問題社員272 問題社員への注意指導で紛争になりやすい事例

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この記事の要点

長年放置・黙認した問題行動を後から改めさせようとすると紛争になりやすい——本人が既得権益だと感じているため反発が強くなる

ずっと黙認されてきた問題行動を突然改めさせようとすると「今まで許されていたのにおかしい」という発想になる。しかも重い処分をしようにも放置が長いと法的にも認められにくい

「甘い上司」の後任が来て厳しく対応するとトラブルになりやすい——問題は甘い上司が作った秩序の乱れであり、後任者が一番苦労する

しっかりルールを守らせてきた会社の方が重い処分が認められやすい。秩序が緩んだ職場では軽い処分しかできず、解雇も難しい

口頭指導なしにメール単独での注意指導は紛争になりやすい——問題が解決せず、「怖くて直接言えないんだろう」と見られるリスクがある

口頭で会って話せば話がまとまることが多いのに、メールだけでは逆に強気になる問題社員がいる。面談と組み合わせることが必須

ルールを守らせてきた会社こそ重い処分ができる——秩序がしっかりしているから処分の重さが認められる

「理解ある管理職」「甘い対応をする職場」では重い処分の根拠となる秩序が存在しない。厳しい注意指導ができる管理職を評価する職場文化が処分の有効性を支える

1. 紛争になりやすいパターン①——長年の放置・黙認

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

注意指導がトラブルに発展しやすいパターンと、そうでないパターンがあります。こちらの行動次第で変えられる部分も多くあります。しっかり理解して、問題がこじれないよう持っていきましょう。

最も多い紛争パターンが、長年黙認されてきた問題行動を後から改めさせようとするケースです。

多くの場合、最初は「やめた方がいいよ」程度の遠回しな声かけがあります。ところが言い返されたり、うまくはぐらかされたりしているうちに誰も言わなくなります。その結果、何ヶ月も、場合によっては何年もの間、問題行動が黙認されてしまいます。

2. 問題行動の黙認が既得権益化するメカニズム

長年黙認されてきた問題行動は、本人の中で「既得権益」のようなものになってしまいます。既得権益を犯す人間はとんでもない、という意識で反発するのが普通です。

既得権益化した後の問題点

  • 今まで認められていたことを突然改めるよう言われても納得しない
  • 重い処分をしようにも「ずっと放置してきた会社にも落ち度がある」として法的に認められにくい
  • 放置が長いほど、軽めの処分しかできなくなる
  • 場合によっては同じ問題行動でも、放置してきた職場では解雇が認められない

厳しい注意指導をしてきた会社の方が重い処分が認められやすく、放置してきた会社では軽い処分しかできないというのが実態です。ずっと自由にやらせてきた職場で突然厳しいことを言っても、誰も納得しませんし、処分も法的に認められません。

3. 紛争になりやすいパターン②——「甘い上司」の後任問題

紛争の典型例が「甘い上司の後任がルール通りの対応をしてトラブルになる」というパターンです。

典型的なトラブルのパターン

  1. 「理解ある上司」がルール違反に目をつぶって問題行動を放置する
  2. 問題社員はやりたい放題の状態が続く
  3. 上司が変わり、新しい上司が正当にルール通りの対応をする
  4. 問題社員が「前の上司は何も言わなかったのにパワハラだ」と反発する
  5. 収拾がつかなくなる

甘い上司は周りから「理解のある上司」と評判が良かったりします。しかし、その結果として職場の秩序が乱れ、後任の上司が正当な対応をしようとすると大変な苦労を負わされます。

経営者として何をすべきか——しっかり会社の秩序を守ってくれる管理職をいい管理職だと評価し、大事にすることです。逆に甘い対応をしている管理職に対して「まあまあ、それくらいいいじゃないか」という態度を取ることは、その甘さをルールにしてしまうことになります。後から「やはり直してもらう必要がある」と言っても、誰も納得しなくなります。

4. ルールを守らせてきた会社こそ重い処分が認められる

「厳しく注意指導してきた会社の方が重い処分が認められやすい」というのは、多くの経営者が知らない重要な事実です。

しっかりとした秩序がある職場で秩序を乱したから重い処分が認められるのです。秩序がなかったり非常に緩い職場で突然重い処分をしても、「そのような秩序のない職場で突然処分をするのは相当ではない」と評価されることがあります。結果として、周りの社員を守るためにも、重い処分ができる職場環境を普段から作っておくことが重要です。

また、周りで嫌な思いをしている社員を守るためにも、問題行動にはしっかりストップをかけることが社長の仕事です。「まあまあ、それくらいはいいじゃないか」という態度を取り続けると、会社を去るのは問題社員ではなく、嫌な思いをしている周りの優秀な社員の方になりかねません。

5. 紛争になりやすいパターン③——口頭指導なしのメール単独対応

「メールで注意指導しているから証拠にもなるし問題ないでしょ」と考えているケースも、紛争になりやすいパターンです。

メール単独で注意指導する場合のリスクは複数あります。第一に、面と向かって話すと素直に「分かりました」という社員でも、後から長文の言い訳メールを関係者に一斉送信してくるようなケースがあります。第二に、「メールだけで直接話さない=怖くて話せないんだろう」と見られ、問題社員がかえって強気になることがあります。第三に、同じ部門で働いているのにメールだけで連絡するのは「まともに会話できないから問題が大きくなっているのではないか」と裁判官に見られることがあります。

正しいメールの使い方

メールは面談・Zoom等の口頭コミュニケーションとの合わせ技として使うことで効果を発揮します。遠隔地にいる社員に対しても、ZoomやTeamsで対話してからメールで内容を確認するという組み合わせが基本です。

6. まとめ

  1. 長年の放置・黙認が最大の紛争原因——黙認が続くと本人の既得権益化し、後から改めさせることが法的にも困難になる
  2. 「甘い上司」は後任者に苦労をかける——甘い対応をしている管理職に「まあまあ」という態度を取ることは秩序を崩す
  3. ルールを守らせてきた会社こそ重い処分が認められる——職場の秩序の強さが処分の有効性を左右する
  4. メール単独の注意指導は紛争になりやすい——口頭コミュニケーションとの合わせ技が必須

注意指導の進め方でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 以前の上司が問題行動を放置してきた場合、現在の上司・経営者はどこから始めればよいですか。

A. まず「今後はこのような言動は許さない」ということを明確に伝えることから始めてください。過去の放置については「以前の対応が適切でなかった部分があった」と認めた上で、今後は会社としての基準に従ってもらうことを丁寧に説明します。いきなり重い処分を行うことは難しいため、注意指導を積み重ねながら弁護士に相談して対応を進めてください。

Q2. 問題社員への注意指導を管理職に任せたいのですが、うまくやってもらうにはどうすればよいですか。

A. 問題社員への注意指導をできる管理職は貴重です。まず「注意指導は仕事の一部であり、やり遂げてほしい」という会社の方針を明確に伝えてください。そしてその頑張りに対してしっかり評価・処遇することが重要です。また、弁護士を活用してロールプレイなどの事前準備をサポートする体制を整えることも有効です。逆に「まあまあ、それくらいいいじゃないか」という態度は取らないようにしてください。

最終更新日:2026年4月30日


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