問題社員301 いちいち指示しないと仕事をしない。

動画解説

この記事の要点

まず原因を見極める。できるのにやらないのか、そもそもできないのか

サボっている場合のほか、指示の意味が理解できない、意味は分かっても実行に移せないという場合がある

サボっている場合は、むしろ対応しやすい。具体的で明確な指示を出し、それでもやらなければ業務命令、厳重注意、懲戒処分と進める

労務の提供は労働契約の中心的な義務であり、その不履行は正面から問題にできる

能力不足の場合、根本的な原因は採用の失敗にある。できる限り試用期間中に決着をつける

本採用拒否はハードルがやや下がるが、それでも客観的に合理的な理由が必要であることに変わりはない

「言われたことはできる」のであれば、まだ良い部類。活かし方を考えるのもマネジメントの腕の見せどころ

言われたこともできない社員や、言われてもいないことを勝手に行って大きな損害を与える社員も存在する

1. まず原因を検討する

いちいち指示しないと仕事をしない社員がいると、サボっているように見えるものです。他の社員は同じ指示で動き、それで会社が回っているのに、その社員だけが動かないのですから、当然の受け止めでしょう。

しかし、仕事をしない原因は様々であり、対処法が難しい場合もあります。そこで、まず原因を検討する必要があります。できるのにやらないのか、それともそもそもできないのかという点です。

考えられる原因

  • やる気がない、サボっている
  • やろうと思っても、指示の意味内容が分からない
  • 指示の意味はなんとなく分かっても、実行に移すことができない

自分ならできる、他の社員は皆やっている、という仕事であれば、サボっているように見えるのが普通です。実際、やる気がない、サボっているというケースはたくさんあります。しかし中には、いちいち指示しなければ仕事ができない社員もいます。要するに、能力が不足しているのです。

入社したばかりであったり、学生アルバイトであったり、著しく難易度の高い仕事を任せているのであれば、それも仕方がありません。しかし、「いくらなんでもこの仕事でそれはないだろう」と思われるような場面でも、本当にできない社員はいらっしゃいます。それを踏まえて、原因をよく考えて対処していく必要があります。

2. サボっている場合の対処法:具体的で明確な指示から

サボっているだけの場合は、まだ対応しやすいと言えます。その気になればある程度はできるからです。

ポイントは、明確に指示する、具体的に指示するということです。このような社員に対して抽象的でぼんやりとした指示を出すと、楽な方へ楽な方へと、最小限の仕事で済ませる方向に指示の内容を解釈します。しかも、指示の仕方によっては、確かにそう解釈できなくもないということが実際にあるのです。ですから、もう少し具体的に、明確に「これをしなさい」という指示を出す必要があります。

「マイクロマネジメントになってしまう」という懸念について

具体的で明確な指示を出すと、指示の数が増えて大変だ、マイクロマネジメントのようになって本人にも良くないのではないか、と思われるかもしれません。しかし、抽象度の高い一般的な指示では働いてくれない社員なのですから、致し方ありません。
そのうち、幅の広い抽象度を上げた指示でも動いてくれるようになったことを確かめた上で、指示の出し方を変えていけばよいのです。悩んでいる段階では、まず思い切って、できる限り具体的で明確な指示を出してみてください。具体的な指示であれば、後のやり取りにおいても認識の食い違いが生じにくくなります。

3. それでもやらない場合:業務命令から懲戒処分へ

具体的で明確な指示を出してもやらないようであれば、業務命令を出してください。最初は口頭でもよいかもしれませんが、それでもやらないようであれば、書面で出さざるを得ないこともあります。

それにも従わないのであれば、厳重注意や懲戒処分を行っていくことになります。

労務の提供は、労働契約の中心的な義務

労働者にとって仕事をするということは、労働契約における中心的な義務です。会社には、賃金を支払って働いてもらう権利があります。契約において予定されている通常の業務について、具体的に「この仕事をしなさい」と伝えているにもかかわらず行わないというのであれば、それは契約の中心的な義務の不履行にほかなりません。したがって、厳重注意や懲戒処分も行いやすくなります。むしろ、行うべきことになります。

もっとも、懲戒処分を行うには就業規則上の根拠規定が必要であり、処分の内容も、行為の性質・態様等に照らして相当なものでなければなりません(労働契約法15条)。それでも改善しなければ、退職勧奨や、場合によっては解雇も検討の対象になってきます。ただし、解雇が有効となるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります(同法16条)。この段階に至るとトラブルも多くなりますので、話の進め方や具体的な時機について、弁護士に相談されることをお勧めします。

4. 能力不足の場合:根本的な原因は採用にある

もう一つの原因である能力不足の場合、こちらの方が難易度は高く、残念な流れとなります。能力不足ということは、言ってみれば採用に失敗したということだからです。会社としても、自社の失敗ということになります。

入社したばかりであれば仕方がない、学生アルバイトであれば仕方がないということには納得できたとしても、正社員として雇用して何か月、何年経ってもいちいち指示しなければ動けないというのでは困る。実際、困ることでしょう。しかし、そうした方はいらっしゃいます。

だからこそ、採用の際にしっかりと選考を行うべきなのです。もし選考基準を緩めるというのであれば、そうした方が入社してくることを前提に、その後も雇用して育てていかなければならない、しかしなかなか育たない、ということを覚悟の上で基準を緩める必要があります。そこまでの覚悟が必要だということを、まず自覚していただきたいと思います。

採用基準・選考方法の見直しを

意図的にサボっているわけではなく、本当に「何をやってよいのか分かりません、どうやってよいのか分かりません」と本気で言っている社員であった場合、根本的な原因は採用にあります。採用基準を見直す必要があるかもしれませんし、基準は同じでも、その基準を満たすかどうかを確認しきれていないケースもありますので、選考方法を見直すことが必要かもしれません。
それができないのであれば、こうした方が混じってくることを覚悟の上で採用してください。採用の段階で絞りきれない以上、そのような事態が生じることは、当然に想定できるところです。

5. できる限り試用期間中に決着をつける

採用したくないタイプの方が入社してしまった場合には、できる限り試用期間の中で決着をつけるようにしてください。

試用期間内の話であれば、退職についての話も通りやすく、合意退職も成立しやすくなります。納得感が得られやすいというのが最も大きな理由です。

本採用拒否のハードルは「やや」下がる

本採用拒否は、試用期間中の解雇に当たります。最高裁は、試用期間について、企業が採用決定後の調査や観察に基づく最終的な判断を留保する趣旨のものであるとして、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしています。もっとも、それは無制限ではなく、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認される場合にのみ許されるとされています。
イメージとしては、本来飛び越えなければならない80センチのハードルが、60センチで済むという程度でしょうか。ハードルがあることに変わりはなく、客観的に合理的な理由が必要であることにも変わりはありません。
「本採用拒否もなかなか難しいと聞いた」という経営者の皆様もいらっしゃるでしょう。そのとおりです。60センチのハードルは超えなければならないからです。本採用拒否が無効と判断されるのは、80センチから60センチに下がってもなお飛び越えられていないからです。客観的に合理的な理由を主張・立証できていないケースが多いためにそうした結果になるのであり、それができる程度のものであれば、合意退職で話がつくケースが多いというのが実感です。

なお、試用期間中であっても、雇入れの日から14日を超えて引き続き使用されている場合には、解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要になります(労働基準法20条、21条ただし書)。「試用期間中だから自由に辞めさせられる」という誤解は避けなければなりません。

6. 日常のマネジメント:マニュアルと具体的な指示

日常のマネジメントにおいても、やはり明確で具体的な指示を出すことが基本になります。マニュアルの整備も有効です。比較的形式的な手順については、できる限りマニュアルを作成し、指示の内容も明確かつ具体的にする。本人が頭で考えなくても、誰の目から見てもその意味以外に解釈しようがない、という指示であることが理想です。そこまでは至らなくても、できる限り具体的で明確なものにしてください。それによって、「何をやってよいのか分からない」という事態は減ります。

手間はかかります。ある程度抽象度を上げた指示でカバーし、意を汲んで動いてもらいたい、少しは自分の頭で考えてほしい、と思われるかもしれません。しかし、指示の内容を理解できない社員にとっては、結局のところ、何をどうしてよいのか分からないままです。できないものはできないのです。

失敗させ方にも配慮する

こうした社員でも、経験を積ませることによって、初めての仕事はうまくいかないにしても、過去に経験済みの仕事であればある程度できるようになることがあります。長い目で育てていくというイメージで臨まれるのがよいでしょう。
くれぐれも、自分の頭で考えて対応することを期待してはいけません。できないから困っているのです。無理にやらせようとすれば、間違える可能性が極めて高くなります。間違えてもすぐにフォローできるよう、管理職や上司、経営者がしっかり見守った上で間違わせるようにしてください。そうでなければ、会社に大きな損害を与える結果になりかねません。
イメージとしては、自動車の運転免許を取得する際、初めて路上教習に出る人の助手席に付き添い、危険な運転をしたらブレーキをかけて事故を防ぐようなものです。そこまでの体制を取れないのであれば、具体的で明確な指示を出し、かつ失敗しても会社へのダメージが小さい仕事を選んで任せる。そして、経験済みの仕事については、ある程度の裁量を持たせたり、指示の抽象度を上げてみたりすればよいのです。

大事なのはマネジメントです。本人に任せるというよりも、管理職や先輩、究極的には会社経営者が、こうした社員をしっかりマネジメントできるかどうかが重要になります。

7. 「言われたことはできる」のであれば、まだ良い部類

ちなみに、言われたことであればできるというのであれば、まだ良い部類です。いちいち指示しなければならないのは大変だと思われるかもしれませんが、単純なものであっても言われたことをしっかりできるのであれば、それほど悪くはないのではないでしょうか。

現実には、言われたこともそのままできない社員もいますし、言われてもいないことを勝手に行って会社に大きな損害を与える社員も、相応の割合でいらっしゃいます。指示の内容を理解できないときに立ち止まり、言われたことはやってくれる。いちいち言わなければやらないけれども、言えばやる。単純な仕事かもしれないが、それは一応できる。経験を積めば、経験済みのものであればできるようになった。そのような社員であれば、活かし方によって戦力になるのではないでしょうか。

もちろん、優秀な幹部候補というわけにはいかないでしょう。しかし、こうした社員を上手に活用できるかどうかも、マネージャーの腕の見せどころなのではないかと考えています。

8. 本採用後に能力不足を理由とする対応が難しい理由

とはいえ、本採用後であっても、能力不足の程度があまりにもひどい場合には、辞めていただかざるを得ないことはもちろんあります。実際に、ご相談を受けて退職に至ったケースも数多くあります。

ただし、これは非常に気を使う場面です。本人はすでに本採用されているからです。

「急に能力不足になったわけではない」

「なぜ今、辞めなければならないのですか。能力不足と言うけれども、5年前も10年前も、私はこの程度しかできませんでした。今になって急に能力が下がったわけではないのに、今さら能力不足だと言い出すのはおかしいのではないですか」
このように考えるのは、自然な感情です。急に能力不足になったわけではありません。もともと能力が不足しており、それでもその会社に入ることができたのです。それが本採用後、ひどい場合には5年、10年経った後になって、能力が下がったわけでもないのに今さら能力不足だと言われても、納得できるものではありません。この現実を直視する必要があります。

そうした事情もあり、辞めていただくにしてもトラブルが多くなります。裁判例においても、長期雇用を前提とする正社員の能力不足を理由とする解雇については、改善のための指導を尽くしたか、配置転換等の他の手段を検討したかといった事情が重視される傾向にあります。どのように対応していくのかを慎重に考え、相手の反応も見ながら進めていかなければなりません。この段階に至った場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。

9. まとめ

  1. まず原因を見極める。サボっているのか、指示の意味が分からないのか、実行に移せないのか
  2. サボっている場合はむしろ対応しやすい。具体的で明確な指示から始め、業務命令、厳重注意、懲戒処分と段階を踏む
  3. 能力不足の場合、根本的な原因は採用にある。採用基準・選考方法の見直しか、リスクを覚悟した採用かを選ぶ
  4. できる限り試用期間中に決着をつける。本採用拒否はハードルがやや下がるが、客観的に合理的な理由は必要
  5. 日常のマネジメントでは、マニュアル整備と具体的な指示、そして失敗しても損害が小さい仕事の選択を
  6. 「言われたことはできる」のであれば、まだ良い部類。活かし方を考えるのもマネジメントである
  7. 本採用後の能力不足対応は難しい。「急に能力不足になったわけではない」という現実を直視する

自分で考えて動いてほしいというお気持ちはよく分かります。しかし、指示しなければ仕事をする能力がないという社員も、一定の割合でいらっしゃるのが現実です。そうした社員にどう対処するかを考えていく必要があります。いちいち指示しないと仕事をしない社員への対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 試用期間中であれば、自由に辞めてもらうことができますか。

A. できません。試用期間中は、企業が最終的な採否の判断を留保している期間であり、通常の解雇よりも広い範囲での解雇の自由が認められていますが、それは無制限のものではありません。解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認される場合にのみ許されます。また、雇入れの日から14日を超えて引き続き使用している場合には、解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法20条、21条ただし書)。試用期間中であっても、指導の記録を残しておくことが重要です。

Q2. 試用期間を延長して、もう少し様子を見ることはできますか。

A. 就業規則に延長の根拠規定があり、延長の必要性が認められる場合には可能とされています。もっとも、試用期間は労働者にとって地位が不安定な期間ですので、根拠規定がない場合や、合理的な理由なく長期間にわたり延長する場合には、延長が無効と判断されるおそれがあります。延長するのであれば、その理由と、どのような点が改善されれば本採用とするのかを、本人に明確に伝えておくことが重要です。延長の可否や進め方は、弁護士に相談してください。

Q3. 本採用後、長年勤めている社員を能力不足で解雇することはできますか。

A. 容易ではありません。解雇が有効となるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります(労働契約法16条)。長期雇用を前提とする正社員については、裁判例上、改善のための指導を尽くしたか、配置転換等の他の手段を検討したかといった事情が重視される傾向にあります。とりわけ、採用時から能力が変わっていないにもかかわらず、長年経過した後に能力不足を理由とするという経過は、会社側に不利に働き得ます。まずは具体的な指示と指導を記録に残し、適性に応じた配置を検討した経過を積み重ねることが、結果として会社を守ることにつながります。解雇や退職勧奨を検討する段階では、必ず事前に弁護士に相談してください。

最終更新日:2026年7月17日


Return to Top ▲Return to Top ▲