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本ページの基となる解説動画
本ページは、藤田進太郎弁護士による「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTubeチャンネル)の各動画解説を素材として、当事務所が懲戒処分・退職勧奨・解雇の実務対応を統合的に文章化したページです。
懲戒処分をなぜ行うべきか
「会社の雰囲気が悪くなる」は本当か
意外と懲戒処分をしていない会社がたくさんあります。よく聞くのが「うちのような小さい会社で処分なんかしたら会社の雰囲気が悪くなる、だから懲戒処分なんてできない」というお話です。
しかし、やめさせなければならないほどの問題社員がいる会社の雰囲気は、すでに悪くなっています。懲戒処分をしなくても、問題行動があれば雰囲気は悪くなるものです。むしろ懲戒処分をすることで、「本当に迷惑だと思っていたあの問題社員に対して会社はしっかり対応してくれた」ということが伝わり、かえって会社の雰囲気が良くなることがあるのです。
適切な時期に行えば、立ち直るケースもある
「懲戒処分をしてもどうせ良くならないだろう」と思っている経営者もいらっしゃいます。確かに、よほどひどくなってしまったら治らないかもしれません。しかし、適切な時期に適切な懲戒処分を行うと立ち直るケースもあるのです。前科によってはもうやめてくれと言われても仕方ないぐらいとんでもないことをしていた方が、懲戒処分を受けたのをきっかけに改善していって、最終的には信頼できる幹部になった例も現にあります。
コップの水が溢れてからでは遅い
懲戒処分をしないまま我慢に我慢を重ねて、コップの水が溢れるように我慢しきれなくなったところで「もうやめさせるしかない」と相談に来る。このパターンが非常に多いのです。にっちもさっちもいかなくなってから「懲戒処分を積み重ねないと解雇できないらしい」と知って始めるのは本末転倒です。もっと早い段階で、まだ傷の浅い段階で懲戒処分を行うことが大切です。
懲戒処分で一番大事なこと:事実認定
一体何があったのかをはっきりさせる
懲戒処分を行う上で一番大事なことは、しっかり事実認定をすることです。事実認定とは、一体何があったのかをはっきりさせることです。何月何日の何時頃、どこで、誰が、何を、どのようにしたのか。ちょうど歴史の年表で何年に何があったと記録するイメージです。
たとえば「2月1日の午前10時頃、第1会議室で、あなたはまるまる部長に対し、大声でこのような発言をしました」というように具体的に認定します。やたらにたくさんのことを評価的に書くよりも、いつ・どこで・誰が・何をどのようにしたのかをしっかり書くことが大事なのです。
事実認定にはトレーニングが必要
事実認定は、裁判官・検察官・弁護士であれば司法研修所等でトレーニングを受けていますが、それ以外の方で事実認定のトレーニングをしっかり受けたことがある方はほとんどいないと思います。ある程度のトレーニングを積まないと、裁判官がどう考えるかを推測するのは難しいものです。
会社としては「こういうことがあった」と思っていても、弁護士に相談すると「それはちょっと厳しいですよ」と言われることもあります。弁護士への相談内容は、法律や判例を教えてもらうことだけではありません。この事実認定をどうやるか、どういったものが必要かを一緒に考えてもらうのが、弁護士に相談する大きな意味なのです。
懲戒処分の実務的な進め方
就業規則に懲戒の種類と事由を定めておく
懲戒処分は刑罰に似たところがあります。「こういうことをやったらこんな罰がありますよ」というものをあらかじめ定めておかなければなりません。就業規則に懲戒処分の種類と懲戒事由を定めておいて、それを周知させる、つまり従業員が見ようと思えば見られる状態にしておくことが必要です。学校の校則と同じで、校則は見せないけれど校則違反は処分する、では納得する生徒はいません。
就業規則を作ってはいるものの棚に入れておいて従業員に知らせていない、という会社もあります。そのような場合は、どこに行けば見られるのかをメールや案内文書でしっかり伝えるか、最近であればデジタルでPDFにしてアクセスできるようにしておくか、あるいは冊子を作って全社員に交付してしまうという方法もあります。
本人に弁解の機会を与える
懲戒処分にあたっては、本人に弁解の機会、すなわち言い分を聞く機会を与える必要があります。本人と面談して「会社としてはこのように考えている。何月何日の何時頃、あなたはどこで誰に対してこんなことを言ったりやったりしたよね。それで合っていますか」と事実確認をしていきます。
本人が「その通りです」と言えば事実が確定しますし、「違います、実際はこうです」と言えばどちらが正しいのかを証拠を踏まえて議論できます。弁解を聞く際も、事実について議論するのが大事です。「パワハラやったでしょう」「いや、やっていません」という評価の言葉での押し問答では生産性がありません。「あなたは何月何日に部下の誰々さんに対して大声で何々と言いましたよね」という事実についての議論であれば、生産性のある弁解聴取になります。
懲戒処分通知書をしっかり作成する
懲戒処分は書面で行います。懲戒処分通知書をしっかり作成して交付しましょう。懲戒処分をしたのかしないのかをはっきりさせるためにも、書面での交付が重要です。
懲戒処分通知書で一番大事なのは、やはり事実の記載です。「何月何日の何時頃、どこで、あなたは誰に対してどのように何をしました。これは就業規則何条何項何号の懲戒事由に該当します。したがって何々という懲戒処分に処します」という構成になります。「あなたは常日頃から勤務態度が悪い」「協調性がない」という抽象的な記載では足りません。具体的事実を記載することにより、受け取った本人も何のことで処分されているのかが明確に伝わりますし、後の紛争での証拠としての価値も高くなります。
解雇でトラブルを避けるための基礎知識
「追い詰められていきなり解雇」が最も危険
問題社員を解雇した場合にトラブルになりやすい典型事例は、追い詰められていきなり解雇というパターンです。普段は割と優しくていい経営者であっても、問題のある方がいてもあまりうるさく言わず、懲戒処分もやらないまま放置している。どんどんひどくなっていって、周りの社員たちから「もう耐えられません、やめさせてください」と詰め寄られて慌てて解雇したところ、「解雇無効だ」と内容証明が届き、労働審判や訴訟で多額のお金を取られてしまう。こういったケースが非常に多いのです。
「30日前に解雇予告すれば解雇できる」は誤解
「30日前に予告すれば解雇できる」「解雇予告手当を払えば解雇できる」と思い込んでいる社長さんがいらっしゃいますが、それは違います。解雇予告制度は労基法上の手続にすぎず、これとは別に、解雇に客観的に合理的な理由がない場合や社会通念上相当と認められない場合は、解雇権濫用として無効になります。解雇予告の手順を踏んでも、裁判官が「解雇はしょうがないよね」と思ってくれるような事情がなければ、解雇が無効になることがあるのです。
同様に、「労基署に相談して解雇したから大丈夫」というのも誤解です。労基署は労基法などの法令を遵守させるための役所ですから、教えてくれるのは労基法違反にならないやり方です。裁判で勝つか負けるかは労基署の管轄外であり、タッチすることができません。労基署の言う通りにやっても裁判では負けるかもしれない、ということを理解しておく必要があります。
注意指導と懲戒処分の積み上げが解雇を有効にする
解雇を有効に行うためには、それまでの注意指導と懲戒処分の積み上げが決定的に重要です。もっと早い段階から、問題がちっちゃい時点から、注意指導を的確にやっていたか、懲戒処分を積み上げていたか。これが裁判の勝敗を左右します。しっかり注意指導・懲戒処分を行ったにもかかわらず改善しなかったという経緯があれば、解雇が有効と判断される確率は格段に上がります。
能力不足の社員にやめてもらうためのコツ
試用期間中にやめてもらうのが最も重要
能力が極端に低い社員にやめてもらう場合のコツとして、まず試用期間中にやめてもらうことが最も重要です。試用期間中であっても客観的に合理的な理由がなければ本採用拒否はできないという法解釈は正しいのですが、現実の話として試用期間中の方が絶対にやめてもらいやすいのは間違いありません。
試用期間中は「試しに雇ってもらっているのだから、やめるのもそれなりの理由があったらしょうがないかな」という納得感が得られやすいのです。ところが試用期間が経過して本採用になると、「もう首になることはないだろう」と思っている中で「あなた能力低いからやめてくれ」と言われたら、話が違うと感じるのが普通です。
試用期間の長さは適切か
試用期間は3ヶ月の会社が最も多く、6ヶ月がこれに次ぎます。しかし、やらせようとしている仕事によって必要な試用期間は全然違います。1ヶ月もしないうちに判断できる業務もあれば、1年ぐらいかけないと当社の社員としてふさわしいかどうか判断できない業務もあります。
試用期間3ヶ月の会社で、「3ヶ月ではおかしいなとは思ったが判断がつかなかった。5ヶ月頃になってやっと完全にダメだとわかった。試用期間は経過してしまった」というケースは多くあります。そういった会社であれば6ヶ月に延ばすことを検討すべきです。ただし不必要に長ければいいというものではなく、なぜその期間が必要なのかを説明できる長さにする必要があります。
やめてもらう理由を具体的事実で説明する
退職勧奨で合意退職を目指す場合も、本採用拒否(解雇)に踏み切る場合も、なぜ能力不足と言えるのかを、具体的な事実を踏まえて説明することが重要です。「あなたは能力が低い」「みんなダメだと言っている」という評価だけでは、単に嫌いだから気分で言っているのではないかと思われてしまいます。
「あなたは何月何日にこういうことをやりましたよね。その後こういう風に教育指導しましたよね。でもまた何月何日にこういうことをやりましたよね」というように、いつ・どこで・どのように・何をやったのか(あるいはやらなかったのか)という事実を踏まえて話すと、なんとなく気分で能力不足と言っているわけではないのだということが伝わります。しっかり事実を踏まえて説明できれば、退職勧奨の説得力が高まり、上乗せ条件の金額も低くなりやすいですし、裁判になった場合も有利に進められます。
なお、能力が極端に低く見えるということは、その仕事に対する適性がない可能性が高いのです。適性がない仕事は本人にとっても辛く、体調を崩してしまうこともあります。本人の健康やキャリアのためにも、早めに判断することが双方にとって望ましい結果につながります。
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当事務所のサポート体制と監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、懲戒処分・退職勧奨・解雇の対応を日常的に取り扱っています。懲戒処分通知書の作成、退職勧奨の面談設計、解雇の判断に至るまで、問題社員対応に慣れた弁護士がZoomやTeamsで短時間の打ち合わせを繰り返しながら伴走します。
自力で頑張ろうとするから苦しいのです。自動車教習所で指導員が隣に乗ってくれると路上に出て運転できるのと同じように、問題社員対応を毎日やっている弁護士と伴走すれば、そう簡単には失敗しません。社長は本業に専念していただきながら、技術的な部分は経験のある弁護士に任せるという役割分担が理想です。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
懲戒処分・退職勧奨・解雇でお悩みの会社経営者の皆様へ
まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。
よくあるご質問
Q. 懲戒処分を行うにあたって一番大事なことは何ですか。
事実認定です。何月何日の何時頃、どこで、誰が、誰に対して、どのように、何をしたのかをはっきりさせることです。事実認定のトレーニングを受けていない方がほとんどですので、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
Q. 30日前に解雇を予告すれば解雇できますか。
それは違います。解雇予告は労基法上の手続にすぎず、客観的に合理的な理由などが必要なことに変わりはありません。解雇予告の手順を踏んでも、客観的に合理的な理由がなければ解雇が無効になることがあります。
Q. 能力不足の社員にやめてもらうにはどうすればいいですか。
まず試用期間中に判断することが最も重要です。試用期間が経過してしまった場合でも、なぜ能力不足と言えるのかを、いつ・どこで・何をやったのか(やらなかったのか)という具体的事実を踏まえて説明することで、退職勧奨の説得力が高まります。
Q. 就業規則がない場合でも懲戒処分はできますか。
就業規則がない場合のやり方については別途ご相談ください。就業規則がある会社であれば、懲戒の種類と懲戒事由を定めて、従業員が見ようと思えば見られる状態にしておくことが必要です。
Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。
対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。
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