問題社員189 遅刻を注意すると逆ギレして反省せず、遅刻を繰り返す。

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この記事の要点

逆ギレの背景にある原因を特定し、原因に応じた対応を段階的に進めることが、経営者に求められる対応です。

 遅刻を注意すると逆ギレして反省せず、遅刻を繰り返す社員は、単なる「態度の悪い社員」として一括りにできる問題ではありません。逆ギレが生じる背景には典型的な原因があります。まずその原因を正確に特定することが、適切な対応の出発点です。原因を誤ったまま対処しても的外れになり、問題は解決しません。

逆ギレの背景にある「典型的な3つの原因」を特定する

 遅刻への注意に対して逆ギレが起きる場合、①遅刻が既得権益化している、②会社・上司が軽く見られている、③特殊事情(長時間労働・私生活上の問題など)がある、という3つのパターンに大別されます。まず原因を特定した上で、それに応じた対応を取ることが重要です。


既得権益化している場合:「これからは違う」という明確な方針転換が必要

 前の上司が甘かったり、経営者自身が「成果さえ出せば時間は気にしない」という方針を示していた場合、遅刻が既得権益となっています。反発を覚悟の上で現在の方針を明確に示し、段階的な注意指導・懲戒処分へと対応を進めることが必要です。


軽く見られている場合:毅然とした対応の回復が先決

 物分かりのよいふりをする姿勢が「逆ギレすれば引いてくれる」という計算を生んでいる場合があります。一度なめられると対応難易度は上がりますが、適切な手順で秩序を回復することは可能です。

1. まず原因を特定する:遅刻への注意に逆ギレが起きる3つの典型パターン

原因の特定なしに対処することのリスク

 遅刻を注意しても逆ギレして反省せず、遅刻を繰り返す社員への対応で、最初にすべきことは原因の特定です。表面上は同じ「注意への逆ギレ」という行動でも、その背景にある原因によって取るべき対応は大きく異なります。原因を正確に見極めないまま対処すると、的外れな対応になり、問題を悪化させることにもなりかねません。

 まず前提として確認しておくべきことは、遅刻は労働契約違反だということです。始業時刻に出社して仕事を開始することは、雇用契約の基本的な内容です。遅刻はその義務を果たしていない状態であり、注意指導の対象となるのは当然のことです。それに対して逆ギレするというのは、通常では考えにくい反応であり、何らかの背景があると考えて原因を探ることが必要です。

パターン①:遅刻が既得権益化している

 最も多いパターンの一つが、遅刻が「既得権益」として定着してしまっているケースです。前任の上司が遅刻に対して甘く何も注意しなかった結果、「この職場では遅刻しても問題ない」という認識が定着しているケースがあります。当時は「物分かりのいい上司」として評判が良かったかもしれませんが、その後任の上司が遅刻を注意し始めると、既得権益を侵害されたと感じて強く反発するというパターンです。

 また、経営者自身が「成果さえ出してくれれば、時間にはこだわらない」という方針を示していた場合も同様です。「結果さえ出せば」という条件付きであったはずが、条件の部分が忘れられ、「時間は自由でいい」という部分だけが定着してしまうことがあります。そして成果が出ていない社員に対して「時間を守れ」と言っても、本人は「そんなことは言われていない」と受け取るため、反発が生じます。

パターン②:会社・上司が軽く見られている

 もう一つのよくあるパターンが、社員が会社や上司を「軽く見ている」ケースです。部下との関係を良好に保ちたいあまり、物分かりのよいふりをしてやるべきことをはっきり伝えてこなかった上司・経営者に対して、「言い返したり威嚇すれば引いてくれるだろう」という計算が働き、逆ギレという行動が生じているケースがあります。

 近年では、採用難・人手不足を背景に「辞められたら困るでしょ」という意識で会社を軽く見てくる社員も存在します。「このぐらいのわがままを聞いてくれないなら他に行く」という計算です。こうした状況は、特に採用に困っている会社では生じやすく、経営者として対応が難しい局面でもあります。

パターン③:特殊事情がある

 ①②以外にも、特殊な事情が背景にある場合があります。極端な長時間労働が続いており、明け方近くまで仕事をして帰宅し、わずかな仮眠の後に出社してきた結果の遅刻であれば、本人からすれば「そんな状況で15分遅れたことを責められても」という思いから反発が生じることは、ある意味理解できます。さらに残業代が適切に支払われていない場合には、「遅刻15分分は給料から引かれるのに、残業代はちゃんと払ってくれないのか」という正当な不満に発展します。

 また、家庭の問題や私生活上の出来事によってイライラした状態にある場合も、注意への反応が通常より攻撃的になることがあります。

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

 こうした問題をめぐる経営者からのご相談でよく聞かれるのは、次のようなパターンです。

・「前任の部長が遅刻に一切注意しなかった。新しい管理職が注意したところ、『今まで何も言われなかった』と強く反発され、収拾がつかなくなった」

・「社長自身が『成果さえ出せば時間は自由』と言っていたが、成績が悪い社員にも遅刻が広がり、今さら注意しにくくなってしまった」

・「採用難を理由に遅刻を大目に見ていたところ、他の真面目な社員まで遅刻するようになり、職場全体の規律が崩れてしまった」

 いずれも、対応の先送りが問題を複雑にしたケースです。早い段階での方針明確化と対応が、被害を最小化する上で重要です。

2. パターン①への対応:既得権益化した遅刻への方針転換

方針を明確にして段階的に対処する

 遅刻が既得権益化しているケースでは、まず「今後はこれまでとは違う」という方針を明確に伝えることが第一歩です。「前の上司はそうだったかもしれないが、今後は始業時刻に仕事を開始することを求める」「遅刻した場合は注意指導や懲戒処分の対象になる」「遅刻した時間分の給料は差し引く」という点を、明確に伝えます。

 この際、反発が強くなることはある程度覚悟する必要があります。既得権益を侵害される形になるため、逆ギレがさらに激しくなる可能性もあります。しかし、だからといって対応を先送りにすることは、問題をさらに複雑にするだけです。段階的に注意指導・懲戒処分へと対応を進めることが重要です。

経営者自身が方針のあいまいさを生んでいた場合

 「成果さえ出せば時間は気にしない」という方針を経営者自身が示していた場合は、より慎重な対応が必要です。経営者が自ら設定した方針によって既得権益が生まれている以上、その方針を変更することを明確に伝え、なぜ変更するのかを丁寧に説明することが求められます。

 本当に始業時刻を守ってほしいのであれば、「時間は気にしなくていい」という発言は控えるべきです。やってほしいことを率直に、明確に伝えることが、こうした行き違いを生まないための基本です。察してほしいという期待で運営するマネジメントは、こうした問題を引き起こす原因になります。

✕ よくある経営者の誤解

「反発されるのが怖いから、もう少し様子を見よう」→ 誤りです。
 対応を先送りにすればするほど、既得権益はさらに定着し、後から方針転換する際の反発はより大きくなります。早い段階での明確な方針転換が、長期的には問題を小さく抑える上で重要です。

「遅刻分の給与控除は、就業規則に書いていなくてもできる」→ 注意が必要です。
 ノーワーク・ノーペイの原則から遅刻時間分の控除は認められますが、控除額の計算方法・手続については就業規則の規定を確認した上で行う必要があります。不明な点は弁護士にご相談ください。

 既得権益化した遅刻への方針転換や、注意指導・懲戒処分の手順について迷いが生じた場合は、早めにご相談ください。言葉の選び方から書面の作成まで、実務に即したサポートが可能です。→ 経営労働相談はこちら

3. パターン②への対応:軽く見られている状況の立て直し

毅然とした姿勢を取り戻す

 会社や上司が軽く見られているケースでは、物分かりのよいふりをすることをやめ、守ってほしいことをはっきり伝える姿勢を取り戻すことが必要です。「言い返せば引いてくれる」という相手の計算を外すことが、この問題の解決につながります。

 一度なめられると、対応の難易度は確かに上がります。秩序を回復するまでに相手からの強い反発が生じることもあります。しかし、適切な手順を踏みながら毅然と対応を続けることで、秩序を回復できるケースは十分にあります。弁護士として関与した場合でも、相手の言い分に一つひとつ対応しながら丁寧に進めることで、解決に至るケースは少なくありません。

採用難を理由とした遅刻容認の危険性

 「辞められたら採用が大変だから」という理由で遅刻を容認してしまうことは、短期的には問題を避けているように見えますが、長期的には職場全体に深刻な悪影響を及ぼします。遅刻が容認されている状況を見た他の社員は、「この会社はルールを守らなくていいんだ」という認識を持ちます。その結果、真面目に働いていた社員が「ばかばかしい」と感じて退職したり、自分もルールを守らなくなったりするという悪循環が生まれます。

 採用難の時代だからこそ、ルールは守ることを前提とした上で、給与・職場環境・成長機会といった他の魅力で人材を集め、定着させることが重要です。ルール違反を容認することをアピールポイントにすることは、むしろ真面目な社員が離れていく原因となります。

 軽く見られてしまった状況の立て直しや、秩序回復のための具体的な手順について、個別の状況に応じたご相談をお受けしています。自力での対応が難しいと感じた段階でお気軽にご連絡ください。→ 経営労働相談はこちら

4. パターン③への対応:特殊事情がある場合の考え方

長時間労働が背景にある場合

 長時間労働が原因で遅刻が生じている場合、遅刻を注意する前に、長時間労働の状態を解消することが先決です。使用者には安全配慮義務があり、過重な労働を強いながら遅刻だけを問題にすることは、法的な観点からも問題が生じ得ます。

 残業代が適切に支払われていない場合はなおさらです。「遅刻分は給料から引く」という対応をとる場合、適切な残業代の支払いが前提となります。この点を整理せずに遅刻だけを問題にすることは、かえって残業代請求のトラブルを招くリスクがあります。

私生活上の問題が背景にある場合

 家庭の問題や私生活上の出来事によるイライラが遅刻や逆ギレの背景にある場合、事情を丁寧に聞いた上で一定の配慮を示すことは誠実な対応です。しかし、事情があるからといって無制限にルール違反を容認することもできません。どこまで配慮し、どこから注意指導に入るかという線引きが必要であり、その判断は個別の状況によって異なります。

5. 遅刻を放置することが組織全体に与える悪影響

他の社員への不公平感と職場秩序の崩壊

 遅刻を繰り返す社員をしっかり注意しないまま放置することは、当該社員一人の問題に止まりません。遅刻する社員の仕事を当てにしていた周囲の社員は、その社員がいない時間に対応を迫られます。また、遅刻しても何も言われないという状況を見た真面目な社員は、強い不公平感を抱きます。

 「この会社はルールを守らなくても問題ない」という認識が広まると、真面目に働いていた社員が「こんな会社にいる意味がない」と感じて退職するか、自分もルールを守らなくなるという二方向への悪影響が生じます。こうした状況を防ぐためにも、問題のある行動には毅然と対応することが、職場全体を守ることになるのです。

6. まとめ:経営者が取るべき対応の全体像

原因に応じた対応を段階的に進める

 遅刻への注意に対して逆ギレする社員への対応は、①既得権益化への方針転換・②軽く見られている状況の立て直し・③特殊事情への適切な配慮という、原因に応じた対応を段階的に進めることが基本です。いずれの場合も、注意指導から始め、改善しなければ懲戒処分・解雇へと対応を強化していくという手順を踏むことになります。

難易度が上がってしまった場合は早めに弁護士へ

 既得権益化が進んでいたり、会社が軽く見られてしまっている状況では、自力での対応が難しくなっていることがあります。こうした場合には、早めに会社側の労働問題に精通した弁護士に相談することで、状況に応じた対応の手順と言葉の選び方を整理し、秩序を回復するためのサポートを受けることができます。問題が深刻化する前の段階での相談が、最終的なトラブルの回避につながります。遅刻・逆ギレへの対応についてお困りの会社経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05


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