問題社員278 退職勧奨が紛争に発展しやすい事例

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この記事の要点

パターン①:退職届・合意書を取らないまま出社しなくなったケース——「納得してやめた」と思っていたら「解雇された」と内容証明が来る

話がついたと思っても退職届・合意書がなければ「在籍中」になりかねない。最低でもメール・LINEで退職日を確定させることが必須

パターン②:口頭での暴言・激しい言葉が「解雇」と評価されるリスク——「もう来なくていい」が解雇通知になってしまうことがある

「そんな意味ではなかった」が通らないことが多い。無断録音にも注意。発する言葉自体が「立派な経営者らしい言葉」であることが求められる時代

パターン③:注意指導・懲戒処分なしにいきなり退職勧奨——断られた時に解雇できない、払う金額が高くなる

準備なしに退職勧奨して断られると、問題社員が職場に居続けてますます態度が悪化する。注意指導・懲戒処分の積み上げがあってこそ、退職勧奨が有利に進められる

1. 退職勧奨がうまくいかない典型的なパターン

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

解雇が難しいため話し合いで合意退職を目指す「退職勧奨」は、適切に行えば有効な方法です。しかし、うまくいったように見えてトラブルになったり、そもそも話がまとまらなかったりする「失敗ケース」が多くあります。過去の相談事例の中から、紛争になりやすい典型パターンを3つ取り上げてお話しします。

2. パターン① 退職届・合意書なしに出社しなくなる

退職勧奨の後、本人が出社しなくなった——「納得してやめるつもりなんだろう」と思っていたら、しばらくして内容証明が届き「解雇されたが不当解雇なので在職中の毎月の給料を払い続けろ」という請求が来る。これは実際に起きているトラブルです。

なぜこうなるのか

  • 退職届も退職合意書も取っていない状態では、「合意退職した」という証明ができない
  • 「解雇していない」と言っても、「解雇されたと理解した」という相手の主張に対抗するのが難しくなる
  • 解雇でも退職でもないとなると「在籍中」になり、働いていない期間の給与を払い続けなければならない可能性が生じる

対策——話がついたと思ったらすぐに書面を取る

  • 退職合意書を交わすことが最善(清算条項を入れることも検討する)
  • 少なくとも退職届を提出させる(退職日を明記させる)
  • 書面が難しい場合でも、メール・LINEで「何月何日付けで退職する」という意思確認を取っておく

3. パターン② 口頭の暴言・激しい言葉が「解雇」と評価される

退職勧奨の場での発言や、日頃のコミュニケーションの中での激しい言葉が、後に「解雇通知」と評価されてしまうケースがあります。

例えば「もう来なくていい」「出勤しなくていい」という発言です。社長としてはがっかりした気持ちや怒りを表現したつもりでも、客観的には「会社に来るな=解雇」と受け取られることがあります。

「そんな意味で言ったのではない」という主張は、なかなか通らないことがあります。しかも最近は無断録音が行われていることも多く、発言がそのまま証拠になります。解雇するつもりがなかったのに解雇と評価されてしまうと、解雇通知日以降の給与を支払い続けなければならない事態になりかねません。

今の時代は、「分かってくれるはずだ」「真意を理解してくれ」では通用しません。発する言葉そのものが「立派な経営者らしい言葉」である必要があります。感情的な表現を避け、「あなたの最近のこういう言動については非常にがっかりしています」という形で具体的事実を伝えることが適切です。

4. パターン③ 注意指導・懲戒処分なしにいきなり退職勧奨

退職勧奨の中で最もリスクが高い失敗パターンが、注意指導・懲戒処分を十分に行わないままいきなり退職勧奨するケースです。

断られた場合の問題点

  • 退職勧奨を断られた後、解雇できない(積み上げがないため)
  • 問題のある社員が職場に残り続け、「やめてくれと言われたのに解雇もされない」状況でますます態度が悪化する
  • 無理な解雇をして解雇無効と認定されると、多額のバックペイが発生する
  • 退職合意のために払う金額が高くなる——断っても解雇されないなら、相手は強気で交渉できる

5. 準備のある退職勧奨と準備のない退職勧奨の違い

注意指導・懲戒処分をしっかり積み上げた上で退職勧奨を行う場合と、そうでない場合では、結果が大きく変わります。

準備のある退職勧奨の強み

  • 退職しなければならない理由を具体的事実に基づいて説明できる——相手も「やむを得ないかも」と感じやすい
  • 断られた場合でも解雇という選択肢がある——「断っても解雇になるかもしれない」という認識が相手の合意を促す
  • 法外な金額でなくても合意が得られやすい——相手の交渉力が弱まるため

もし注意指導・懲戒処分の積み上げが十分でない状態で退職勧奨せざるを得ない場合は、ある程度の運任せになることを認識した上で、払う金額も高めになることを覚悟してください。できればその前の段階から弁護士に相談し、退職勧奨に向けた準備を進めることをお勧めします。

6. まとめ

  1. 退職届・合意書を必ず取る——出社しなくなっても書面がなければ「在職中」の可能性が残る。最低でもメール・LINEで退職日を確定させる
  2. 口頭の激しい言葉に注意する——「もう来なくていい」が解雇と評価されることがある。発言そのものが立派な経営者らしいものであることが求められる
  3. いきなりの退職勧奨は断られた時が危険——注意指導・懲戒処分の積み上げがあってこそ、退職勧奨が有利に進められる
  4. 準備のある退職勧奨は断られにくく、合意金額も抑えられる——事前の積み上げが退職勧奨全体の成功率を高める

退職勧奨の進め方でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 退職勧奨を断られ続けています。何回まで繰り返してよいですか。

A. 退職勧奨は合意退職を目指す話し合いですので、一定の範囲で繰り返すことは許されます。ただし、断られた後も長時間にわたり執拗に迫ったり、拒否を事実上許さないような状況を作ったりすると、違法な退職強要として問題になります。退職勧奨の頻度・方法・内容については弁護士に相談しながら進めてください。

Q2. 退職勧奨の際に録音されていた場合、どのような影響がありますか。

A. 無断録音は一定の状況下で証拠として使われることがあります。退職勧奨の場での発言が「違法な退職強要だった」「解雇と取れる発言があった」などとして主張される可能性があります。録音されていることを意識して、常に適切な言葉で伝えることが重要です。会議室での発言内容については、事前に弁護士と打ち合わせを行ってから臨むことをお勧めします。

最終更新日:2026年4月30日


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