問題社員230 負担の軽い仕事にも耐えられない

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この記事の要点

負担の軽い仕事でも耐えられない場合の主な原因は「適性がない(向いていない)」か「元々体調が悪かった(前職等でメンタル疾患→寛解→再発)」の2つ

いずれの原因でも、まずしっかり休ませて療養させることが最初の対応。原因の特定よりまず療養が先

使用期間中であれば使用期間中に決着をつける——安易に使用期間を延長しない

本採用になってしまうと対応が複雑化する。使用期間中に退職勧奨→不成立なら本採用拒否(法的には解雇)という手順で進める

退職勧奨では「やめなければならない理由を具体的に説明する」——「本人のためにもなる」という視点から丁寧に話す

入社直後でこの程度の仕事が負担になっているなら、この仕事を続けることで体調がさらに悪化するリスクがある。本人のキャリアのためにも転職を勧める視点で話す

復職させる場合は主治医診断書取得+産業医面談+試し出社で慎重に確認してから——焦って復職させると体調悪化・安全配慮義務違反のリスク

回復した場合の戻り方も慎重に。また使用期間中なら、療養から戻ってきたタイミングで改めて退職勧奨・本採用拒否を判断する

1. こういった事態が起きる2つの主な原因

残業もなく他の社員が楽にこなせている仕事なのに、中途採用したばかりの社員がストレスで欠勤し始めた——こういった事態が起きる原因として、主に次の2つが考えられます。

▶ 考えられる2つの原因

① その仕事に適性がない(向いていない)
100人中99人が楽にできる仕事でも、本当に向いていないとかなり苦しくなります。一生懸命頑張っても成長は遅く、ミスが続き、落ち込む——という悪循環に陥ります。向いていない仕事は本人にとっても非常に辛く、体調を崩すことが実際にあります。

② 元々体調が悪かった(前職等でメンタル疾患→寛解→再発)
採用面接の時点では症状が寛解していて元気に見えたが、仕事を再開したことで再発するケースです。前職でメンタルをやられた経験のある方が、落ち着いていた時期に転職してきて再び発症するパターンがあります。

いずれの原因であっても、適応障害の診断書が出て欠勤している以上、現状として「今は働けない」という事実は確実です。まずこの現実への対応が必要です。

2. まずしっかり休ませて療養させる——焦って復職させない

体調を崩して欠勤・休職している状態であれば、まずしっかり休ませて療養させることが最初の対応です。

この段階で焦って復職させようとすることは危険です。安全配慮義務の観点からも、本当に働かせても体調が悪化しない状態になっているかを確認してから復職させることが会社の責任です。

⚠ 復職させる場合の確認手順

① 主治医の「復職可」診断書を取得する
② 産業医面談を行い産業医の意見を聞く
③ 試し出社(リハビリ出勤)で実際の状態を確認する
④ 以上を経て復職の可否を判断する

3. 使用期間中であれば使用期間中に決着をつける

(1) まず退職勧奨——やめなければならない理由を具体的に説明する

使用期間中の社員であれば、療養から戻ってきたタイミングで退職勧奨(合意退職の話し合い)を行うことを検討してください。この際、なぜやめてもらわなければならないのかを具体的に・丁寧に説明することが重要です。

▶ 退職勧奨での説明ポイント

・入社してから2週間も経たないうちに、ハラスメントもなく残業もないのに適応障害になった事実
・他の社員が楽にこなせている仕事がこの程度の負担になっているという事実
・このまま仕事を続けることで体調がさらに悪化するリスクがあること
・この仕事があなたに向いていない可能性があること
「あなたのためにも、別の仕事・職場の方がよいと考えている」という視点

会社のためだけでなく「本人のキャリアと健康のためにも」という視点から話すことが、本人の納得感につながります。また本人の言い分(体調悪化の原因など)もしっかり聞いてください。

(2) 退職勧奨が不成立なら本採用拒否(法的には解雇)

退職勧奨が成立しない(本人が退職届の提出や退職合意書へのサインを拒否する)場合は、本採用拒否という手段を検討します。法的には解雇に当たります。

使用期間中の本採用拒否は本採用後の解雇よりもハードルが低い(比較的認められやすい)とされています。ただし「何の理由もなく本採用拒否できる」わけではなく、客観的に合理的な理由が必要です。入社直後に仕事のストレスで長期欠勤した事実・その後の状況などが理由の根拠になりえます。

本採用拒否を行う場合は、必ず弁護士に相談した上で進めてください。

4. 本採用後まで引き込まない——本採用後は対応が複雑化する

使用期間中に決着をつけることが非常に重要です。安易に使用期間を延長したり、なんとなく本採用になってしまったりすると、その後の対応が大幅に複雑化します。

本採用後になると休職制度の適用・復職対応・休職期間満了退職などの複雑なプロセスが必要になります。本採用の通知を出すつもりがなくても、本採用拒否をせずに使用期間が終了してしまえば自動的に本採用扱いになってしまいます。

⚠ 使用期間の延長は「特別な事情」がある場合のみ

特別な事情がある場合(療養中で判断できない期間など)は使用期間延長が適切な場合もあります。しかし「判断を先延ばしにしたいから延長する」という安易な延長は避けてください。使用期間の延長にも法的な制限があります。個別の状況について弁護士に相談してください。

5. まとめ

① まずしっかり休ませて療養させる——焦って復職させない

療養中は主治医診断書・産業医面談・試し出社で慎重に確認してから復職の可否を判断する。安全配慮義務の観点から焦りは禁物。

② 使用期間中に決着をつける——本採用後まで引き込まない

退職勧奨→不成立なら本採用拒否(解雇)という手順で使用期間中に判断する。安易な使用期間延長は避ける。本採用後は対応が複雑化する。

③ 退職勧奨では「本人のためにもなる」視点から具体的に説明する

入社直後の欠勤の事実・向いていない可能性・体調悪化リスクを丁寧に説明し、本人の言い分も聞く。本採用拒否は必ず弁護士に相談してから実施する。

よくある質問(FAQ)

Q 使用期間中の社員が負担の軽い仕事でも欠勤しています。すぐに本採用拒否できますか?
A

まずしっかり休ませて療養させることが先です。療養から戻ってきたタイミングで退職勧奨を行い、不成立の場合に本採用拒否を検討します。本採用拒否は法的には解雇にあたるため、客観的に合理的な理由が必要です。欠勤の経緯・状況を整理した上で、必ず弁護士に相談してから進めてください。

Q 退職勧奨したところ「本採用してほしい、働きたい」と言って拒否されました。どうすればよいですか?
A

本採用拒否(解雇)を検討する段階です。使用期間中の本採用拒否は本採用後の解雇よりハードルが低いとはいえ、客観的に合理的な理由が必要です。入社直後の欠勤の事実・欠勤の期間・体調回復の確認状況などが判断材料になります。本採用拒否の手順・通知書の作成については必ず弁護士に相談してから進めてください。使用期間が満了する前に決着をつけることが重要です。

負担の軽い仕事にも耐えられない社員への対応でお困りの方はご相談ください

退職勧奨の進め方・本採用拒否の判断・使用期間内での決着の付け方まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/16