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雇用主以外の事業主でも「使用者」として団交義務を負う場合がある(最高裁) 最高裁は、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合には、その限りで「使用者」に当たると判断しています。 |
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典型例は、専属請負企業が単価値下げ・解約により解散した場合に、労働者が発注企業に団交を求めるケース 発注企業の業務を専属的に請け負ってきた企業が、発注企業による単価の大幅値下げや請負契約の解約によって事業継続を断念・解散した場合に、請負企業の労働者が発注企業に雇用確保等について団交を求めるケースが典型例です。 |
01問題の所在(「使用者」概念の拡張)
下請企業から従事者を受け入れて業務に従事させている発注企業は、その従事者との間に直接の雇用関係がありません。そのため、発注企業は「使用者」ではなく、団体交渉義務を負わないように思われるかもしれません。
しかし、労組法7条2号が定める団体交渉義務を負う「使用者」の概念については、必ずしも直接の雇用関係がある者に限定されない場合があります。ここでは、雇用主以外の事業主が「使用者」として団体交渉義務を負うかどうかが問題となります。
02最高裁の判断基準
この点について、最高裁は次のような判断基準を示しています。
最高裁の判断基準
雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、「使用者」に当たる。
すなわち、発注企業や元請企業であっても、下請企業の労働者の基本的な労働条件について、実質的に支配・決定しているといえる場合には、「使用者」として団体交渉義務を負うことがあります。ここでのポイントは、「雇用主と同視できる程度に」「具体的に支配・決定することができる地位」という要件です。単に下請企業に業務を発注しているというだけでは足りず、労働条件に対する実質的な支配・決定力が必要です。また、「その限りにおいて」という表現からわかるとおり、すべての事項について使用者と認められるわけではなく、当該労働条件等を支配・決定している事項の範囲に限られます。
03典型例(専属請負企業の解散ケース)
上記の最高裁の判断基準が問題となる典型例としては、次のようなケースが挙げられます。
典型例:専属請負企業の解散ケース
発注企業の業務を専属的に請け負ってきた企業(請負企業)が、発注企業による単価の大幅値下げや請負契約の解約によって事業継続を断念し解散した場合に、請負企業の労働者が発注企業に対して雇用の確保などについて団体交渉を求めるケースです。
このケースでは、発注企業が請負企業の労働者の雇用そのものを左右する影響力を持っていたといえる場合に、労働者の基本的な労働条件等を「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に具体的に支配・決定することができる地位にある」と評価される可能性があります。その場合、発注企業は、雇用確保等の事項について使用者として団体交渉義務を負うことになります。
04発注企業・元請企業が取るべき実務上の注意
発注企業・元請企業の立場からすると、直接の雇用関係がない下請企業の労働者から団体交渉を求められても、当初は「うちは使用者ではない」と対応したくなる場面があります。しかし、上記の最高裁の判断基準に照らして、使用者と認められる場合には、拒否することが不当労働行為となります。
拒否することのリスク
使用者と認められるにもかかわらず団体交渉を拒否すると、不当労働行為(労組法7条2号違反)として、労働委員会への救済申立ての対象となり得ます。自社が「使用者」に当たるかどうかの判断は、個別の実態に基づく複雑な評価を要します。
発注企業・元請企業としては、下請企業との取引関係、下請企業労働者の業務実態、労働条件への関与の程度等を踏まえて、自社が使用者に当たるかを慎重に検討する必要があります。申入れを受けた段階で、早期に使用者側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 下請企業に業務を発注しているだけで、うちは発注先の労働者の使用者になりますか。
A. 単に業務を発注しているだけでは、使用者には当たりません。最高裁の基準では、発注先の労働者の基本的な労働条件等について「雇用主と同視できる程度に、かつ具体的に支配・決定することができる地位」にあることが必要です。発注価格の設定が下請企業の雇用・賃金を実質的に左右している、作業指示を直接行っているなど、労働条件への実質的な関与が認められる場合に問題となります。個別の状況を確認のうえ、弁護士に相談することをお勧めします。
Q2. 使用者と認められる場合、どのような事項について団交義務を負いますか。
A. 最高裁の基準では「その限りにおいて」使用者に当たるとされていますので、すべての事項ではなく、当該事業主が支配・決定することができる事項の範囲に限られます。例えば、専属請負企業の解散ケースであれば、雇用確保(継続雇用・転籍等)に関する事項について義務を負う可能性がありますが、日常的な職場の賃金・規律等については別問題です。どの範囲で義務を負うかは、個別の実態に基づいて判断されます。
Q3. 下請企業の契約を打ち切ることを考えています。その場合、下請企業の労働者への団交義務が生じることがありますか。
A. 下請企業が専属的に業務を受け、その経営・雇用が実質的に発注企業に依存している状況で、発注企業が一方的に契約を打ち切ることで下請企業が存続できなくなる場合には、典型例のような問題が生じる可能性があります。契約打ち切りを検討する際には、下請企業の経営・雇用への影響も踏まえ、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
最終更新日:2026年2月25日