問題社員192 入社したばかりの若手社員よりも仕事ができない中途採用社員。

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この記事の要点

問題の本質は「適性のなさ」です。試用期間中にケリをつけることが最善策であり、経過後は具体的事実に基づく丁寧な説明が合意退職の鍵です。

 中途採用で入社したにもかかわらず、若手社員よりも仕事ができずやる気も感じられないという状態の多くは、悪意のあるサボりではなく「その仕事に向いていない」という適性の問題から生じています。試用期間中に問題を認識したら先送りにせず、試用期間を経過してしまった場合は具体的事実に基づく丁寧な対応で合意退職を目指すことが重要です。

問題の本質は「サボり」ではなく「適性のなさ」である可能性が高い

 やる気が感じられない、若手社員でもできる仕事ができないという状態のほとんどは、悪意のあるサボりではなく「その仕事が向いていない」ことが原因です。向いていない仕事ではやる気も出ず、成果も出ません。適応障害などのリスクも生じます。


試用期間中にケリをつけることが最善策

 試用期間中は本人の納得感が得やすく、本採用拒否のハードルも相対的に低くなります。試用期間中に問題を認識したら先送りにしないことが重要です。試用期間経過後は難易度が上がります。


試用期間経過後の対応:具体的事実に基づく説明と退職条件の提示が鍵

 試用期間を経過してしまった場合でも、会議室での面談を通じた合意退職の追求が基本です。「なぜ辞めなければならないのか」を具体的な事実に基づいて説明することが、説得力を高め退職条件の相場を抑える上でも不可欠です。

1. 問題の本質を正確に把握する:「サボり」ではなく「適性のなさ」

やる気がなく仕事ができない状態の多くは適性の問題

 中途採用で入社した社員が、若手社員よりも仕事ができず、やる気も感じられないという状態は、多くの場合、意図的なサボりではありません。弁護士として多くの相談を受ける中での経験から見ると、こうしたケースの大半は「その仕事が向いていない」という適性の問題から生じているといえます。

 向いていない仕事は苦痛であり、苦痛だからこそやる気が出ない。やる気が出ないから成果も出ない。本人が頑張ろうとしても、力が入らず、「早く就業時刻にならないかな」と時計を見続けるような状態になる。こうした状態は、本人の人格や心構えの問題ではなく、仕事と適性のミスマッチから生じていることがほとんどです。したがって、「やる気を出せ」「しっかりやれ」という叱咤激励は、この問題の解決につながりません。それどころか、悪気なくできていない本人に対して繰り返し叱責することは、適応障害などのメンタルヘルス問題に発展するリスクがあります。

「能力値」は絶対的なものではなく、仕事との相性で決まる

 重要な視点として、人間の能力は「この人の能力値は全般的に低い」というような一元的なものではなく、特定の仕事との相性によって大きく変わるという点があります。今この仕事ではうまくいかない社員が、別の仕事では驚くほどの成果を出すということは、実際の職場でも珍しくありません。

 つまり「若手社員よりも仕事ができない中途採用社員」は、必ずしも能力が低い人材なのではなく、「今この仕事との相性が悪い人材」である可能性が高いのです。この認識を持つことが、退職という選択肢を「排除」ではなく「本人が活躍できる場への移行」として捉える上で重要です。

中途採用社員の能力不足・やる気のなさが周囲に与える悪影響

 こうした状態の中途採用社員を放置することは、本人だけでなく周囲の社員にも深刻な影響を与えます。若手社員よりも仕事ができない人物が、若手社員よりも高い給料をもらっている状況は、周囲の社員に強い不公平感をもたらします。「なぜあの人より自分の給料が低いのか」という不満が積み重なると、優秀な若手社員が職場を離れるリスクも生じます。

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

 こうした問題をめぐる経営者からのご相談でよく聞かれるのは、次のようなパターンです。

・「試用期間中に問題に気づいていたが、様子を見ているうちに試用期間が経過してしまった。今から退職を求めたいが難しくなった」

・「中途採用なのに新入社員レベルの仕事もできず、周りの不満が爆発寸前。何度注意しても改善しない」

・「退職を求めたところ、理由の説明が不十分だったため本人が強く反発し、退職条件として法外な金額を要求されるトラブルになった」

 いずれも、早期対応と丁寧な理由説明の欠如が問題を複雑にしたケースです。

2. 試用期間中の対応:最善のタイミングを逃さない

試用期間中にケリをつけることが最善策である理由

 こうした問題が生じた場合、試用期間中に対処することが圧倒的に有利です。第一は、本人の納得感が得やすいことです。試用期間が経過して本採用された後に「能力が低い」「やる気が感じられない」と言われると、「なぜもっと早く言わなかったのか」「本採用した時点で問題ないと判断したはずではないか」という反発が生じます。しかし試用期間中であれば、「試用期間中だからしょうがない」という受け入れやすさが本人に生まれます。

 第二は、本採用拒否のハードルが相対的に低いことです。試用期間中であっても、本採用拒否には客観的に合理的な理由が必要であり、自由に解雇できるわけではありません。しかし本採用後と比べれば、必要な証拠・立証の水準が相対的に低くなります。

試用期間を過ぎてしまうことのリスク

 注意が必要なのは、「本採用の通知をしていない」という理由で試用期間が続いているとは言えないということです。試用期間として設定された期間が何事もなく経過すれば、法的には本採用とみなされます。試用期間中に問題を認識しながら先送りにすることが、後の対応の難易度を大きく上げる原因となります。

✕ よくある経営者の誤解

「本採用の通知をしていないから、まだ試用期間中のはずだ」→ 誤りです。
 試用期間として設定した期間が何事もなく経過すれば、本採用の通知がなくても法的には本採用とみなされます。「通知していないから試用期間中」という主張は通用しません。

「試用期間中なら自由に解雇(本採用拒否)できる」→ 誤りです。
 試用期間中であっても、本採用拒否には客観的に合理的な理由と適正な手続が必要です。ただし本採用後と比べてハードルが相対的に低くなることは事実です。

試用期間中の合意退職・本採用拒否の進め方

 試用期間中に問題が確認できた場合、まず本人と面談を行い、合意退職に向けた話し合いを行うことが基本です。問題のある言動を具体的な事実として示した上で、丁寧に話し合いを行います。合意が得られない場合には、本採用拒否(試用期間中の解雇)という対応が選択肢となりますが、この判断は法的な検討が必要なため、弁護士への相談をお勧めします。

 試用期間中の対応(合意退職の進め方・本採用拒否の可否判断)について、早い段階でのご相談をお勧めします。試用期間を経過させてしまう前に方針を固めることが、その後の対応を大きく左右します。→ 経営労働相談はこちら

3. 試用期間経過後の対応:合意退職を目指した丁寧な対応

試用期間経過後はハードルが上がることを前提に

 試用期間を経過してしまった場合でも、対応の方向性は基本的に「合意退職を目指す」ことです。ただし、試用期間中と比べて本人の納得感を得る難易度が上がっており、解雇の要件としても厳しい水準が求められることを前提として対応を設計する必要があります。

退職を求める面談の重要ポイント①:辞めなければならない理由を具体的事実で説明する

 合意退職に向けた面談で最も重要なのは、「なぜ辞めなければならないのか」を具体的な事実に基づいて説明することです。「能力が低い」「やる気が感じられない」「結果が出ていない」という抽象的な評価だけを伝えても、本人の納得は得られません。本人からすれば「気分で言っているのではないか」「自分のことが嫌いだから言っているのではないか」という受け取り方をされることが実際に多くあります。

 「何月何日に、新入社員が10個こなせる業務を3つしかできなかった」「面談で改善を約束したが翌日も同じ状態だった」というように、いつ・どこで・どのような言動があったかを具体的な事実として伝えることが説得力を生みます。こうした事実に基づいた説明はパワーハラスメントにはなりません。むしろ、事実の裏付けなく抽象的な評価を繰り返すことの方がパワーハラスメントと評価されるリスクがあります。

退職を求める面談の重要ポイント②:退職条件の提示について準備しておく

 辞めなければならない理由の説明が不十分なまま退職を求めると、本人が退職に応じない場合の退職条件の「相場」が上がります。「説明できないなら、それだけの条件を積め」という交渉になりやすいからです。具体的な理由を示せることが、適正な退職条件での合意を実現する上でも重要です。本来支払う必要のない上積みを避けるためにも、事実に基づく説明の準備は退職条件の観点からも不可欠です。

事実の記録と注意指導の積み重ねが退職交渉を支える

 退職を求める局面の前段階として重要なのは、日常的な注意指導の記録です。いつ、どのような問題があり、どのように指導したか、本人からどのような応答があったかを記録として残しておくことが、その後の合意退職交渉や、万一の解雇の正当性を支える根拠となります。

 試用期間経過後の退職勧奨・合意書の作成・退職条件の設計について、個別の状況に応じたご相談をお受けしています。「どう説明すれば納得してもらえるか」という段階からのサポートが可能です。→ 経営労働相談はこちら

4. まとめ:経営者が取るべき対応の全体像

適性の問題と捉え、早期に対処する

 入社したばかりの若手社員よりも仕事ができない中途採用社員への対応の核心は、「この人はこの仕事に向いていない」という適性の問題として正確に把握することです。その上で、試用期間中に問題を確認したら先送りにせず、合意退職・本採用拒否に向けた対応を早期に進めることが最善策です。

試用期間経過後でも諦めず、具体的事実に基づいて対処する

 試用期間を経過してしまった場合でも、対応の方向性は変わりません。会議室での面談・具体的な事実に基づく説明・退職条件の提示という手順を踏んだ丁寧な合意退職の追求が基本です。周囲の若手社員への不公平感が積み重なり、優秀な社員が離れるリスクを防ぐためにも、毅然と対処することが経営者の責任です。

対応の設計段階から弁護士に相談を

 試用期間中の本採用拒否・試用期間経過後の退職勧奨・合意書の作成・解雇の正当性判断など、各段階で法的な判断が必要な場面が多くあります。「少しおかしいかも」と感じた早い段階から、会社側の労働問題に精通した弁護士にご相談ください。若手社員より仕事ができない中途採用社員の問題についてお困りの会社経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05


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