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本ページの基となる解説動画
本ページの解説内容は、以下の藤田進太郎弁護士による解説動画を素材として、当事務所が文章化しているものです。本ページの記載と動画の内容に齟齬がある場合や、より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴ください。
給与に見合わないことの問題
周りの社員に不公平感が漂う
能力やパフォーマンスが給与額に見合わない社員がいると、「自分より仕事していないのにあんな高い給料をもらっている、ずるい」と周りの社員たちが感じ、不公平感が職場に漂うリスクがあります。また、限りある賃金原資を会社のために貢献してくれている人たちに多めに払い、そうでない方にはそれ相応の金額にしたいと考えるのは、経営者として無理のないところです。
しかし給与は「生活の基盤」であり「契約」でもある
他方で、給与というのは働く側の労働者の生活の基盤です。突然下げられたのでは生活が成り立たなくなってしまいかねません。また、能力に比して高すぎるとしても、そういった金額で契約を結んでしまったのであれば、ある意味自業自得という面もあり、契約は守られるべきものという考え方もあります。
ですから、不公平感をなくしたい、賃金原資を適正に配分したいという要請と、労働者の生活を守るべきだという要請のバランスの中で、どのように対応すべきかを考えていくことになります。
賃金減額の要件:明確に定めておくことが大事
労働契約上の根拠が最低限必要
賃金減額を考える場合、最初に確認すべきことは、そもそもどういった場合に給与を下げられるのかという要件と効果が、契約書や賃金規定などに定められているかどうかです。労働契約上の根拠があることが最低限必要になります。根拠があれば、同意がなくても賃金を下げられる場合がありますし、本人の同意を取り付ける場合であっても話がつけやすくなります。
要件と効果が明確なものほど失敗しにくい
賃金減額の根拠を定めたとしても、自由裁量で下げられるわけではありません。労働者の生活の基盤が破壊されてしまいますから、自由裁量での減額は認められないのが原則です。そして、抽象度の高い定め方をすると、要件を満たすことの立証が非常に大変になります。
たとえば「評価によってグレードを見直すことがあり、グレードが変われば給与も変動する」という抽象度の高い定めにした場合、評価が本当に妥当なものなのか、妥当だとしてもその評価でそこまで給料を下げることが認められるべきなのかという議論が生じます。評価にはある程度主観が入りますから、客観的に妥当だと立証するのはとても大変です。
逆に、要件と効果が明確なものほど失敗しにくいのです。たとえば「部長には管理職手当として月々10万円を支給する。部長から降りた場合は管理職手当はなくなる」という定めであれば、非常にシンプルで分かりやすく、要件を満たすかどうかの判断も容易です。複雑な制度を色々作るよりも、こういったシンプルな定め方にしておく方が、実務上は失敗しにくいと言えます。
同意取得による賃金減額の注意点
同意書にサインしていても「同意がなかった」と言われることがある
事前の定めが十分でない場合や抽象度が高い場合、本人の同意を得て給料を下げるという方法を検討することになります。しかしこれもまた大変な面があります。
労働者は使用者の指揮命令下で働いていますから、「同意しなさい」と言われると同意せざるを得ない状況に追い込まれ、本当は違うのにと思っても同意してしまうことがあります。さらに情報格差の問題もあり、労働者の側は何がなんだか分からないまま同意してしまうこともあり得ます。そのため、同意書にサインしていても「同意がなかった」と裁判所に判断されてしまうケースが実際にあるのです。同意書を取っているのに同意がないと言われるのは不思議に感じるかもしれませんが、賃金減額に関してはそういったことが十分あり得ます。
客観的に同意があったと言える状況を作る
では、どうすれば同意が有効と認められやすいのでしょうか。ポイントは、客観的な状況から見ても同意があったと言えるかどうかです。
まず、同意する労働者の側にもメリットがある場合です。たとえば部長から降りて管理職手当がなくなったとしても、部長としての重い責任が免除されるというメリットがあります。こういった場合は同意があったと認められやすいです。
また、十分な説明と資料の提供が必要です。減額前と比較してどのように不利になるのか、具体的に金額がどう変わるのかを明確に示し、本人がその内容をしっかり理解した上で同意しているという状況を作ることが大切です。ただし、とにかく判子を取ればなんとかなると考えたら大間違いですので、微妙な事案では弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
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当事務所のサポート体制と監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、賃金減額や人事評価制度に関する問題を日常的に取り扱っています。賃金減額はリスクの高い分野ですので、微妙なニュアンスを汲み取った上で進めていく必要があります。弁護士がリスクの説明もしっかり行いますので、「まさかこんなことになるとは思わなかった」ということにはならないと思います。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
賃金減額・人事評価でお悩みの会社経営者の皆様へ
まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。
よくあるご質問
Q. 能力に見合わない高い給料を一方的に下げることはできますか。
原則としてできません。賃金減額には労働契約上の根拠が必要であり、自由裁量で下げられるものではありません。契約書や賃金規定にどういった場合に給与が変動するかの要件と効果を明確に定めておくことが大切です。定めがない場合は、本人の同意を得る必要がありますが、同意の取得にも細心の注意が必要です。
Q. 同意書にサインしてもらえば大丈夫ですか。
同意書にサインがあっても、裁判所に「同意がなかった」と判断されるケースがあります。客観的な状況から見ても同意があったと言えるかどうかが問われますので、十分な説明と資料の提供を行い、本人がその内容をしっかり理解した上で同意している状況を作る必要があります。弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
Q. 管理職手当のような明確な手当であれば下げやすいですか。
はい、管理職手当のように「部長には月々10万円支給する、部長から降りれば支給しない」というシンプルで要件と効果が明確な定めであれば、比較的実施しやすいです。複雑な制度を作るよりも、こういったシンプルな設計の方が失敗しにくいと言えます。
Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。
対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。
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