この記事の結論
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代理人は、原則として弁護士でなければならない(労働審判法4条1項)

労働審判手続における代理人は、民事訴訟と同様に、原則として、法令により裁判上の行為をすることができる代理人又は弁護士であることが必要とされています。短期間で高度な主張立証が求められることが、その理由です。

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3回以内という短期決着だからこそ、初動から専門的な対応が必要

原則3回以内で審理が終結するため、早い段階から事実関係と法律論について十分な主張を行い、必要な立証を尽くす必要があります。会社側は、申立てを受けたら速やかに弁護士へ相談することが重要です。

 労働審判手続における代理人は、民事訴訟と同様に、原則として、法令により裁判上の行為をすることができる代理人又は弁護士でなければならないとされています(労働審判法4条1項)。これは、労働審判が短期間で権利関係の審理を行う手続であり、当事者に高度な主張立証を求めることと表裏の関係にあります。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の代理人がなぜ原則として弁護士に限られるのか、その理由と例外、そして会社側の対応を解説します。

01代理人は原則として弁護士(労働審判法4条1項)

 労働審判手続は、審理の結果認められる権利関係を踏まえて労働審判を行うとされており、権利関係についての審理を行うことが前提となっています。そして、原則として3回以内の期日において審理を終結しなければならず、その手続の中で争点の整理や証拠調べ等を行う必要があることから、当事者には、手続の早い段階から事実関係や法律論について十分な主張を行い、必要と考える立証を行うことが求められます。

 短期間にこれらを適切かつ効率的に行うためには、実体法および手続法に関する相当程度の法律知識や、主張立証の技術が必要となります。したがって、労働審判手続における代理人は、民事訴訟と同様に、原則として、法令により裁判上の行為をすることができる代理人又は弁護士であることが必要とされているのです(労働審判法4条1項)。

02なぜ弁護士による代理が原則とされるのか

 労働審判が弁護士代理を原則とする背景には、この制度特有の「迅速性」と「専門性」があります。通常の民事訴訟であれば、主張や証拠を段階的に補充していく時間的な余裕がありますが、労働審判では、原則3回以内という限られた期日の中で、争点の整理から証拠調べ、そして調停や審判までを一気に進めます。

 このスピードに対応するには、第1回期日の前の段階で、事実関係を法的に整理し、どの主張をどの証拠で裏付けるのかという立証構造まで組み立てておく必要があります。こうした作業には、実体法(労働契約法や労働基準法など)と手続法(労働審判法・規則、民事訴訟法など)の双方にわたる専門的な知識と技術が求められます。当事者本人だけでこれを短期間で行うことは容易ではなく、適切な権利の実現・防御のために、弁護士による代理が原則とされているのです。会社側にとっても、この迅速な手続に的確に対応するためには、専門家の関与が実務上不可欠といえます。

03弁護士以外が代理人となれる例外(許可代理)

 もっとも、弁護士代理は「原則」であり、例外がまったくないわけではありません。労働審判法4条1項但書は、労働審判委員会が、弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる旨を定めています(許可代理)。これにより、事案によっては、弁護士以外の者が代理人として関与する余地が残されています。

 ただし、これはあくまで委員会の許可を要する例外的な取扱いであり、当然に認められるものではありません。誰でも自由に代理人になれるわけではなく、許可がなければ、弁護士でない者が代理人として手続を追行することはできないのが原則です。会社側としては、「弁護士でなくても代理を頼める」と安易に考えるのではなく、原則は弁護士代理であることを前提に、対応を検討する必要があります。

04社会保険労務士の関与の範囲

 労働問題では社会保険労務士が関与することも多いため、労働審判の代理人になれるのかという点がしばしば問題となります。この点、特定社会保険労務士は、個別労働関係紛争のうち、あっせん等の裁判外紛争解決手続(ADR)の一部について代理を行うことが認められていますが、その代理権の範囲は法令で限定されています。

 労働審判は、裁判所が関与する法的手続であり、あっせん等のADRとは性質が異なります。そのため、特定社会保険労務士であっても、労働審判手続の代理人となることは、原則としてできません。なお、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことは、弁護士法72条により原則として禁止されており、この点にも留意が必要です。会社側としては、労働審判に至った場合には、弁護士に依頼することが基本になると理解しておくとよいでしょう。日頃の労務管理で社会保険労務士の支援を受けている場合でも、労働審判の局面では、弁護士と連携して対応することが実務的です。

経営者が見落としやすいポイント

「顧問の社会保険労務士に労働審判も任せられる」と考えるのは、正確ではありません。特定社会保険労務士のADR代理は、あっせん等に限られ、裁判所の手続である労働審判の代理人にはなれないのが原則です。労働審判の申立てを受けたら、弁護士に相談・依頼することを前提に動くことが重要です。

05会社側が押さえておくべき対応

 労働審判が弁護士代理を原則とするのは、それだけ専門的な対応が求められる手続だからです。会社側としては、申立書や呼出状を受け取ったら、原則3回以内という短い期間の中で、答弁書の作成、証拠の整理、期日での口頭のやり取りまでを見据えて、速やかに会社側専門の弁護士へ相談することが重要です。初動が遅れれば、それだけ主張立証の準備が不十分になり、不利な結果を招きかねません。労働審判の代理は、迅速な手続に精通し、会社側の立場で戦略的に対応できる弁護士に委ねることをお勧めします。

06よくある質問(FAQ)

Q. 労働審判は、社長本人が対応してもよいのですか。

当事者本人が手続を行うこと自体は可能です。もっとも、労働審判は原則3回以内で審理が終結し、早い段階から高度な主張立証が求められるため、代理人は原則として弁護士に限られています(労働審判法4条1項)。会社側としては、弁護士に依頼して対応することが実務的です。

Q. 顧問の社会保険労務士に労働審判の代理を頼めますか。

原則として頼めません。特定社会保険労務士の代理権は、あっせん等の裁判外紛争解決手続(ADR)に限られており、裁判所の手続である労働審判の代理人となることは原則としてできません。労働審判では、弁護士に依頼することが基本となります。

Q. 弁護士以外が代理人になれる場合はありますか。

労働審判委員会が許可した場合には、弁護士でない者が代理人となる余地があります(労働審判法4条1項但書・許可代理)。ただし、これは委員会の許可を要する例外であり、当然に認められるものではありません。原則は弁護士代理です。

経営上のポイント 労働審判手続における代理人は、民事訴訟と同様に、原則として、法令により裁判上の行為をすることができる代理人又は弁護士であることが必要です(労働審判法4条1項)。原則3回以内で審理が終結し、早い段階から事実関係・法律論について十分な主張立証が求められるため、実体法・手続法にわたる専門的な知識と技術が必要になることがその理由です。労働審判委員会が許可した場合には弁護士でない者が代理人となる余地もありますが(同項但書)、これは例外です。特定社会保険労務士のADR代理はあっせん等に限られ、労働審判の代理人にはなれないのが原則です(弁護士法72条にも留意)。会社側としては、申立てを受けたら速やかに、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判を申し立てられ、代理人による対応をお考えでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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