問題社員252 嘘を繰り返し、怪しい発言を追及するとパワハラと非難する

動画解説

この記事の要点

まず嘘の中身が「仕事と関連するか」を判別する——プライベートな嘘は深追いしない

職場は仕事をする場所。仕事と関係のないプライベートな嘘は、信用できる・できないという人間関係の問題に過ぎず、会社として深く立ち入る問題ではない

仕事関連の事実確認は上司・社長の仕事——逃げずに対応する

嘘の情報に基づいて仕事が進めば本人も周囲も失敗する。職場秩序を守り、周りの社員を守るためにも、仕事に関連する事実確認は上司・社長が責任を持って行うべき業務

しっかり時間を取って会議室で面談する——メールやSlackだけで済ませない

15分でも十分。会議室に呼んで面と向かって事実確認をする。立ち話や文字情報だけでは言い逃れされやすい。オンライン面談でもお互いの姿を見ながら対話することが重要

評価ではなく「事実」を確認する——いつ・どこで・何を言ったか・何をしたか

「嘘をついたか」「パワハラか」という評価的な議論ではなく、具体的な事実を確定させる。事実さえ確定すれば、評価は後から付けられる。方針も定まりやすくなる

仕事関連・事実確認に絞っていれば、パワハラになるケースはほぼない

無駄に大声で怒鳴る・誰が見ても明らかにダメなやり方——よほど変な言動をしなければ、仕事の事実確認がパワハラと評価されることは滅多にない。安心して対応してよい

1. 嘘の中身が「仕事と関連するか」をまず判別する——プライベートな嘘は深追いしない

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

本日は、嘘を繰り返し、怪しい発言を追及するとパワハラと非難する社員への対処法についてお話しします。

嘘を繰り返す社員に対して、追及しても「それってパワハラですよ」と言い返して事実確認をさせない——上司を威嚇するような方の対処法として、最初に考えるべきは「その嘘の中身が仕事とどれだけ関係するか」ということです。

職場は仕事をする場所という原則

職場は仕事をする場所です。労働契約・雇用契約に基づいて働いてもらっているわけですから、社長が社員に対して言えることは「給料をしっかり払うから、しっかり仕事をしてね」ということです。

逆に言えば、仕事と関係のないことでいくら嘘をついても、仕事をやる上で何の支障もなければ、突っ込むべき問題ではありません。プライベートな話の領域です。まず「仕事と関連があるかどうか」という観点からしっかり整理することが、対応の出発点になります。

仕事に関連する情報とは

仕事に関連する情報の具体例としては、次のようなものが挙げられます。

  • お客様の反応、クレーム内容、受注状況などの営業情報
  • 仕事の進捗状況、プロジェクトの進み具合
  • 職場の秩序を乱すような言動をしていないか(他の社員とのトラブル、社内ルール違反など)
  • 勤怠・勤務時間・業務外行動の報告

他方で、仕事と関連のないプライベートな話については、深く突っ込んでも意味はありません。「あの人は信用できる・できない」という人間関係の問題にとどまり、会社として踏み込む領域ではないのです。

2. 仕事関連の事実確認は上司・社長の仕事——逃げずに対応する理由

仕事に関連する嘘・怪しい発言に対して事実確認を行うことは、上司の仕事、さらに言えば社長の仕事です。

社長自ら行うケースもあれば、直属の上司が実施するケースもありますが、いずれにせよ責任を持ってしっかり事実確認を行い、仕事が滞りなく遂行できるようにすることが求められます。

嘘を放置することのリスク

仕事に関する嘘を放置すると、次のような悪影響が広がります。

嘘を放置した場合に起こること

  • 嘘の情報に基づいて行動した本人が失敗する
  • その情報を信頼した周りの人も連鎖的に失敗する
  • 「あの人に言っていることは信用できない」と周囲から判断され、組織の連携が崩れる
  • 彼とは組まずに仕事をしようという動きが広まり、組織としてのパワーが発揮できなくなる
  • 職場秩序が乱れ、不満が蔓延し、「こんな会社に勤めるのは嫌だ」と思う社員が増える

周りの社員を守るための責任

仕事に関連する事実の確認を怠ると、結局は周囲で真面目に働いている社員・パート・アルバイトの方々が割を食うことになります。「パワハラだ」と言われるのを怖がって事実確認をしない上司・社長では、組織は守れません。

逃げずに頑張っていきましょう。これは上司として・社長としての本質的な責務です。

3. しっかり時間を取って会議室で面談する——メールやSlackだけで済ませない

簡単な問い合わせでは、まともに答えてくれないケースがあります。立ち話のような軽い形で済ませても解決しない場合は、しっかり時間を取って会議室で面談してください。

時間は15分程度で十分な場合も多いですが、短くても会議室に呼んで面と向かって話すという形式が重要です。

面談というファーストステップの意義

会議室での面談は、問題が解決する場合・しない場合のどちらもあります。しかし、この行動に出られない上司・社長こそが問題を大きくしがちです。まずは会議室に呼んで話す——このファーストステップを踏めるだけでも、対応として大きく前進しています。

弁護士の反対尋問のように淡々と事実を確認していくスタイルで、対話の中で本人の説明がぐらつけば、事実が次第に浮かび上がってきます。対話が苦手な上司にとっては難しく感じるかもしれませんが、練習すれば誰でもある程度はできるようになります。

場所が離れている場合はオンライン面談

本社と支店が離れているなど、実際に会うのが難しい場合は、ZoomやTeamsなどのオンライン会議を使ってください。重要なのは、お互いの姿を見られる状態で対話を行うことです。カメラオフでの音声のみの通話では、対話の効果が大きく下がります。

メール・Slackだけで済ませない

「証拠として文字に残したいから」「言った・言わないの議論になるのが嫌だから」という理由で、メールやSlackのやり取りだけで事実確認を済ませようとする会社があります。しかし、これは失敗しやすいパターンです。

文字情報だけのやり取りでは、相手が時間をかけて言い逃れの文面を練ることができるため、都合のよい回答で済まされてしまうことが多いです。文字記録を活用したい場合は、面談と組み合わせて使うようにしてください——面談で事実を認めさせた上で、その内容を文書化するという順序であれば、強い記録になります。

4. 評価ではなく「事実」を確認する——5W1Hで特定する

面談で確認すべき内容は、事実です。評価ではありません。

仕事との関連性がある情報について、「この人が具体的に、いつ・どこで・どのように・何をやったか・何を言ったか」という事実を、丁寧に一つずつ確認していってください。なぜなら、事実さえ確定すれば、その事実に対する評価は後から付けられるからです。

逆に、事実が確認できないと、何があったのか・何を言われたのかが分からないまま、適切な評価を下すことができません。「嘘をついたか・つかなかったか」という評価を先に争うと、水掛け論になって結論が出ません。事実の確定にエネルギーを注いでください。

評価的な議論に流れやすい落とし穴

面談中、お互いに感情的になると、「嘘をついた」「ついていない」「パワハラだ」「パワハラじゃない」という評価の応酬に陥りやすくなります。評価のぶつけ合いを続けていると、本当にパワハラだと評価されてしまうケースも生じます。しかも、会社としてどのように対応すべきかの方針が定まらなくなります。

評価はゴール、事実はその前段

評価は、いわばゴールのようなものです。ゴールにたどり着くためには、その前段にある「何があったのか・何を言ったのか・何をされたのか」という事実を確定することが先です。

面談での質問の例

  • 「〇月〇日の〇時頃、どこにいましたか」
  • 「その時、△△についてあなたは何と説明しましたか」
  • 「その場には誰がいましたか」
  • 「あなたのその説明は、実際の状況と同じですか。違うのであればどこが違いますか」

評価を問わず、事実を一つずつ丁寧に確認していけば、相手も言い逃れにくくなります。慣れていない場合は、質問の順序や日本語の使い方を事前に弁護士と相談しておくと、面談の精度が上がります。

5. 仕事関連・事実確認に絞ればパワハラになるケースはほぼない

「パワハラになるのではないか」と心配されている社長も多いでしょう。しかし、ここまで述べてきた「仕事に関連する情報に絞る」「事実確認を中心に進める」という2点を守っていれば、パワハラになるケースはほぼありません。

パワハラは客観的に判断される

パワハラかどうかは、客観的に——平均的な労働者がどう受け止めるかを基準として——判断されるものです。「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という言説は誤りです。

仕事に関連して・職場秩序を守るために必要な情報について、事実を確認していく行為——これは業務上必要かつ相当な範囲の指示・指導です。厚労省パワハラ指針でも、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示・指導はパワハラには該当しないと明記されています。

よほど変な言動をしなければ大丈夫

事実確認がパワハラと評価されるのは、無駄に大声で怒鳴る・誰が聞いてもあまりにひどいやり方をするなど、よほど変な言動をした場合に限られます。通常の大人として適切な言葉遣いで、仕事関連の事実を淡々と確認していく限り、パワハラ認定のリスクは極めて低いのです。

「仕事に関連するものに絞る」「事実確認を中心に進める」——この2点を守っていれば、パワハラになるかどうかを心配する必要はほぼありません。安心して事実確認に臨んでください。

それでも不安な場合は弁護士に相談

個別事案の状況が微妙で、どう進めてよいか判断に迷う場合は、問題社員対応を専門とする弁護士に相談しながら進めてください。面談前に想定問答を作成したり、面談後の対応方針を詰めたり、日本語の使い方についてアドバイスを受けたりすることで、本番の対応力が大きく向上します。

6. まとめ

嘘を繰り返し、怪しい発言を追及するとパワハラと非難する社員への対処法を整理します。

  1. 嘘の中身が仕事と関連するかをまず判別する。プライベートな嘘は深追いしない
  2. 仕事関連の事実確認は上司・社長の仕事。職場秩序と周囲の社員を守るため、逃げずに対応する
  3. しっかり時間を取って会議室で面談する。15分でも十分。メールやSlackだけで済ませない
  4. 評価ではなく事実を確認する。5W1Hで具体的に特定する。評価は後から付ければよい
  5. 仕事関連・事実確認に絞れば、よほど変な言動をしない限りパワハラになるケースはほぼない

まずはファーストステップとして、面談を実施してみてください。うまくいくことも、うまくいかないこともあると思いますが、面談という行動に出られること自体が前進です。それでもうまくいかない場合は、弁護士にご相談ください。どのような日本語を使い、どう進めればよいか、具体的にアドバイスいたします。

弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 嘘を追及するとパワハラだと非難されます。追及はやめた方がよいのでしょうか。

A. やめてはいけません。仕事に関連する情報について事実を確認することは、上司・社長の当然の責務です。嘘を放置すれば、業務に支障が出るだけでなく、職場秩序が乱れて周囲の社員にも悪影響を及ぼします。「仕事に関連するものに絞る」「評価ではなく事実を確認する」という2点を守れば、パワハラと評価されるリスクは極めて低いものになります。

Q2. プライベートな嘘(経歴詐称ではない一般的な嘘など)もすべて追及すべきですか。

A. 仕事と関係のないプライベートな嘘は、深追いするべきではありません。職場は仕事をする場所であり、プライベートな嘘は「あの人は信用できる・できない」という人間関係の問題にとどまります。会社として踏み込む領域ではなく、むしろ私生活への過度な介入として逆に問題になる可能性があります。ただし、経歴詐称や採用時の虚偽申告など、労働契約の基礎に関わる嘘は別問題です。

Q3. 面談ではなくメールやSlackでの事実確認ではダメですか。

A. 文字情報だけのやり取りでは、相手が時間をかけて言い逃れの文面を練ることができるため、都合のよい回答で終わってしまうことが多いです。会議室での面談や、カメラオンでのオンライン面談で、面と向かって対話することが事実を引き出すために重要です。文字記録を活用したい場合は、面談で事実を確認した上で、その内容を文書化するという順序で進めてください。

Q4. 事実確認の面談でも、つい「嘘をついたか」という評価的な議論になってしまいます。どうすればよいですか。

A. 評価は最後のゴールとして置いておき、面談中は「いつ・どこで・何を言ったか・何をしたか」という具体的な事実の確定にエネルギーを注いでください。相手が評価的な反論をしても、「いったんその評価は置いておいて、まず事実関係を整理させてください」と軌道修正するのが有効です。慣れていない場合は、面談前に質問の順序や進め方を弁護士と相談して準備してから臨むことをお勧めします。

Q5. 事実確認を進める中で「これ以上追及するとパワハラになる」という目安はありますか。

A. 仕事関連の事実を、通常の言葉遣いで淡々と確認していく限り、パワハラになるケースはほぼありません。パワハラと評価されやすいのは、無駄に大声で怒鳴る、人格を否定する発言をする、必要以上に長時間拘束するなど、よほど変な言動をした場合に限られます。通常の上司・社長としての事実確認の範囲内であれば、安心して進めてよいとお考えください。それでも不安な場合は、面談前に弁護士にご相談ください。

最終更新日:2026年4月17日


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