問題社員191 営業成績が極端に悪い営業社員。
動画解説
目次
能力不足かサボりかを見極め、根底にある「適性のなさ」を正確に捉えた上で、段階的な対応を進めることが経営者に求められます。
営業成績が極端に悪い社員を抱える経営者は、まず「なぜ成績が悪いのか」という原因を正確に見極めることから始める必要があります。原因は大きく「能力不足」と「サボり」の2つに分けられますが、実はこの2つは根底でつながっていることが多く、その共通原因は「営業への適性のなさ」です。
■ 能力不足が原因の場合:同行指導・難易度を下げた営業手法の設計から
能力不足が疑われる場合、まず同行指導・アドバイス・手本の提示といったマイクロマネジメント的な育成に取り組みます。また、特別な適性がなくてもある程度の成果が出せる営業手法を設計するという発想も重要です。それでも改善しない場合は配置転換または退職という方向を検討します。
■ サボりが疑われる場合:日報の精査・同行確認・GPS管理で実態を把握する
外出中のサボりは経営者の目が届きにくく、放置すると「仕事をせずに給料だけもらう」状態が常態化します。日報の具体的な確認・同行による実態把握・GPS導入による位置確認という手段を組み合わせることで、実態把握とサボりへの抑止効果を発揮させることができます。
■ 能力不足もサボりも、根底にある「適性のなさ」を見極める
能力不足とサボりは別々の問題に見えますが、多くの場合「営業への適性がない」という共通原因から生じています。適性の問題と正確に捉えた上で、配置転換・退職勧奨を視野に入れた対応が求められます。
1. まず原因を特定する:営業成績不振の2つのパターンと共通の根本原因
営業成績が極端に悪い場合の2つの主な原因
営業成績が極端に悪い社員への対応を考えるにあたって、まず確認すべきことは「なぜ成績が悪いのか」という原因です。原因は大きく2つに分けられます。一つは純粋な能力不足、もう一つはサボりです。原因が異なれば、取るべき対応もまったく異なります。能力不足であれば教育・育成のアプローチが中心となり、サボりであれば行動管理・監督のアプローチが中心となります。この大枠を誤ったまま対応を進めると、的外れな対応を繰り返すことになります。
能力不足もサボりも、根底にある「適性のなさ」が共通原因
ただし重要なのは、能力不足とサボりは実際には根底でつながっていることが多いという点です。多くのケースで、その共通原因となっているのは「営業への適性のなさ」です。能力不足との関連は分かりやすいでしょう。営業に必要な資質・スキルが低い状態では、成果を出すことは難しく、成績が悪くなります。しかしサボりとの関連も見逃せません。向いていない仕事は苦痛であり、苦痛だからこそやる気が失われ、サボりたくなるという心理が働きます。逆に、向いている仕事であれば何時間働いても疲れず、むしろ楽しいとすら感じることがあります。この構造を理解しておくことが、営業成績が極端に悪い社員への対応を設計する上での土台となります。
⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)
営業成績不振をめぐる経営者からのご相談でよく聞かれるのは、次のようなパターンです。
・「日報には毎日10件訪問と書いてあるが、実際に顧客に確認したところ『来ていない』と言われた。何ヶ月も給与を払い続けていた」
・「能力不足だと思い丁寧に教育指導を続けていたが、本人はやる気を失っており教育効果がまったく出なかった。適性の問題だったと後から気づいた」
・「GPS導入を特定の社員だけに行ったところ、『嫌がらせだ』と主張されてトラブルになった」
いずれも、原因の見極めと対応の設計を誤ったことで、問題が長期化・複雑化したケースです。
2. 能力不足が原因の場合の対応
まず同行指導・マイクロマネジメント的な育成に取り組む
能力不足が原因である可能性が高い場合、まず教育・育成で何とかならないかを試みることが基本です。具体的には、本人の相談に乗ってアドバイスを行う、営業先に同行して現場でフィードバックする、経営者や先輩社員が手本を見せるといった、マイクロマネジメント的な関与を通じた育成が有効です。特に人手不足の時代において、多少能力が足りないと感じていても、できる限り教育・育成によってやりくりすることが経営者に求められています。
難易度を下げた営業手法の設計という発想
能力不足への対応として、もう一つ重要な視点が「営業手法そのものの設計を見直す」というアプローチです。現在の営業が特別な適性・スキルを持つ人材でなければこなせない高いハードルを前提としている場合、そのハードル自体を下げた営業手法を設計することで、適性がそれほど高くない社員でもある程度の成果を出せる体制を構築できる可能性があります。採用難が続く現代において、「今採用できる水準の人材でも成果が出せる仕組みを作る」という発想を持つことも、経営者として取り組むべき課題です。
改善が見られない場合:配置転換または退職
教育指導や営業手法の工夫を尽くしても改善が見られない場合、その営業業務への固執を諦め、社内に別の適性ある業務があれば配置転換を検討します。社内に適した業務がない場合には、退職という方向を検討することになります。
3. サボりが疑われる場合の対応:日報精査・同行確認・GPS管理
外出営業社員の行動管理は難しい
外回りの営業社員は、経営者や管理職の目が届きにくいため、サボりが生じやすい環境にあります。「日報にはお客さんを訪問したと書いてあるが、本当に行ったのかどうか確認できない」という状況が続くと、サボりの疑いが確認されないまま給与だけが支払われ続けるという問題が生じます。放置すると「この会社ではサボっても問題ない」という認識が広がり、当該社員のサボりが常態化するだけでなく、他の社員への悪影響も生じ得ます。
日報の精査と具体的な確認で実態を把握する
サボりを疑う場合の基本的な対応は、日報の内容を具体的に確認することです。「どのお客さんのところに行ったか」「どんな話をしたか」「次のアポはいつか」といった具体的な内容を面談の場で詳しく聞くことが有効です。具体的な嘘をつき続けることは難しく、詳しく聞いていくと辻褄が合わなくなってきます。また、日報に記載されたお客さんのところに実際に問い合わせることで、「その日は来ていない」という事実が判明することもあります。こうした確認作業を継続することで、サボっている社員は居づらくなり、自ら退職するケースも多くあります。
GPS管理の活用:抑止効果を中心に、プライバシーへの配慮を忘れずに
近年では、社用スマートフォンや社用車にGPSを導入することで、外出中の社員の位置情報を把握するという管理方法も広まっています。GPS管理の主な目的は「サボりの現場を押さえること」ではなく、「サボりを防ぐための抑止効果」です。重要なのは、GPS導入の事実を事前に社員に伝えることです。「GPSを導入したので、仕事中の場所が確認できるようになります」と明示した上で運用することで、「バレるならサボれない」という意識を持たせることができます。
GPS管理を導入する際は、プライバシーへの配慮も必要です。業務時間中の位置情報の把握に限定し、業務時間外の追跡には使用しないという明確なルールを設けることが重要です。また、導入は特定個人だけを狙い打ちにするのではなく、同じ職種の社員全員に対して一律に適用する形が、公平性の観点からも懲罰的なニュアンスを排除する意味でも望ましいといえます。
✕ よくある経営者の誤解
「GPSで現場を押さえてから注意しよう」→ 誤りです。
GPS管理の主目的はサボりの「抑止」です。事前告知によって「バレるならサボれない」という意識を持たせることが最も効果的であり、秘密裏に追跡して現場を押さえようとするアプローチは、プライバシー侵害のリスクを生じさせます。
「特定の問題社員だけにGPSを導入しよう」→ 注意が必要です。
特定個人だけを狙い打ちにしたGPS導入は、懲罰的なニュアンスが生じ、「嫌がらせだ」という主張につながるリスクがあります。同職種の社員全員に一律導入する形が望ましいです。
サボりの証拠収集の方法、日報管理の仕組み、GPS導入の適法性などについてご不明な点がある場合は、早めにご相談ください。実務に即したアドバイスが可能です。→ 経営労働相談はこちら
4. 能力不足とサボりの根底にある「適性のなさ」への対処
向いていない仕事を続けさせることのリスク
能力不足であれ、サボりであれ、その根底に「営業への適性のなさ」がある場合、無理に営業を続けさせることは本人にとっても会社にとっても得策ではありません。向いていない仕事で成果を求め続けることは、本人に深刻なストレスをかけ、適応障害などのメンタルヘルスの問題につながるリスクがあります。会社の安全配慮義務の観点からも、こうした状況を放置することには問題が生じます。
配置転換と退職勧奨を視野に入れた対応
教育指導・行動管理を尽くしても改善が見られない場合、その背景に適性のなさがあると判断できる段階では、社内に別の適性ある業務があれば配置転換を検討します。社内に適した業務がない場合には、退職勧奨・合意退職という方向を検討することになります。「向いていない仕事を諦める」という判断は、本人にとっても、より適性のある仕事で才能を発揮できる機会につながる可能性があります。退職に関する話し合いはトラブルになりやすいため、進め方については弁護士への相談をお勧めします。
配置転換・退職勧奨・合意退職の進め方や合意書の作成について、個別の状況に応じたご相談をお受けしています。問題が深刻化する前の段階でのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら
5. まとめ:経営者が取るべき対応の全体像
原因を見極め、段階的に対応を進める
営業成績が極端に悪い社員への対応は、まず原因が能力不足かサボりかを見極めることから始まります。能力不足であれば育成・営業手法の見直し・配置転換・退職という順に、サボりであれば日報の精査・GPS管理・注意指導・懲戒処分・解雇という順に、段階的に対応を進めることが基本です。そして両者の根底にある「営業への適性のなさ」という共通原因を見誤らないことが重要です。適性の問題として捉えた上で、その人が本来の力を発揮できる場を探す発想を持つことが、会社にとっても本人にとっても最善の結果につながります。
対応に迷いが生じた段階で早めに弁護士へ
注意指導・懲戒処分・解雇・退職勧奨の各段階では、法的な判断が必要な場面が生じます。特にサボりの証拠の整備・業務命令書の作成・退職合意書の内容など、専門的なサポートを要する場面は多くあります。営業成績が極端に悪い社員への対応についてお困りの会社経営者の方は、早めに会社側の労働問題に精通した弁護士にご相談ください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/05