専門的知識を持たない他部門の社員に暴言を吐く。
目次
動画解説
1. 他部門の社員に暴言を吐く問題社員とは
職場ではさまざまなトラブルが発生しますが、その中でも会社経営者から相談が多いのが、他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員の存在です。特に、自分の担当分野に強い専門知識を持っている社員が、その知識を持たない他部門の社員に対して攻撃的な言葉を投げかけるケースは珍しくありません。
例えば、業務の相談を受けた際に「そんなことも分からないのか」「こんな基本も理解していないのか」といった言い方をしてしまう場合があります。本人としては専門知識を前提に話しているだけのつもりかもしれませんが、言われた側にとっては強い精神的負担となり、職場環境を悪化させる原因になります。
会社という組織は、それぞれの部門が異なる役割を担うことで成り立っています。営業、技術、管理部門など、それぞれ専門分野が異なるため、すべての社員が同じ知識を持っているわけではありません。にもかかわらず、自分の専門知識を基準にして他部門の社員を見下すような言動を繰り返す社員は、典型的な問題社員と言えるでしょう。
このような社員の行動は、単に言葉遣いの問題にとどまりません。暴言が繰り返されると、職場の雰囲気は確実に悪化し、社員同士の協力関係にも悪影響を及ぼします。本来であれば部門間で連携して進めるべき業務が円滑に進まなくなる可能性もあります。
会社経営者として重要なのは、こうした問題を「社員同士のトラブル」として放置しないことです。暴言を受けている社員を守ることは、会社経営者の重要な役割の一つです。
では、なぜ専門知識を持つ社員が、このような暴言を吐く問題社員になってしまうのでしょうか。次の項目では、その背景について整理していきます。
2. 専門知識を理由に暴言を吐く社員が生まれる背景
他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員には、一定の共通した背景が見られることがあります。その一つが、自分の専門知識に対する過度な自信です。
専門分野に強い知識を持っている社員は、その分野に関しては確かに会社にとって重要な存在である場合が多いでしょう。しかし、その知識を持っていない社員に対して苛立ちを感じたり、強い口調で批判したりするようになると、職場の人間関係に深刻な影響を与えることになります。
会社という組織は、それぞれの部門が役割分担をしながら成り立っています。営業には営業の専門性があり、技術部門には技術の専門性があり、管理部門には管理の専門性があります。つまり、すべての社員が同じ知識を持っている必要はないのです。にもかかわらず、自分の専門知識を基準にして他部門の社員を評価し、「なぜ分からないのか」と感情的に責めてしまうことで、暴言という形で問題が表面化します。
また、このような問題社員は、これまでの職場環境の中でその言動が大きな問題として指摘されてこなかった場合も少なくありません。周囲が注意を控えていたり、「あの人はそういう性格だから」と受け流されてきた結果、本人が自分の言動の問題に気づいていないこともあります。
さらに注意が必要なのは、専門知識を持つ社員が組織内で一定の評価を受けている場合です。業務能力が高いことを理由に問題行動が見過ごされてしまうと、本人は「自分の言動は許されている」と認識してしまい、暴言がエスカレートしていくことがあります。
このように、専門知識を持つ社員が問題社員へと変わってしまう背景には、職場環境や会社の対応も少なからず影響しています。では、このような暴言を会社が放置してしまった場合、職場ではどのような問題が起きるのでしょうか。次の項目で詳しく見ていきます。
3. 暴言を放置すると職場で起きる深刻な問題
他部門の社員に対する暴言を「本人同士の問題」として放置してしまうと、職場にはさまざまな悪影響が生じます。最初は一部の社員間のトラブルのように見えても、時間が経つにつれて職場全体の雰囲気を悪化させる要因になっていくことが少なくありません。
暴言を受けた社員は、当然ながら強い不快感や精神的ストレスを感じます。業務上の相談をしただけで攻撃的な言葉を返される状況が続けば、「また嫌な思いをするのではないか」と考え、必要なコミュニケーションを避けるようになることもあります。その結果、本来は部門間で協力して進めるべき業務がスムーズに進まなくなり、業務効率の低下につながる可能性があります。
さらに問題なのは、暴言が繰り返される職場では、周囲の社員も安心して働けなくなるという点です。直接暴言を受けていない社員であっても、「次は自分が言われるかもしれない」と感じることで、職場の空気は徐々に緊張したものになっていきます。
このような状態が続くと、社員のモチベーションは低下し、会社への信頼も揺らぎ始めます。真面目に働いている社員ほど、「このような環境で働き続けてよいのだろうか」と考え、転職を検討することもあります。結果として、会社にとって重要な人材が離れてしまう可能性も否定できません。
また、暴言による精神的負担が大きくなると、体調を崩してしまう社員が出るケースもあります。実務上、職場での人間関係が原因でメンタル不調を訴えるケースは決して珍しいものではありません。
このように、問題社員の暴言は単なる言葉の問題ではなく、職場環境や会社経営にも影響を与える重大な問題です。だからこそ会社経営者は、暴言を受けている社員を守る視点を持つことが重要になります。
では、暴言を受けている社員を守るために、会社はどのような視点を持つべきなのでしょうか。次の項目では、その点について整理していきます。
4. 問題社員の暴言によって被害を受ける社員を守る必要性
他部門の社員に対する暴言の問題を考えるとき、会社経営者は一つ重要な視点を持つ必要があります。それは、誰が実際に被害を受けているのかという点です。
暴言を吐いている問題社員の言動は、最も直接的には、その言葉を向けられている社員に大きな影響を与えます。業務上の相談をしただけで攻撃的な言葉を返される状況が続けば、仕事に対する意欲が下がるだけでなく、精神的にも大きな負担を感じるようになります。毎日の業務の中でこのような状況が続けば、職場に来ること自体が大きなストレスになってしまうこともあります。
会社経営者の中には、「社員同士の問題だから当事者同士で解決すればよい」と考えてしまう方もいます。しかし、暴言を吐く問題社員に対して被害を受けている社員が自分だけで対応するのは、現実には非常に難しい場合が多いものです。立場や関係性によっては、言い返すことすらできないこともあります。
だからこそ、会社としては被害を受けている社員を守るという視点を持つ必要があります。社員が安心して働ける環境を整える責任は、会社経営者にとって重要な責任の一つです。暴言を受けている社員を放置してしまえば、その社員だけでなく、周囲の社員も「会社は自分たちを守ってくれない」と感じるようになり、職場への信頼が失われてしまう可能性があります。
問題社員の暴言に対して会社が適切に対応することは、特定の社員を厳しく扱うためではありません。むしろ、職場で働く社員全体を守るための対応と言えるでしょう。
では、暴言の問題が発生した場合、会社として最初に確認すべきポイントはどこにあるのでしょうか。次の項目では、まず確認すべき「被害側の上司」の対応について解説します。
5. まず確認すべき「被害側の上司」の対応
他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員がいる場合、会社経営者がまず確認すべき重要なポイントがあります。それは、暴言を受けている社員の上司がどのように対応しているのかという点です。
本来、社員が業務上のトラブルに巻き込まれている場合、その社員の直属の上司が状況を把握し、必要に応じて対応することが求められます。特に、他部門の社員から暴言を受けているようなケースでは、上司が盾となり、部下を守る姿勢を示すことが重要です。
しかし実務上は、被害を受けている社員が一人で悩みを抱えてしまっているケースや、上司が問題を十分に把握していないケースも見られます。また、上司自身が対応方法に迷い、問題を大きくしたくないという理由で様子を見てしまうこともあります。
このような状況では、問題が長期間放置されてしまう可能性があります。結果として、暴言を吐く問題社員の言動がエスカレートし、職場環境がさらに悪化することも考えられます。
そのため会社経営者としては、現場にすべて任せるのではなく、問題が発生した際に上司が適切に対応できているかを確認することが重要です。もし被害を受けている社員の上司だけでは対応が難しい場合には、会社として次の段階の対応を検討する必要があります。
では、暴言を吐く問題社員に対しては、どのような形で是正を求めていくのが適切なのでしょうか。次の項目では、問題社員の上司を通じた対応の進め方について解説します。
6. 問題社員の上司を通じた是正対応の進め方
他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員がいる場合、会社として次に検討すべきなのは、その社員の直属の上司を通じて是正を求める対応です。
会社組織では、社員への指導や業務上の管理は基本的に直属の上司が行うものです。そのため、他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員がいる場合には、まずその社員の上司に状況を伝え、行動を改めるよう指導してもらうことが一般的な対応になります。
専門知識を持つ社員の場合、自分の業務能力に自信を持っていることも多く、他部門から直接注意されても素直に受け止めないことがあります。しかし、直属の上司から指導を受けた場合には、組織のルールとして受け止めやすくなることが少なくありません。
この段階では、感情的な対立を避けるためにも、問題となっている行動を具体的に整理して伝えることが重要です。どのような場面でどのような暴言があったのか、職場にどのような影響が出ているのかを明確にしたうえで、改善を求めていく必要があります。
多くの場合、このように上司を通じて指導を行うことで、問題社員の言動が改善されるケースも少なくありません。会社として正式に問題視していることが伝わるだけでも、本人の行動に変化が見られることがあります。
もっとも、問題社員の性格や職場の状況によっては、上司の指導だけでは改善しないケースもあります。そのような場合には、会社経営者自身が関与する対応を検討する必要が出てきます。
次の項目では、会社経営者が直接介入すべきタイミングについて解説します。
7. 会社経営者が介入すべきタイミング
問題社員が他部門の社員に暴言を吐いている場合、まずは現場の上司による指導や部門間での調整によって解決が図られるのが通常です。しかし、それでも状況が改善しない場合には、会社経営者が直接介入することを検討する必要があります。
例えば、問題社員の上司が十分に指導しているにもかかわらず暴言が続いている場合や、上司自身が問題解決に消極的で対応が進まない場合には、現場だけに任せておくことは適切とは言えません。このような場合、会社として問題を正式に認識していることを明確にするためにも、会社経営者が関与することが重要になります。
会社経営者が介入する場合には、問題社員の上司や関係部門の責任者も含めて状況を整理し、事実関係を確認したうえで対応を進めることが望ましいでしょう。会社としてどのような行動が問題と考えているのか、職場環境にどのような影響が出ているのかを明確にし、改善を求めていく必要があります。
また、会社経営者が関与することで、現場だけでは動きにくかった問題が前進するケースも少なくありません。会社として正式に対応しているという姿勢が示されることで、問題社員本人だけでなく、その上司や周囲の社員も状況を真剣に受け止めやすくなるからです。
何より重要なのは、暴言の問題を長期間放置しないことです。問題が長く続くほど職場環境は悪化し、被害を受けている社員の負担も大きくなってしまいます。会社経営者が適切なタイミングで関与することは、社員を守り、職場環境を維持するための重要な経営判断と言えるでしょう。
もっとも、会社経営者が介入してもなお暴言が改善しないケースもあります。そのような場合には、より踏み込んだ対応を検討する必要があります。次の項目では、暴言が改善しない場合の懲戒対応の考え方について解説します。
8. 暴言が改善しない場合の懲戒対応の考え方
問題社員による暴言について、上司による指導や会社経営者の介入を行っても改善が見られない場合には、より踏み込んだ対応を検討する必要があります。その一つが懲戒対応です。
職場において繰り返し暴言が行われているにもかかわらず、会社が何の対応も取らない状態が続けば、被害を受けている社員を守ることができません。会社経営者には、社員が安心して働ける環境を整える責任があります。そのため、注意や指導だけでは改善しない場合には、会社として正式な対応を取ることが必要になることもあります。
例えば、まずは厳重注意書を交付するなどして、問題となっている言動を明確に指摘し、今後同様の行為を行わないよう強く求める方法があります。この段階で本人が自分の言動の問題を認識し、改善に向かうケースも少なくありません。
それでもなお暴言が続く場合には、会社の就業規則に基づき、懲戒処分を検討することになります。職場での暴言は、職場秩序を乱す行為として評価されることがあり、状況によっては懲戒処分の対象となる可能性があります。
もっとも、懲戒処分を行う場合には、事実関係の整理や手続きの進め方を慎重に検討する必要があります。十分な確認を行わないまま処分を行ってしまうと、後になって社員との紛争に発展する可能性もあるためです。
そのため、暴言が繰り返されている状況で懲戒対応を検討する場合には、会社として適切な手順を踏むことが重要になります。
また、このような問題を検討していく過程で、別の重要な問題が見えてくることがあります。それは、管理職としての適性に関する問題です。次の項目では、その点について整理していきます。
9. 管理職の適性が問われるケースとは
問題社員が他部門の社員に対して暴言を繰り返している場合、その問題は当該社員だけの問題にとどまらないことがあります。状況によっては、管理職としての適性が問われるケースも出てきます。
まず考えられるのは、暴言を吐いている社員の上司の問題です。本来、部下の言動を管理し、職場の秩序を保つことは管理職の重要な役割です。にもかかわらず、部下が他部門の社員に対して暴言を繰り返しているにもかかわらず適切な指導が行われていない場合、その管理体制自体に問題がある可能性があります。
専門知識を持つ社員の中には、業務能力が高い一方で、組織の中で人をまとめる役割には向いていないケースもあります。専門分野で優れた成果を出していることと、管理職として適切に部下を指導できることは、必ずしも同じ能力ではありません。そのため、問題社員を十分にコントロールできない状況が続く場合には、管理職としての適性を見直す必要が出てくることもあります。
また、もう一つ見落としてはならないのが、暴言を受けている側の管理職の対応です。本来、部下が他部門の社員から暴言を受けている場合には、その管理職が部下を守るために行動する必要があります。自分だけで対応が難しい場合には、会社経営者や管理部門に状況を報告し、支援を求めることも重要な役割です。
もし、被害を受けている社員の管理職が適切に対応できていない場合には、その点についても教育や指導が必要になるでしょう。状況によっては、管理職としての適性を再評価し、配置を見直すことを検討する必要がある場合もあります。
このように、問題社員による暴言の問題を検討していくと、組織全体の管理体制の課題が見えてくることがあります。会社経営者としては、個々の社員の問題だけでなく、組織として適切に機能しているかという視点から状況を見直すことが重要です。
10. 問題社員の暴言トラブルを弁護士に相談するメリット
他部門の社員に対して暴言を吐く問題社員への対応は、会社経営者にとって非常に悩ましい問題です。現場での指導や会社経営者の介入によって改善するケースも多いものの、状況によっては対応が難しくなることもあります。
例えば、何度注意しても暴言が改善されない場合や、本人が強く反発してトラブルが拡大する可能性がある場合には、会社として慎重に対応を進める必要があります。このようなケースでは、対応方法を誤ると会社と社員の間で紛争が生じる可能性もあるため、対応の進め方を整理しておくことが重要です。
そのような場面で役立つのが、労務問題に詳しい弁護士への相談です。弁護士に相談することで、問題社員の暴言に対してどのような手順で対応を進めるべきか、注意や指導の進め方、懲戒対応を検討する場合のポイントなどを整理することができます。
また、厳重注意書や懲戒処分などの文書作成についても、適切な内容で整備しておくことが重要になります。内容が不十分なまま対応を進めてしまうと、後になって会社側の対応が問題視される可能性もあるためです。こうした点についても、弁護士の助言を受けながら進めることで、会社としてのリスクを抑えた対応が可能になります。
問題社員による暴言の問題は、放置してしまうと職場環境の悪化や社員の離職など、会社経営に大きな影響を与える可能性があります。会社経営者としては、社員を守るという視点を持ちながら、状況に応じて適切な対応を取ることが重要です。
もし、問題社員の暴言トラブルへの対応にお悩みの会社経営者の方は、状況が深刻化する前に弁護士へ相談することも一つの有効な方法です。適切な対応方針を整理することで、社員が安心して働ける職場環境を守り、会社として健全な経営を続けていくことにつながります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
最終更新日 2026/03/25

