問題社員235 体調不良の欠勤が多い。
動画解説
目次
1. 体調不良の欠勤が多い社員には2種類ある——「体調不良」と「だらしない」を区別する
欠勤が多い社員の対応を考える前に、まずその欠勤の原因を正確に把握することが必要です。欠勤が多い原因としては、大きく分けて①本当に体調不良と②だらしない(単に怠惰・無責任)の2つがあり、それぞれ対応方法が根本的に異なります。
本動画が扱うのは「体調不良の欠勤が多い」ケースです。本当に体調が悪くて休んでいるのであれば、注意指導や懲戒処分を中心とした問題社員対応ではなく、安全配慮義務・医療的サポート・休職制度を中心とした対応が必要になります。一方で「だらしない」ことによる遅刻・欠勤であれば、しっかり注意指導し、改善しなければ懲戒処分へという通常の問題社員対応が中心になります。
「体調が悪い」と言っているが実際はどうなのか——この見極めが最初の重要なポイントです。本人から話を聞き、医師の所見などを踏まえて客観的に判断してください。
2. 最初にすべきことは「働かせて大丈夫かの確認」——本人の事情を聴取し、医師の受診を勧める
体調不良の欠勤が多い社員への対応で最初にすべきことは、働かせて大丈夫かどうかの確認です。体調を悪化させてはいけません。安全配慮義務を負う経営者として、社員の健康を守ることが責務です。
具体的な確認の手順は次の通りです。まず本人から事情を聴取します。「最近体調どうですか、欠勤が続いているようだけど何があるのか」と面談で丁寧に話を聞きます。本人から話せる範囲で話を聞いた上で、体調不良の状態が続いているようであれば医師の受診を勧めてください。
産業医がいる会社では、産業医に面談させて意見を求めることが有効です。産業医は仕事の内容を把握しているため、「この仕事をさせても大丈夫な状態か」という観点から意見を求めることができます。産業医の専門分野と症状が合わない場合でも、「これは病気が原因なのかどうか」程度の判断はできる場合が多く、その先の専門医紹介につなげることも可能です。
なお、「本人がどうして体調不良になっているのか」という原因が分からなければ、本当の意味での対処はできません。体調不良の原因が業務上のもの(過重労働・ハラスメントなど)であれば、それは別途しっかり対応する必要があります。
3. 体調不良の程度に応じた対応をとる——「0か100か」ではなく程度に合わせた措置
(1) 欠勤日数が休職要件に達しない場合——様子を見ながら働かせる・仕事の割振りを工夫する
月に数回の欠勤程度で、基本的には出勤できているという状況であれば、様子を見ながら働かせることになります。この段階では体調悪化の兆候に常にアンテナを張り、調子が悪そうに見えたらすぐに声をかけて状態を確認することが大切です。
仕事の割振りについては、突然休んでも業務に支障が生じない内容の仕事を優先的に割り当てることを意識してください。体調不良の社員に重要な締め切りがある仕事を任せ、突然休まれて業務が止まるという事態を防ぐためです。
残業についても体調の程度に応じて判断します。体調があまり良くない時期は残業を控えさせる、出張も負担の重いものは避けるなど、程度に応じた配慮を積み重ねてください。この「程度に応じた対応」こそが大事です。「体調が悪いと言った以上は全仕事を取り上げ全部の業務から外す」というような0か100かの対応は、かえってうまくいかないことが多いです。
(2) 明らかに仕事にならないほど悪化している場合——帰宅・欠勤・休職へ
体調が悪化して明らかに仕事にならない状態であれば、帰宅させること(または出社拒否)が必要です。不完全な労務提供を受け入れ続ける義務は会社にはなく、そのまま働かせることは体調をさらに悪化させるリスクもあります。
本人の同意を得た上で帰宅・欠勤・療養を促すことが理想ですが、本人が「働けます、大丈夫です」と言って帰ろうとしない場合もあります。そのような場合は弁護士と医師の両方に相談しながら対応方針を決めてください。
▶ 程度に応じた対応の例
軽度の体調不良(月数回の欠勤程度):様子を見ながら就労継続。突然休んでも支障のない仕事を中心に割り振り。残業・出張は状況に応じて控えさせる
中程度(欠勤が増えてきているが何とか出勤できている):残業をストップ。出張は禁止。医師の受診・産業医面談を促す。仕事量を減らす
重度(明らかに仕事ができない状態):帰宅・欠勤を促す。欠勤日数が休職の要件に達したら休職命令
4. 本人が「大丈夫」と言っても客観的に判断する——自己申告を鵜呑みにしない
体調不良の管理で特に注意が必要なのが、本人の「大丈夫です」という言葉を鵜呑みにしてはいけないという点です。
人は自分の体調を正確に把握できないことがあります。「大丈夫」と言っている本人自身が、実は客観的にはかなり体調が悪い状態であることも少なくありません。また、休みたくない・迷惑をかけたくないという気持ちから無理をして「大丈夫」と言う人もいます。
「本人が大丈夫と言ったから働かせた、その後体調が悪化した」という場合でも、外から見て明らかに悪そうだったにもかかわらず見過ごしていれば、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。本人の自己申告よりも、外から客観的に見た状態、そして医師(主治医・産業医)の所見を重視してください。
5. 休職命令の要件に達したら休職をスタートさせる——休職期間満了後の退職・解雇の流れ
欠勤日数が就業規則で定められた傷病休職の要件を満たす日数に達した場合は、休職命令を出してください。休職に入ったら、しっかり療養していただくことが大切です。
休職期間中に体調が回復した場合は、復職の判断を慎重に行います。復職の際は主治医の診断書を最低限取得した上で、産業医面談・試し出社などで本当に働ける状態になっているかを確認してから復職させてください(詳しくは別記事「復職してすぐ休む」「休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる」を参照)。
休職期間が満了しても回復せず、就業規則で定める退職事由に該当する場合は、退職(自然退職または解雇)の対応をとることになります。休職制度のない会社では、欠勤が一定期間継続した場合に普通解雇を検討することになります。いずれの場合も弁護士に相談しながら進めてください。
⚠ 重要:休職の要件が曖昧な場合のリスク
「体調不良で欠勤が多い」ケースでは、休職制度の運用が曖昧なままになっていることがあります。就業規則に休職制度の規定がない場合、休職命令を出す根拠が不明確な場合、休職開始日が不明確な場合などは、後のトラブルの原因になります。休職命令書を必ず書面で作成し、休職開始日・休職期間を明確にしてから進めてください。
6. まとめ
体調不良の欠勤が多い社員への対応で最も重要なのは、「体調悪化を防ぐこと」と「程度に応じた対応をとること」の2点です。会社側の問題として整理すると次のようになります。
① まず原因を把握し、医師・産業医と連携して客観的な状態を確認する
本人の事情を聴取し、医師の受診を促す。産業医がいれば面談させる。「大丈夫」という本人の言葉より客観的な状態を重視する。
② 程度に応じた対応をとる——「0か100か」ではなく状況に合わせた措置を積み重ねる
軽度なら様子を見ながら就労継続・仕事割振りの工夫。重度なら帰宅・欠勤・休職へ。残業・出張の制限も状況に応じて。
③ 休職要件を満たしたら休職命令を出し、休職期間を明確にする
休職命令書を書面で作成し、開始日を明確にする。休職期間満了後の対応(退職・解雇)については弁護士に相談しながら進める。
よくある質問(FAQ)
体調不良の欠勤が多い社員への対応でお困りの方はご相談ください
働かせて大丈夫かの確認から休職命令の手続き・休職期間満了後の対応まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/16
