問題社員268 問題社員に対する注意指導の目的とは

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この記事の要点

注意指導の目的は「本人の問題行動を改めさせること」——証拠作り・アリバイ作りを目的にすると裁判でも見破られて失敗する

半年以上放置したのに、やめさせようと決めた途端に一気に注意指導・懲戒処分を重ねる——こうした急激な動きはアリバイ作りとして裁判で印象が悪くなる

早い段階から率直に問題を伝えることが重要——放置するとエスカレートして手がつけられなくなる

最初は小さな問題でも放置すると悪さをしてもお咎めなしと学習してエスカレートする。甘い上司の下ではエスカレートし、次の上司が苦労するパターンが多い

注意指導を上手に行うことは「立派なリーダー」を社員に示す機会——問題社員でも言うことを聞かせられる社長・管理職に社員はついていく

問題社員を適切に指導して改善させることができれば、他の社員からの尊敬を集める。裁判の勝ち負けよりもはるかに大きな価値がある

1. 「証拠が必要だ」という発想から生まれる失敗パターン

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

問題社員への注意指導の「目的」について、改めてお話ししたいと思います。これまでも繰り返しお伝えしてきましたが、うっかりすると逆の方向に流れてしまいやすい重要なポイントです。

よくある失敗パターンを紹介します。

失敗パターン:「証拠を作らなければ解雇できない」という発想

  1. 半年以上問題を放置。やんわり注意するだけで、はっきり伝えてこなかった
  2. 周りの社員が限界を迎え「あの人がいるなら辞める」と社長に訴えてきた
  3. やめてもらうしかないと判断。本を読んで「注意指導→懲戒処分の積み上げが必要」と知る
  4. 急に大量の注意指導と懲戒処分を短期間で行う
  5. 裁判でアリバイ作りと見破られ、敗訴

2. 注意指導の本来の目的——問題行動を改めさせること

注意指導の目的は何でしょうか。

問題社員の問題行動を改めさせるためにやるものです。決して証拠のアリバイ作りのためにやめさせるためにやるものではありません。

この「建前論だ」と思った方には申し上げます。建前だと思って証拠作りに走ると、裁判で負ける確率が高くなります。なぜなら、アリバイ作りをしていることが透けて見えるからです。

問題行動を本当に改めさせようとして注意指導しているのか、やめさせるための証拠作りのために注意指導しているのか——この違いは、注意指導の密度・内容・タイミングに如実に現れます。裁判所もその違いを見ています。

3. アリバイ作りの注意指導はなぜ見破られるのか

「あいつはダメだ」と判断した途端、それまで放置していたのに急に大量の注意指導・懲戒処分を重ねる——このパターンは裁判で見破られます。

裁判で不利になる理由

半年以上ほぼ放置同然だったのに、たった1ヶ月の間に注意指導書を何枚も交付して懲戒処分を3〜4回行っている——こうした状況は「やめさせるためのアリバイ作りに見える」と裁判所に判断されやすい。印象が悪くなるだけでなく、注意指導の実質的な価値も認められにくくなる。

弁護士が「証拠なくて負けた」という話をすることがあります。しかし実際は、証拠がないのではなく「本物の注意指導」をしてこなかったことが問題の本質です。早い段階から本気で問題行動を改めさせようとして注意指導していれば、それ自体が有効な証拠になります。

4. 早い段階からの介入がエスカレートを防ぐ

早い段階で問題を率直に伝えて注意指導することが、問題をエスカレートさせないために最も重要です。

問題がある人の多くは、最初から大きな問題を起こすわけではありません。最初は小さな問題行動から始まります。それを「このくらいは仕方ない」と放置すると、本人は「悪さをしても何も言われない」と学習します。その後、問題はどんどん大きくなっていきます。

早い段階で具体的事実に基づいた注意指導を行えば、その段階で改善されるか、「この会社は自分に合わない」と感じて自主退職するケースが多くあります。問題が大きくなる前に手を打つことで、解雇や退職勧奨という重い手段を使わずに済むことも多いのです。

5. 「甘い上司」が引き起こす後継者の苦労

注意指導を怠る「甘い上司」は、後継の上司に多大な苦労をかけます。

15〜30分の遅刻を何も言わずに許していた前の上司の後任として来た上司が、遅刻を注意したとします。すると「前の上司は何も言わなかったのに、なぜ今更そんなうるさいことを言うのか。パワハラだ」と反発されることがあります。

前の上司が注意しなかった分だけ、次の上司は困難な状況を引き継ぎます。「理解ある上司」として評判の良かった「甘い上司」の後には、適切に注意指導しようとしている上司が「パワハラ上司」として苦しむというケースが実際に多くあります。

適切に注意指導することは、その職場全体の秩序を守るためにも、後継の管理職を守るためにも必要なことです。

6. 注意指導を上手に行うことは立派なリーダーを示す機会

注意指導の目的は、単に問題行動を改めさせることだけではありません。もっと大きな意味があります。

問題社員を適切に指導して行動を改善させることができれば、他の社員からの尊敬を集めることができます。

「先輩や直属の上司がいくら指導しても言うことを聞かなかったのに、社長が対応したら言うことを聞くようになった」——こうした経験をした他の社員たちは「この社長はすごい、ついていきたい」と思います。これは裁判の勝ち負けという小さな話ではなく、社長として尊敬される機会そのものです。

逆に「問題社員が出てきたのに社長には手がつけられなかった」という状況になると、他の社員からの信頼が失われます。

注意指導は後ろ向きな作業ではなく、立派なリーダーとして会社を率いるための大切な仕事です。その目的を「証拠作り」ではなく「本人の行動改善」に置くことで、適切な注意指導が実現し、結果として問題も解決します。

7. まとめ

  1. 注意指導の目的は「問題行動を改めさせること」——証拠作り・アリバイ作りを目的にすると裁判でも見破られ失敗する
  2. 早い段階から率直に問題を伝える——放置はエスカレートを招く。早期対応で問題が大きくなる前に解決できる
  3. 「甘い上司」は後継の管理職に苦労をかける——職場全体の秩序を守るためにも適切な注意指導が必要
  4. 注意指導は立派なリーダーを示す機会——問題社員でも言うことを聞かせられる経営者・管理職に社員はついていく

注意指導の目的・方針についてお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 今まで放置してしまいましたが、今からでも注意指導を始めることはできますか。

A. 今からでも始めることはできます。重要なのは、「今後はこのような言動は許さない」ということを明確に伝えた上で、具体的にどうすればいいのかを教えながら注意指導を進めることです。ただし、過去に放置していた事実は後の懲戒処分・解雇における判断に影響することがあります。これからの対応については弁護士に相談しながら進めてください。

Q2. 問題社員への注意指導は証拠として残しておく必要がありますか。

A. 残しておくことをお勧めします。ただし、証拠を残すことを主目的にするのではなく、本人の行動改善を主目的として注意指導を行い、その過程を記録として残すというのが正しい順序です。注意指導の内容・日時・相手の反応を記録してメールで上司や顧問弁護士に報告しておくことで、自然に証拠が蓄積されます。

最終更新日:2026年4月30日


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