問題社員236 メンタルを理由に日常業務を引き受けたり断ったりする。
動画解説
この記事の要点
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まず「本当に業務ができない時間帯があるのか」の事実確認が先決——診断書取得・産業医面談・医師への問い合わせで客観的に判断する 「メンタルの病気だから」という主張が本当に業務ができない状態を裏付けるものなのか、単にやりたくない仕事を断る口実なのかを医師の意見も踏まえて確認することが出発点 |
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「実際はできるのに口実にしているだけ」と判断できれば、仕事をやらせて注意指導・懲戒処分へ——ただし医師の意見を根拠にして具体的事実を示す 「何月何日の何時頃、誰から何を頼まれたのに断ったか」という具体的事実を示した上で、医師の意見では「この業務はできる」と確認されていることを根拠として指導する |
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「本当にできない時間帯がある」と確認された場合、本人の言いなりにしてはいけない——安全配慮義務の観点から休ませることを優先し、体調悪化を防ぐ 本人が「出社したい」と言っても、働かせることで体調をさらに悪化させるリスクがあれば、医師の意見を踏まえて強制的にでも休ませることが必要。放置は安全配慮義務違反になりうる |
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周りの社員への影響も考慮する——労働契約で予定された程度の労務提供ができない状態が長期間続く場合は、欠勤扱いにして周囲の負担を軽くすることも選択肢 周りへの負担が契約上の義務を果たしている範囲内なら「我慢してね」と言えるが、長期間・高頻度で労務提供できていない場合は強制的に欠勤扱いにすることも検討する |
目次
1. 「本当に業務ができない時間帯があるのか」をまず確認する——診断書・産業医・主治医への問い合わせ
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
メンタルの病気を理由に日常業務を引き受けたり断ったりする社員への対応で最初にすべきことは、「本当にできない業務・できない時間帯があるのか」という事実の確認です。
「メンタルの病気だから気分の浮き沈みが激しくて今日はできません」という主張が、本当に医学的に裏付けられているのか、それとも単にやりたくない仕事を断るための口実なのかは、外から見ただけでは判断できません。「みんなの共通認識になっているから確認不要」と思うのは危険です。集団の評価が先行してしまうと、具体的な事実確認なしに話が進んでしまい、後に問題が生じます。
具体的な確認手順
- 診断書の提出を求め、何の病気でどのような症状があるのかを明確にする
- 産業医がいる会社では産業医に面談させ、「断った仕事の内容」「気分が沈んでいる時の頻度・長さ」などの情報を提供した上で、「この病気・この状況でこの業務ができない時間帯が本当にあるのか」という意見を求める
- 場合によっては本人の同意を得た上で主治医に問い合わせる
この事実確認のステップを飛ばして「病気だから仕方ない」と本人の主張を鵜呑みにすると、後にどのような対応にも進めなくなります。逆に「どうせ口実だ」と決めつけて指導を強行すれば、本当に病気が原因の場合に安全配慮義務違反を問われることになります。どちらのリスクも避けるために、まず事実を客観的に確認する手続きが不可欠です。
2. 「実際はできるが口実にしているだけ」と判断できる場合——具体的事実を示して注意指導・懲戒処分
医師の意見や診断内容を踏まえた結果、「実際はできるのに単なる口実として使っているだけ」と判断できる場合は、仕事をやらせた上で注意指導を行います。
注意指導の際は、抽象的な言い方をしてはいけません。「メンタルの状態は関係ない」とか「断ってばかりだ」などという評価的な言葉で指導しても効果がありません。「何月何日の何時頃、誰から何を頼まれたのに断ったか」という具体的な事実を示した上で、「お医者さんの意見ではこの程度の業務はできないということはないと確認されている、だから仕事をしなさい」という形で指導してください。
指導の例:「〇月〇日〇時頃、〇〇部長から△△の資料作成を頼まれましたね。あなたはメンタルの不調を理由に断りましたが、産業医の意見では、この種の業務は現在の体調で十分に対応可能と確認されています。今後、同種の業務指示については、医師の意見を踏まえて対応してください。」
それでも業務を拒否し続けるようであれば懲戒処分も検討できます。ただしこの判断は個別の医学的意見と事実確認を積み重ねた後でなければ危険です。必ず弁護士に相談しながら進めてください。
3. 「本当にできない時間帯がある」と確認された場合——安全配慮義務から休ませることを優先する
一方、医師の意見や産業医の見解を踏まえた結果、「確かにこの病気・この状況では日常業務ができない時間帯が存在する」と確認された場合は、対応の方向性が変わります。
多くの会社がやりがちな対応は「本人の言いなりになること」です。本人が断るものはやらせない、本人が出社したいと言えば出社させる——こうすれば失敗しないように思えます。しかしこれは間違いです。
本人の言いなりにしておいた結果、出社を続けることで体調がさらに悪化し、「体調が悪いのに働かせた」として会社の安全配慮義務違反を問われるケースが実際に存在します。
本当にできない時間帯があると確認された場合は、「この状態で出社させていいのか」を医師に確認することが先決です。出社させること自体が体調悪化につながる場合は、たとえ本人が「出社したい」と言っても休ませる必要があります。
4. 本人が「出社したい」と言っても医師の意見を踏まえて休ませる——体調悪化を放置した場合のリスク
「本人が働きたいと言っているのだから出社させても問題ないはずだ」と考えるのは誤りです。会社には安全配慮義務があり、働かせることで体調を悪化させないよう配慮する義務があります。
医師から「このまま働かせると体調がさらに悪化する」という意見が出ている場合は、本人の意思に関係なく休ませることが経営者の責任です。「体調悪いのに辛い仕事をさせられて体調がさらに悪化した。どうしてくれるんだ」という内容証明郵便が届いた例は実際に多くあります。
休ませる説得が難しい場合は弁護士のコンサルティングを受けながら対応してください。強制的に欠勤扱いにするような踏み込んだ対応は、単独で行うのは危険です。書面での通知内容、本人への伝え方、その後の欠勤扱いの運用まで、手順を整えた上で動く必要があります。
5. 周りの社員への影響——労働契約で予定された労務提供ができない場合は強制的に欠勤扱いも
「昨日は頼んだらやってくれたのに今日はメンタルが沈んでいるからできません」という状態が日常業務レベルで繰り返されると、周りの社員の負担は相当なものになります。
理屈の面から整理すると、労働契約で予定されている程度の労務提供ができているのであれば、周りに「ある程度我慢してね」と言うことはできます。しかし、簡単な日常業務すらできない状態が長期間・高頻度で続いているとなれば、「労働契約上の義務を果たしているとは言えない」という評価になりえます。
そのような場合は、医学的な意見も踏まえた上で、強制的に欠勤扱いとして別の人を充てるという対応も選択肢になります。ただしこれは非常に踏み込んだ対応ですので、必ず弁護士のコンサルティングを受けながら行ってください。
個別の具体的な事情——診断内容、業務内容、欠勤パターンの頻度、他の社員への影響の程度——に応じた判断が不可欠です。一般論だけで踏み込むと、逆に会社側が訴えられるリスクがあります。
6. まとめ
メンタルを理由に日常業務を引き受けたり断ったりする社員への対応のポイントを整理します。
- まず診断書・産業医・主治医への問い合わせで「本当にできないのか」を客観的に確認する。「みんながそう思っている」という評価だけで進めない
- 口実と判断できれば具体的事実を示して注意指導・懲戒処分へ。「何月何日・誰から頼まれた業務を断ったか」という事実ベースで指導する
- 本当にできない状態と確認されれば、本人の意思に関わらず安全配慮義務の観点から休ませる。本人が「出社したい」と言っても体調悪化リスクがあれば休ませることが経営者の義務
- 周りへの長期的な影響が大きい場合は弁護士と相談して強制的な欠勤扱いも検討する
判断に迷う場面では、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. メンタルの病気を理由に仕事を断る社員に懲戒処分をすることはできますか。
A. 医師の意見を踏まえた確認の結果「実際はできるのに口実として使っているだけ」と判断できる場合は、注意指導を重ねた上で懲戒処分を行うことができます。ただし病気の影響が実際にある場合は、その事情を考慮せずに通常の懲戒処分をすることは問題になりえます。必ず医師の意見確認と弁護士への相談を経てから判断してください。
Q2. 本人が「出社したい、働ける」と言っていますが、医師から「休んだ方がいい」と言われています。どうすればいいですか。
A. 医師が「休んだ方がいい」と判断しているのであれば、本人の「働きたい」という意思よりも医師の意見を優先することが安全配慮義務の観点から重要です。本人を説得して休ませるよう努め、それでも応じない場合は弁護士に相談しながら対応方針を決めてください。働かせて体調をさらに悪化させた場合、安全配慮義務違反として会社の責任が問われる可能性があります。
Q3. 診断書の提出を本人が拒否しています。どうすればよいですか。
A. 本人が診断書の提出を拒否することそれ自体が、後の判断において考慮される事情になります。「メンタルの病気を理由に業務を断るのであれば、会社としては業務上の配慮の要否を判断する必要がある。そのために診断書の提出が必要である」と丁寧に説明して提出を求めてください。それでも拒否する場合は、業務指示を通常どおり出した上で、従わない場合の注意指導・懲戒処分を検討することになります。この段階では弁護士と相談しながら進めてください。
Q4. 産業医がいない会社ではどうすればよいですか。
A. 本人の同意を得た上で主治医に直接問い合わせる、あるいは外部の産業医サービスを一時的に利用するといった方法があります。業務内容を具体的に示した書面を作成し、主治医に「この業務は現在の体調で遂行可能か」という意見を求めてください。医師の意見を客観的に得るプロセスを欠くと、その後の注意指導・懲戒処分・休職命令のいずれにおいても、判断の根拠が弱くなります。
Q5. 周りの社員から「不公平だ」という声が上がっています。どう説明すればよいですか。
A. 本人のプライバシーに配慮する必要があるため、病名や診断内容を周囲に開示することはできません。ただし、「会社として必要な確認手続きを進めている」「一定の業務について負担軽減を検討している」といった範囲で、対応が進んでいることを周囲に伝えることは可能です。併せて、しわ寄せを受けている社員の業務負担を実態に応じて軽減する・評価に反映させるなどの対応も併せて検討してください。
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最終更新日:2026年4月17日
