この記事の結論
1

36協定は免罰的効果を与えるにすぎない

36協定は、使用者が労基法上罰せられないという免罰的効果を与えるに過ぎませんので、使用者が個々の労働者に時間外・休日労働義務を生じさせるためには、労働契約上、義務を生じさせる根拠が別途必要です。

2

就業規則に業務命令の根拠規定を設ける必要がある

就業規則に「使用者は、業務上の必要がある場合には、36協定に基づき所定労働時間外に労働を命じることがある」と規定することが考えられます。

 864の記事で解説した過半数代表者の選出とも関連しますが、36協定を締結すれば、それだけで従業員に残業を命じられると誤解している会社は少なくありません。この誤解を正しく理解しておくことは、労務管理の基本です。

 会社側専門の弁護士の立場から、時間外労働をさせる場合に必要な規定を解説します。

01労基法32条の原則(法定労働時間)

 労基法32条は、1項で「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」、2項で「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と定めていますので、原則として使用者は労働者に時間外労働をさせることはできません。

0236協定による例外

 これに対して、労基法36条は、使用者が過半数代表者等との間で36協定を締結した場合には、例外的にその協定で定めた時間、労働を延長させることができると定めています。864の記事で解説した過半数代表者の適切な選出手続は、この36協定を有効に締結するための重要な前提条件です。

0336協定だけでは足りない理由(免罰的効果)

 36協定は、使用者が労基法上罰せられないという免罰的効果を与えるに過ぎませんので、使用者が個々の労働者に時間外・休日労働義務を生じさせるためには、労働契約上、義務を生じさせる根拠が必要です。つまり、36協定は「時間外労働をさせても処罰されない」という行政上の免責を与えるものにとどまり、それだけでは、個々の労働者が「残業を命じられたら従わなければならない」という契約上の義務を負う根拠にはならないということです。

 具体的には、就業規則に「使用者は、業務上の必要がある場合には、36協定に基づき所定労働時間外に労働を命じることがある」と規定することが考えられます。このような業務命令の根拠規定があって初めて、労働者は残業命令に従う契約上の義務を負うことになります。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、36協定の締結・届出(時間外労働の免罰的効果の確保)と、就業規則における残業命令の根拠規定の整備(労働者への時間外労働義務の発生根拠の確保)という、2つの手続を両方とも整えておく必要があります。36協定だけを締結し、就業規則に対応する規定を設けていない場合、行政上の処罰は免れても、個々の労働者が残業命令を拒否した際に、契約上その義務を根拠づけられないという事態が生じ得ます。

 自社の就業規則に、残業命令の根拠規定が明記されているかを、今一度確認しておくことをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 36協定を締結していれば、従業員に残業を命じられますか。

36協定だけでは足りません。36協定は使用者が処罰されないという免罰的効果を与えるにすぎず、個々の労働者に残業義務を生じさせるには、就業規則等に別途根拠規定を設ける必要があります。

Q. 就業規則にはどのような規定を設ければよいですか。

「使用者は、業務上の必要がある場合には、36協定に基づき所定労働時間外に労働を命じることがある」といった規定を設けることが考えられます。

Q. 就業規則に根拠規定がない場合、どうなりますか。

36協定による行政上の処罰は免れられても、労働者が残業命令を拒否した際に、これに従う契約上の義務を根拠づけられないおそれがあります。

経営上のポイント 労基法32条は、週40時間・1日8時間を超える労働を原則として禁止しています。36協定を締結すれば、労基法36条に基づき例外的に労働時間を延長させることができますが、これは使用者が罰せられないという免罰的効果を与えるにすぎません。個々の労働者に時間外・休日労働義務を生じさせるには、就業規則等に「業務上の必要がある場合には、36協定に基づき所定労働時間外に労働を命じることがある」といった労働契約上の根拠規定を別途設ける必要があります。会社側としては、36協定の締結・届出と、就業規則の根拠規定整備という2つの手続を両方とも確認しておくことが重要です。時間外労働の法的根拠の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。時間外労働の法的根拠の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


Return to Top ▲Return to Top ▲