問題社員273 問題社員の人事評価

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この記事の要点

問題社員の評価を実態より高くつけ続けると、後の処分を正当化できなくなる——ずっとC評価の社員を突然最低評価にすると「処分のための不当な操作」に見える

解雇・退職勧奨の場面で「ずっと普通の評価だったのに突然低くなった」という状況は裁判で非常に不利になる。実態を反映した評価を日頃から続けることが重要

管理職が低い評価をつけたがらない背景——「ボーナスが減るかわいそう」「文句を言われたくない」という逃げの心理が評価を歪める

これは管理職個人の問題ではなく、経営者が「ありのままに評価することを良しとする文化」を作れていないことが根本原因

実態より高い評価は本人の既得権益化と職場の不公平感を生む——低い成果で高い給与をもらい続ける状況は職場全体のモチベーションを下げる

勤務態度の悪い社員が周りに嫌な思いをさせながらも高い評価をもらい続けると、他の真面目な社員の納得感が失われる

「ありのままに評価する」という文化を会社全体に浸透させることが経営者の責任——管理職の評価を経営者がチェックし、改善を促す

公平な人事評価は単なる記録ではなく、改善機会の提供・職場秩序の維持・紛争防止という複数の目的を担っている

1. 問題社員の人事評価が適正に行われていない会社が多い

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

問題社員の人事評価について、適正に行えていない会社が非常に多いです。しかもうっかりではなく、意図的に問題社員に有利な方向で評価を操作してしまい、後で裁判などで苦戦するというケースが多いのです。

どういうことかというと、実態より高く評価してしまっているのです。勤務態度が悪いのに該当項目を「普通(C評価)」にしたり、仕事の出来が低いのに下の方の評価をつけずにいたりします。

2. 管理職が低い評価をつけたがらない理由

なぜ実態より高い評価をつけてしまうのでしょうか。いくつかのパターンがあります。

実態より高い評価をつけてしまう心理

経営者の「励まし」思考 「ありのままに評価するとやる気をなくすかもしれないから、少し高めにして励ましてあげよう」という気持ちで評価する
管理職の「逃げ」の心理 「低い評価をつけるとボーナスが減る。かわいそうだ」「低くつけたら文句を言われる。自分が悪者になりたくない」
「面倒だから普通にしておこう」 実態に合わせた評価をすると本人に説明しなければならない。それが嫌で真ん中の評価で済ませる

これは経営者・管理職が問題社員への本音での対話を避けている状態と同じです。本当は問題があるのに、それを指摘せずに普通の評価で取り繕うことで、事実が隠蔽された状態が作られてしまいます。

3. 処分直前だけ評価を下げる典型的失敗パターン

紛争事案でよく見るのが「ずっとC評価だったのに、解雇・退職勧奨の直前だけ最低評価がつく」というパターンです。

典型的な失敗パターン

  1. ずっと能力が低く態度も悪い社員に対して、ずっとC評価(普通)をつけてきた
  2. 周りの社員が限界を迎え、経営者も対応を決断する
  3. 解雇・退職勧奨に向けて証拠を揃えようと、突然最低評価をつける
  4. 裁判で「処分を正当化するために恣意的に評価を下げた」と主張される
  5. 「前と同じパフォーマンスなのに突然なぜ低くなったのか」という指摘に反論できない

「先生、評価が低いのは本当のことなんです。元々能力が低かったし態度も悪かったんです」と言っても、それまでの評価はずっとCがついているのです。前と同じ状況なのに突然最低評価がつく——それは処分を正当化するために操作したとしか見えません。

4. 実態より高い評価が職場全体に与える悪影響

実態より高い評価をつけ続けることは、問題社員だけでなく職場全体に悪影響を与えます。

実態より高い評価が引き起こす問題

  • 問題社員が「この状態でいいんだ」と現状を既得権益として認識してしまう
  • 出来が悪いのに相応の給与をもらい続けることへの他の社員の不満が高まる
  • 「あの人はあんな態度なのに評価は同じ。自分だけ損だ」という不公平感が蔓延する
  • 問題のある事実を指摘した踏み込んだ注意指導ができない職場の雰囲気ができてしまう

公平な職場を作るためにも、ありのままの評価が必要です。評価は単なる数字の記録ではなく、本人への改善機会の提供・職場秩序の維持・他の社員へのフェアな処遇という重要な機能を担っています。

5. 「ありのままに評価する」文化を作ることが経営者の責任

ありのままの人事評価をする文化を会社全体に浸透させることは、経営者の責任です。

「ありのままに評価しなさい」という方針を全社に伝えたとしても、経営者自身が問題社員に対して実態より高い評価をしていれば、管理職もそれに倣ってしまいます。経営者自身が自分の評価を振り返ることが必要です。

適正な人事評価のために経営者がすべきこと

  • 「ありのままに評価することが正しい」という方針を全社に明確に伝える
  • 管理職の評価結果をチェックし、実態との乖離がないかを確認する
  • 低い評価をつける際には本人への丁寧な説明と対話を行う
  • 評価が低い理由を具体的事実に基づいて本人に伝えて改善を促す
  • 自分自身も感情的な「励まし」で評価を歪めていないかを振り返る

低い評価をつける際は、「なぜこの評価なのか」を具体的事実に基づいて本人に説明し、改善を促す対話を行うことが必要です。その対話を通じて注意指導も兼ねることができ、記録としても残ります。

6. まとめ

  1. 問題社員の人事評価は実態通りにつける——意図的な高評価は後の処分を正当化できなくなる大きなリスクを生む
  2. 管理職の「逃げの評価」に注意する——文句を避けるための中評価は問題を隠蔽する
  3. 処分直前だけ評価を下げるのは最悪のパターン——「処分のための恣意的操作」と見られ裁判で不利になる
  4. 実態より高い評価は職場全体を不公平にする——他の真面目な社員の納得感が失われる
  5. 「ありのままに評価する」文化の構築が経営者の責任——評価の際には具体的事実に基づいた対話と改善指導を行う

問題社員の人事評価でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ずっと高い評価をつけてきた社員に対して、今後適正な評価に変える場合の注意点は何ですか。

A. 突然大幅に評価を下げることは問題が生じやすいです。「今後はより正確な評価に改める」という方針を伝えた上で、段階的に適正化することが一般的です。また、評価を下げる際は、具体的にどの点がなぜ評価に反映されたのかを本人に説明し、改善のための対話を行うことが重要です。具体的な進め方については弁護士に相談してください。

Q2. 低い人事評価を根拠に給与を引き下げることはできますか。

A. 就業規則・賃金規程に人事評価に連動した賃金制度が定められている場合は、評価に応じた賃金の変動が認められる場合があります。ただし、制度の設計や運用によって判断が異なります。また、退職金や賞与の場合は通常の賃金より柔軟性がありますが、基本給の引き下げは要件が厳しいです。具体的な状況については弁護士に相談してください。

最終更新日:2026年4月30日


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