問題社員249 「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤解です。
動画解説
この記事の要点
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「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」という言説は誤り——パワハラかどうかは客観的に決まる もしこれが本当ならば、何でもかんでもパワハラにされてしまい、必要な注意指導が一切できなくなる。相手の主観的な受け取り方は一つの考慮要素にすぎない |
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判断基準は「平均的な労働者がどう感じるか」——厚労省パワハラ指針の3要素で整理される ①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの——これら3要素をすべて満たすものがパワハラ。客観的に見て業務上必要かつ相当な適正指導は該当しない |
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社長の主観もパワハラ判断の決め手ではない——「悪気がなかった」では免責されない 社長がどういうつもりで話したかは考慮要素の一つに過ぎない。平均的な労働者がパワハラだと感じるような言動をしてしまえば、悪気がなくても客観的にパワハラになる |
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誤った前提に振り回されて注意指導を怠らない——周りの社員を守るため必要な指導を続ける 「相手がパワハラと感じたらパワハラ」という誤情報に縛られて注意指導できなくなると、周りで我慢している社員・パート・アルバイトを守れなくなる。会社を守る責任を果たすため、正しい認識のもとに指導を継続する |
目次
1. 「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤り——広まった誤解とそのリスク
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
本日は、「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という言説は誤りであるというお話をします。
どこで聞いたのかは定かではありませんが、世の中には「相手がパワハラだと感じたらパワハラだ」という情報が広く流れています。会社経営者の皆様も一度はお聞きになったことがあるのではないでしょうか。しかし、これは間違いです。
もし「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」が本当であれば、何でもかんでもパワハラにされてしまいます。パワハラがやってはいけないことだという前提で考えれば、相手がパワハラだと言い出しさえすれば何でもパワハラになる——これでは相手の気に食わないことは一切できなくなってしまいます。
こんな主観的な基準でパワハラだと言われてひるみ、必要な注意指導ができなくなっていませんか。それはおかしなことです。この誤解を改めていただくために、本日の解説を行います。
2. パワハラの判断基準は「平均的な労働者の感じ方」——客観的判断の意味
パワハラかどうかは、客観的に決まるものです。具体的には、平均的な労働者の感じ方によって判断されます。
それは、相手がどう感じたかでもなければ、社長がどういうつもりで話したりやったりしたことかでもありません。平均的な労働者がどう感じるようなものかで決まるのです。
具体的な場面で考える
例えば、問題社員が周囲の社員に対して異常な暴言を吐いて職場の迷惑になっているとします。社長がそれはいけないと思って出ていき、「〇〇さんに対してそんな口のきき方をするのはダメですよ」と指導したとします。
これは極めてまともな指導です。しかし、その相手から「それってパワハラですよ。私はパワハラだと感じました。だからパワハラです」と言い返されたらどうでしょうか。
客観的に見れば、当然すべき指導を行っただけです。相手は叱られたので気分が悪いかもしれませんが、一般的な労働者の感じ方を基準にすれば、これはパワハラではありません。たまたまその相手が変わった受け止め方をしてパワハラだと思い込んだとしても、客観的にはパワハラではない以上、応じる必要はないのです。
正当な注意指導はしっかり行ってください。平均的な労働者がパワハラだと感じるようなものでなければ、パワハラに該当することはありません。
3. 厚生労働省パワハラ指針——3要素で整理される
職場におけるパワーハラスメントは、厚生労働省のパワハラ指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)で、次の3要素として整理されています。
パワハラ指針における3要素
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるものであり
これら3要素のすべてを満たすものが、職場におけるパワーハラスメントに該当します。
①の「優越的な関係」は、社長と部下の関係が典型ですが、最近では同僚同士や部下から上司に対するパワハラも問題となります。②の「業務上必要かつ相当」は、仕事上必要でないことはパワハラになりやすく、必要なことでも度を越せばパワハラになります。③の「就業環境が害される」は、働く環境が悪くなったからこそ職場におけるパワーハラスメントだという位置付けです。
客観的に見て適正な業務指導はパワハラに該当しない
パワハラ指針には、「客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」ことも明記されています。
「客観的に見て」——この言葉が重要です。相手がどう感じたかではなく、社長がどういうつもりだったかでもなく、平均的な労働者の感じ方で決まる。それがパワハラ判断の正しい軸です。
4. 社長の主観もパワハラ判断の決め手ではない——「悪気がなかった」では免責されない
「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」が誤りだということは、会社経営者にとって安心材料です。しかし、ここでもう一つ、社長にとってやや耳の痛い話をしなければなりません。
社長がどう思っていたか、どういうつもりだったかも、パワハラ判断の決め手ではありません。これも一つの考慮要素にすぎないのです。
「悪気はなかった」「そんなつもりで言ったわけではない」という弁明は、パワハラ判断において多少の考慮要素にはなっても、結論部分には大きく影響しません。平均的な労働者がパワハラだと感じるような言動をしてしまえば、悪気があろうがなかろうが、客観的にパワハラに該当します。
パワハラと認定される事案の多くは「客観的にも問題あり」
社長と話していて、「相手がパワハラだと思ったらパワハラなんだから大変ですよね」という言葉を聞くことがあります。しかし、これは二重に誤っています。
まず、「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という前提自体が誤りです。これは社長にとって安心材料です。
しかし、実際にパワハラだと評価されている事案の多くは、相手がパワハラだと思ったから評価されたのではなく、客観的に見てもパワハラに該当する言動をしていたから評価されているのです。平均的な労働者・裁判官の目から見ても「これはパワハラだ」と言えるような言動をしていたから、パワハラと認定されている——この点は社長にとって耳の痛い話ではありますが、事実です。
つまり、社長がパワハラだと思っていなくても、悪気がなくても、客観的にパワハラに該当する言動をしてしまえばパワハラになる——これをしっかり理解しておいてください。
5. 誤った前提に振り回されず、必要な注意指導を継続する
本日お伝えしたかったことを、改めて整理します。
「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」という誤情報に縛られると、問題社員に対してまともな注意指導ができなくなってしまいます。足がすくんでしまう社長もいらっしゃいます。そうなったら、周りの社員に嫌な思いをさせて暴言を吐くような問題社員に、しっかり注意指導することができなくなります。
大事な社員たちを守れなくなってしまいます。そんなことがあってはなりません。会社を守るため、問題社員の周りで色々我慢しながら一生懸命仕事をやっている社員たち・パートアルバイトの方々を守るためにも、しっかり注意指導して問題社員の行動を改めさせなければいけません。
反論してきた場合の対応
もし社員から「相手がパワハラだと思ったらパワハラなんですよ」と反論されたら、次のように伝えてください。
「それは誤りです。パワハラかどうかは客観的に判断されるもので、厚生労働省のパワハラ指針にも明記されています。一度パワハラ指針を読んでみてください。」
その上で、適切な注意指導を継続してください。会社のために一生懸命働いてくれている社員たちを守るためにも、正しい知識を身につけて対応することが大切です。
6. まとめ
「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という誤解についての整理です。
- 「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」は誤り。もし本当ならば必要な注意指導が一切できなくなる
- パワハラかどうかは客観的に決まる。判断基準は「平均的な労働者の感じ方」
- 厚労省パワハラ指針の3要素(優越的関係・業務上必要かつ相当な範囲を超える・就業環境侵害)ですべて満たすものがパワハラ。客観的に見て適正な業務指導は該当しない
- 社長の主観も決め手ではない。「悪気はなかった」では免責されない
- 誤情報に振り回されず、周りの社員を守るために必要な注意指導を継続する
判断に迷う場面では、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」という考え方はどこから来ているのですか。
A. セクハラの判断で被害者の感じ方が重視される枠組みが、パワハラにも混同されて広まったことが一因と考えられます。しかしパワハラは客観的に判断されるものであり、厚生労働省のパワハラ指針にも明記されています。相手の主観的な受け取り方は考慮要素の一つにすぎず、判断基準そのものではありません。
Q2. 社長がよかれと思って指導したのに「パワハラだ」と言われてしまいました。悪気がなければパワハラではないのでしょうか。
A. 社長の主観は考慮要素の一つにすぎません。平均的な労働者がパワハラだと感じるような言動をしてしまった場合は、悪気がなくても客観的にパワハラに該当します。一方、客観的に見て適正な業務指導であれば、相手が反発してパワハラだと主張しても、パワハラにはなりません。ポイントは客観的な内容であり、主観ではありません。
Q3. 厚生労働省のパワハラ指針はどこで読めますか。
A. 正式名称は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」です。厚生労働省のウェブサイトや各種パンフレットで公開されています。パワハラの定義・3要素・該当例と該当しない例が整理されていますので、一度通読されることをお勧めします。
Q4. 「パワハラ指針を読んでください」と言っても社員が納得しません。どうすればよいですか。
A. 納得させること自体が目的ではありません。会社として、正しい認識のもとに必要な注意指導を継続することが目的です。パワハラ指針の内容を根拠として示した上で、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲の指導であれば、毅然として継続してください。本人の納得が得られない場合でも、指導の事実と内容を記録に残しておくことが重要です。
Q5. パワハラと言われるのが怖くて注意指導ができません。どう乗り越えればよいですか。
A. 「パワハラにならないギリギリを狙う」発想から脱却することです。効果的で適切な注意指導を目指してください。事実を具体的に伝え、どう改めてほしいかをセットで示す指導は、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲の指導として、滅多にパワハラとは評価されません。判断に迷う個別事案では、問題社員対応を専門とする弁護士に相談しながら進めてください。
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最終更新日:2026年4月17日