問題社員238 給料の高い社員が、病気で全く働けないのに出社して、1日中座っており休むよう勧めても聞く耳を持たない。

動画解説

この記事の要点

まず「本当に働けないのか」を確認する——机に座っているだけなのは会社が仕事を指示しなかったからという言い訳の余地を残さない

主治医への問い合わせ・産業医面談・実際に仕事をやらせてみて記録に残すという確認作業が、出社拒否・給与不払いの根拠になる

「働けない」と確認できたら出社を拒否して給与を払わない——不完全な労務提供を受け入れる義務は会社にない

「会社の都合で休ませた」ではなく「労働契約で予定された労務提供ができないから労務提供を拒絶した」という論理が必要。そのために事前の確認作業が重要になる

長期間「座っているだけで高い給料をもらえる」状態を放置してきた場合は反発が強くなる——できるだけ早い段階で対処することが重要

既得権益化すればするほど本人の反発は強まり、最終的には裁判になるリスクもある。問題が分かった時点で早期に着手する

本人の体調悪化・周りの社員のモラール低下・会社の安全配慮義務違反——3つの観点からも放置は許されない

「給料を払ってあげているからいい会社だ」ではなく、体調悪い人を出社させ続けることは安全配慮義務違反になりうる。周りの社員のモラールへの悪影響も重大

1. なぜ放置してはいけないのか——本人・周りの社員・会社の3つの観点

給料の高い社員が病気で全く働けないのに出社して1日中机に座っており、休むよう勧めても聞く耳を持たない——このような状況を放置することは、会社にとって3つの観点から問題があります。

第一に本人のためにならないという点です。体調が悪い方が毎日出社することで体にさらに負担がかかります。自宅療養や入院によってより早く回復できたかもしれない機会を失い、病状が悪化したとすれば、出社を認め続けた会社の安全配慮義務違反が問われます。

第二に周りの社員のモラールへの悪影響があります。給料が高いのに仕事をせずに座っているだけで満額もらっているらしいと知れば、周囲は「頑張るのが馬鹿らしい」と感じます。職場の秩序が崩れ、優秀な社員が先に辞めていくリスクがあります。

第三に会社の安全配慮義務違反リスクです。体調が悪いと分かっている状態で出社を認め続けることは、安全配慮義務の観点から問題になりえます。

2. まず「本当に働けないのか」を確認する——主治医・産業医・実際の業務試行と記録

「1日中机に座っているだけ」という状況について、まず確認が必要なのは「本当に働けないのか」という点です。なぜなら、「会社から特に仕事をやるように言われなかった。指示してくれれば仕事をしたのに」という言い訳の余地を残さないためです。

確認の方法は次の通りです。主治医への問い合わせ(本人の同意が前提)で「この仕事の内容だと働けるのか」を確認します。産業医がいる会社では産業医面談を実施し、「このまま出社させて体調への悪影響がないか、この仕事ができる状態か」について意見を求めます。さらに実際に業務を指示してみて「できなかった」という事実を記録に残します。「やれば仕事できた」という言い訳ができないように、具体的な指示と結果を記録することが重要です。

3. 「働けない」と確認できたら出社拒否・給与不払いへ——「会社都合」にならないための論理

確認作業の結果「労働契約で予定された程度の労務提供ができない」と判断できたら、出社を拒否して給与を払わないという対応に踏み込むことになります。

ここで重要なのは論理です。「会社の都合で休ませた」のであれば使用者責任として給与を保証しなければなりませんが(少なくとも休業手当の支払義務が生じます)、「労働契約で予定された程度の労務提供ができないから労務提供を拒絶した」という形であれば、給与を払う必要はありません。この区別のためにこそ、事前の確認作業(主治医・産業医・業務試行の記録)が重要なのです。

⚠ 出社拒否・給与不払いは必ず医師・弁護士と連携して

「働けない」という客観的な根拠を医師から得た上で、弁護士のコンサルティングを受けながら出社拒否・給与不払いの対応をとってください。単独で行うのは非常に危険です。相手の意思と真正面からぶつかることになるため、法的な根拠を固めた上で進めることが必須です。

4. 長期間放置してきた場合の難しさ——既得権益化すると反発が強まる

長い期間にわたって「出社して座っているだけで高い給料がもらえる」という状態を認めてきた場合、それが本人にとっての既得権益になります。これを突然打ち切ることへの反発は相当なものになります。

本人にとっては生活がかかっています。「来ないでください、給料は払いません」と言われることへの反発は、既得権益が長く続いていたほど強くなります。場合によっては裁判になる可能性もあります。

だからこそ、この問題は早い段階で対処することが重要です。「少し様子を見よう」「なんとなく言い出しにくい」と放置し続けるほど、その後の対応コスト(精神的・経済的・時間的)が大きくなります。

5. 医師・弁護士とチームで対応する——できるだけ早い段階で着手する

この問題への対応は、医師(主治医・産業医)と弁護士のチームで進めることが基本です。医師からの「働けない」という医学的見解を根拠に、弁護士が出社拒否・給与不払いの法的根拠を整理して、経営者が判断するという構造です。

特に長期間放置してきた案件では、反発が強く裁判になる可能性があります。そのような場合は特に弁護士への早期相談が重要です。問題を把握した時点でできるだけ早く着手することが最善の対処法です。

6. まとめ

① 放置は許されない——本人の体調悪化・周りのモラール低下・安全配慮義務違反の3つのリスク

「給料を払っているからいい会社だ」という発想は間違い。放置は3方向から問題になる。

② 「働けない」の根拠を作る——主治医・産業医・業務試行の記録で確認

出社拒否・給与不払いの法的根拠は「労務提供ができないから拒絶した」という論理。そのための事前確認作業が全て。

③ できるだけ早い段階で医師・弁護士とチームで対応する

長期間放置ほど反発が強く対処コストが増大する。問題が分かった時点で早期着手が最善。

よくある質問(FAQ)

Q
病気で働けないのに出社して座っているだけの社員の給料を払わないことはできますか?
A

「労働契約で予定された程度の労務提供ができない」という事実を医師の意見・業務試行の記録などで客観的に確認できれば、出社を拒否して給与を払わないことができます。ただし「会社の都合で休ませた」とみなされると休業手当の支払義務が生じます。「労務提供を拒絶した」という論理の構築が重要ですので、必ず弁護士に相談しながら進めてください。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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最終更新日 2026/04/16


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