問題社員177 周りの社員を捕まえて仕事と関係のない会話を長時間続ける。
動画解説
「放置」が招く就労環境の悪化と職場秩序の崩壊を防ぐために、経営者が今すぐ取るべき対応があります。
就業時間中に仕事と関係のない会話を長時間続ける社員は、単に本人の職務専念義務に違反しているだけではありません。話しかけられる側の社員の業務遂行を妨げ、職場の就労環境を著しく悪化させるという問題でもあります。経営者としては、「ある程度は仕方がない」と放置することなく、段階的かつ組織的な対応を取ることが重要です。
■ 初動は「気づいたら止める」:管理職・経営者が積極的に介入する
仕事と関係のない会話が長時間に及んでいると気づいた場合、その場で直接止めるか、話の腰を折る形で業務に戻るよう促すことが基本対応です。「気づいているが様子を見る」という姿勢では、状況は改善しません。
■ 被害を受けている社員への対応:「断る権限」を明示的に与える
周囲の社員が「断りにくい」状況に置かれているケースは少なくありません。経営者または管理職が、就業時間中の仕事と関係のない長時間の会話は断るよう、明示的に指示することが、断る側の負担を大幅に軽減します。
■ 管理の強化と懲戒処分の検討:改善が見られない場合は毅然と対処する
指導・注意を繰り返しても改善しない場合は、厳重注意書や懲戒処分通知書の交付を検討する段階に入ります。このフェーズは紛争リスクを伴うため、弁護士への相談が有効です。
目次
1. 就業時間中の長時間雑談が問題となる理由
本人の職務専念義務違反だけが問題ではない
就業時間中は、社員には職務に専念する義務があります。仕事と関係のない会話を長時間続ける行為は、この職務専念義務に違反するものといえます。しかし、問題はそれだけにとどまりません。
長時間の雑談が生み出す影響は、話しかける本人の業務遅延にとどまらず、話しかけられる側の社員にも深刻な悪影響を与えます。この点を経営者として正確に認識することが、適切な対応の第一歩となります。
周囲の社員への影響:苦情が生じるメカニズム
実務上、経営者や管理職のもとに届く苦情の多くは、「話しかけられる側」の社員から上がります。「仕事と関係のない話を長時間されて、自分の業務が進まずに困っている」という内容です。これは就労環境を悪化させる問題であり、場合によっては本日中に終わらせる予定であった業務が終わらず、残業を余儀なくされるケースもあります。
経営者としては、長時間雑談をする社員の問題を「個人のサボり」として矮小化せず、周囲の社員の就労環境を害する行為として捉えることが重要です。
「断ればいい」では解決しない現実
話しかけられた側が「今は仕事中なので」と断ればよいという発想は、一見合理的に見えます。しかし実際には、職場における人間関係やその場の雰囲気を考えると、断ること自体が難しい状況も生じます。話しかけられた社員が、相槌を打ちながら付き合い続けているうちに時間が過ぎてしまうことも珍しくありません。
また、話しかける側が「相手も楽しんでいた」と認識しているケースもあり、問題意識を持たないまま行動を続けることも起こり得ます。こうした状況に置かれた周囲の社員を守るためにも、会社側が積極的に介入することが求められます。
2. 初動対応:気づいたら止める
管理職・経営者による直接介入の重要性
就業時間中に長時間の仕事と関係のない会話が行われていると気づいた場合、まず取るべき対応は、その場で介入し、仕事に戻るよう促すことです。気になっていながらも様子を見続けるという対応では、問題は解決しません。
介入の主体は、その場の管理職や先輩社員が適切です。もっとも、それが難しい状況であれば、経営者自身が動くことも必要になります。経営者としては、現場の管理職に対して、このような状況が生じた場合には積極的に止めるよう、あらかじめ指示しておくことが重要です。
「空気を読んでほしい」では機能しない理由
長時間雑談をしてしまう社員に対して、「空気を読んでほしい」「察してほしい」という希望的観測のもとで対応するだけでは、行動は変わらないことがほとんどです。自律的に行動を修正できる人物であれば、そもそも問題は起きていないからです。
周囲の顔色を読んで自ら動くことができないからこそ問題が継続しているという認識のもと、明確に言葉で伝え、行動を促すことが不可欠です。
声のかけ方:直接注意と間接的な介入の選択
介入の方法としては、「仕事に戻ってください」と直接伝えるケースと、別の話題を持ちかけるなどして会話の流れを断つ間接的な方法の両方があります。どちらの方法が適切かは、その場の状況や当該社員との関係性にもよりますが、いずれにしても、意図的に介入する姿勢を持つことが重要です。
3. 被害を受けている社員への対応
断る権限の明示:会社としての指示を出す
話しかけられる側の社員が自力で断ることが難しい状況に置かれている場合、経営者または管理職から、就業時間中の仕事と関係のない長時間の会話は断ってよいと明示的に指示することが有効です。
会社として断ることを認めているという立場が明確になることで、断った側も「指示に基づいて対応している」として受け止めやすくなります。断る側の心理的・人間関係的な負担を大きく軽減することができます。
全体への広報による断りやすい環境の整備
さらに効果的な方法として、経営者または管理職が職場全体に向けて、就業時間中は仕事と関係のない長時間の会話を控えるよう周知・指示することが挙げられます。
個別に断るよりも、「会社全体の方針として指示されている」という状況のほうが、断る側にとって心理的な負担が少なく、より断りやすい環境が整います。この広報的な指示は、問題の予防と現状改善の両面で有効な手段です。
4. 長時間雑談社員の管理強化
自律的に働けない社員にはマネジメントが必要
就業時間中に仕事と関係のない会話を長時間続けてしまうという事実は、自律的に働くことが困難な状態を示している場合があります。そのような状態にある社員には、自らの判断で行動を修正することを期待するだけでは足りず、一定の管理が必要になります。
管理の必要性が高い社員に対してマネジメントを緩めることは、問題の温存につながりかねません。経営者としては、マイクロマネジメントへの抵抗感よりも、組織としての必要性を優先することが求められる局面があります。
マイクロマネジメントを恐れない:段階的な管理の進め方
マイクロマネジメントを好まない経営者・管理職は少なくありません。しかし、自律的な行動が難しい状態にある社員に対しては、当面の間、強めの管理を行うことが現実的な対処策です。
具体的には、まず一定程度の密な管理を行いつつ、改善の兆しが見えてきた段階で少しずつ管理の程度を緩めていくというアプローチが有効です。最初から「自分の頭で考えて動いてほしい」という姿勢だけでは、改善につながらないことがある点を認識しておく必要があります。
業務量と業務指示を明確にする
長時間雑談が生じやすい要因の一つに、業務量の不足があります。所定労働時間に対して与えられている仕事量が少なすぎると、手持ち無沙汰になり、仕事と関係のない会話に向かいやすい環境が生まれます。
管理の一環として、当該社員が担うべき業務を明確に割り当て、進捗状況を定期的に確認しながら適切な指示を出すことが重要です。業務に専念できる環境を整えることが、問題行動の抑止につながります。
5. 苦情が上がった場合の事実確認と対処の流れ
苦情を申し出た社員への対応
周囲の社員から苦情が上がってきた場合、まず最初に行うべきは、苦情を申し出た社員から具体的な状況を丁寧に聴き取ることです。いつ、どのような状況で、どの程度の時間、どのような話が行われていたのかを具体的に把握することが、その後の対応の基礎となります。
苦情を申し出た社員に対しては、申し出たことを真摯に受け止め、会社として適切に対応することを明確に伝えることが重要です。申し出た行動が尊重されていると感じられる対応が、組織内の信頼関係を維持するうえでも大切です。
当該社員への事情聴取と注意指導
苦情を受けた後は、当該社員を個別に呼び出し、会議室などの場で事情を聴取します。その際、事実関係を確認した上で、就業時間中に仕事と関係のない会話を長時間続けることが問題であること、改善を求めることを明確に伝えることが必要です。
この段階での対応は、後の懲戒処分の正当性を支える「指導の記録」としての意味も持ちます。口頭での注意にとどめるのではなく、内容を記録として残しておくことが重要です。
6. 指導・注意を経てもなお改善しない場合:厳重注意・懲戒処分の検討
懲戒処分を検討すべき段階の目安
管理の強化、個別の注意指導、全体への周知といった一連の対応を経てもなお、就業時間中の長時間雑談が繰り返される場合、懲戒処分の検討が視野に入ってきます。
就業時間中に仕事と関係のない会話を長時間続ける行為は、職務専念義務違反に当たり得るものです。また、周囲の社員の就労環境を損なうという点でも問題のある行為といえます。こうした行為が繰り返される場合、厳重注意書の交付、あるいは就業規則に基づく懲戒処分の実施が選択肢となります。
紛争リスクを踏まえた対応の進め方
厳重注意書の交付や懲戒処分の実施は、当該社員との間で紛争に発展するリスクを伴う場合があります。特に、処分の内容や手続に瑕疵がある場合には、処分の有効性が争われる可能性もあります。
このフェーズに入る前に、会社側の労働問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めします。厳重注意書や懲戒処分通知書の作成についても、弁護士のサポートのもとで進めることで、法的リスクを最小化することが可能です。
7. まとめ:経営者が取るべき対応戦略
放置は問題を悪化させる
就業時間中の長時間雑談を放置することは、問題の解決にはなりません。当該社員の行動が改善しないばかりか、周囲の社員の不満が蓄積し、「会社は何も対処してくれない」という不信感が生まれる原因にもなります。
問題は気づいた段階で対応することが、その後の展開を大きく左右します。「大したことではないだろう」という判断で放置することは、むしろリスクを高める行動といえます。
組織的・段階的な対応が重要
長時間雑談への対応は、個人への注意指導だけで完結するものではありません。管理職や先輩社員が介入できる体制を整え、被害を受けている社員が断りやすい環境を作り、管理を強化して業務に専念させる仕組みを構築するという、組織的・段階的な対応が重要です。
一人の問題社員への対応が、結果として職場全体の秩序維持につながることを意識しながら、経営者として適切な指揮を取っていただきたいと思います。
法的対応が必要な局面では弁護士へ相談を
厳重注意書の交付や懲戒処分の実施を検討する段階に入った場合、あるいはすでに当該社員との関係が紛争的な様相を帯びている場合には、会社側の立場で労働問題を取り扱う弁護士へのご相談をお勧めします。
弁護士への相談は、問題が深刻化する前の段階でも十分に意義があります。対応の方針を早期に整理しておくことが、後々の紛争リスクを低減することにつながります。就業時間中の長時間雑談への対応についてお困りの会社経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/03/26
