問題社員253 「仕事」を真面目にやっているという認識で パワハラまがいの言動を繰り返す。

動画解説

この記事の要点

「真面目」な社員でもパワハラ的言動は許されない——周囲への配慮も仕事の一部

労働契約はどんな態度でも仕事をすればよいというものではない。職場秩序を守り、周りの足を引っ張らない形で仕事をすることまで含めて労働義務の範囲。本人が「真面目」と思っていても、会社として改めさせるべき

「注意指導」ではなく「教育指導」——勘違いを解いてあげる発想で

ルールを分かっていて破っているのではなく、自分の言動が正当だと勘違いしているケースがほとんど。まずは理解不足を解消してあげる「教育」の発想で対応し、必要に応じて注意指導も併用する

会議室で面談して具体的な事実を指摘する——抽象論では通じない

「最近評判悪いよ」「言葉に気をつけて」では伝わらない。「○月○日○時頃、どこで誰にどんな言動をしたか」を指摘し、なぜ問題か、どう改善すべきかを具体的に伝える

「常識で考えれば分かるでしょ」は通用しない——具体的な事実と具体的な指導を徹底

常識で分かるぐらいなら最初からこんなことはしていない。小学1年生に小学4年生の問題をやらせるようなもの。まず基礎の基礎から、具体的な言動ベースで改善を促すのが効果的

改善しない場合は管理職から外す・厳重注意書・懲戒処分——いずれも「具体性」が鍵

マネジメント適性がない方を上司にしておけば周囲の社員が潰される。管理職から外して周りの社員を守ることも選択肢。厳重注意書・懲戒処分通知書も具体的事実と具体的指導を盛り込むと教育効果が高まる

1. 「真面目に仕事する」の意味を誤解している——周囲への配慮も仕事の一部

 会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

 本日は、「仕事を真面目にやっている」という認識でパワハラまがいの言動を繰り返す社員への対処法についてお話しします。

 「真面目に仕事する」ことは大切です。しかし、「自分は真面目にやっているのだから、いい加減なあいつらが悪い」という発想でパワハラまがいの言動を繰り返してしまう社員が、一定割合で存在します。ご本人は「よかれと思って」「いい職場にするために」言動しているつもりでも、結果として周囲が嫌な思いをし、メンタル不調者が出て、職場の生産性が落ちてしまう——これでは本末転倒です。

労働契約は「どんな態度でも仕事すればよい」ものではない

 労働契約(雇用契約)は、単に個々の作業をこなせばよいという契約ではありません。周囲に配慮すること、職場秩序を守ること、周りの足を引っ張らない形で仕事をすること——これら全てが労働契約上の義務の範囲に含まれます。

社長から見て「これはパワハラまがいだな」と思う程度の言動であれば、もう大半はアウトです。本人の「真面目にやっているだけ」という自己認識とは関係なく、やめさせなければなりません。それが周りの社員を守るということであり、経営者の責務です。

本人が「自分は悪くない」と思い込んでいることに注意

 このタイプの社員の厄介なところは、自分の言動を正当なものだと強く信じ込んでいる点にあります。「自分は真面目に仕事をしている、いい加減な周囲が悪い、だからこういう言い方・やり方になってしまうのだ」——このような意識で突っ走ってしまうため、一般的なマナーの話をしても「社長は自分のことが嫌いだからケチをつけているのだ」ぐらいにしか受け止めてもらえないことが多いのです。

 このため、対応の第一歩は、「周囲への配慮もあなたの仕事の一部ですよ」ということを、しっかり理解してもらうところから始まります。

2. 「注意指導」ではなく「教育指導」——勘違いを解く発想で

 このタイプの社員への対応として最も重要な考え方は、「注意指導」ではなく「教育指導」としてアプローチするということです。

「注意指導」と「教育指導」の違い

 両者の違いを整理すると、次のようになります。

注意指導と教育指導のアプローチの違い

  • 注意指導:ルールを分かっているのに違反した社員に対する対応。「分かっているはずなのにやった」ことを咎める
  • 教育指導:何が問題なのかを分かっていない社員に対する対応。勘違いを解いて理解させることが目的

 パワハラまがいの言動を「真面目にやっているだけ」と認識している社員は、典型的な後者です。ルール違反を自覚していないどころか、自分は正しいと確信しているため、普通に「ダメですよ」と言っても響きません。まず勘違いを解いてあげるという発想が必要になります。

注意指導を併用することもある

 もちろん、教育指導をメインとしつつも、行為の程度によっては注意指導を併用することになります。職場秩序を乱すレベルのひどい言動があれば、「何が問題か」を教育するとともに、「そのような言動をしてはならない」旨の注意も同時に行う——両方の性質を併せ持った対応が現実的です。

 大切なのは、「このタイプの社員は勘違いしているのだ」という認識を持って臨むことです。単なる叱責や注意で終わらせてしまうと、本人は「いい加減な周囲を擁護して自分を責める不当な会社」という被害者意識を強めるだけで、何も改善しません。

3. 会議室で面談して具体的な事実を指摘する

 対応の場面としては、しっかり会議室に呼んで面談する形式がもっとも効果的です。立ち話やメール・チャットでの指摘では、このタイプの社員にはほぼ通じません。

面談で「どこがどう問題か」を具体的に伝える

 面談では、「あなたのどの言動が、なぜ問題なのか」を具体的に話すことが重要です。このタイプの社員は「何が悪いか」を本当に分かっていません。そのため、具体的な題材を用いて説明する以外に、理解してもらう方法はありません。

「あなたが○月○日○時頃、○○の場所で、○○さんに対して、○○と言った(○○の行為をした)ことは、○○という理由で問題です。今後は○○のように改めてください」——このレベルまで具体的に伝えて、初めて教育効果が出ます。

抽象的な物言いは逆効果

 面談の場面で次のような抽象的な物言いをしてしまうケースが非常に多いですが、これは効果がないどころか逆効果になりかねません。

やってはいけない抽象的な伝え方の例

  • 「最近あなたの評判悪いよ」
  • 「言葉に気をつけたらどうなの」
  • 「普通に考えれば分かるでしょう」
  • 「常識で考えてごらん」
  • 「自分の頭で考えて行動してください」

 こうした遠回しの指摘では、本人は「何の話をしているのか分からない」「社長は自分が嫌いだから嫌がらせをしているのだ」としか受け止めません。具体性のない注意は、このタイプの社員にはまったく届かないと理解してください。

言い分を聞いた上で改善方法を示す

 面談では、具体的な言動を指摘した上で、本人に言い分があるかも確認してください。その上で、「何を」「どのように」改善すればよかったのか、今後どうすればよいのかを具体的に伝えます。一方的な叱責ではなく、対話の中で理解を促す形が望ましいです。

4. 「具体的な事実」と「具体的な指導」が鍵——抽象論では通じない

 繰り返しになりますが、このタイプの社員への対応のポイントは、「具体的な事実」と「具体的な指導」の2点に尽きます。

「常識で考えれば分かるでしょ」は通用しない

 社長としては「自分の頭で考えて動いてほしい」「常識で判断してほしい」と思うのは当然です。しかし、そのレベルに達していない社員だから、こういった問題が起きているのです。

「常識で分かるはず」という前提は、このタイプの社員には通用しません。そもそも常識で分かるぐらいの理解力があれば、最初からパワハラまがいの言動などしていないのです。小学1年生の勉強ができない子に、いきなり小学4年生の問題を解かせようとしても無理がある——まずは基礎の基礎から積み上げていく必要があります。

基礎段階では「具体的な指導」、上達したら「自分の頭で考えさせる」

 手順を間違えてはいけません。まずは「具体的な言動レベルで何をすべきか・何をしてはいけないか」という基礎の基礎を押さえさせます。それができるようになってから、より抽象度の高い「自分の頭で考えて動く」という段階に移行します。

 順序を飛ばして、最初から「自分で考えて」と言っても、基礎ができていない社員には無理です。応用は基礎の上にしか積み上がりません。

指摘する事実は5W1Hで特定する

 具体的な事実の指摘とは、5W1Hで言動を特定するということです。

5W1Hによる言動の特定例

  • いつ(When):○月○日○時頃
  • どこで(Where):会議室、営業フロア、○○支店など
  • 誰に(Who):○○さん(部下、同僚、取引先など)
  • どのように(How):大声で、繰り返し、長時間にわたり、など
  • 何を(What):どのような言動をしたのか(発言内容・行為)
  • なぜ問題か(Why):周囲への配慮を欠いている、必要性を超えている、など

 この粒度で事実を特定できていれば、本人も「何を指摘されているか」を理解でき、言い逃れも困難になります。逆に、ここまで特定しないまま「パワハラっぽいよね」と抽象的に注意すると、面談自体が無意味に終わるだけでなく、本人に「不当に責められた」という被害者意識を植え付ける結果になりかねません。

5. 改善しない場合の対応——管理職から外す・厳重注意書・懲戒処分

 具体的な教育指導を繰り返しても改善しないケースもあります。その場合は、段階的に対応のレベルを上げていくことになります。

管理職から外す選択肢——周囲の社員を守るため

 このタイプの社員が管理職に就いている場合は、役職から外すことを真剣に検討してください。日本の企業では、プレイヤーとして優秀だった社員を管理職に登用したものの、マネジメント適性がなくトラブルを起こしている——という状況がよく見られます。

マネジメントに適性がない方は、スタート地点のレベルが低い上に、学習のスピードも遅い傾向があります。適性のある方なら経験・知識を吸収して急速に伸びるのに対して、適性が低い方は元々上手にできず、成長も遅い——このダブルの難しさがあります。

 その方の指導を聞かなくてもよい体制に変え、周囲の社員たちがメンタルをやられないように守ってあげる。これも経営判断として非常に重要な選択肢です。

厳重注意書の交付——書面も「具体性」が鍵

 口頭での面談・指導を繰り返しても改善しない場合は、厳重注意書を書面で交付することを検討します。書面化することで、記録として残り、今後のさらなる処分の前提にもなります。

 ここでも大事なのは「具体性」です。厳重注意書に次のような抽象的な記載だけを書いても、ほとんど意味がありません。

効果の低い厳重注意書の例

「貴殿は、近時パワーハラスメントに該当するような言動を繰り返しており、職場秩序を乱していると認められるため、本書をもって厳重に注意する」

 これではどの言動が問題なのかが分からず、本人の理解にもつながりません。厳重注意書にも、5W1Hで具体的な言動を書き込み、何をどうすれば良かったのか、何をしてはいけなかったのかを明記する必要があります。

懲戒処分通知書も同じく「具体性」で教育効果を高める

 厳重注意でも改善が見られない場合は、懲戒処分(譴責、減給、出勤停止、降格など)の検討に入ります。懲戒処分通知書も同じ考え方で、具体的な事実と具体的な指導をしっかり書き込むと、教育効果の高い処分になります。

 具体性のある懲戒処分通知書を積み重ねておくことは、その後にさらに重い処分や解雇を検討する場面でも、会社側に有利な事情として考慮されるため、長期的な視点でも重要です。形式的に「譴責処分とする」とだけ書くのではなく、本人が学べる内容に仕上げることを意識してください。

書面作成・聞き取り調査は弁護士の活用を

 ただし、具体的な事実を特定したり、適切な指導文言を書き込んだりする作業は、慣れていないとなかなか難しいものです。聞き取り調査の段階から弁護士に関与してもらい、厳重注意書・懲戒処分通知書の原案作成まで依頼するのが、実務上は効率的です。

 弁護士が関与することで、文言の精度が上がるだけでなく、後日の労働審判・訴訟に耐えうる書面として整備されます。個別事案でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

6. まとめ

 「仕事を真面目にやっている」という認識でパワハラまがいの言動を繰り返す社員への対処法を整理します。

  1. 周囲への配慮も仕事の一部。労働契約は「どんな態度でも仕事すればよい」ものではない
  2. 「注意指導」ではなく「教育指導」——勘違いを解いてあげる発想で臨む
  3. 会議室でしっかり面談し、5W1Hで具体的な事実を指摘する
  4. 「常識で考えれば分かるでしょ」は通用しない。基礎の基礎から、具体的な指導を積み上げる
  5. 改善しない場合は管理職から外す・厳重注意書・懲戒処分。書面も「具体性」が教育効果を高める

 このタイプの社員は、本人に悪意がないケースがほとんどです。むしろ「よかれと思って」「真面目だからこそ」やっている——そこが厄介な点でもあります。社長としては、周りの社員・パート・アルバイトの方々がメンタル不調に陥らないように守りつつ、本人にも改善の機会を与えるという、多方面への配慮が求められます。大変ですが、経営者としての本質的な責務です。頑張っていきましょう。

 個別事案で「具体的にどう書けばよいか」「聞き取り調査をどう進めればよいか」などでお困りの場合は、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本人は「真面目にやっているだけ」と言い張ります。どう説得すればよいですか。

A. 「真面目にやるかどうか」という軸ではなく、「周囲への配慮も仕事の一部である」という軸で話してください。労働契約は単に個別作業をこなせばよいというものではなく、職場秩序を守り、周りの足を引っ張らない形で仕事をすることまで含めて労働義務の範囲です。その上で、「○月○日のこの言動は、周囲への配慮を欠いており、業務遂行上問題である」と具体的な事実を示して指摘します。抽象的な議論では平行線になるため、事実ベースで話すことが突破口になります。

Q2. 「常識で考えれば分かるでしょ」と言いたくなってしまいます。ダメですか。

A. 気持ちは分かりますが、このタイプの社員には通用しません。常識で分かる理解力があれば、最初からこのような言動はしていないのです。代わりに、「○月○日の○○の場面では、○○と言うのが適切でした。具体的には○○という理由です」というレベルまで噛み砕いて伝えてください。遠回しな表現・抽象的な表現は「社長が自分を嫌っている」としか受け止められず、逆効果になります。

Q3. 優秀なプレイヤーだったため管理職にしたのですが、部下にパワハラまがいの言動を繰り返しています。どうすべきでしょうか。

A. まずは教育指導で改善の機会を与えてください。その上で改善が見られない場合は、管理職から外すことを真剣に検討する必要があります。マネジメント適性は個人差が大きく、元々苦手な方が急に習得できるとは限りません。周囲の社員がメンタル不調に陥ってしまう前に、その方の指導を聞かなくてよい体制に切り替えることは、経営判断として十分合理的です。降格を検討する場合は、就業規則の根拠・手続を弁護士に確認してから進めることをお勧めします。

Q4. 厳重注意書を出したいのですが、どの程度まで具体的に書けばよいですか。

A. 「いつ・どこで・誰に・どのように・何をしたか」という5W1Hで、誰が読んでもその場面が思い浮かぶレベルまで具体的に書いてください。その上で「なぜ問題なのか」「今後どのように改めるべきか」まで記載すると、教育効果の高い厳重注意書になります。抽象的に「パワハラ的言動を繰り返している」と書くだけでは、本人は自分の何を直せばよいのか分かりませんし、将来の懲戒処分・解雇を争う場面でも証拠価値が下がります。作成時は弁護士にご相談いただくのが安全です。

Q5. 教育指導・厳重注意・懲戒処分を重ねても全く改善しません。解雇は可能ですか。

A. パワハラまがいの言動が職場秩序を大きく乱し、教育指導・厳重注意・懲戒処分を積み重ねても改善の見込みが立たない場合は、解雇を検討する局面になります。ただし解雇には高いハードルがあり、具体的事実の積み上げ・指導履歴・改善機会の付与などの手順を丁寧に踏んでいる必要があります。過去の指導記録や処分通知書が具体性を欠いていると、解雇が無効とされるリスクが高まります。解雇を視野に入れる段階では、必ず会社側弁護士に相談しながら進めてください。

最終更新日:2026年4月17日


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